日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 長舩清光 Kiyomitsu Katana

2017-05-13 | 
刀 長舩清光

 
刀 長舩清光天文十二年

 元幅だけでなく先幅も広く、重ね厚く、比較的がっしりとした、戦国時代末期の造り込み。地鉄はこの一門としては小板目状に良く詰んで、一見無地風にも感じられる極上の肌合い。その中にかすかに板目が交じっている。刃文は焼幅の広い直刃に湾れを交えたこの工らしい構成。帽子はもちろん激しく乱れ、一枚風に焼も深い。小沸の焼刃は、鼠足とも呼ばれるようなごくごく短い足が入り、刃中には葉が断続、沸ほつれから連続する砂流しと沸筋が掛かる。刃境はこのように乱れが交じり、単純な直刃とならないのが清光。備前刀の刃文は多彩である。
  

短刀 長舩春光 Harumitsu Tanto

2017-05-12 | 短刀
短刀 長舩春光


短刀 長舩春光永禄十年

 九寸六分強。わずかに先反りの付いた短刀。地鉄は板目肌が強く現れて肌立ち、地沸が付いて焼が強く施されたことが判る。春光は帽子の返りを長く焼き下げるを特徴としており、この短刀においても、写真では分かり難いのだがその様子が窺える。刃文は互の目が地に突き入るような出入りの態で、小沸に匂を伴い明るく、足はさほど密に入らないながら、互の目に湾れ、物打辺りが穏やかになって先乱れて返るなど変化に富んだ構成とされている。

刀 春光 Harumitsu Katana

2017-05-11 | その他
刀 春光


刀 春光天文二十三年

十郎左衛門尉春光の湾れ調子の出来。先に紹介したように、この工は作品が少なく、残されているのはいずれも優れている。この刀も、銘の上が消されていることから、注文者の名前が刻されていたものと思われる。板目交じりの小板目肌が良く詰んでしっとりとした感がある。地鉄も肌立つ風がなく、上出来だ。刃文は直刃調子ながら湾れが交じり、刃境ほつれ掛かり、小足が盛んに入る。帽子は浅く乱れ込んで先は乱れずに丸く返り、棟焼となる。春光にはこのような鋒から物打辺りまでが棟焼とされた例が多い。

刀 春光 Harumitsu Katana

2017-05-10 | 
刀 春光


刀 春光元亀四年

 十郎左衛門尉春光という刀工は興味深い存在である。祐定や清光の名前に隠れてそれほど作品が多く残されているわけではないのだが、存在する作はいずれも出来が良い。注文作も多く存在する。地鉄が綺麗で強みがあり、戦国時代末期ながら映りが立ち、刃文は帽子の返りが深く先端ちかくに棟焼が施された作が多いのも特徴。この刀も、地鉄は良く詰んだ小板目鍛えで映りが立ち、刃文は逆がかる互の目に湾れ交じり。


短刀 長舩永光 Nagamitsu Tanto

2017-05-09 | 短刀
短刀 長舩永光


短刀 長舩永光享禄五年

 質を異にする鋼を交ぜ込んで強度を高めており、これによって肌の色合いが微妙に異なる結果となり、鍛え肌が強く鮮明に浮かび上がっている。皆焼ではないが棟焼を強く施しているところから焼き入れの温度管理も難しいところであろう、地の風合いは、焼き入れの調子によってこのように強くなるものだと改めて得心される。刃文は焼が深いために互の目ながらその互の目が良く判らない。刃中に足が入っているためにようやく互の目と判断できる。刃境はほつれ掛かり、これが地中では地景となっている。焼の深い帽子は先がほつれて火炎風になる。

短刀 長舩則光 Norimitsu Tanto

2017-05-08 | 短刀
短刀 長舩則光


短刀 長舩則光永享十二年

則光は室町時代中期の長舩鍛冶を代表する一人。この短刀は、彫物を含めて景光や兼光を再現したもの。特に湾れ調の腰の開いた浅い互の目は兼光を、片落ち風のところは景光を想わせる。地鉄は杢目交じりの板目肌で、映りは景光風に凄みがある。室町時代には、このように古作を手本にその再現を試みた作が間々みられる。これも復古意識によるものであろうか。

太刀 康光 Yasumitsu Tachi

2017-05-06 | 太刀
太刀 康光


太刀 康光

 腰開き互の目も得意だが、直刃出来に素晴らしい作品を遺している康光は、応永備前の代表工。先の南北朝後期の太刀からこのような太刀へと連続している。南北朝時代中期の大太刀に比較して小振りになるが、腰反りが付いており、姿格好は鎌倉期に戻ったようにも感じられる。だが肉が厚い。この姿格好が、南北朝時代末期から室町初期の、鎌倉時代の古作に倣った造り込みである。この時期にも復古意識が高まっているのである。大太刀から小太刀へと進化し、次第に片手打ちの打刀へと進化している。地鉄は応永杢と呼ばれる杢目交じりの板目肌が躍動的。刃文は直刃基調にごく浅く湾れている。頗る美しい出来である。映りは、刃文に応じた直映り。

刀 倫光 Tomomitsu Katana

2017-05-02 | 
刀 倫光


刀 倫光

 これも大磨上。二尺三寸強の刀。元先の身幅が広く重ねもしっかりとしている。倫光には三尺の大太刀が現存している。三尺の焼刃を均一に焼くことの難しさは、想像もつかない。これも地鉄は良く詰んだ小板目肌と蝉の羽状の板目が交じって映りの立つ、特徴的な肌合い。刃文は湾れを主調に小模様の互の目が交じる。ほとんど湾れか、浅くしかも腰の開いた互の目で、湾れとも互の目とも判じ得ないような調子。兼光にも似ているところがある。帽子は、先端が尖って返っているところが面白い。

脇差 倫光 Tomomitsu Wakizashi

2017-05-01 | 脇差
脇差 倫光


脇差 倫光

 南北朝中期、大太刀の多い長舩倫光。その磨り上げて脇差とされたもの。先幅広く原姿が想像されよう。地鉄は小板目状に詰んでいるが、板目肌が交じっている。映りは写真では明瞭ではないが焼刃に迫るように乱れて現れている。刃文は互の目や丁子が顕著ではなく、浅い湾れが互の目調子になったような感じ。下半が互の目がやや強まっている。帽子はごく浅い湾れ調子で先が掃き掛けて丸く返る。