日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 丹波守吉道 Yoshimichi Wakizashi

2016-11-05 | 脇差
脇差 丹波守吉道(大坂二代)


脇差 丹波守吉道

 この一門の作はたびたび紹介しているように、比較的作例が多い。理由はもちろん、当時人気を誇った流派であるからだ。刃文に独創的な構成を展開し、後の多くの刀工に刃文構成の美意識を植え付けた。初代吉道の活躍の後に大坂の助廣が濤瀾乱を生み出し、真改が霧の起ち込めるような刃文を生み出した。さて写真の吉道は、ちょっと時代が下って大坂に移住して栄えた大坂丹波と呼ばれる吉道の二代目。刃文は、相州伝を基礎にゆったりとした湾れの中に刀身に平行な沸や匂いの筋が流れるように構成されたもので、川の流れを思わせる出来。おおらかで、妙趣に溢れているのだが、刀剣数奇者の先達が言い出した「なんだ簾刃か」という見下した評価がある。「なんだ…」はないだろう、失礼な。個性的な焼刃構成、良く詰んだ地鉄鍛えという時代の特色を良く示し、高い技術が備わって斬れ味も鋭いにもかかわらず、馬鹿なことを言い出した先達の評価に惑わされている方々が意外にも多いことに気づく。この刃文は、決して、誰が言い出したかもわからない「簾」を意識して焼いたものでないことは、我が国の絵画の歴史を眺めれば容易に気づくはず。この刃文は、相州伝の焼刃構成を基礎に、川の流れを表現したものだろう。丹波守吉道が「この刃文は簾を表現したものである」と明示した文書があるならそれに従うが・・・。