地盤強化と地震防災 ⑭

2022年04月28日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.4.29|更新日:2022.4.
地域循環共生圏概論㊾
□ 地盤強化と地震防災 ⑭
 
備計画書の「事前評価調書」の比較事例研究Ⅲ
先回の「軟弱地盤改良環境保全工学概論②」では、ま
ず、廃棄物埋立地すなわち廃棄物地盤の安全性・安定
性に関する地盤材料及び地盤工学的考察が必要であり、
地盤改良等を踏まえ処分場の工学的管理の視点から考
察し。今回は次回は「防災学講座3  地盤災害論」か
ら、①地すべりの定義から始まり、地すべりの分類と
それらの多様なメカニズム----とくに、地震時に発生
する地すべりの研究からわかった「すべり面液状化」
についてについて、②1999年広島災害など斜面崩壊が
土石流化して発生する「崩壊誘起土石流」について、
モデルと実験----これらの現象は都市周辺で発生すれ
ば深刻な被害が発生させ、今後の斜面災害研究の進む
べき方向をを学び。③土石流の基礎から述べ、発生の
メカニズム、流動のメカニズムについて理論、実験と
現場の比較を通し、氾濫・堆積シミュレーションの進
歩とハザードマップ、対策工や避難誘導の研究を学び、
さらに、④1964年の新潟地震災害から1995年の兵庫県
南部地震までの地震で発生した主要な液状化現象によ
る被災事例やクイッククレー、クイックサンド現象と
そのメカニズム、さらに液状化の発生メカニズム、発
生予測法の研究の進展、ハザードマップ作成技術の進
展を学び、「ごみ焼却施設建設計画」の防災・減災策
を考察する。


1999年6月29日豪雨災害| via 災害カレンダ
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熱海市の住民が撮影した土石流の動画
2021.7.3 YouTube  朝日新聞編集



第1章 地すべり・斜面崩壊災害
第1節 地すべりの種類
「地すべり](Landslides)は,斜面を構成する土(岩)
塊の一部がすべり下りる現象であるが,国によって,
専門家によってかなりその範囲が異なり,地すべりに
問する言葉もかなり数多くある。日本語では地すべり,
山くずれ,崖くずれ,斜面崩壊,また地すべりに近い
言葉として土石流,岩屑流,泥流,落石などが用いら
れている.英語ではLandslide,Landslip/Rock slide, Rock
fall, Rock avalanche, Rock creep/Debris slide, Debris fall,
Debris flow,  Debris avalanche 
など「運動のタイプ」と
「運動する物質」を組み合せて多くの言葉が用いられ
ている。もともと「Landslide」は北米で多く用いられ,
Landslip」は 英国で用いられてきた言葉であるが,
北米に多い地すべりと英国に多い地すべりでは多少違
いがあるが,ほぼ同じ現象を指しており,今日では「
Land-slide」のほうがはるかに多く用いられる。英語の
slide」と日本語の「すべり」「flow」と土石流 泥流
などの「流動」「fall」と落石など「落下」「avalanche
と「くずれ」はほぼ対応する.英語の「creep」は日本
語には適当な言葉がないので,「岩盤クリープ」とい
ったようにそのまま「クリープ」と呼ぶこれらの土砂
の運動を表わす言葉のうち「avalanche」は「すべり」
が高速で生じた場合や,「落下」に近い場合のように
土塊の撹乱が大きいときに用いられるが,学術的とは
思われておらず,土(岩,岩屑)塊の運動の主なタイ
プとしては「すべり:sHde」 「流動:flow」「落下:fall
「クリープ:creep」があげられる。地すべりの範囲とし
ては,これらすべてを広い意昧での「地すべり Landsl-
ide」に含める考え方と「すべり:slide」だけを「地すべ
り:Landslide」とする考え方がある。地すべりなど斜面
運動に問する現象が学際的な分野であり, 国によって
問題となる現象が若干異なるため, 現在のところ統一
は取れていない。
しかしこの面で新しい動きも出てき
ている。1990年から2000年まで,「20世紀最後の十年
間をより災害の少ない地球環境を子孫に残すために,
みんなで協力しよう」という「国際防災の十年」の主
導のもとで実施され,現在はそのあとを受け,「国際
減災戦略」(ISDR,2001~)が始まっている.地すべ
りの分野では,IDNDR開始直後からその活動の一環とし
て国連教育科学文化機関(UNESCO)を国際地盤行学会,
国際応用地質学会などが共同で世界中の,どこで,ど
のような地すべりが発生し,どのような被害が生じた
かを調べて,「世界地すべりの目録」を作成しようと
する作業委員会が1988年に結成され活動を行った。そ
してその委員会としては,地すべりの定義として、「
The muvent of a mass of rock, earth or debris down a slope:
土(岩、岩屑)塊の斜面を下る運動」 という広い範囲のもの
とすることが決められ,国際的に認知されている。この定義
はウエブスター国際辞書第3販{Webster's 3rd Internatinal
Dictionary)の説明である「The usully rapid down slop's mov-
ement of a mass of rick, earth or artifical fill on a slope:岩,土、
人工盛土の塊としての斜面を下る通常は高速の運動」とほ
ぼ近いものである。地すべりの範囲を広く取りすぎている感
じもあるが,災害防止に役立てるための目録作成であれば,
この災害は「落下」あるいは「流動」だから、リストアップする
のはやめようというのは不都合と思われる。.


  つぎに、この広い意昧での地すべりについて模式図、写
真などで示す。図1.1は地すべりの中の「すべり模型図であ
る。あるすべり面で土塊がすべっている。このすべり面の形
は、比較的均質な土層の中で地すべりが生じれば、上図
1.1のように円弧状のすべり面になることが多く、地層の境
界面や基盤と風化層の境界、あるいは断層や軟弱な土層
などに沿ってすべつているときは直線的なすべり面になる。


図1.2は地層に沿ってってすべり面が流
されている場合のアニメーション画像

図1.2は地層に沿ってすべり面が流されている場合の地す
べりの模式図である。図1.3は1990年のイラン地震の発生
した祭に発生した地すべり(いずれも割愛)。



イラン北西部ルードバール地震  via wikipedia


図1.4 土石流模式図

 「流動」は 空間的に速度分布を持ち、かつ横方向に拡散
しやすいなど、液体に近い運動をするものである。その典型
的なものは土石流である。図1.4は土石流の模式図、図1.5
は長野県の上高地にある焼岳という山で発生した土石流で
防災研究所と国土交通省の共同観測で撮影したものであ
る。土石流の多くは図1.4,図1.5 のように渓床堆積物が渓
流沿いに運動するものが多いが、山腹斜面の土層が、地
震などなんらかの急激な応力変化を受けて液状化して流
動する場合もある。

図1.5  焼岳土石流災害(1984年)

  図1.6 は 1984年の 長野県西部地震(松越地すべり)のと
きに発生した液状化の地すべりの例で、斜面内部の風化軽
石層にが地震によって液状化して一気に流動したものであ
る。

「落下」は運動の大部分が空中を移動するもので、落石が
最も典型的なものでlあるが、河岸その他の土の急崖でも
崩落が生じる。図1.7は河岸の土塊が、袖向きに転倒して崩
落する様子を複式的に描いたものである。岩や土が転倒す
ることを英語でトップリング(Toppling)という。

図1.8は1989年に越前海岸で生じた落石(rock fall)の写
である。通行中の車が下敷きになって15人の人が亡
くなっ
た(玉川岩盤崩落事故)。しかし岩が破砕され
るとその強度
は砂と変わらなくなり、30度程度の傾斜
にしか耐えられない。
したがって岩石内の片破砕面、
断層などが、斜面にほぼ平
行に入っている場合におい
ては、風化していき、次第に破
砕が進行し、ついには
崩落する。

「クリーク」という言葉は空間的、時間的に徐々に変形が進
む現象を指す。図1.9は変形が空間的に徐々に変化してい
る岩盤クリープの模式図である。このようなクリープの移動
速度は極めて遅く、時間的にも変形は徐々にしか道まない。
しかし、変形の進行に伴って徐々に岩の強度が低下し、や
がて「slide」タイプの大規模地すべりが発生する場合が多々
ある。また、必ずしも変形が空間的に徐々に変化していなく
ても、変形が時間的にきわめてゆっくり生じるものはクリー
プと呼ぶ。図1.10は徳島県の善徳地すべりで計測している
斜面の山頂部と,中腹のB2点の移動記録である.年間
10 mm 前後の速度できわめてゆっくり移動している.「クリー
ブ]は「すべり」の速度の遅いものと区別がつきにくいようだ
が,「すべり」は地下水位が上昇してある限界値に達したと
ころで、土層のせん新値使が生じて運動が起こるのに対し
て,クリープは地下水位が低くても生じ弓る.善徳地すべり
では,大雨のときに1週間で数cmから10 cm 移動する。



るような「すべり」が生じている。また、小規模な地すべりブ
ロックでは一度に数十cmから数十m移動するような「すべ
り」も観測されている。しかし、斜面全体で見ると移動量は
それほど大きくないので,図1.11の写真に見られるように地
すべりの上にたくさんの人家があり、人々が生活することも
可能である。.

第2章 土石流災害
第1節 土石流とは何か
 最近は、まとまった降雨が予想される場合に,「土
石流に
注意して下さい。」と言ったアナウンスがテレ
ビで流されるなど、
土石流という言葉が一殷的になっ
ている。報道機関などは土石流という言葉を厳密な定
義のもと
で使用しているとは思われないが,家屋等が
崖の崩壊による土塊の直
ち寸ぐけて被災する「がけく
ずれ」や,あまり土砂を含まない洪水が急にやって

る「鉄砲水」とは区別して,大きな石から泥までのき
わめて高濃度の複雑な混合
物が,谷の上のほうから
突然流れ下ってくる現象として理解されているようで
ある。
このような理解で特段の不都合はないが,土石
よ凪力学的には流れの中の固体粒子と水との速度差に
起因する流体力によって、
固体が運ばれている各個運
搬現象(粒子が河床面近傍をほぼ河床面
に平行に移動
する掃流砂と,粒子が水の乱れに乗って移動する浮流
砂の総称
)と,山腹斜面の崩壊土塊が塊ですべってい
る現象との中間的現象として、「
水と土砂礫との渾然一
体となった混合物が、一種の液体であるかのように振る舞
いながら、かなりの速さで集合的(水と固体粒子の間の相
(座度が粒子運搬に重要な役割を演ずるのではなく,粒子
群と水が一体となって重力の作用を受けて流れる)に移動
する現象」であると定義できる。 
  土石流の挙動は構成粒子径、
粒子濃度、流動深、谷の
勾配などによって異なる。
 わが国で事例の多い大きい石礫を大量に合む石礫型土
石流の流動時の様子を概念的に示すと図2.1のようである.
すなわち、①土石流の先端部は小山のようにふくらみ、直
径数mに達する巨條が集まっている。.②2石礫が多い先端
部が通過したあとは比較的濃度が低い。小さい礫を合んだ
流れが次第に濃度と流量を減少させながら続く、③単一の
波ではなく、いくつもの波が間欠的に流下してくる場合が多
いが、その波の間隔は一定ではない。④流動の横断形は、
先端部や間欠的にやってくる波の部分では、中央部が盛り
上がっているが、後続の流量が減少していく部分では中央
部が窪んでいるように見える。⑤表面に見える石條の進行
速度と土石流先端部の流下速度とを比較すると,明らかに
前者が大きく、表面付近で流速が速く、底面付近で遅いよ
うな流速分有形を持っていることを示唆している。そして、
大きい石礫は流れの表面にあたかも浮いて流れるように集
まる性質があり、これが流速分有形を反映して,前へ前へ
と運ばれる結果、先端部に巨條が集中する。⑥流路の屈
曲部では、ボブスレーのように湾曲の外岸へせり上がって
流れる場合がある。


  さらに、 石礫型土石流の堆積過程および堆積物の特徴
は以下のようである。①)谷出口で勾配が急に緩くなり、か
つ幅が広がった部分へ土石流が到達すると停止・堆積して,
土石流扇状地を形成する。このとき、土石流は扇面一杯に
拡がって流れるのではなく、谷の出口幅よりもわずかに拡
ったジエット状の流れとなり、その一つひとつの単位が停止
して舌状の堆積物(土石流ローブと呼んでいる)を残しなが
ら、全体として円い土石流出扇状を形成する。②地形勾配,
土石流規模が大きいほど、 石礫濃度が小さいほど、構成
粒子径が小さいほど土石流の流動性が高く、ローブが細長
い形状を呈し,また、堆積厚さが扁平になる。③ローブ堆積
物は広い粒径分布を持った混合物でできているが、深さ方
向に見ると、底面近くよりも表面近くで粒径が大きい違グレ
ーディングという特徴を持っている場合が多い。このような
土石流堆積物の特徴は、掃流砂による堆積物が底面から
上方へ向かって粒子径が小さくなり、同一層内では比較的
粒径がそろっているという特徴を持っているのと対照的で、
両者を見分ける鍵として用いられている。.
  桜島や雲仙普賢岳のような火山灰や火砕流
堆積物が卓
越する場で発生する土石流は、構成粒子径が小さく、高濃
度でも激しい乱流状態で流れる場合が多い。このような流
れの状態は、石礫型土石流では粒子群が比較的怜然と流
れているように見えるのとは大きく相違しており,筆者は泥
流型土石流と名づけている.また泥流型土石流では,先端
部への巨礫の集中は見られない。
  中国の雲南省を中心とする南西部では、
粘性土石流と呼
ばれる土石流が奸込するので有名である。この土石流は,
他の型の土石渡同様、いくつもの流動の単位を構成する土
石流の波(土石流サージと呼んでいる)が繰り返し押し寄せ
てくるのであるが、波の先頭部は激しく乱れているものの、
そのすぐ後ろは整然とした層流状態であり、さらに後方で
はついに流れが停止する。そして、流れの停止に伴ってあ
る厚さの堆積層が形成される。
 つぎのサージはこの堆積層を取り込んで、前のサージ同
様の流動を繰り返す。サージ先端部への巨礫の集中現象
が認められない点は泥流型土石流に佩ているが、層流状
態で流れる点、サージ終端で流れが停止する点が異なって
いる。泥流型土石流の構成粒子は細かいが,粘土のような
粘着性の粒子をほとんど合んでいないのに対して、粘性土
石流は粘土を相当大量に含んでいることが,著しい挙動の
相違をもたらしていると考えられる。


第2節 土石流災害の軽減・防止
2-1 土石流危険渓流
  上図2.3の土石流発生領域の傾向を見ると,土石流発生
限界勾配となる 約15° 渓床部において.h0/dにして1 前後,
q0gd3)1/2 にして3前後で土石流が発生する可能性が高い
ことがわかる。このことを利用すると、 任意の流坺の流域
の土石流発生危険度を評価することができる。すなわち、
対象流域において渓床勾配が  15゛以上となっている区間
のi床堆績物の代表拉径dと直路幅βを調査すれば、区間
の末端(15’地点)での上石流発生に必要な洪水流量
上記の限界値から求められる.ただし q0Q / B である。
  一方、いま対象としている降雨強度に対して適切な洪水
流出解析を行うと,同じ15° 地点で実際に流出する洪水流
量がわかる.もし、実際の洪水流量と土石流発生に必饗な
洪水流量の比が1以上であれば,理論上は土石流が発生
することになる。



   表2.1は1976年の土石流災客について.この比の値
!こ石流発生率との関係を調べた例である。
の評価に際し
て必要な粒径、波路幅や洪水流出係数.降雨強度が地域
内に分布している小さい流域単位で,必ずしも的確に決定
できないこと、そもそも上石流になるための渓床堆積物が
不記していたかもしれないことなどにより.Xが1以上と計算
されたすべての渓流で土石渡が発生することにはなってい
ないか、の値が大きくなるにつれて土石流発生確率が大
きくなり.Xが1以下の渓流では土石流発生確率が非常に
小さくなっている。このことは、によりて流域の相対的な土
石流発生危険度か評価できることを示している。
 流出洪水流量は,地質や植生条件が似通った地域では、
一定の降雨条件に対してほぽ流域面積に比例する形で与
えられる。したがって、指標Xは15°地点における実際の流
域面積と,土石流発生に必要な限界流量を流出する土石
渡発生限界流域面積Acの比A/Acと、同等の意味を持って
いる。
 国土交通省では、 上記の考え方を基本に土石流危険渓
流訓告指針を作成している(建設省河川局,1978).ただし、
涯.に相当する流域面積を5ヘクタールとし,15°地点でこれ
以上の渡城面積を持ち、しかも渓床に厚い堪植物(2m以上)
が存在士でいると見なされる場合には,A/Ac.の値にかか
わらず土石渡発生危険度が大きいと判定することにしてい
る。なお上記の議論では,流域内で崩壊が生じてそれが土
石流化する場合が抜けているので、国土l交通省の指針で
は,崩壊発生に関わると推定される流域の地質、湧水,亀
裂の存在等の項目に,それぞれの項目が土石流発生危険
度に寄与する程度を経験的に割り出した点数を割り振り、
その合計点も土石流発生危険度評価に組み入れることに
している。
                            この項つづく

✔ コアな技術・工学な領域は割愛させていただき、減災・
防災な要点ピックアップに心がけたが、数式や関連記号の
説明が抜けていることをお詫びする。
      
【エピソード】

  
明日は、琵琶湖博物館を鑑賞予定。次回はその感想を
も掲載する。

【脚注及びリンク】
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地域循環共生圏概論㊽

2022年04月28日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.4.27|更新日:2022.4.28
地域循環共生圏概論㊽
□ 地盤強化と地震防災 ⑬
 
備計画書の「事前評価調書」の比較事例研究
先回の「軟弱地盤改良環境保全工学概論①」では、ま
ず、廃棄物埋立地すなわち廃棄物地盤の安全性・安定
性に関する地盤材料及び地盤工学的考察が必要であり、
地盤改良等を踏まえ処分場の工学的管理の視点から考
察をはじめた。
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出所文献:小野 諭, 講座地盤改良技術と環境保全「4.
廃棄物の処理処分・廃棄物地盤の跡地利用と地盤改良
技術」,一般社団法人 廃棄物資源循環学会「材料」(
J. Soc. Mat. Sci., Japan), Vol.49, No.11, pp. 1249-1254, Nov.
2000
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5.跡地を地盤工学的に有効利用する
 地球にやさしい、環境に適合した新しい地盤を創造
するために、廃棄物地盤に対する効果的な地盤改良に
取組む必要がある。この廃棄物を焼却溶融固化あるい
は、無害化して処分場を有効利用し、将来の地盤汚染
も未然に防止するということが望まれる。.
  
5-1 廃棄物地盤改良の問題点と課題
 最終処分場においては埋立廃棄物の種類が多種化し,
また汚染物質およびその形態も多様な状況となってい
る。地盤改良を行う際には、汚染物質の浸透・拡散等
に十分留意し、
廃棄物を放置することによる周辺環境
への影響だけでなく、長期的な地下水や地盤汚染を未
然に防止する。
 地盤改良による地盤環境の改善対策として、①汚染
の拡散防止、②無害化・固結化あるいは汚染物質の除
去、③環境改善状況を把握するための監視・評価技術
等の確立が必要とされる。
 処分場には汚染の拡散防止対策は勿論のこととして、
廃棄物の分解促進や無害化・固結化がタイムスケジュ
ールで処理される廃棄物を受入れしてから何年で閉鎖
完了し、地盤改良を経て、何年後に跡地利用のための
工事に取り掛かれると言った明確な将来構想に対する
事業であれば、地元の反対や土地確保の困難さは少な
くなるであろう
 廃棄物埋立地盤を早期に安定化させ跡地を有効利用
するためには地盤改良が必要不可欠となる。その実施
に際しては、周辺環境に配慮した工法の選定と改良効
果に対する検討が重要となる跡地利用を踏まえて, 時
間的制約・利用目的からの条件等を満足するものとす
る。現在埋立中の処分場に対してはこれらの対策を実
施するが、これからの処分場には、地盤改良工法、跡
地利用目的を決めた上で廃棄物の受入れ基準、埋立方
法を確立する必要がある。

5-2 処分場が負の遺産にならないための跡地管理
 環境展が各地で開催され廃棄物に寄せる関心は一般
の市民を巻込んで急激に上昇している。廃棄物を分類
して処理処分しようとする に「焼いて、捨てて」のご
み行政からの脱皮も一つの重要な課題である。ごみ焼
却を如何にすべきか?に対して,①)焼却残さの最少化と
再利用、②エネルギーの最大回収、③金属等有価物の
回収、④ダイオキシンをはじめとする環境対策の万全、
⑤安価な建設コスト・維持コストが期待されている。
今後は、廃棄物を資源として利用する「資源循環型社
会」の構築に向けてのエコタウン事業等の推進が求め
られる資源循環型廃棄物処理のためには、①廃棄物の
発生抑制、②廃棄物のリサイクル促進、③処理に伴う
環境負荷の低減、④再生品の利用といった条件を満た
すことが求められる。また、高齢化、情報化、ハイテ
ク化、価値観の多様化、経済や消費のソフト化、世界
化資源の涸渇化社会といった21世紀の社会像をにらん
だ上で、「社会システム」様式と廃棄物の発生形態に
対応していくことがめられる。. 

表Ⅱ 廃棄物地の改良工法

 そこで、将来廃棄物処理を選択する場合には、想定
する時代の生活レベルや価値観都市構造や産業形態、
さらに周辺環境の制約条件、ごみ処理形態がどのよう
に変化するかを検討する必要があるその上で、廃棄物
の質による処理目標を明確に設定し、処理システムを
社会に適合させることも考えなければならないであろ
う。
6.おわりに
 自然の生態系システムにおける植物(生産者),動物
(消費者),微生物(分解者)にならい、「廃棄物処理業者
は資源の再生者、創造者」であると認知する意識革命
が求められるすなわち、太陽エネルギーを享受して生
産活動を行う緑色植物、それを消費する動物と植動物
の遺骸を分解する生物がいて、資源として再び生産者
に使われる社会システムでは、製造者(生産者)と購
入者(消費者)に対して廃棄物処理業者(分解者)の立場
となる。そこで循環の立場、廃棄物処理の視点から生
産流通消費のあり方を提示し、それぞれの条件に優先
順位をつけて取り組むことによって、円滑な物流と循
環型社会の構築に移行される。資源循環型社会におい
ても、最終的に処分すべき廃棄物は発生し続
け、跡地
管理のための地盤改良対策工は重要であり続けるであ
ろう。将来的には開発から跡地利用まで“新しい島・
地下処分場構想”等の地盤を生産する完結システム
確立されれば、廃棄物の循環、土地のリサイクルとの
社会的認知が得られれば地元の反対も少なく、用地確
保に大いに役立つものと考
えられる。環境地盤に対す
る社会的問題解決にどのように対処していくべきなの
かの一つの扉がある。汚染が生じるに未然防止(地改
良・改善)する方法を捜すことも, これから着実に進
めていかなくてはならないであろう。

ここまできて、「環境防災学」に基づく、彦根広
域の独自の「彦根広域環境防災基本計画」がないこと
に気づく。計画の対象自治体と区画を決定し、例えば
「2050年家庭・産業ごみ廃出量ゼロ」を目標に掲げ、
「実行計画」を定めた上で、計画の「関連連既存施設
及び更新施設計画」を定め、それを今回の更新計画を
住民全体に告知し、丁寧説明すべきだったではないか。
勿論、目標は彦根広域自治体の独自性をもつための地
方・中央政府との調整し住民との合意形成すべきだっ
ただろうと後知恵であるがそう考える(もっとも、ワ
ーキング・グループの力量が問われる)。

ところで、環境防災学・環境地盤工学とはどのような
ものか。環境地盤工学は、先回の「地域循環共生圏概
論㊼」で嘉門雅史・環境地盤工学研究所理事長の「環
境地盤工学と廃棄物問題」(1994)で触れた。



また、「環境防災」とは何か。これは「環境」と「防
災」という全く関係のない2つの概念をただ並列で並
べたものではない。2つの概念は,互いに密接不可分
な関係にあり,互いに補完し合わなければ,健全な体
系にならない宿命を背負っている。災害は最大の環境
破壊である。その災害を減らそうとする防災は,環境
保全対策の最も重要な根幹をなすものである。したが
って,防災を考える時,望まれる環境形成にいかに資
するか,という視点が最も重要な目標であらねばなら
ない(竹林征三著「環境防災学-災害大国日本を考え
る文理シナジーの実学-」の「はじめに」より)と書
かれている。また、立命館大学 理工学部 環境都市学
系の「環境防災会」の「設立の趣旨」には次のように
書かれている。

  世界の防災・減災対策は、たとえ被災してもいち
 早く元の状態に戻れるレジリエント(resilient)な社
 会の構築に向かいつつあります。激甚災害によって
 被害が生じた後の回復力を向上させるには、住環境
 が災害によって激変しないことが必要ですが、環境
 を自然災害から守るための研究はあまり進んでいな
 いのが現状です。そこで、地震や豪雨などの自然災
 害が環境に及ぼす影響について検討し、自然災害前
 の環境リスク評価、自然災害後の環境クライシス評
 価の両者に対するマネジメント手法を確立すること
 を目標として本研究会を設立しました。
  まず、研究の前提である"環境リスク"を定義して
 おきます。環境を自然環境と社会環境の2つからな
 ると定義したことで、2種類の環境リスクが定義で
 きます。まず、自然災害による都市施設、各種構造
 物の被災そのものも環境リスクです。これを "1次
 環境リスク" と呼びます。次に、都市施設や各種構
  造物が被災すると、それに起因して副次的に水質汚
 濁や大気汚染等のいわゆる環境破壊が進行すること
 になります。これを"2次環境リスク"と呼びます。
 本研究会では、これら1次と2次の自然災害による
 環境悪化リスクの把握と改善を通して、環境マネジ
 メントを軸とする災害対策の革新を目指します。 

以上のことを踏まえ、次回は「防災学講座3  地盤災
害論」から、①地すべりの定義から始まり、地すべり
の分類とそれらの多様なメカニズム----とくに、地震
時に発生する地すべりの研究からわかった「すべり面
液状化」についてについて、②1999年広島災害など斜
面崩壊が土石流化して発生する「崩壊誘起土石流」に
ついて、モデルと実験----
これらの現象は都市周辺で
発生すれば深刻な被害が発生させ、今後の斜面災害研
究の進むべき方向をを学び。③土石流の基礎から述べ、
発生のメカニズム、流動のメカニズムについて理論、
実験と現場の比較を通し、氾濫・堆積シミュレーショ
ンの進歩とハザードマップ、対策工や避難誘導の研究
を学び、さらに、④1964年の新潟地震災害から1995年
の兵庫県南部地震までの地震で発生した主要な液状化
現象による被災事例やクイッククレー、クイックサン
ド現象とそのメカニズム、さらに液状化の発生メカニ
ズム、発生予測法の研究の進展、ハザードマップ作成
技術の進展を学び、「ごみ焼却施設建設計画」の防災・
減災策を考察する。

.
                 この項つづく 

【エピソード】

  
従姉妹の富田千賀子さん(和泉市)につづき、守る会
の谷口三平さん(彦根市)、町内の児玉文男さん(彦
根市)、従姉妹の吉田百合子さん(大阪市)、そして、
実弟の有山龍作が相次いで他界。そんな折、浄土宗の
月訓暦が印象的に腑に落ちる。

         咲 い て 誇 ら ず

  When things go well, don't halt but take another
  step forward.

物ごとは上手くいくと、ついそこで歩みを止めてしま
いがちだが、さらなる一歩をひたむきに重ねていくこ
とが大切だと教える。
わたしにとっては、最悪の日々と思えるのだが、なぜ
か、それを超越し素直に前に歩むことの背中をおされ
る気がした。「言葉」とは誠に不思議なものですね。
皆さま方にはいかがでしょうか。


【脚注及びリンク】
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