地域循環共生概論 63

2022年11月25日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.11.25|更新日:2022.11.26
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅸ


放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分

8.4.3 使用水量の低減  
▶ PP.141~147


8.4.3 使用水量の低減 本システムでは、洗浄排水を RO膜
ユニットに通すことにより、放射性セシウムを除去・分離
した透過水と濃縮水を得ることができる。この透過水を洗
浄水として再利用する ことは、システム全体の水使用量お
よび排水量を低減することができ、省コスト化、省スペー
ス化において重要。図 8.11 は RO 膜処理による放射性セ
シウムの除去効果を示す。ここで、縦軸は放射性セシウム
濃度の監視基準の算定式である Cs-134÷60Bq/L+ Cs-137
÷90Bq/L で換算した値。


RO 膜処理水は、1 段処理では原水の濃度の変動により濃度
基準が 1 を超えることがあったが、放射性セシウムの除去
率は 95%以上であり、1 段処理水を洗浄水として再利用可
能と班名する。さらに 2 段処理を行うことにより、RO処
理水は十分に濃度基準を満足することが判明。

使用水量を低減させる別の方法として、溶解水やリンス水
もしくはそれらの吸着処理水の再利用が考えられる。特に、
飛灰を溶解させた飛灰溶解水をろ過した後に行うリンスで
は、塩類等がある程度低下するため、リンス水中の塩濃度
は飛灰溶解水よりも低くなっており、再利用の有効性が高
いと考えられえる。そこで 1 度使用したリンス水を飛灰溶
解 水として再利用した場合の飛灰の洗浄効果の変化につい
て、検討を行いました。 試験は、溶解水の液固比を 5~10、
リンス水の液固比は逆に 10~5とし、トータル液固 比は
15 で固定して行った。リンス水を溶解水として再利用した
場合としない場合の放射性セシウム除去率の比較を図8.12
に示す。この結果から、溶解水の液固比によらず、 リンス
水の溶解水としての再利用は洗浄効果に悪影響を与えない
ことがわかる。なお、トータル液固比を 10(溶解液固比
5 倍)に下げた試験では、リンス水の再利用により 洗浄効
果の若干の低下が見られましたが、それでも除去率は 90%
を超えており、その影響は軽微であると考える。このよう
に、水を繰り返し使用することで、洗浄効率を維 持しつつ、
使用水量を削減できることが判明。使用水量の削減はシス
テムの省コス ト化、省スペース化に重要であり、限られた
スペースで本技術を活用する上で、その適用性・ 有用性の
向上に大きく貢献するものと考える。


8.4.4 洗浄排水からの放射性セシウムの除去
飛灰の溶解液および脱水ケーキのリンス水を混合した洗浄
排水には、飛灰に由来する多 量の塩類とともに放射性セシ
ウムが含まれている。洗浄排水に含まれる放射性セシウム
を除去するためには、高塩濃度条件下で効率的にセシウム
吸着・除去する必要。 そこで、共存する陽イオン濃度が高
い環境でもセシウム選択性の高いプルシアンブルー(フェ
ロシアン化鉄)を粒状に成形した吸着剤(東亞合成(株))
を用いて吸着処理試験を行う。プルシアンブルーは一般的
には青色顔料として身近なところで使われているが、セシ
ウムの吸着剤として高い吸着容量と選択性を有す。但し
高pH環境下では分解してしまうこと、排水基準項目である
シアンの溶出が有り得ることなどから、取扱には注意が必
要。吸着試験条件を表 8.3 に示す。洗浄排水は pHが12程
度と高いため、塩酸によりpHを中性にしてから吸着処理を
行う。その結果、図 8.13 に示す通り、吸着処理の原水中
の放射性セシウム濃度は洗浄する飛灰の濃度で変動し、
1,000~3,400Bq/kg の間で推移。これに対して吸着処理水
は常に 10Bq/kg 未満。従って、高濃度の塩類を含む飛灰洗
浄排水においても、含有する放射性セシウムを効果的に吸
着除去きることが実証。なお、処理フローではRO膜処理に
より洗浄排水を濃縮した後に吸着処理を行うが、上述のリ
ンス水の再利用を行った場合は、RO膜処理を行わなくても
洗浄排水が高濃度となるため、直接吸着処理を行った。そ
の場合においても、吸着処理の性能に変化は見られず、十
分な処理性能が得られている。

一方で、プルシアンブルー吸着剤に濃縮された放射性セシ
ウムの状況を把握するため、吸着塔表面の放射線量率を測
定す。図 8.14は第 1 吸着塔の流入部表面の放射線量率の
経時変化を示す。処理を進めるにつれて放射線量率が上昇
し、洗浄排水から放射性セシウムが吸着除去されている様
子がうかがえる。

また吸着塔内の吸着剤の放射性セシウム吸着量の推定および
分布の把握を行う。ここで吸着量は、吸着塔に投入した総
ベクレル数から処理水に含まれる総ベクレル数の差を吸着塔
内の吸着剤重量で除して、平均吸着量を求めると同時に、
予め、吸着塔表面の放射 線量率と吸着量を換算する係数を
求めておき、吸着塔毎の放射線量率を測定することで、各吸
着塔における吸着量を算出。図 8.15 に示す通り、吸着塔
へ投入した総ベクレル数が 10,000 Bq の時には吸着塔 Aの
下部(1 段目の入口)の吸着量は 20 万 Bq/kg程度だが、
総ベクレル数が 300,000 Bqの時には 2百万Bq/kg 程度まで
吸着された。このとき、吸着塔 Aの上部(出口側)ではまだ
吸着量に余裕があるとともに、吸着塔 D(4塔目)までにほ
とんどの放射性セシウムが吸着される結果となった。


また、原水の放射性セシウム濃度の上昇に伴って吸着量が
増加することも確認された。原水の放射能濃度は最大で
3,000 Bq/kg 程度で、その際の吸着量は吸着剤の充填率を
加 味すると約 1,000 万 Bq/kg となる。この結果を元に、
飛灰の放射能濃度を 20,000 Bq/kg と仮定したときの物質
収支を図 8.16に示す。


一方で、廃吸着剤の放射能濃度を 10 万 Bq/kg 以下に制御
する方法も検討した。この場合、単位吸着剤量あたりの放
射性セシウム除去量が少なくなるので、より多くの吸着剤が
必要となる。そこで、安価で汎用性の高い天然ゼオライト
を焼成したモルデナイト 型ゼオライト(ゼオフィル、新東
北化学工業(株))を使用。 ゼオライトを用いた吸着試験
の条件と結果を表 8.4 に示す。なお、廃吸着剤の放射能
濃度を 10 万Bq/kg 以下に制御するため、ゼオライト吸着
剤を砕石と混合して試験を行った。この場合でも、吸着原
水で 3,900 Bq/Lあった放射能濃度が吸着処理水では検出下
限値(10Bq/L)未満となり、十分な処理性能が得られた。


ここで、処理対象飛灰 1,500t、放射能濃度 20,000 Bq/kg
の条件で、飛灰洗浄による減容化率を試算。表 8.5 に示
す通り、プルシアンブルー吸着剤を用いた高濃度濃縮の場
合では、廃吸着剤量は 2.7t(3.4m3)となり、減容化率は
極めて高く、原飛灰の 0.19%の容 量となる一方、ゼオラ
イト吸着剤を用いた中濃度濃縮の場合の減容化率は 13.5%
で、高濃度濃縮ケースに比べると減容化率は低くなるが、
放射能濃度は 10 万 Bq/kg 以下に制御されることから、一
時保管における遮へいに要するコスト・スペースが小さく
なる。いずれのケースでも、廃吸着剤では原飛灰と異なり、
放射性セシウムの溶出性が極 めて低くなっていることから、
速やかに中間貯蔵施設や国の最終処分場に搬出されること
が期待される。


8.4.5 洗浄飛灰に含まれる
       放射性セシウムの水への溶出性

飛灰洗浄による溶出性低減効果を確認に、放射能濃度の異
なる原飛灰を洗浄し、放射能濃度の変化を確認するととも
に、洗浄飛灰の溶出試験を行う。溶出試験は JIS K0058-1
に基づいて行い、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射
能濃度を測定した。 表 8.6 に示す通り、原飛灰で 8,000
もしくは 26,000 Bq/kg 程度であったものが、洗浄後には
それぞれ 400、2,200 Bq/kg 程度まで低減しており、洗浄
飛灰の溶出濃度は
ての放射性セシウム溶出率は 23%程度が、洗浄前(原 飛灰
)の状態から考えると、2%程度となる。原飛灰からの放射
性セシウム溶出率が 90% 超であることを考慮すると、大幅
な溶出性の低減が図られたと言える。

上述した溶出試験は特措法に基づくものだが、溶出時間が
6 時間であるため、念のため、約 1 ヶ月の溶出試験を実施
しました。先ほどとは別の洗浄飛灰(1,453 Bq/kg)を同じ
ように 10 倍量の水と混合し、30 分後、6 時間後、7、17、
29 日後に溶出液中の放射能濃度 を測定。その結果、6 時
間後の溶出濃度は 19 Bq/L(溶出率 13.1%)であり、その
後、顕著な変化がなかったことから、洗浄飛灰に残存する
放射性セシウムの大部分は不溶性であると推察(図 8.17)。



なお、環境庁告示第 13 号(昭和 48 年 2 月 17 日)に
基づいて溶出試験を行った結果、鉛 について基準値を超え
る値が検出されることがありましたが、液体キレートを飛
灰溶解水 に添加(重量比 2%)することで、洗浄飛灰から
の鉛の溶出を抑制することが可能であることが確認できて
いる。

8.4.6 洗浄不溶化試験
8,000 Bq/kg 超 100,000 Bq/kg 以下の指定廃棄物は、埋
立後の放射性セシウムの溶出リス クを低減するため、セメ
ント固型化や隔離層の設置が義務づけられています。しか
し、当該 廃棄物からの放射性セシウムの溶出量が少なけれ
ば(基準値:溶出試験で Cs137 が 150Bq/L 未満)、セメ
ント固型化をせずに埋立処分することができ、埋立時の隔
離層の設置について も上部の不透水層以外は不要となる。
そこで、ここまでに示した飛灰洗浄技術を応用し、埋立処
分の前処理として飛灰中の放射性セシウムを不溶化する方
法(図 8.18)を検討した。       

  
リスク除外技術手法についこのまま、最後まで読み進めて
いく。
                         この項つづく

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【ごみ焼却場建設問題再考Ⅳ】

広域ごみ施設
処理方式変更に質問相次ぐ
「東近江の失敗繰り返さぬよう」
彦愛犬1市4町の新しい広竣ごみ処狸施設について協議す
る彦根愛知犬上広域行政組合の議会臨時会が15日に開かれ、
議員からは管理者の和田裕行市長が示した処理方式を「熱
焼却」から「好気性発酵乾燥(トンネルコンポスト)」方
式への変更を検討することに対しての質問が相次いだ。
 トンネルコンポスト方武は生ごみや鰍プラスチックなど
が混在する可燃ごみを粉砕し、専用のコンクリート製の槽
べ投入することで、微生物が生ごみだけを発酵分解。その
際の熱を使って乾燥処理された紙やプラスチックなどは工
業用RPF(固形燃料)となる。熱焼却方式と比べ、煙やダ
イオキシンなどが発生せず、乾燥の工程で化石燃料を使わ
ないため二酸化炭素の排出量が削減できるといい、設備投
資やランニングコストも抑制できるという。同方式は香川
県三豊市が6年前に国内で初めて導入した。同行政組合は
同方式の実現可能性を検証するためのコンサルタント業者
への委託費(552万円)と、三豊市のバイオマス資源化セン
ターみとよへの組合議員の視察経費(76万円)などを盛り
込んだ補正予算案(1124万円)を臨時会に提案した。

固形燃料の買い手先は?
議員指摘に市長「営業努める」
臨時会では市町の4人の議員が登壇。彦根市の伊藤容子市
議の建設候補地の変更の可能性やスケジュールについての
質問に、事務局は「今回の予算は調査費のみで、建設候補
地の検討は入っていない。今年度中に判断材料を集めたい
」とした。
 愛荘町の瀧すみ江議員は、犬上郡や愛荘町、旧愛知郡の
ごみを処理している湖東広域衛生管理組合リバースセンタ
ー(東近江市)で処分後に出る固形燃料(RDF)の買い手
が県外で、赤字状態が続いている点を紹介した上で「同じ
失敗が繰り返されるのではないか。RPFを引き受ける近隣
の企業はあるのか。RDFを燃やすには専用の焼却炉が必要
になるが』と指摘。事務局側は「近隣に買い手となる事業
者があるのかも含めてコンサルで調査してもらう」と答え
た。
 甲良町の西渾伸明議員は「廃棄物の分別が崩れる可能性
や購入先などRPF万全ではない。ごみの減量や分別回収の
徹底は継続して必要だ」と質問。和田市長は『広域ごみを
巡っては何度もちやぶ台が返されてきたが、(トンネルコ
ンポストは)ヨーロッパでは当たり前の方端事業者への営
業に努めたい」と述べた。提案された補正予算案は全会一
致で可決された。(via しが彦根新聞 2022.11.19)
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※【RPFとRDF
 RPFは主に民間企業の排出、RDFは自治体による収集と
の違いがある。ほかにRPFは異物混入が少なく、含水率が
い低い。一方、RDFは家庭ごみのため、分別に限界があ
り水分率も高い。このためRDFは複数の装置や設備が必要
になる。一般的には下表の性状の違いがある。

RPFとRDFとの比較表 (下表クリック)



❏ 予定より大幅な考察の遅れとなっているが、この議論を
 深め、本論の展望の構築をはじめる。

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【エピソード】



いざ、蓬莱山はびわこテラスへ!

正午から琵琶湖テラスに向かい、蓬莱山(打見山)か
ら琵琶湖を
一望する。


南湖を望む


北湖を望む


明日のメタセコイヤ並木は雨模様......?



ところで、水耕栽培と養殖を掛け合わせた、次世代の循環
型農業を意味する「アクアポニックス」が話題にとなって
いる街が、2022年8月に高島市は「BIWAKO AQUA PONICS
」(ビワコアクアポニックス)がオープンしている。「植
物工場」「垂直農法」に興味あり見学をブッキングするこ
とに。滋賀県は面白いね。



【脚注及びリンク】
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