地盤強化と地震防災②

2022年02月14日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.2.14|更新日:2022.2.15
地域循環共生圏概論 ㊲
□ 地盤強化と地震防災②

6.彦根の被害想定
 地震調査委員会の「鈴鹿西縁断層帯の評価」(2004)
などによれば、彦根市に強い地聯動をもたらす可能性があ
る(近くにあってMが大きい)のは、鈴鹿西縁断層帯、桝
ケ瀬・関ケ原断層帯、琵琶湖西岸断層帯であろう。第7図
は、中央防災会議(2006)による、鈴鹿若緑断聯帯が震源
断層になった場合の想定震度分布の1つで、モデルによっ
て震度の分布のパターンは微妙に異なるが、いずれの場合
も彦根と周辺地域は震度6強となる。


 彦根がもっとも用心すべき地震は、むしろ、地震調査委
員会(2012年)の長期評価で30年発生確率70%の東南海地
震、30年発生確率60%の南海地震てあろう。これらの地震
による彦根の想定震度は6弱であるが、3分もの長時間に
わたって地震動が続くので、内陸型地震による震度6弱の
場合に比べて、被害は洛かに深刻になると予想される。そ
れは、2011年東北地方太平洋沖地震の場合の福島県福島市
やいわき市、茨城県の水戸市や腹鳴市などの揺れに対応す
る。彦根市一帯では、埋め立て地を中心に大規模な液沃化
も発生すると推測されている。

7.「地震の間」の建築学的構造について
 「地震の間」は平屋立てで、屋根は大屋根の寄せ棟造り
と建物外周部に下屋を配置し、全面を比較的軽量な柿葺き
としている.写真2のように大きな岩石を人工的に積み上げ
た築山を地盤として、自然石を加工したのべ石あるいは玉
石の上に土台を敷いて建築されている。構造は木造軸組構
法であり、接合部は金物を用いずに木組みによる伝統的構
法である。主要な材には板材が使用されている(彦根市文
化財課、私信)。


 柱脚部の構造は写真3に示すように、約360×I35㎜程度(
背×幅)の足固め(柱相互を水平につなぐ木材)を設置し
て堅固に一体化している。柱と足固めの接合部は、足固め
側面を欠き込んで、柱の側面から接合している。欠き込み
部分は咤断面の半一分程度であり、また西澤・中川(1997)
によれば欠き込みはすべて足固め側で柱側の欠損は無い。
 柱は概ね105自負程度で壁は上塗である。地震に抵抗する
主要な耐震要素は桂、上塗り壁、足固めであるが、写真4に
示すように室内は床の間を有する書院造りであり、柱や壁
は非常に少なく、開口部上に配置されている垂れ壁(天井
から垂れ下かった途中までしかない壁)と足固めが重要な
耐震要素であると思われる。
また今回の視察では確認できていないが、齋田(1940)II
によれば、要所に雲筋かいを設置して小屋組の剛性を高め
ていることかわかっている。
 以上のことから「地震の聞」の耐震性能について、建物
重量が軽量であることは建築物に作用する地震力が軽減さ
れており、柱脚部を堅固に一体化しているので、地震時に
柱脚部か個々に挙動せずに局所的な損壊が抑制される(特
定非営活動法人緑の列島ネットワーク、2010)。これらは
耐震上有効であると言える。
しかし耐震要素が少ないことや岩石による築山の崩壊の可
能性などは耐震,ヒ懸念される事項である,.さらに
「地震の間」には、写真5に示すように自然石の.hに往を建
てて建物部分を支持する極めて不安定な状態で建築物か付
随しており、付随建物の倒壊に伴うr地震の間jの損傷も懸
念される。

7.まとめ
「地震の間」が位置している場所は、100m程度の空間的ス
ケールでは、地盤は約30万年年前~2万年前に堆積した段丘
相当層で耐震的には良い地盤である。しかし、10mスケール
では2万年前以降に堆積した耐震的には軟弱な沖積層である
ただし、近江平野一帯は、彦根城か建てられた彦根山を典
例として、小スケールの基盤の凹凸が多く見られ、「地震
の間」の下もそのように,凹凸の良い地盤である可能性もな
いとはいえない。それを明らかにするには、「地震の間」
の側を走る混線で反射法探査を行って地下構造を謂べる他
には無い。
 地震災害にっいては、とかく強震動予測を中心に研究さ
れてきた。内陸地震という複合災害を引き起こす危険性の
高い自然現象では、地域ごとに、地盤構造から活構造を1
っの枠組みで検討する方途を考えるべきであると結ばれて
います。



第1章 彦根市周辺の地盤と地震
1.有感地震回数 
 彦根地方気象台観測による本市における近年の有感地震
回数は下表に示すように、平成23年が年間61回と最も多く
なっています。また、毎年10回程度以上の有感地震が発生
しています。 

3.地震被害想定 
 滋賀県が平成25年度~平成26年度に実施した地震被害想
定調査から、彦根に最も大きな被害をもたらすと想定され
る地震災害は「鈴鹿西縁断層帯地震」であると考えられて
いる。また、非常に高い確率で起こると想定されている、
南海トラフ巨大地震による著しい被害が生じるおそれがあ
る地域として、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に本
市が 指定されている。


3-1 鈴鹿西縁断層帯の評価
平成11年度に地質調査所(現:産業技術総合研究所)によ
り行われ、これまでに行われた調査研究成果に基づき、こ
の断層帯の諸特性を次のように評価されている。
1.断層帯の位置及び形態
鈴鹿西縁断層帯は、滋賀県坂田郡米原町から、甲賀郡土山
町に至る断層帯である。長さは約44kmで、ほぼ南北方
向に延びる、東側が相対的に隆起する逆断層。
2.断層帯の過去の活動
鈴鹿西縁断層帯の最新活動時期は明らかでない。既往の調
査研究成果で直接的なデータではないが、本断層帯の長さ
をもとに経験則で求めた1回のずれの量と平均的な上下方
向のずれの速度に基づくと、平均的な活動間隔は約1万8
千~3万6千年であったと推測。
3.断層帯の将来の活動
鈴鹿西縁断層帯は、全体が1つの区間として活動すると推
定され、マグニチュード7.6程度の地震が発生すると推
定。この場合、断層の東側が西側に対して相対的に3-4
m程度高くなる段差を生じる可能性があり、30年の間に
地震が発生する可能性が日本の主な活断層の中ではやや高
いグループに属す。via 鈴鹿西縁断層帯の長期評価につい
て、2004年9月8日 

4.湖東平野火山灰分布調査
4-1 湖東平野の姶良あいら火山灰
 姶良(AT)火山灰は約2,2万年前に日本列島を広く陵った
広」或降下火山灰であるごとはよく知られている(町田・
新井,1976).湖東平野の11地点のボーリングにおいてATが
報告された(植村・横山,1983).下図(Fig.44)に湖東平
野の地形分類図に.AT火山灰の発見されたボーリング地点
が示され,下図にそれらのボーリング柱状図が示されてい
る。AT火山灰は湖東平野の自然堤防・氾濫原帯では, 地表
下5-17mに位置し,泥炭・粘土ヴ越部である“中部泥届”中
に挟まれる。その下位には砂礫層または砂・泥層があり最
終氷期末の堆積と考えられている。こ
の榛届は扇状地,旧
河床,浜堤などの堆積物,砂・泥層はデルタや自然堤防・
氾濫原・後背湿地の堆積物と考えられる。
 中部泥届の下位には砂礫層があり,下部礫層と呼ばれて
いる、下部礫層は地表下5~15m以深にあり、この礫層堆積
時には,湖が急速に埋め立てられ,平野が前進したと考え
られている。このことから小谷(1971)の第1湖段の主た
る構成層が下部改層相当層で,3~4万年前のものと考えら
れた(植村・横山,1983).第2湖段は日野川の右岸の上部
疎届の連続で,l~1.5万年前の形成,第3湖段の形成は完新
世後で,歴史時代に入る可能性があるという.
 高谷・西田(1964)は湖岸地域の被圧地下水潜水層(第
45図)が所期段丘礫層で,第2湖段形成層としている.そ
して第1湖段は下部(下位)古期段丘礫層の延長と考えた
(第46図)。AT火山灰が湖東平一野で5~17mの深さにある
ことは,完精読の厚さはそれより薄いことを示している.


図 湖東平野の地形分類図(Kamura・Yokoyama 1983)


図 湖東平野の地質柱状図

図 湖東平野の模式地質断面図(Takatani.Nishida 1964

4-2 曽根沼ボーリング
 完新統あるいは更新統上部の鍵層として,近畿地方では
4層の広域テフラが認められている。上位から.アカホヤ
(Ah、6.300年前,鬼界カルデラ噴出),隠岐(U-Oki,約
9、300年前,鬱陵島噴出) 入山ホーキ(約2万年前,火山噴
出),姶良(AT、約 2.2万年前,姶良カルデラ噴出)の各火
山灰である。これらの鍵層を挟む堆積物の花粉組成から,
最終氷期原隊の植生と気候の変遷が推定される.本地域で
は,琵琶湖底200mボーリングコアで,これら4層の火山灰
がすべて確認されている(第47図)。また湖東胚野のたAT
火山灰層に関して先に述べた,
 曽根沼(第47図)は宇曽川下流左岸の荒神山蔭にあ
る。
宇曽川は鈴鹿山地西縁部の湖東流紋岩類山地に,比較的狭
い集水域をもち,愛知川と犬上川とが作った扇状地の間を
流れて琵琶湖に注ぐ.曽根沼の東から湖岸にかけては,砂・
泥の堆積した沈水性の河口となっていて,宇曽川が粗粒物
質運搬能力の比較的小さい河川であることが分かる.そし
て荒神山が植生に覆われた比較的幅広い独立丘で、その山
蔭に宇曽川が運ぶ土砂により埋積されない沼沢地が出現し
たのが曽根沼であると考えられる.また、湖岸の浜堤によ
る後背厚地でもあるといえる。現在、西下部は干拓された
が,東不知はなお水域が残り、公園となっている。
 曽根沼にはョシ原が延びており,腐植配の堆積が厚く存
在することが予測されるので,ハンドボーリングで直配を採
取し,花粉分析と火山灰の検出を行った。ボーリング地点
は第48図に示すように,曽根沼南岸から北へ沼の中に延び
たョシ原で,ドロノキも点生しているところである.ハン
ドボーリングは径2cmのコアを2ocmの長さずつ採取できる。
.ビストンコアラーで行った、9.25mの長さの試料を採取す
ることができ,肉眼紋章により岩質を記載した(第49図).
また5層準について14C年代を測定し,59試料について砂と
火山ガラスの含有比を調べ,39試料について花粉分析を行
っている。


図 曽根沼周辺及び周辺地域の地形

図 長曽根ボーリング地点図

図 長曽根ボーリング柱状図と砂・火山ガラス含有量及び
  14年代

5.荒神山の湖東流紋岩



via 彦根市公式HP
今から約1億年前(中生代白亜紀)の滋賀県ではいくつもの
火山活動があったと考えられている。荒神山は、そのころ
の火山活動でつくられた。火山噴火には、多量の溶岩を流
すもの、火山灰や軽石を吹き上げるもの、火砕流という流
れをつくり出すものなどがあります。荒神山をつくった火
山活動は、火砕流をともなうものであったとされている。
火砕流とは高温の水蒸気を含んだ火山灰や軽石などが、周
辺の岩石や地層をぶちぬいて地表に噴出し、周辺の山腹に
沿って低い方へと流れていく現象。このときの流れの速さ
は、時速100キロメートル、温度400~450℃だと言われて
います。最近では長崎県雲仙普賢岳の火山噴火の際に火砕
流が発生している。火砕流は、土地の低い部分や谷の部分
にたまり、自分自身の重さと熱によって火山ガラス、軽石、
火山灰などがペシャンコになってくっつき合い一つの岩石
となる。このようにしてできた岩石が溶結凝灰岩といわれ、
この溶結凝灰岩の化学的な成分が流紋岩質であることから、
「湖東流紋岩」と呼び、このように荒神山はこの岩石から
でき、湖東平野の中にぽつぽつとある小高い山の多くも湖
東流紋岩からできています。

【関連参考図書】
1.彦根市災害廃棄物処理計画 彦根市, 2019年9月
2.新ごみ処理施設, KO・KO・RO, 2021年7月28日
3.彦根志公式ホームページ
.彦根愛知犬上地域新ごみ処理施設整備事業に係わる環
 境影響評価方法書 2020年12月
第1章 事業者の名称、代表者の氏名および主たる事務所
   の所在地
第2章 事業の目的および内容
第3章 対象事業実施区域およびその周囲の概況.
第4章 県境影響評価を実施しようとする地域
第5章 計画段階環境配慮書に対する意見と事業者の見解 
第6章 対象事業に係わる県境影響評価の項目ならびに調
   査、予測および評価の手法
 6.1 環境影響評価の対象事業
 6、2 環境影響要因の区分
 6、3 環境影響評価の対象とした環境要素
 6、4 環境影響評価の対象とした環境要素の選定理由
 6、5 環境影響評価の対象としなかった環境要素
 6.6 現況調査の実施計画および予測手法
 6.6、1  大気質
 6.6、2  騒音
 6.6、3  超低周波音
 6.6、4  振動
 6.6、5  悪臭
  6.6.6  水質
. 6.6.7  動物
  6.6.8  植物
 6.6.9   生態系
 6.6、10 景観
 6.6、11 人と自然との触れ合いの活動の場
 6.6、12 廃棄物等
 6.6、13 温室効果ガス
 6.6、14 文化財
 6.6、15 伝承文化
 6.6、16 その他の環境要素に係る現況調査
 6.7  評価手法の選定
第7章 その他の事項

さて、次回は「地盤強化工法」の考察にはいる。
                    この項つづく

 【エピソード】



IAEA調査団が来日 処理水放出の安全性検証
東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む
処理水の海洋放出をめぐり、国際原子力機関(IAEA)の調
査団が来日し、14日に安全性検証のための調査を開始した。
海洋放出については、国内外で安全性や風評被害への懸念
が出ている。意見交換では、カルーソIAEA原子力安全局調
整官が「調査団は国境を越え透明性のあるメッセージを送
る。世界中から集まった専門家が調査を客観的、科学的に
行う」と強調。政府側は、調査団の助言を放出の安全管理
に反映させる方針を示した。 
▶2022.2.14 東電福島第1原発,時事通信

 原子力災害リスク|解説|滋賀県防災情報マップ
原子力災害は、原子力発電所などで事故が発生し、放射性
物質がもれ出て、周囲に被害が出ることをいいます。原子
力災害は、地震や台風などの災害とは異なり、放射性物質
や放射線は目に見えないなど五感で感じることができませ
ん。ただし、適切な対応をとることにより、被ばくや汚染
をおさえることができます。このため、原子力災害の特徴
や放射線についてあらかじめ知っておくことが大切です。


source Shiga Prefecture

【脚注及びリンク】
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