● 高いふ化率、成長早く 西の湖周辺
琵琶湖の固有種のホンモロコが、沿岸部や接続水域の内
湖だけでなく、内湖に流入する河川までさかのぼって産
卵していることを、滋賀県水産試験場や県水産課が近江
八幡市の西の湖周辺の調査で初めて確認したという。同
試験場では「春先の河川は琵琶湖や内湖より水温が高く
早期の産卵や稚魚の成長につながり、琵琶湖の水位低下
で卵が干上がる被害も少ない」とみて今後の資源回復に
生かせる調査資料とみている。
産卵期の2012年3~6月、西の湖に注ぐ山本川と蛇
砂川の中・下流域などを調査し、2河川で3月下旬以降、
小石の河床や、オオカナダモなどの水中の植物に産み付
けられたホンモロコの卵を多数発見。山本川では産卵地
で知られる大津市北西部や長浜市の琵琶湖沿岸部より2
週間から1カ月早く産卵する。
3月上旬~4月上旬の2河川の水温は9.8~15.4℃
と親魚が産卵を始めるとされる温度で、同時期の西の湖
の水温(7.4~14.1℃)や、大津、長浜の琵琶湖沿
岸部も上回った。親魚は産卵のため琵琶湖から西の湖に
移動した後、それぞれの河川へ遡上し、他地域よりも早
く産卵したと推測している。
2河川では雌より雄が多く、多数の雄が遡上する雌を追
尾していた。雌は数回にわたり産卵する習性があり、河
川と内湖を行き来していた可能性もある。「河川で早期
に産卵することで稚魚が早く成長できる。外来魚などに
捕食されないように回避する能力も高まり、生存につな
がっているのではないか」との職員の話を伝えている。
琵琶湖岸や内湖では、ホンモロコが水深約数センチのヨ
シ帯やヤナギの根に産卵し、わずかな水位低下で卵が干
上がることが指摘されている。山本川の産卵場所は水深
25~35センチで水位変動の影響が少なく、卵のふ化
率も高いとみられている。
ホンモロコは味の良さから人気が高いが、約20年前か
ら激減して12年漁獲量は14トンと最盛期の20分の
1以下。環境省レッドリストで絶滅危惧種になっている。
「産卵場を守るためには、ホンモロコが琵琶湖と内湖、
河川を行き来しやすい環境を維持することが必要だ」と
担当者は指摘している。
尚、西の湖は大中之湖干拓地の造成の際に水域として残
った部分である。流入河川は安土川、山本川、蛇砂川お
よび黒橋川で、長命寺川を介して琵琶湖に注ぐ。干拓前
は周辺の多くの内湖が存在したが、現在ではいずれも姿
を消しているが、その1つとして彦根市は矢倉川河口の
一大産卵場は埋めてにより消滅している。
『松原磯の本諸子』(2011.12.15)で掲載したように
12月から2月に掛けての子持ち寒ホンモロコの三杯
酢は絶品。七輪で炭焼きし、燗酒で琵琶湖の恵みの宝
を戴ければ至福この上ない。
【脚注及びリンク】
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1.ホンモロコとは? 草津ホンモロコ生産組合
2.ホンモロコ料理紹介 草津ホンモロコ生産組合
3. 大中湖
4. ホンモロコ、川でも産卵 琵琶湖から遡上 2014.09.02
5. 琵琶湖漁業を支える魚たち > ホンモロコ 滋賀県
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