いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

マウリッツハイス美術館展 その3 笑顔

2012年08月05日 | お絵かき

 私が今回観た絵で一番印象的だったのがこの作品、フランス・ハルス作の『笑う少年』だった。歯をむき出しにしてはち切れそうな笑いを顔中に広げている少年。幸せそのものといった感じだ。底抜けに明るく表情が豊かなのに驚いてしまった。ちょっと雑な感じのタッチも魅力的だ。どちらにしても当時の絵に対して私が持っていたイメージからあまりにもかけ離れているではないか。

 実際当時はこのような笑い顔を肖像画に描かせるとは見苦しいことだと思われていた。そしてこの絵も正真正銘の肖像画ではなく、ハルスが無邪気な笑いと愉快な少年といった性格を絵で記録しようとして描いたとのことだった。

 ハルスはほかにも笑顔の作品を描いた。そしてその後17世紀のオランダ絵画では笑顔の絵がたくさん描かれた。残念ながら画像が見つからなかったのだが満面笑みを浮かべながらヴァイオリンを持っている女性を描いた『ヴァイオリン弾き』(ヘリット・ファン・ホントホルスト)の絵もあった。あまりにものびやかな笑顔に圧倒されながらも強く心惹かれた。

 このように絵に笑いの表現が採り入れられた当時のオランダはまさに黄金時代であり、絵画の注文も王侯貴族や教会から中間層へと広がったとのことだった。そして描かれる対象も、それまで多かった神話や物語から、風俗画、風景画、静物画、そしてくつろいだ雰囲気の肖像画が望まれるようになったとのことだった。

 それにしてもこの少年の笑顔はすばらしい。そしてこのような描写を実現したハルスもすばらしい。17世紀前半のオランダの子供たちもこんなに愛らしかったんだなあと。

 『真珠の耳飾りの少女』目当てでもいいですが、親しみを感じられそうな風景画、肖像画にも出会える魅力的な展覧会だと思いました。会期は東京都美術館で9月17日(月・祝)まで、神戸市立博物館で9月29日(土)~翌年1月6日(日)です。


マウリッツハイス美術館展 その2 花や果実の絵

2012年08月05日 | お絵かき

 昨日観に行ったマウリッツハイス美術館展には、写実的な花や果物の絵もあった。例えば共同制作とされるリンク先のヤン・ブリューゲル(父)およびヘンドリック・ファン・バーレン作「四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪」。まさに豊穣を象徴した華やかな絵だった。そして野菜や果物、花、動物の描かれ方は非常に写実的なのだった。写真で撮影したのではないかと思うぐらい綿密に描かれたこれらの絵を見ると、画家たちの非常に高度な技術にため息がでそうになる。実際、当時のオランダの画家たちは、現実を絵の具に置き換え実物と錯覚させるために最大限の努力をしたということだ。しかし、それらの絵は、本当は、見た通りではない。神話の世界を端的に表すためのものだったり、理想の世界を表すために季節が違う花を満開にして一度に持ってきたりしている。つまり、本当はリアルな世界ではなく、観た人が理想とする世界を、絵の中で描き出しているというわけだ。だから、しおれている花、腐っている果物は一切ない。しかし、そういう不自然さがあったとしても、描かれている花の美しいこと、野菜や果物の、おいしそうなこと。


函館の紫陽花 季節外れでしょうか?

2012年08月05日 | お絵かき

 函館では7月の中旬にも紫陽花が咲いていました。このように満開でした。花が咲く時期が遅いのですね。今はもう咲いていないかもしれませんが、涼しさは味わっていただけるかもしれません。

 昨日は東京都美術館にオランダのマウリッツハイス美術館展に行ってきました。フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』を40分ぐらいならんでみました。照明もあるのかもしれませんが、絵全体から光が放たれていました。他の絵もすばらしかったのですが、また感想は後ほど書けたらと思います。

 フェルメールの現存する絵は非常に少ないし、大好きな画家なので、来日作品はできたら全部見たいという思いがあります。画集を観て非常に心惹かれ、神戸で最初に見た『絵画芸術』でノックアウトされ、その時は何度も何度も絵の周りを歩き回っていました。警告を放ったりもしていて結構毒のある絵も多いのですが、奥深い感じがして観ていて楽しいのですね。あと、無駄がなくて美しいし、大胆な構図の取り方も魅力的だと思います。

 しかしです。広島にいたときは絶対に観に行くという思いが強かったのですが、横浜に来てからは、そこまで頑張って観に行くという欲望がなくなっているような気がします。実は、観に行っている人があまりにもたくさんいるので、人ごみにくたびれるというのと、観ること自体に新鮮味を感じなくなっているような気がしたのもあります。ダ・ヴィンチ、セザンヌも来日したら絶対に観に行こうと思っていたのですが見逃しました。しかも最近は逃してもいいや、という状態になっています。音楽も含め、イベントがたくさんあるので、なにかに行くとしたらどれかに絞るしかないというのもあります。特に音楽は一期一会の面が強いのでついつい優先します。なので絵に対しては優先順位が下がっていると思います。ただ、自分自身そのようになっているのはちょっとさみしい気もしています。しかし現実的にぜんぶ両立というのは無理なので。。。やっぱり無理なく、マイペースで楽しむのが一番でしょうね。

 紫陽花から脱線してしまいましたが。。。絵は描き続けたいです。


海の絵

2012年05月20日 | お絵かき

 一昨日でかけたブリヂストン美術館で、印象に残った絵のなかに海の絵がある。自分が海を描くのが好きだから、一層身近に感じられたのだと思う。その、海だが、昔はそこで糧を得る生活者以外の人たちにとっては、意外になじみの薄い場所だったという。そして西洋においても海の絵は長い間、神話や物語に付随する、決まりきった形式でしか表現されていなかったが、独自のジャンルとして成立するのは、17世紀のオランダ、18世紀のイギリスという大航海時代にであった。そして海の絵が本格的に描かれるようになったのは、西洋でも日本でも、19~20世紀にレジャーや旅が盛んになってからの話だそうだ。海岸や海はそれぞれの地方によって地形も異なり、それぞれの自然に合わせた表情を出してくれる。例えば瀬戸内海のおだやかな海を見慣れていた私は、日本海や太平洋の波が激しく防波堤や岩にぶつかる様子を見て、恐ろしさを感じながらもすっかり見入ってしまっていた。なんと美しいのだろう、自然は偉大なのだろう、と思った。しかし瀬戸内海の鏡のような海面と小さな島々の美しさも本当に素晴らしい。一続きにつながっている海でありながら、周りの気候や地形によってあんなに表情が変わるのだ。本当に面白い。

 クロード・モネと青木繁は、海岸に激しく打ち寄せる波と海面から突き出ている岩の飛沫を波の音が聴こえてきそうなほど生き生きと描いている。描かれた場所も遠く離れていながら、ものすごく共通点が多かった。また、モネの黄昏・ヴェネツィアは夕日に染まり輝く空と教会、そして動く光を、水面に美しく写し取っている。

 そして私が一番海の絵で印象に残った画家が藤島武二氏だ。この展覧会までまったく知らなかったし、人物画で有名な画家らしいが、海の特徴を端的に捉えた非常に美しい絵をたくさん描いていた。形もだが色のとらえかたやセンスが素晴らしくて心打たれた。

 

藤島武二氏の絵です。左は「淡路島遠望」1929年の作で、現在は明石海峡大橋がかけられているところです。右は「東海旭光」です。「屋島よりの遠望」「波(大洗)」も素晴らしい絵でした。 (元来画集が好きな私。重いしかさばるので、関東に来てからは買っていなかったのですが、この展覧会で久しぶりに買ってしまいました。)

 そして検索をかけているうちに発見したのは、ブリヂストン美術館、2年ぐらい前に「SEA」こと海の特集をやっていたんですね。海の特集、またやってくれないかな~。やってくれたら駆けつけますよ。

 ちなみにブリヂストン美術館、この「あなたに見せたい絵があります」は6月24日 (日)までです。次回7月14日からは「ドビュッシー 音楽と美術ー印象派と象徴派」という興味深いテーマでの展覧会が開かれます。

 

 実は昨日練習会でした。そして今日ちゃんと練習しようと思った矢先に現実逃避を?いや、この記事は一昨日から書こうと思っていました。「自画像」「モデル」「レジャー」「物語」「山」「川」「静物」 というように、同じテーマごとにまとめて展示されていたこの展覧会では、その対象が描かれるようになった歴史もつかむことができて、とても面白かったです!