熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

謹賀新年2019

2019年01月01日 | ブログ運営

 新年あけましておめでとうございます。

 毎年の様に元旦は昨年の目標達成状況および今年の目標設定を行います。
 まず昨年の本ブログにおける目標は「ブログの10回/年程度の更新+100回ツイート/年」でした。
 その実績は、

○2018年の「熱帯果樹写真館」更新回数
 ・ブログ更新・・・・・・・・・・・・・・・・・4回
 ・ツイート数・・・・・・・・・・・・・・・・106回(Twitter)、115回(Facebook)

と4年連続のブログ更新回数の目標達成はできませんでした。
 一方、「100回ツイート/年」はギリギリ達成できました。
 これも皆様のご愛顧があっての結果です。ありがとうございました。

 また、2018年は日本熱帯果樹協会沖縄支部の活動を活発に行い、リアルでの交流が盛り上がった年でした。
 加えて、業務が市場(流通現場)から生産現場に復帰し、多くの熱帯果樹生産者と交流できる様になると云った変化もありました。

 今年は2018年に発信できずにいたブログネタをしっかりまとめていきたいと思います。
 2019年の目標は「ブログの更新8回/年+100回ツイート/年」としたいと思います。
 今年も、宜しくお付き合いください。

カーブチー、オートー及びタロガヨの見分け方。

2018年11月18日 | 柑橘類

 先日、沖縄県の秋の味覚である在来柑橘類のカーブチー(Citrus keraji var. kabuchii hort. ex Tanaka)、オートー(C. oto hort. ex Y.tanaka)、タロガヨ(C. tarogago Hort. ex Y, Tanaka)及びウンジュ(分類的にはタロガヨと同じと考えられている)を食べる機会に恵まれました。

 と云っても、これらは外観では同定しづらく、沖縄県民でも「どうやって見分ければ良いの?」と思う方が多いと思います(写真2)。



写真2.オートー、カーブチー、タロガヨ及びウンジュ(タロガヨ)の果実。



 そこで、今回は“ねこがため流:カーブチー、オートー及びタロガヨの見分け方”を記します。

 まず、カーブチー、オートー及びタロガヨの中で他2種より分類的に離れていると考えられているタロガヨを見分けます。
 そのために、“種子”に注目です(写真3~6)。



写真3.カーブチーの種子。





写真4.オートーの種子。





写真5.タロガヨの種子。





写真6.ウンジュ(タロガヨ)の種子。



 お判かりいただけたでしょうか?
 種子で注目すべきはクチバシ状の突起です。
 クチバシ状突起はカーブチーやオートーでは発達して長いですが、タロガヨやウンジュ(タロガヨ)では短いです。
 種子を見るだけで「これはカーブチーやオートーではない(だからタロガヨ)」と区別ができます。

 残ったカーブチーとオートーの見分け方に用いるのは“果皮の厚さ”です。
 この3種類の果皮の厚さは、カーブチー:厚い、オートー:薄い、タロガヨ&ウンジュ:中間です(写真7、8)。



写真7.オートー、カーブチー、タロガヨ及びウンジュの果皮の厚さ。





写真8. 果皮はオートーが薄く、カーブチーが厚い。



 まとめると、カーブチー、オートー及びタロガヨの見分け方は図1の様になります。



図1.カーブチー、オートー及びタロガヨの見分け方。



 これで、カーブチー、オートー及びタロガヨの区別が付くようになりましたね。
 もし、これら沖縄県在来柑橘類を食べる機会がありましたら、この見分け方が役に立つか試してみてください。
 




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パッションフルーツの高畦栽培で土づくり(1)

2018年06月24日 | パッションフルーツ

 2017年10月にパッションフルーツ(以下、パッションF)を栽培している知人から土づくりに関する相談を受けました。

 相談内容は「パッションFの多年栽培(又は収穫を行いながら次年度株の育成)をしていると畦の表面を根が覆っているので、耕起をすることができない(根を切りたくない)」「しかし、耕起をしないと土が固くなり生育が悪くなる」とのこと。

 私は対応策として「敷き草を行い、表面から土壌改良してはいかがでしょうか?」と提案しました。
 ところが「高畦栽培をしているので、畦の表面に敷き草をしても雨が降ったら敷き草が流れ落ちる」と反論を受けました(図1)。



図1.高畦栽培なので雨が降ると敷き草が流れ落ちる。



 そこで、第2案として「畦の上に板を立てて、その中に敷き草を入れる」ことを提案しました(図2)。



図2.板枠を作ることで敷き草が流れ落ちない。



 使用する板は、市場や港等のフォークリフトで荷物を運搬している場所では産業廃棄物になりがちな(破損した)木製パレットの割れていない板を集めて使いました(写真1)。



写真1.畝上に板枠を設置。



 板が外側に倒れない様に鉄筋で補強し(写真2)、内側に倒れない様に敷き草をたっぷり入れることと金属製ハンガーを切ったもので板を固定しました(写真3)。



写真2.板が外側に倒れない様に鉄筋で固定。





写真3.金属性ハンガーで作った資材で板をさらに固定。



 また、敷き草は農場周辺に植栽している防風林(テリハボク、ネズミモチ等)の剪定した枝葉をウッドチッパーで粉砕したウッドチップを用いました(写真4、5)。



写真4.防風林の剪定枝チップで畦を覆う。





写真5.剪定枝チップは短期間で枯葉、枯枝になるが、土づくりはここから。



 この後は、畦上の剪定枝チップを土壌中の生物(ミミズ、ダンゴムシ、菌類等)が食しながら掻き混ぜてくれるkとで、人が耕すことなく土壌の物理性が改善できるはずです(図3)。



図3.土壌生物による土づくり(イメージ図)。



 ところが、同知人から2018年5月に「敷き草をした畦でパッションFの生育が悪い」「葉が黄化して濃い緑色にならない。葉の大きさも小さい」と再び相談を受けました。

 何故、敷き草をしたパッションFは樹勢を落としてしまったのでしょう?
 この謎解きは次回に行います。




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アボカドの果実に白い汚れが付いて落果する!?

2018年04月24日 | アボカド

 2018年4月21日に熱帯果樹仲間であるU氏の自宅を訪れた際に「鉢植えで栽培しているアボカド「ピンカートン(Pinkerton )」の果実に白い汚れが付く。この汚れが付いた果実は落果する。この原因と対策を教えて欲しい」と相談を受けました。 

 確認すると、白い汚れは複数の果実の表面に見られました(写真2)。



写真2.白い汚れが付いたアボカド果実



 果実の大きさは長径2~4cm程度。
 汚れの発生箇所は、果梗部付近に集中しているもの、果頂部付近に集中しているものと様々で一貫性がありません。
 また、汚れの形や大きさもバラツキがある様です。

 この時点で私は以下の2つの仮説を考えました。

 【仮説1】カイガラムシの仲間による汚れ。
 【仮説2】Phytophthora属菌(以下、疫病菌)による汚れ。

 しかし、その場では判断が付かなかったので、汚れが付いた果実を1つ持ち帰りました。

 持ち帰った果実を実体顕微鏡で観察しましたが、白い汚れの中にカイガラムシの姿は見当たりませんでした。
 汚れは薄いところでは膜状にベッタリと張り付いており、厚いところではモコモコと盛り上がっていました(写真3,4)。




写真3.写真4.白い汚れを実体顕微鏡で拡大



 次に、この白い部分を柄付針(えつきばり)で少し取り、プレパラートを作成して、光学顕微鏡で観察しました。
 このとき探すのは、疫病菌の特徴であるレモン型の遊走子嚢(ゆうそうしのう)です(写真5)。



写真5.Phytophthora nicotianae の遊走子嚢

「植物病原アトラス」より抜粋。


 検鏡すると間もなくレモン型の遊走子嚢がたくさん見つかりました(写真6)。



写真6.光学顕微鏡で観察できた疫病菌の遊走子嚢



 どうやら【仮説2】が正解だった様です。

 一応、「農業生物資源ジーンバンク」の「遺伝資源データベース」の「日本植物病名データベース」で国内で報告されているアボカドの病害を検索してみます。

 疫病菌による病害は2例(根腐病とフィトフトラがんしゅ病)が報告されており、どちらも参考文献は渡邊龍雄 著「熱帯の果樹と作物の病害」とのことです(表1)。



表1.日本国内で報告されているアボカドの病害一覧




 「熱帯の果樹と作物の病害」を読んでみると、アボカドの疫病菌による2種類の病害で果実の表面に白い汚れが付着する旨の説明は書かれていません。

 今回観察した病害は、まだ国内では報告がないのかもしれませんが、Webで「Avocado Phytophthora fruit rot」をキーワードに検索してみると複数件ヒットするので、海外では普通に知られている病害の様です。

 疫病は長雨等の高湿度条件下でよく発生し、罹病した苗木の移動、水の移動、農機具、人、動物などに付着した汚染土壌を通して病原菌が伝播されます。
 そのため、予防策としては、
 
 ・排水良好な土壌で栽培を行う(過度な灌水は避ける)。
 ・無病苗木を選ぶ。
 ・罹病地域からの土壌または水の移動を防ぐ。
 ・抵抗性台木の使用。
 ・雨避け栽培(ビニールハウス等での栽培)を行う。

が重要になります。

 もし、疫病が既に罹病している場合は、

 ・罹病部(深刻な場合は樹)の早期除去。
 ・樹体及び土壌の消毒。

等が対策方法となります。
 消毒(殺菌剤の使用)ができれば良いのですが、2018年4月時点の日本国内では「アボカド」に登録されている農薬はなく、「果樹類」で登録されている薬剤のうち疫病菌に有効そうなものが見当たりません。

 相談内容の「原因と対策」のうち、原因はわかったものの、有効な対策が提示できないのは歯がゆいものです・・・。

〇参考文献
 ・米山勝美・夏秋啓子・瀧川雄一・堀江博道・有江力(編集).2006.植物病原アトラス -目でみるウイルス・細菌・菌類の世界-.㈱ソフトサイエンス社.
 ・渡邊龍雄.1980.熱帯の果樹と作物の病害(第2版).㈱養賢堂.




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謹賀新年2018

2018年01月01日 | ブログ運営

新年あけましておめでとうございます。

 毎年の様に元旦は昨年の目標達成状況および今年の目標設定を行います。
 まず昨年の本ブログにおける目標は「ブログの12回/年程度の更新+90回ツイート/年」でした。
 その実績は、

○2017年の「熱帯果樹写真館」更新回数
 ・ブログ更新・・・・・・・・・・・・・・・・・4回
 ・ツイート数・・・・・・・・・・・・・・・・137回(Twitter)、142回(Facebook)

と3年連続のブログ更新回数の目標達成はできませんでした。
 一方、「90回ツイート/年」は余裕をもって達成できました。
 これも皆様のご愛顧があっての結果です。ありがとうございました。

 また、2017年は熱帯果樹や市場流通に関して毎月の様に講演をさせていただく機会に恵まれ、これまで以上に交流が広がった年でした。

 今年も当ブログや Facebook やtwitter で情報を発信しつつ、熱帯果樹愛好家の方々と交流を深めていきたいと思います。
 2018年の目標は「ブログの更新10回/年+100回ツイート/年」としたいと思います。
 今年も、宜しくお付き合いください。

「キーツ」マンゴーの食べ頃表記事例集

2017年09月04日 | マンゴー

 日本国内で栽培されているマンゴーの95%以上は「アーウィン(Irwin)」と云う果皮が真っ赤な品種です。
 2番目に栽培されている品種は「キーツ(Keitt)」と云う果皮が緑色の品種です。

 「キーツ」は沖縄県で30年以上も栽培されているにも関わらず、不動の生産量2位、しかも品種占有率5%以下と云う境遇を維持しています。

 「アーウィン」と「キーツ」は、いずれも米国フロリダ州で育成された品種です。
 フロリダで栽培されているマンゴー80品種を紹介している「A Guide To Mango In Florida」と云うカタログでは、各品種の食味評価が「優(excellnet)」、「とても良い(very good)」、「良(good)」、「普通(fair)」、「劣る(poor)」の5段階評価で示されています。そこでは「アーウィン」の食味が「良(Good)」であるのに対し、「キーツ」の食味は「良~優(good to excellent)」とより高く評価されています。

 「キーツ」が美味しいのに伸び悩んでいる理由は大きく2つです。
 1つめの理由は「収穫時期の判定が難しいから」、2つめの理由は「食べ頃の判定が難しいから」です。

 「キーツ」の収穫時期は、果皮色の微妙な変化や果形の変化、果梗部(ヘタ)付近のシワの発生程度等が収穫の目安とした上で「果実長径が5cm程度(仕上げ摘果時期の果実サイズ)から110~130日後が収穫の目安」という(比嘉ら.2007)研究成果により凡その目安はつきます。

 また食べ頃も「収穫後に室温で8日間程度保管すると食べ頃になる」ことも報告されています(比嘉ら.2007a)。
 因みにここで云う室温は29℃とされています(比嘉ら.2007b)。

 しかし、果実を流通させる段階になると、これらの情報が十分活用されているとは云いがたく、結果として販売者や消費者にとっては「食べ頃がわかりにくい品種」という評価が定着しています。

 そこで、今回は「キーツ」の生産者や産地が消費者に伝えたい『食べ頃の判断方法』をどの様に表現しているかを複数事例をもって紹介します。


〇レベル1=外観等で果実から食べ頃を判断してください!

 事例1-1:JAおきなわ(リーフレット)




 「食べ頃の目安」として2つの見極めポイントが記されています。

 ☆ 玉全体に柔らかみが出た頃
 ☆ 香りがします
 
 この他に「食べ頃」として「 月 日頃」を記す欄が設けられていますが、市場流通している果実を見る限り、この欄は空白であることが多い様です。


 事例1-2:宮古島産「キーツ」マンゴー(リーフレット)




 「おいしい食べ頃 チェック表」と題し、4つのチェック項目が設けられています。

  □ 果実表面に付着する白い粉が見えない
  □ 果実全体がやわらかくなっている
  □ 果実の皮の色が、緑色から黄緑色に変化している
  □ 甘い香りがする

 加えて、注意書きが3つ追記されています。

  ※1:常温で追熟させ、食べ頃になりましたら冷やしてお召し上がりください。
  ※2:キーツマンゴーは追熟型の果物です。果実が固いうちは食べ頃ではありません。
  ※ :20℃を下回る部屋では完熟しない恐れがあり、室温が高い所でゆっくりと追熟させて下さい。


 事例1-3:個人生産者①(注意書き)




 個人出荷されている生産者さんが消費者の場合に注意書きを箱内に入れている事例もありました。

 「キーツマンゴーの食べ頃」
  ・キーツマンゴーは、追熟型の果実ですので常温で追熟させてください
  ・果実全体がやわらかく甘い香りがして地肌が黄色みを帯びてきたら食べ頃です。


〇レベル2=追加情報として収穫日も書いておきます!

 事例2:JAおきなわ(スタンプ)




 一部の生産者ではありますが、JAおきなわの出荷箱の外部側面に収穫日をスタンプしてくださっている方がいました。
 これだと「室温で8日程度追熟させると食べ頃」と云う情報やレベル1の情報と合わせて、より食べ頃の判断がつきやすくなります。


〇レベル3=食べ頃の日付(目安)を表記しました!

 事例3:個人生産者②(注意書き)




 レベル1~3を全て備えた注意書きを箱に添付されている生産者がいました。

♪キーツの食べ頃♪

  レベル1:常温で実が多少柔らかくなるまで保存し、その後冷蔵庫で冷やしてお召し上がりください。
  レベル2:収穫日8月28日
  レベル3:食べ頃のめやす9月4日~9月12日頃
       ※注意:保管環境で多少のずれがあります


 この方の注意書きについて、市場に品物を確認に来られていたデパート仕入れ担当の方と意見交換しました。
 その方は、

 ・ 「キーツ」の取扱い方法や食べ頃の表記はとても助かる。
 ・ 一緒に商品を作っていこうと云う生産者(産地)の思いが伝わる。
 ・ 収穫日や食べ頃の表記が直ちに価格に反映されることはないかもしれないが、まずは現況よりも「売れる商品」にすることが大切。
 ・需要が高まれば、価格にも反映される。

 と高く評価されていました。

 マンゴー生産者(産地)に「キーツの食べ頃の日付を表記してください」とお願いすると「不確かなことは言えないし・・」と尻込みをされる気持ちはよくわかります。
 しかし、「まずはキーツをもっと売りやすい(買いやすい)商品にしよう」と云うところに意識を向けていただければ、生産者(産地)にならできる取り組みがあると思います。


〇参考文献
 ・「熱帯果樹マンゴー(キーツ種)の熟度判定技術の開発 第2報収穫後の食べ頃表示技術の開発(PDFファイル:292KB)」.2007a.比嘉淳・砂川喜信・貴島ちあき・屋良利次・伊山和彦・伊志嶺弘勝・與座一文.沖縄農業研究会;平成19年度(第46回)大会 講演要旨.
 ・「マンゴー「キーツ」の取り頃・食べ頃の判定(PDFファイル:272KB)」.2007b.比嘉淳・砂川喜信・貴島ちあき・屋良利次・伊山和彦・伊志嶺弘勝・與座一文.平成18年度 普及に移す技術の概要;p.65-66.沖縄県農林水産部.




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大玉タンカンを作るためにDIYの簡易積算降雨計を設置。

2017年07月22日 | 柑橘類

 平成28年度は沖縄県ではタンカン豊作年となりました。
 ところが、沖縄県名護市のK氏の農場では、摘果を行なったにも関わらず小玉の果実が多かったことが課題として残りました。

 K氏はタンカンの収穫を終えたところで「もしかしたら、果実肥大期後半(9~11月)の降水量が少なかったのでは?」と仮説を立てました。
 そこで、沖縄気象台のHPで半旬毎の降水量のデータを確認したところ、平成28年9月~12月までの降水量は概ね平年より少なかったことがわかりました(図1)。



図1.タンカン肥大期における旬別積算降雨量(名護市:平年値と2016年の比較)
沖縄気象台のデータを抜粋加工。



 加えて、K氏はタンカンの果実肥大期における適正灌水量について考えました。タンカンの栽培時期別の適正降水量データは見つけられませんでしたが、県外の他の柑橘類(中晩柑)の果実肥大期における適正灌水量に係る複数のデータを検討した結果、pFであれば1.8~2.3、灌水量であれば15~20t/10a/7日間程度ではないかと推察しました。
 pF値の測定には専用器具が必要であることに加え、K氏がpF計の設置や読み取りの技術を習得していないことから「毎週の積算降水量を確認する」と云う結論に至りました。
 この場合、15~20mm/週の降水量があれば降雨だけで十分な灌水ができたことになります

 改めてK氏が9月~12月の降水量を確認したところ、25mm/旬(概ね15~20mm/週に相当)に達していない時期を確認するとH28年度では7旬/12旬(58%)もありました(図2)。



図2.2016年のタンカン肥大期は降水量が25mm/旬に達していないことが多い。
沖縄気象台のデータを抜粋加工。



 平年値であればこの期間の降水量は25mm/旬程度かそれ以上であることから、K氏は改めて「H28年の果実肥大期後半は自主的な灌水を行なわなければならない年だった」と反省しました。

 同じ失敗を繰り返さないことを決意したK氏は、「簡易でも良いから降雨計を設置したい」と考え、私はその相談を受けたので一緒に簡易積算降雨計を作成しました。
 作り方は以下のとおりです。

○材料(主として廃材を用いたため200円弱)
 ・廃材(廃棄木製パレットを分解して確保)
   ・台座となる板(縦:横:厚さ=12cm×12cm×2cm)×1枚
  ・支柱となる角材(縦:横:長さ=4.5cm:5.5cm:約130cmの角材×1本
   ・縦:横:長さ=2cm×2cm×16.5cmの木片×4本
  ・500mmペットボトル×1本
  ・塩ビパイプ(VU管外径60mm)×30cm×1本
 
 ・購入した材料
  ・45mmコースレッドビス×4本
  ・65mmコースレッドビス×2本
  ・プラスチック製のじょうご×1個
  ・マスキングテープ
  ・塗料(炭酸カルシウム、木工用ボンド、墨汁)
  ・セメント、砂、バラス×適量
 
○組み立てに用いた器具、道具
 ・インパクトドライバー
 ・ホットガン(メルトガン)
 ・カッターナイフ
 ・計量カップ
 ・油性マジック、修正液
 ・鉛筆
 ・水平器

○作り方
 1) ペットボトルのキャップに穴を開け、プラスチック製のじょうごを差し込み、メルトガンを用いて固定する(写真1~3)。







写真1~3.500mlペットボトルの蓋に穴を開け、じょうごを取り付ける。


 2) 台座となる板の対角を結ぶ線を引き、板の中央を確認する。

 3) 板の裏に支柱となる角材を当て概ねの位置を確認し、ビスで固定するための下穴を開ける。

 4) 台座中央にペットボトルを立てた際に支えとなる部分を作るために、木片を4本立てる様に配置し(1)の線を活用すると配置が決めやすい)、45mmコースレッドビスで固定する(写真4)。



写真4.ペットボトルを固定する台座を作成する。


 5) 材料となる角材、板及び木片に塗料を塗る。このときの塗料はペンキを用いても良いが、今回は土壌改良資材の炭酸カルシウムと木工用ボンドを体積比で3:1で混ぜ、さらに水と墨汁を適量加えて塗りやすい固さにしたものを塗料として用いて安価に仕上げた。

 6) 台座に支柱となる角材を65mmコースレッドビスで固定する。

 7)じょうごの口径に合わせた水量(表1)をペットボトルに注ぎ、降水量の目安となる数値を記す。このとき、ペットボトルに直接書き込んでも良いが、マスキングテープ等を用いると簡単に目盛りが作成できる。加えて、ペットボトルを支える部分に修正液で目盛りを書くことで、マスキングテープより目盛りが長持ちする(写真5)。


表1.じょうごの直径と降水量50mmに相当する水の量。





写真5.積算降水量が一目でわかる様に目盛りを書く。


 8) 簡易積算降雨計を設置する場所に25cm程度の深さの穴を掘り、塩ビパイプを挿し込み、その中に台座の支柱を立てた後に隙間にコンクリート(セメント、砂、バラス=1:3:3に水適量を混ぜたもの)を流し込み、数日間硬化を待つ。

 9) 台座が地面と平行にはっていることを水平器で確認した後に、じょうご付きペットボトルを設置し完成(写真6)。



写真6.農場に設置された簡易積算降雨計。


○簡易積算降雨計の使い方(暫定版)

 K氏は、以下の使い方を考えています。
  ・毎週土曜日に簡易積算降雨計内に溜まった雨量を確認する。
  ・5mm未満/週の場合は、2回/週の灌水を行なう。
  ・5mm~10mm/週の場合は、1回/週の灌水を行なう。

 この方法で成果がどこまで出るかはわかりませんが、「タンカンは露地で灌水をしなくても大丈夫」、「毎年の降水量を感覚と記憶でしか管理していなかった」と云う従来の状態よりは、きめ細やかな栽培管理ができそうです。
 また、積算降雨量は農薬散布後の残効期間にも影響することが知られています。病害虫防除をより科学的に行なう観点からも簡易積算降雨計の設置はお薦めです。




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SNS(Facebook & Twitter) のパパイア記事 -2013~2016年-

2017年03月20日 | パパイア

 「ねこがため」の名前でSNS(Facebook & Twitter)にも熱帯果樹の小ネタを投稿しています。
 小ネタですのでブログ記事ほどのボリュームはありませんが、「SNSって使わない」と云う方々も多くいらっしゃると思いますので、品目毎にまとめ記事を作成します。

2013年1月9日
台湾の高雄農業改良場でパパイア新品種「高雄9号(日光)」が育成されました。台湾におけるパパイアの主要品種は「台農2号」ですが、「高雄9号(日光)」はそれより甘く、果実が小ぶり(600-750g)で豊産性とのこと。要チェックです。
http://kdais.coa.gov.tw/view.php?catid=4894  ←リンク切れ(2017.01/21確認)

2013年11月15日
2013年11月。沖縄県南城市で収穫された大きなパパイア(品種は不明)です。果実重量は、4,580gありました。これより重いパパイアの情報をお待ちしています。




2013年11月26日
雑誌「果実日本」2013年12月号掲載記事、深町浩著「沖縄県におけるパパイヤ「石垣珊瑚」の最新動向」が面白い。最近のパパイア生産動向や品種「石垣珊瑚」の特性等が詳しく書かれています。
http://www.nichienren.or.jp/home/kjnh/kjnh68.htm

2016年10月22日
最近、沖縄県中央卸売市場では青パパイア(野菜用)はセリ販売時にサンプル(1果)が縦断されています。 これは果肉色を確認するためで、青パパイアの実儒者が白い果肉を好むためです。果肉が黄色または赤色っぽくなっているものは人気がありません。
青パパイアは品種により果肉の色づきが異なる様です。
「台農2号」や「オキテング」は白っぽく、「紅妃(レッドレディ)」や「石垣珊瑚」は赤っぽくなりがち、とのこと。
「未熟なら野菜用、熟せば果実用」、「少し色付いても使える」と考えがちですが、有利販売する際は異なる価値観がある様です。











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謹賀新年2017

2017年01月01日 | ブログ運営

 新年あけましておめでとうございます。

 毎年の様に元旦は昨年の目標達成状況および今年の目標設定を行います。
 まず昨年の本ブログにおける目標は「ブログの12回/年程度の更新+80回ツイート/年」でした。
 その実績は、

○2016年の「熱帯果樹写真館」更新回数
 ・ブログ更新・・・・・・・・・・・・・・・・・9回
 ・ツイート数・・・・・・・・・・・・・・・・88回(Twitter)、103回(Facebook)

と2年連続のブログ更新回数の目標達成はできませんでした。
 一方、「80回ツイート/年」は何とか達成できました。
 これも皆様のご愛顧があっての結果です。ありがとうございました。

 また「日本熱帯果樹協会」を通して熱帯果樹愛好家の方々と従来以上の交流ができた年だったと思います。

 今年も当ブログや Facebook やtwitter で情報を発信しつつ、熱帯果樹愛好家の方々と交流を深めていきたいと思います。
 2017年の目標は「ブログの更新12回/年+90回ツイート/年」としたいと思います。
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良き道具にこそ匠あれ06  - 自作のグアバ収穫器 -

2016年09月04日 | グアバ

 「樹の高いところに着果したグアバの果実が穫りたい」と知人から相談を受けました。
 知人は高齢化のため、脚立に登って収穫作業するのが怖いとのこと。
 私が脚立に登って収穫しても良いのですが、果実の熟度にはバラツキがありました。
 知人は「毎日少しずつ完熟果を収穫したい」と希望していました。

 私は農場内を見渡し、その場にあった材料で「果実収穫器」を自作することにしました。
 私が作った「果実収穫器」の元ネタは、Facebook で見かけた動画ですが、そのときは記憶が頼りです。

○材料
 ・外径114mm VU(硬質ポリ塩化ビニル)管 18cm
 ・外径 22mm VP(硬質ポリ塩化ビニル)管 130cm
 ・ハンガー(金属製) 1本
 ・ネジ 2本
 ・肥料袋の切れ端
 ・ビニールテープ

○使用した道具
 ・油性マジック
 ・糸のこ(スパイラルソー)
 ・電動ドリル(インパクトドライバー)
 ・φ4mmドリル刃
 ・ペンチ
 ・やすり

○作り方
 1)VU管に切り取り線を油性マジックで描く。



 2)切り取り線に沿って糸のこ(スパイラルソー)で切る。



 3)VU管に直径4mmの穴を4箇所開ける。



 4)ハンガーを切り、VU管に取り付ける。



 5)VU管にVP管をネジで取り付ける。



 6)VU管の底になる箇所に肥料袋の切れ端を巻き付け、ビニールテープで固定する。



 7)糸のこで切った切り口をやすりで整える。

 作成に要した時間は、約40分です。
 完成品がこちら。







○使い方
 1)グアバ果実がVU管の切り口に入る様に操作する。



 2)果実がVU管内に入ったら、下に引きハンガー部分で果実のヘタに圧力をかける。



 3)(熟した果実であれば)果実がポトっと落ちる。



 4)手元に引き戻して果実を取り出す。




 後日談。

 「果実収穫器」作成の1週間後に知人を訪ねると、高所に着果していた果実はほぼ収穫を終えていました。
 知人からは「これイイよー。すぐりむん(優れもの)」との評価をいただきました。

 ただし、高木は収穫以外の樹管理も大変なもの。
 現在、このグアバ樹は、立ち枝に取り木をかけて、低木化(樹形改造)を行っています。



 この記事は、雑誌「現代農業」2017年9月号;p.200-201に掲載されました(2017.09.06.追記)。







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