下水管の老朽化

2013年10月28日 | 防災と琵琶湖

 

日本のインフラの老朽化が、とりわけ、下水道管の老
朽化が
問題となっている。下図のように、日本の下水
道普及率は約72%(2008年3月末現在)だが、人口5
万人未満の中小都市では40%に達しておらず、整備の
中心が中小都市へ移りつつある。そして、人口密度が
低い中小都市の下水管は、大都市より小口径のものが
多く距離も長くな
る一方で近年、全国で下水管損傷に
よる道路の陥没事故が多発し、国土交通省によると、
2007年
には約4,400件に及んでいる。これは、コンクリ
ート製の下水管が、敷設後30年程度を経て腐食
したた
めである。同省によると緊急点検の必要がある敷設し
て30年以上経過した下水管は、全
国で延べ5,015キロ
メートルもある。下水管の交換には新設の数倍の費用
がかかるとされ、こう
したことから近年、腐食せず、
地震にも強い塩化ビニール管の利用が増えているとい
う。

 

 

 

   

生活排水が分解されて生成する気体には、硫化水素、
アンモニア、二酸化炭素およびメタンなどがある
。こ
れらの気体の中で、管路施設の腐食・劣化に関して問
題となるのは硫化水素だけだ。
硫化水素は、生活排水
の収集および処理システムを考える上で、最もよく知
られた代表的な臭気ガス。
臭いは腐った卵のようで、
毒性が極めて強く、鉄や銅などの金属に対して腐食性
を持っている。
硫化水素は、酸化を受けて硫酸に変化
し、金属やコンクリートなどを腐食させる。
 

これらのことを踏まえ、政府の政策の基本的考え方が下
図のように示されている。 



 


一般的なアセットマネジメントの概念を下水道事業に
あてはめると、資金調達、施設の現在価値等に基づく
会計的手法、処理場の上部利用等の施設活用等、下水
道事業の保有する全ての資産、組織・人的資源が対象
となる。アセットマネジメントを実施するためには、
まずは膨大な施設(ストック)が現在どのような状態
にあり、今後どのように変化し、どの時点でどのよう
な管理を実施すべきか等について予め把握・検討して
おくことが必要である。本報告書は、将来アセットマ
ネジメントに発展させていくための重要な土台となる
「膨大な施
設の状況の把握」「中長期的な施設状態の
予測」「下水道施設の計画的かつ効率的な管理」(ス
トックマネジメント)を目的としていることから、そ
の範囲は下図の赤枠に示す範囲とする。ストックマネ
ジメントでは、新規整備・維持管理・改築を一体的に
捉えて、事業の平準化とライフサイクルコスト(LCC)
の最小化を実現することを目標とするという考え方で
ある。

 


さて、具体的な、腐食物質と考えられている硫化物の
制御法として、(1)空気(酸素)注入
-曝気による
下水の嫌気化紡止(2)汚水管路内の薬品の注入(3)
換気-硫化水素の排除・乾燥(5)
管絡の清掃-管内
堆積物の排除、洗浄などがある。一方、こういった事
故を契機に設計上の反省点や課題は列記すると以下の
点である。

(1) 終末処理場は、用地の都合がつく限り、処理区域
 に近い方がよい。
(2) 汚水管の維持管理の容易なルートを選定すること。
(3) 距離の長いポンプ圧送の場合、汚水管路で段差の
 ある場所は腐食しやすいので耐蝕製の管 種の採用
 を検討する。
(4) 特に現在は、①ライフスタイルの変化により下水
 中の硫酸イオン濃度が増加傾向にあるこ
と、②マン
 ホールポンプ(MP)の増大およびポンプ性能の向上、
 ③ディスポーザーの利用の可能性等に
より下水道施
 設の環境は悪化する領向にある。

これに対し、防食方法としてコンクリ製の大口径下水
管および下水道施設の被覆工法について、
上図のよう
な工法がとられているようだが、管径700ミリメート
ル以下のについては下図の小口
径管推進工法がとられ
ているが、前述のように塩化ビニル管が盛んに使われ
るようになっているという。その代表例として、ベル
工法(vinyl chloride pipe eco friendly long tun-
nel)と呼ぶ、塩化ビニール管を用いた「小口径・長
距離・曲線推進工法」が開発されている(2009)。

この工法の開発にあたり、川崎重工は、ベル工法の開
発に参画し、主要機器・装置を開発するとともに
開発
技術
を立証し、また、全般的な技術面のサポートを行
なっている。塩化ビニール管は後ろから押す力に弱く、
同じ口径の耐荷力が、コンクリートの約5分の1であ
り、後ろからの力が耐荷力を超えると管がつぶれる。
かといって、短い距離で立坑を設置すると、交通渋滞
や振動・騒音の緩和にならず、推進工法を採用するメ
リットがなくなる。さらに「長距離・曲線推
進工法用
機器の開発」も行っている。これは、長距離推進工事
では下水管路が曲線となること
が多く、高性能ジャイ
ロを搭載した超小型自走式計測ロボットを用いている。
この新型測量ロ
ボットは、インナー装置内を自走しな
がら、トンネル掘進機の進路を高精度で測量し、トン
ネル掘進機
の進路を正確に導いていく。曲線部(半径
60メートル
以上)も正確に施工できる(ビニール管に
よる「長距離推進」に、「曲線推進」が加わることは
“夢のさらに夢“とされていた工法)。これにより、
磁力線による測量が困難になる深さ(一般的に6メー
トル以上)や、既設埋設管との併走、あるいは河川・
水路横断部などの施工も高精度な測量を行なうことが
できるという。

 

このように 「ベル工法」は、ポリエチレン管やFR
P(ガラス繊維強化プラスチック)管などにも適用で
き、下水管の敷設だけではなく、電力やガス、水道お
よび農業用水など幅広い用途に用いることが可能であ
るという。このように考えていけば、既存の下水管を
含め新規下水道の敷設にあたっても、付加価値を高め
る、言い換えれば、国土価値を、国土の資産価値を高
めるとともに、インフラの耐用年数を長くした全国的
な下水道敷設事業が切り開かれることになり、さらに
は、世界にも優位性をもった事業の展開が期待される。
それだけではない、ブログテーマまでもある“全国イ
ンフラ網敷設事業”にも有効なツールであることが了
解できる。

 

 【エピソード】

供用開始から30年が耐久性のターミナルがくるといわ
るが、琵琶湖流域下水道は後10年ぐらいか(ライフ
スタイルや産業構造の変容が影響)?それから、気候
変動の影響も心配されるところだが、準備を怠らない
ことが肝となる。
 

【脚注及びリンク】
-------------------------------------------------
01.第1回 管路更生の概要と自立管の試験方法
02.下水道管路に起因する道路陥没
03.老朽下水管損傷部からの土砂流出に伴う地盤内空洞・
  ゆるみ形成過程に関する検討,地盤工学ジャーナル
  Vol.5,No.2,349-361

04.
下水道管が危ない!危機克服の切り札・塩ビ更生管
  の最新情報

05.第2章 現状と課題 p.10~p.24 - 東京都下水道局
06.下水道事業におけるストックマネジメントの基本的
  な考え方(案

07.コンクリート構造物を長持ちさせるためには? コン
  クリート工学研究室 岩城一郎

08.行政刷新会議ワーキングチーム「事業仕分け」第1
  WG 平成21年11月11日(水)事業番号:1-2

09.下水道の老朽化,土木学会 京都大学 津野洋
10.下水道管路施設の腐食調査・診断・判定業務,株式
   会社テクノコンセール・ソリューションズ11
.
12.下水道維持管理 6 硫化水素の特性 硫化水素による
   腐食機構,キタック13.

13.硫化水素による汚水管路腐食についての調査事例報
   告

15.小口径管推進工法
16.下水管きょTVカメラ調査業務詳細
17.増大する下水道ストック及び道路陥没状況
18.下水道事業の 現状と課題・今後の対応策,日本水フ
   ォーラム
19.下水道施設材料の4年間 腐食暴露試験結果に関する
   一考察

20.防食ライニングの目的
21.コンクリート防食協会 : 下水道用コンクリート防
   食材について

22.川崎重工と(株)エム・シー・エル・コーポレーシ
   ョンが、塩化ビニール管を用いた「小口径・長距離・
   曲線推進工法(ベル工法)」を開発

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