【事例研究:道づくり Ⅱ】
前回は、上代から近世に亘る道路について、彦根-多賀、
彦根-永源寺の二つの参道について俯瞰したが、今回は
上代から現在までの道路整備の歴史を俯瞰し未来の都市
と道路のありようを素描してみる。尚、この考察に当た
っては脚注の4冊の本――五十嵐敬喜・小川明雄 共著
『道路をどうするのか』、武部健一著『日本の道路史』、
鈴木敏著『道のユニバーサルデザイン』、 窪田陽一著
『道路が一番わかる』――を参考にする。
例えば、古代エジプト人はギザの大ピラミッドの建設資
材運搬に巨大石重量に耐える石畳の道を整備。中国では
一部石畳で整備した全長を4万キロメートルの大規模な
街道を、インカ人が伝令たちが使う街道をアンデス山脈
に張り巡らせマヤ人もメキシコで石畳の道路網を整備。
道路整備は統治や徴税、軍事のため「すべての道は、ロ
ーマに通ず」と言われ道路は領土の拡大と繁栄に貢献し
た。そのアッピア街道などの維持補修費は道路を伸ばす
ほど膨れあがり、帝国滅亡の要因――総労働に占める割
合が逓増しといわれ(上図参照)、絹貿易の陸路シルク
ロード沿いには隊商を迎える中継都市が栄え、ハンザ同
盟などによる都市間交易が盛んとなる。
ところで、アッピア街道時代の情報伝達速度は、現在の
ように、一秒間で地球を数周できる時代と大きくことな
り一日10キロメートルで時代が下って鎌倉時代でも一
日百キロメートル強と情報伝達速度の側面からも重要で
あった。
このように、歴史的変遷事例を「東海道ルート」で俯瞰
すると下表のようにまとめられているので参考に掲載す
る。
● 3つの環境と道路整備
伝代の道路整備は、従来の統治と経済的側面に加え環境
配慮――自然環境・歴史環境・社会環境の――が必須と
なっている。例えば、日本道路公団元常任参与で道路技
者の武部健一に影響を与え、名神高速道路の技術指導し
た西ドイツのアウトバーンの設計専門家クサヘル・ドル
シュは次のような言葉を残こしている。
世界に道路の数は多いが、名神高速道路ほど周囲に
すばらしい景観を持つ道路は他にない。したがって
このように風致にすぐれた地帯を通る区間では、で
きるだけ風景との調和を図らねばならない。風景の
美しさと高速道路の近代的で優雅な線形の融合、い
いかえれば、自然と人工的に築造された高速道路と
の完全な調和が実現した場合、高速道路 は非常に
価値のあるものになる。
『クサヘル・ドルシュ報告書』
その具体的事例として湖東三山の一つ西明寺の参道の景
観を損なわれないように道路を地下に参道を高架交差さ
せるように施工しているが(上写真)、これは景観(歴
史)的環境配慮、騒音対策のアクリル製遮音壁は、景観
と社会的環境配慮の事例であり、災害・排気ガス・渋滞・
交通事故など社会的環境配慮――対策としては、リダン
ダシー(redundancy)つまり、余裕・重複・冗長の意味
をもたせるた、拡幅・バイパス(避難)道路や信号機を
除去したラウンドアバウトなど、また、排気ガス対策と
しての除去(電気自動車の普及)が該当――など挙げら
れるだろう。
● 道路とは何か
ところで道路の定義に関して、『日本の道路史』で武部
は「道路とは、交通のためにそれに耐えうる基盤を持ち、
その上に一定の空間えお連続的に備えた帯状の施設」と
規定(コード化)すが、インフラ(電気・上下水道・通
信・ガス・鉄道などの公共施設に密接に絡み付加価値が
年々高まっている。あるいは、電線の地下埋設化やバリ
ヤーフリー化、融雪・凍結防止、あるいは、太陽光輻射
防止、透水舗装化などの高付加・高機能化が進んでいく
ものと考えられる。左様に未来の道路は発電し給電し、
音声を発したりするいわゆるロボット化していくのでは
とも思える。そこで、『道路が一番わかる』では次のよ
うに新しい道路を素描する。
● 新しい道路イメージ
- 道路景観
- 自然環境との調和
- 人と車との共存
- 道路のユニバースデザイン
- 公共交通機関との共存
- 情報化と道路交通
- 道路の災害対策
- 道路と公共施設の高機能的融合
さらに『道のユニバーサルデザイン』ではパブリック・
コード(準拠すべき公共規定・倫理規定)の原則を次の
ように提示している。
● ユニバーサルデザインの7原則
- 誰でも公平に利用されること
- 使う上で柔軟性に富むこと
- 簡単で直感的に理解できること
- 必要な情報が簡単に理解できること
- 単純なミスが危険なことにつながらないこと
- 身体的な負担が少ないこと
- 接近して使える寸法や空間になっていること
● 財政的一考察
『道路をどうするか』に掲載された表4-2(下表)に
よると可住む面積当たりでの比較数値が示されているが
分析がなされず、次節の「借金の残高」に移る。地形が
複雑で道路などの工事もそれに伴い複雑化するだろうと
予測され、つまり、工事の質が高くなるはずだかこれだ
けでは不詳である。また、日本のおよそ半分の人口で国
土は同しぐらいのドイツが記載されていないが、道路総
延長距離数では、2010年度調査で日本が121万キ
ロ、ドイツが半分の64.5万キロと約半分で人口比と
ほぼ同じである。つまり、このような比較は意味がない
ように思えるし、例え可住面積当たりで飛び抜けていて
も、車の保有台数当たりの比較かの数値や、道路利用率
(定義が難しい)とかの多角的分析が必要だろうし、根
本的には、必要とされる道路(どの程度?これも定義が
難しい)であれば、有効需要と見なし財政処理を行えば
よいわけで、保全費用がか嵩むというのであれば、総労
働力(=生産力)の配分バランスを考え新規・改修延長
距離の増長を制御すればよいと考える。
この項つづく
【エピソード】
観光客の視点から彦根のみた場合、物足りないものは、
日本一のパワースポットである琵琶湖を散策しながら見
ることができないところ。それじゃと思い立つのが「浜
通り街構想」。夢京橋から一直線で湖岸に出て、湖岸道
路の手前で地下道を通って人工渚に出て渚でちょっした
クルージングやオープンテラスで休息できるような施設
を設けるいうもの。
【脚注及びリンク】
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- 「協働的プランニング」の都市計画理論 Patsy He-
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ンの「リスク」論(現代都市文化論演習 2009)筑
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- ビフォア・セオリ 現代思想の<争点> モダンと
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- 彦根市都市計画道路網見直し指針
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