地域循環共生概論 62

2022年11月09日 | 防災と琵琶湖

 


 作成日:2022.11.08|更新日:2022.11.09
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅷ



放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分
8.3. 飛灰洗浄技術の概要
8.3.3 飛灰の性状
焼却施設においては、排ガス処理過程で消石灰(水酸化カ
ルシウム)が使用されることが多く、その場合、飛灰には
多量のカルシウムが含まれる。また、重金属溶出抑制のた
め、キレート剤やセメント等が添加されている。使用され
ている薬剤の種類や量、混練の有無等の影響で、飛灰の物
理的状態(粉状、粒状、硬さなど)は施設によって異なっ
ています(図 8.3)。複数の一般廃棄物焼却施設の飛灰を
調査したところ、含水率 10~20%程度、かさ比重0.8 程度
のものが多く見られた。



8.3.3 飛灰からの放射性セシウム等の溶出特性
焼却施設の運転方法やごみ質等に由来する飛灰の性状の違
いは、放射性セシウムの水への溶出性に影響を与える可能
性がある。また、飛灰の保管期間中に性状が変化する可能
性も考えられる。そこで、複数の一般廃棄物焼却施設から
排出された飛灰について、放射性セシウムの水への溶出特
性を調査。試料採取は10施設にて実施し、フレコン等で保
管されている飛灰について、可能な限り発生時期(保管期
間)の異なる複数の試料を採取した。採取した試料は粒径
5mm以下に揃え、JIS K 0058-1の方法で溶出試験を行った。
その結果、多くの施設の飛灰は高い放射性セシウム溶出率
を示し、同一施設で保管期間の異なる飛灰の溶出率は大き
く変わらなかった。但し、同じタイプの炉であっても施設
によって溶出率が低いケースがあり、全体として40~95%
程度と大きく異なることがわかった(図 8.4)。このこと
から、飛灰の保管期間は放射性セシウムの溶出性に影響せ
ず、施設毎のごみ質や運転方法の違い大きく影響している
と推察される。

 
溶出率に影響を及ぼす因子としては、排ガス処理方法が考
えられる。排ガス処理に活性白土を使用している施設(E、
F)では、飛灰からの放射性セシウムの溶出率が著しく低
下していたことから、飛灰抽出液を用いて活性白土の吸着
試験を行いました。その結果、活性白土に対する放射性セ
シウムの分配係数は 27.6 ml/gで、ゼオライト(345 ml/g)
と比べると 1 オーダー低いものの、高塩濃度・高pH条件
下においてもセシウムを吸着することが確認できた(表8.1、
図 8.5)。なお、今回の結果を第5章(放射性セシウムの
土壌等への吸着特性)で示された分配係数と比較すると、
ゼオライトの分配係数が約半分になっているが、これは今
回の供与液の共存イオン濃度が高いためと考えられ、これ
までの検討で、EC(導電率)が10倍になるとゼオライトの
分配係数が 1/10 になる結果が得られており、ベントナイ
トや茨城真砂土などでも、程度は異なるものの、同様の傾
向が認められている(廃棄物・土壌処分技術手法開発等プ
ロジェクト報告、p.15 、 http://www.nies.go.jp/shinsai /hokoku_
haikibutsu.pdf
)。今回の供与液(飛灰抽出液)の EC(5,540
mS/m)での分配係 数を比較すると、活性白土はベントナイ
トと同程度の吸着能を有していると言えます。また、検体
数は少ないのですが、セメント固化を行っている施設(A)
も若干溶出率が低いことから、セメント固化も溶出性への
影響があると考えられます。その他の要因としては、消石
灰による固結や主灰の吹き上げなどが考えられるが、いず
れにしても、主灰や下水汚泥焼却灰などと比べて、どの施
設の飛灰においても放射性セシウムは水への溶出性が高い
といえる結果となった。


8.3.4 溶出液の特性
焼却飛灰を埋め立てた最終処分場の浸出水は高濃度の塩類
を含み、pHも高いことが知ら れています。同様に、飛灰
の洗浄水も塩濃度、pHが非常に高くなります。実際に、上
記の溶出試験の結果、ろ液のpHは平均で12.5(10.5~12.9)、
ECは4,451mS/m(1,750~ 7,220)と高pH、高塩濃度となる
飛灰洗浄は、放射性セシウムが溶出した洗浄排水を処理す
る必要があるので、大量の水を使って洗った場合、洗浄排
水の処理に要するコストや用地が大きくなる
。そこで、洗
浄排水を繰り返し洗浄に使用により、実質的な使用水量の
削 減可能性を検討した。液固比は10、
溶出時間は 1 時間
としてビーカー試験を行ったところ、4 回までの繰り返し
使用では、ECおよび放射性セシウムともに同程度の効率で
飛灰から溶出しており、4 回目の洗浄排水の放射能濃度は
9,100 Bq/L、ECは 13,200 mS/mとなった(図 8.6)。この
結果、洗浄時の液固比は10だが、繰り返し使用により、実
質的な使用水量の削減が可能である。なお、このときの塩
化物イオンは 55g/L、カルシウムイオンが22 g/L、ナトリ
ウムイオンが8.2 g/L、カリウムイオンが12 g/Lで、試料
重量の約1割がこれらのイオンで占められ、非常に高塩濃
度であることがわかった。


8.4 一般廃棄物焼却施設での飛灰洗浄ベンチ試験
飛灰を埋立前に洗浄することは有意義であると考えられ
るが、これまで、放射性セシ ムを含む飛灰の洗浄処理を
一般廃棄物の焼却施設等で実施することは過去に例が無い
ため、上述した原理に基づき、実用化に向けた技術の確立
を目的として、試験研究を実施 (図 8.7)。


 8.7 飛灰洗浄ベンチ試験のイメージ図 

8.4.1 試験方法・設備 
今回の飛灰洗浄ベンチ試験の処理フローを図 8.8 に示す。
飛灰洗浄技術は、飛灰から放射性セシウムを除去する溶解・
脱水工程と飛灰を洗浄した排水から放射性セシウムを除去
する処理工程の2つに分けられる。溶解・脱水行程では、
飛灰を水に所定時間溶解し、脱水機でろ過した後、脱水機
内に水を供給し、濯ぎ(リンス)を行ってから脱水した。
リンスされた脱水ケーキは洗浄飛灰として取り出した。洗
浄排水の処理工程では、排出された放射性セシウムを含む
洗浄排水をRO(限外濾過)膜にて濃縮して透過水を回収し、
回収された透過水は放射性セシウムおよび塩類が除去され
ているので、溶解水およびリンス水として再利用した。一
方、濃縮水中には放射性セシウムおよび塩類が濃縮されて
いるので、吸着処理により効率的に放射性セシウムを除去
した。なお、洗浄排水の繰り返し使用等により洗浄排水の
塩濃度が高い場合はRO膜処理は不要とし、直接、吸着処理
を行った。



8.4.2 飛灰の洗浄効率
飛灰の洗浄効率の最適化を図るため、溶解槽(500L)に数
十kgの原飛灰と水を投入し、原飛灰と溶解水の液固比(重
量比)や溶解・撹拌時間をパラメータとした最適化試験を
行った。なお、脱水はフィルタープレスを用いて行い、リ
ンス水は投入した原飛灰の重量の0~数倍程度で試験した。
なお、放射性セシウム濃度は NaI(Tl)検出器 (AT1320A、
株式会社アドフューテック社)を使用した簡易スペクトロ
メータを用いて測定。飛灰の溶解を液固比 10倍、溶解時
間6時間で行い、フィルタープレスでリンス(リンス 液
固比 5倍)を行った結果を図 8.9 に示す。原飛灰の放射
能濃度は約 8,000 Bq/kgたが、溶解・脱水により約 1,000
Bq/kgとなり、さらに残存する溶解液をリンス水で追い出
す(濯ぐ)ことにより、550Bq/kgまで低下した。このこと
から、飛灰洗浄の仕上げとしてリンスが有効であることが
わかった。なお、脱水ケーキの放射能濃度は脱水機内部の
どの場所でも顕著な違いは認められず、脱水機内で均等に
リンシングが行われていることがわかった。


ここで WETベースは原料飛灰および脱水ケーキの有姿の値
であり、DRYベースは含水率を考慮して水分を含まない場
合に換算した値です。埋立時の放射能濃度の判断は有姿(
WETベース)で行うが、脱水ケーキの含水率にバラツキが
ある場合や物質収支を把握すること考慮し、DRYベースの
評価も併記しています。
また、飛灰と水の混合時間(撹拌・溶解時間)が放射性セ
シウム除去率に及ぼす影響を明らかにするため、溶解液固
比を10倍、リンス液固比を 5倍とし、溶解時間をパラメー
タとして行った試験結果を図 8.10に示す。溶解時間30分
ではわずかに除去率の低下が見られるものの、1時間以上
では WETベースでも除去率90%を超え、放射性セシウムの
除去率に顕著な差は認められない。従って、飛灰の溶解時
間は1時間程度の短時間で十分に洗浄効果が得られること
がわかった。なお、本試験では 8,000~27,000 Bq/kg の
飛灰について同様の試験を行い、飛灰洗浄技術は原飛灰の
放射能濃度によらず、同程度の洗浄効率を発揮することが
確認できた。
また、飛灰洗浄の効率と水温の関係を解析した結果、洗浄
効率の温度依存性は非常に小さく、水温が0℃に近い低温
であっても顕著な放射性セシウム除去率の低下は認められ
なかった。従って、冬季および寒冷地域においても加温処
理等を必要とせず、効果的な飛灰洗浄が可能であると考え
られる。
                    この項つづく

10月31日、彦愛犬1市4町の新しい広域ごみ処理施設につ
いて、彦根愛知犬上広域行政組合の管理者と副管理者を務
める首長5人らが事務局がある豊栄のさとで記者会見し、
ごみ処理方法をこれまでの熱焼却方式から環境負荷が小さ
い好気性発酵乾燥方式(トンネルコンポスト方式)に変更
できるかの調査を行うと発表。管理者の和田裕行市長は調
査の結果次第では建設候補地の西清崎地区を変更する可能
性も示唆したという(しが彦根新聞、2022年11月2日)。
この件については同時掲載していくが、「焼却」から「脱
炭素」へ調査との市長発言の背景を考えてみる。




まず、環境省 環境再生・資源循環局資料(2021.08.05)
「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出
実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」から「第3章 中
長期シナリオにおいて見込んだ対策:実質ゼロに向けて必
要となる取組と留意点」を参考にすると、①資源循環を通
じた素材毎のライフサイクル全体の脱炭素化、②地域の脱
炭素化に貢献する廃棄物処理システムの構築(一般廃棄物
処理システムを中心に提示)、③廃棄物処理施設・車両等
の脱炭素化が掲げられ、②では、(1)有機性廃棄物対策
:焼却施設の新規整備と合わせたメタン発酵施設導入の想
定➲新規に整備する「焼却施設での処理量+メタン発酵
施設の処理量」のうち、メタン発酵施設での処理量は一人
当たり50kg/人年を想定。(残りは焼却されると想定)、
(2) 廃棄物エネルギー利活用(発電)では、社会導入
される廃棄物発電の効率は、国の政策と民間事業者の技術
開発が相まって向上し、発電効率決定の主要因となる ボ
イラ蒸気条件は、従来の高効率発電の目安の4MPa, 400℃
を最近の導入事例では超えつつある。⇒「6MPa,450℃」へ
の高温高 圧化を対策として見込んでいる(下図参照) 。 


また、(2)廃棄物・資源循環分野におけるCCUSの技術要
素---- CCSとCCUの両方を指し、二酸化炭素回収・有効利用・
貯留のこと。 ここで、CCSはCarbon dioxide Capture and
Storageの略で、二酸化炭素回収・貯留のこと。 また、CCU 
とは、Carbon dioxide Capture and Utilizationの略で、
二酸化炭素回収・有効利用のこと----では、CCUSを前提と
した廃棄物処理システム・施設のあり方を調査研究・技術
開発していく必要があるが、ただし、300t/日規模の焼却施
設にて二酸化炭素分離回収し、輸送のため液化まで行っ
た場合、現状 の性能の二酸化炭素分離回収施設を単純に
追加すると、蒸気消費に伴う発電量の低下及び消費電力
の上昇により、売電が行えなくなるとの試算もあるという。


さらに、③の重点対策領域Ⅲ: 廃棄物処理施設・車両等の
脱炭素化で、(1)省エネ化・電化・バイオマスエネルギ
ー利用に関しては、エネルギー消費量の大きい施設等とし
て、①焼却施設、②し尿処理施 設、④収集(自動車)に
ついて、 「エネルギー消費量の削減」及び「利用エネル
ギーの転換」を想定。 


①焼却施設における対策:所内動力の削減:焼却施設にお
ける電気使用量(原単位)は、同一の処理方式の中でも差
が見られ る。外部へのエネルギー供給の拡大の観点から
も、省エネルギー化が必要。助燃燃料の削減:焼却施設に
おける燃料使用量は、処理方式(施設種類)による違いも
大きい。多 数を占める焼却炉方式では立上時等の使用割
合も多いとみられ、ダイオキシン類発生防止等と両 立し
た省エネルギー化が必要。 
②し尿処理施設における対策(し尿・浄化槽汚泥と生ごみ
のメタン発酵での統合処理効果)➲生ごみとメタン発酵
で統合処理し、消化液を液肥利用すれば、エネルギー起源
CO2排出量は劇的に 減少。 
③収集車両(電動パッカー車):
・EVトラックシャシとの組み合わせで、走行から積込まで
 を全て電動化したパッカー車両は既に実現。
・現在のリチウムイオン電池を前提にすると、容量約80kW
 hで走行距離100kmのトラックに架装すれば、積込を含め
 約85kmの走行距離が確保できるが、大容量バッテリパッ
 ク重量も加わると、電費悪化に 加え、最大積載量減少可
 能性があるため、バッテリを縮小し、休み時間中に急速
 充電でカバーする運 用対策が考えられる。
・一方、バッテリパックを交換式とすれば、ごみ処理施設
 において交換することで、速やかに対応できる。
・電動化で、走行時に加え、積込も電動パワーユニットで
 騒音対策可能性が高まり、静粛化可能。

 以上、詳細及び追加事項は適宜、時宜をみて掲載する。

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【エピソード】



拝啓
中国からの五百万人の拡散にはじまるウイルス感染パ
ニックは四年目に突入。新年の総会(顔見せ)をどう
しょうかと迷っております。メッセージ、ライン、メ
ールなんでもかまいません、ご意見を待っています。
                    幹事敬白 

【脚注及びリンク】
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