先日、ブログ「新くだもの日記」の管理人(buabuahan)さんと初めてお会いしました。
buabuahan さんが、タイのチャンタブリから招待した研究員のT氏(専門は、マンゴスチンの生理学的研究)と共に、沖縄本島の熱帯果樹を視察している途中での出会いでした。
以前から彼女のブログを拝読していた私は、彼女と会えたことを嬉しく思いました。
加えて、滅多にお話ができないマンゴスチンの専門家とお会いできたので、失礼ではありましたが質問責めにさせていただきました。
今回は、そのときに得た情報の備忘録です。
以下、Q&A方式で記載します。
Q1:マンゴスチンの開花条件は何ですか?
A1:
原則として、乾季の乾燥ストレスである。
ただし、タイ国内でも地域により開花期が異なる。
ホルモン剤等の植物調整剤は、通常は使用しない。
Q2:タイ国内における開花期および収穫期のズレとは、どの様なものですか?
A2:
タイ東部のチャンタブリでは、11~12月に開花し、3~4月に果実肥大し、4~5月に収穫する。チャンタブリでは、5月~雨季が始まる。
4~6月に乾季が訪れるタイ南部では、2~3月に開花し、7~8月に収穫されるものと、8~9月に開花し、12月に収穫されるものがある。
Q3:マンゴスチンの耐寒温度(低温障害を受けた事例等)について教えてください。
A3:
タイでは原則として低温障害を受ける様な地域では栽培されていない。
2009年12月~2010年1月にかけて、タイ東部を寒波が襲い、最低気温で14℃が1週間続いた。
その間、花芽分化は停止したが、それ以上の障害を受けることはなかった。
Q4:マンゴスチンの繁殖方法を教えてください。
A4:
タイでは、通常マンゴスチンは実生で繁殖する。
実生から結実までは約7年間。
接木については色々と試したが、共台が一番活着率が良く、実生から結実まで3~4年と育苗期間を短縮できる。
Q5:単為生殖を行うマンゴスチンは、実生繁殖で親のクローンが得られると思います。しかし、マンゴスチンには形態的変異等があると聞きますが、遺伝的多様性についてはどの様にお考えですか?
A5:
タイ国内で様々な形質のマンゴスチンを収集し、DNAの変異を分析したことがあるが、著しい変異は見られなかった。
※別の研究者(Y氏)からの補足情報
オーストラリアでも同様の研究が行われた。
結果は、DNAの変異は認められるものの、品種レベルでの変異はなかった。
Q6:マンゴスチンの流通上の問題点および対策は、どの様に行われていますか?
A6:
収穫(輸送)後に問題となる果実の生理障害は2つある。
1つは、果皮から生じたヤニが果肉に達して変色し、果肉が苦くなるもの。
もう1つは「ガラス果」と呼ばれるもので、果肉が半透明になり硬くなる障害である。
マンゴスチンの鮮度保持は大きな課題であるが、最近では15℃の状態でPLPE(特殊素材フィルム)とガスを用いて保管することで、鮮度が良い状態で30日間の保管に成功した、との話題がある。
チャンタブリ園芸研究所とカセサート大学では、1-MCPを用いた鮮度保持試験を行っている。
マンゴスチンについては、以上です。
視察中の貴重な時間であったにも関わらず、丁寧に情報を教えてくださったT氏ならびに通訳をしてくださったbuabuahan さんに、改めてお礼を申し上げます。