箱根ターンパイク(はこねターンパイク)は、神奈川県小田原市から箱根町を経由し、同県湯河原町に至る延長15.782kmの観光有料道路(一般自動車道)で、箱根ターンパイク株式会社(HTPL)が保有・運営する私道である。因みにターンパイク(turnpike)とは有料(高速)道路、トール-ロードの事を意味する。
概要
大観山線(13.782km)と十国線(1.700km)の2路線からなる。カーブ・勾配とも比較的緩やかであるが、下りの場合はエンジンブレーキを使用しないとブレーキが利かなくなるおそれがある。そのため、エンジンブレーキの使用を促す注意書きと、緊急時に激突して停止するための砂山(緊急避難所)がある。
大観山線の終点付近にはターンパイク・ビューラウンジ(ドライブイン大観山)があり、ここから見る芦ノ湖や富士山の景色は素晴しい。
2006年4月1日現在、普通車の通行料金は大観山線区間が700円、十国線区間が150円であり、全線では850円となる(1km単価53.8円)。両区間は独立しているので、料金は別々に支払う必要がある。なお、料金所付近ではカラーコーンでUターンができないため、利用する意図が無い場合は注意が必要である。また、2007年2月ごろから次世代型料金収受システム(IBAサービス)を導入する予定である。
営業時間は、大観山線が午前5時30分~午後10時、十国線が平日・午前7時~午後7時30分、午後6時~午後9時30分である。夜間は完全封鎖され、通行することができない。
2002年の時点の報告では1日平均通行台数3,196台、営業収支率は98.8%であり支出が収入を微妙に上回る、いわゆる赤字事業路線である。
運営主体
もともと東急グループの開発計画に伴って建設されたものであり、長年、東急グループの東急ターンパイクが保有・運営していた。しかし、赤字が続いたこともあり、2004年3月にオーストラリアの投資会社・マッコリー銀行グループが主体となるインフラストラクチャー・ファンドが設立した箱根ターンパイク株式会社に営業譲渡されて、運営が移管している。
マッコーリー等の買収は、年金基金など内外の長期資産運用を考えている投資家から資金を募り、箱根ターンパイクからの通行料収入や直営ドライブインからの収益を分配する目的がある。インフラとして既に完成しているため、新たに建設するのに比べすぐに収益を分配できる利点がある。
諸外国ではこのようなインフラ(有料道路だけでなく、鉄道・発電所・港湾施設など多岐に渡る)を買収し、ファンドとして組成し資産運用に供する例が多くなっているが、日本では初のケースである。
箱根新道との競争
カーブ、勾配とも比較的緩やかで快適なドライブを提供する民間道路であるが、ほぼ同じ起終点(芦ノ湖付近⇔箱根湯本早川付近)区間を並走し競合する有料道路「箱根新道」(中日本高速道路株式会社運営、延長13.8km、普通車250円、km単価18.1円)と比較して非常に高額な通行料金である。そのため、費用対到達時間効果では箱根ターンパイク側には歩がなく、競争にならない。
そこで、箱根ターンパイク側は快適さを重視する観光客へのアピールと、箱根新道および新道までの取付道路、更には真鶴道路が混雑しているときの「更なる迂回路(バイパスのバイパス機能)」としての価値で勝負している。実際にレジャーシーズンの休日等は前述2道路は有料でありながら、慢性的な交通飽和で速達性の確保を提供できない状態が多々発生する。そこで、主に金土休前日の下り(箱根山登り)と日祝の上り(山下り)の利用客獲得のため、電光掲示看板サインや、手製ミニ標識で誘導するなど自社路線への誘導活動を展開している。
沿革
1954年(昭和29年)3月5日 - 東京急行電鉄(東急)が道路運送法に基づき渋谷~江ノ島間の一般自動車道(有料道路)「東急ターンパイク」を免許申請
1955年(昭和30年)2月16日 - 吉浜開発株式会社設立
1955年(昭和30年)8月23日 - 東京急行電鉄が小田原~箱根間の一般自動車道(有料道路)「箱根ターンパイク」を免許申請
1957年(昭和32年)8月26日 - 東京急行電鉄が藤沢~小田原間の一般自動車道(有料道路)「湘南ターンパイク」を免許申請
1957年(昭和32年)11月5日 - 吉浜開発株式会社が東急の傘下に入る
1960年(昭和35年)5月12日 - 「箱根ターンパイク」の事業免許を取得。「東急ターンパイク」は「第三京浜道路」と、「湘南ターンパイク」は「西湘バイパス」と競合したため認可されなかった。
1961年(昭和36年)5月10日 - 工事施行認可申請
1961年(昭和36年)10月19日 - 工事施行認可
1962年(昭和37年)10月19日 - 起工式
1963年(昭和38年)5月10日 - 吉浜開発株式会社が箱根ターンパイク株式会社に商号変更。東京急行電鉄から箱根ターンパイクの建設を引き継ぐ。
1965年(昭和40年)7月23日 - 大観山線が開通
1966年(昭和41年)12月1日 - 箱根ターンパイク株式会社が東急ターンパイク株式会社に商号変更
1967年(昭和42年)10月1日 - 十国線開通
1972年(昭和47年)3月31日 - 東急ターンパイク株式会社の経営悪化に伴い東京急行電鉄が自動車道と東急ターンパイク株式会社が所有する土地を62億8853万円で買収
1972年(昭和47年)4月1日 - 東京急行電鉄が東急ターンパイク株式会社に箱根ターンパイクの営業を委託
2004年(平成16年)3月1日 - 東京急行電鉄、経営を箱根ターンパイク株式会社へ約11億円で譲渡
箱根ターンパイク株式会社は、オーストラリアの投資銀行マッコーリー銀行グループと、日本政策投資銀行が出資するジャパンインフラストラクチャーグループ有限会社の出資を受けている。
2004年(平成16年)9月 - 東急ターンパイク株式会社解散
2005年(平成17年)7月30日 - 東京急行電鉄からの譲渡後、改装工事をしていたドライブイン大観山にターンパイク・ビューラウンジが新装オープンした。
箱根ターンパイク株式会社と東洋ゴム工業はネーミングライツに関して合意し、2007年3月1日から「箱根ターンパイク」から「トーヨータイヤターンパイク」に名称が変更されることが決定した。
命名権(めいめいけん)は、人間や事物、施設、キャラクターなどに対して名称をつけることのできる権利である。1990年代後半以降、スポーツ、文化施設等の名称に企業名を付けることがビジネスとして確立した。また、科学の世界においても、新発見の元素や天体に対して、発見者が命名する権利を得る慣習がある。生物の学名は、記載者が命名権をもつ。
日本では、このうち特に施設命名権をネーミングライツ(Naming rights)と呼ぶことが多い。
人名の命名権
世界の多くの地域では、親または親から委託を受けた者が新生児を命名している。
日本でも親が子を命名するのが一般的であるが、その命名権の保有・行使について、命名権は親権に含まれるとする意見がある一方、本人固有の権利であるが親が代行しているとする意見など、議論は分かれており法学的な定説はない。法務行政上は、命名権の濫用と認められる場合、社会通念上不適当と認められる場合には、戸籍の届け出が受理されないことがある(例:悪魔ちゃん命名騒動)。
スポーツ、文化分野での命名権
従来から、スポーツ大会などにスポンサーの名称を冠する形での命名権ビジネスは存在していたが、1990年代後半頃から、アメリカにおいてスポーツ施設等の名称に企業名を付けるビジネスがで広がった。まず、メジャーリーグでクラシカルな新球場が多く建設されたとき、その名称に企業名が命名され始め、高い費用対効果が認められたことから、他のスポーツ種目やヨーロッパのスポーツ界へと広がっていった。日本においては、2000年代前半から赤字の公共施設の管理運営費を埋め合わせる手段のひとつとして導入され、その範囲はスポーツ施設や文化施設、路面電車の停留所などに及んでいる。
施設等の管理者にとっては、命名権を販売することにより収入が得られるメリットがあり、命名権を購入する企業にとっては、スポーツ中継やニュースなどで命名した名称が露出する機会を得られ、宣伝効果が見込まれる。
なお、サッカーに関しては国際サッカー連盟(FIFA)の取り決めで、FIFA主催国際公式戦(ワールドカップ予選も含む)およびパブリックビューイングではFIFAの公認スポンサー企業・団体以外はスタジアムの看板露出や命名権によるスタジアムの改名をすることが禁じられている。陸上競技に関しても、国際陸上競技連盟(IAAF)が同様の規定を設けている。この場合、命名権を導入している施設については施設名に正式名称を使用することが義務付けられる。正式名称そのものが命名権によるものになっているケース等では、別称(例:FIFAワールドカップスタジアム○○(都市名))を付けて対応することとなる。
事例
世界
マカフィー・コロシアム - 旧称アラメダ・カウンティ・コロシアム→ネットワークアソシエイツ・コロシアム。オークランド・アスレチックス(MLB)とオークランド・レイダース(w:Oakland Raiders)(NFL)の本拠地。マカフィーはIT企業。
セーフコ・フィールド - シアトル・マリナーズ(MLB)の本拠地。「セーフコ(w:Safeco_Corporation)」は保険会社の名称。
バンク・オブ・アメリカ・スタジアム(2003年-) - 旧称エリクソン・スタジアム(1996年–2003年)。カロライナ・パンサーズ(NFL)の本拠地。バンク・オブ・アメリカはアメリカの大手銀行。またエリクソンはスウェーデンに本社を置く世界的な通信機器会社。
トヨタセンター - ヒューストン・ロケッツ(NBA)の本拠地。トヨタ自動車の米国法人が命名権を獲得した。
AOLアレナ - ドイツ・ブンデスリーガ・ハンブルガーSVの本拠地。AOLは世界的な通信会社。なお、FIFAの"クリーンスタジアム"規約に伴い、2006 FIFAワールドカップ期間中は"FIFAワールドカップスタジアム・ハンブルク"という名称が使用された。
アリアンツ・アレナ - ブンデスリーガに属するバイエルン・ミュンヘンとTSV1860ミュンヘンの本拠地。アリアンツ(w:Allianz)は世界的な保険会社。AOLアレナと同様、FIFAの"クリーンスタジアム"規約に伴い、2006 FIFAワールドカップ期間中は"FIFAワールドカップスタジアム・ミュンヘン"という名称が使用された。
リコー・アリーナ(2005年 - ) - フットボールリーグ・コヴェントリー・シティの本拠地。
ヴェルティンス・アレナ(2005年 - ) - ドイツ・ブンデスリーガ・シャルケ04の本拠地。ヴェルティンスはドイツのビールメーカー。
トヨタ・アレナ - チェコ・プラハにあるスタジアム。
京セラアリーナ - ブラジル・クリチバにあるスタジアム。
フィリップススタディオン
ジグナルイドゥナパルク
ラインエネルギースタディオン
「箱根ターンパイク」が「私道」だったので、「ネーミングライツ」を行使できた。もちろん、「公道」ではまだ認められていない。
「箱根」という二文字が消えるのは寂しい限り。