地域循環共生概論 64

2022年11月30日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.11.30|更新日:2022.
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅹ


PP.149-
8.4.6 洗浄不溶化試験
放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分具体的に
は、上述のベンチ試験装置を用い、飛灰洗浄において水に
溶解する際に放射性セシウムを不溶化するための吸着剤を
添加して飛灰中の放射性セシウムを不溶化する方法 (洗
浄不溶化方式)の実証試験を行う。放射能濃度が 22,000~
27,000 Bq/kg程度の原飛灰 40kg に対して吸着剤としての
ゼオラ イトを 10~30%添加し、溶解液固比を5倍、リンス
液固比を 2.5倍、吸着時間を 1時間として不溶化処理を行
った。フィルタープレスで脱水・排出された不溶化飛灰の
溶出試験を行ったところ、溶出性が著しく低減されている
ことが確認した。また、ゼオライトの添加率が高いほど溶
出濃度は低くなるが、10%添加でも溶出濃度はNDレベル(
10 Bq/L 以下)となることがわかった(図 8.19)。


図 8.19 ゼオライト添加率と不溶化飛灰からの放射性セシ
ウム溶出濃度の関係

なお、洗浄不溶化した際の排水中には数百 Bq/L 程度の放
射性セシウムが残留しているため、後処理を行って除去す
る必要がありますが、洗浄不溶化で使用する吸着剤と同じ
ものを吸着塔に充填して通水することにより、NDレベル(
10 Bq/L 以下)まで除去できました。また、この後処理で
使用したゼオライトは吸着容量が十分に余っているためこ
れを粉砕して洗浄不溶化に再利用できることも確認した。
従って、飛灰溶解時に添加する吸着剤の量に合わせて後処
理吸着の条件を調整することで、二次廃棄物を発生させる
ことなく不溶化処理が可能であることがわかった。

8.4.7 放射線管理
飛灰洗浄ベンチ試験を実施したエリアの空間線量率をモニ
タリングしたところ、飛灰洗 浄による事業所外部への汚
染の拡大は見られませんでした。但し、飛灰を大量に搬入
するとその周辺は線量率が上昇するため、必要に応じて遮
へい等の対応を検討する必要がある。一方、放射性セシ
ムを吸着・濃縮する吸着ユニットや廃吸着剤を保管する

管スペー スは鉄板やコンクリートによる遮へいを行っ

おり、十分な被ばく防護が確認した。
また、電離則で定め
られている作業環境測定を作業環境測定士により 1cm 線
量当量率、床面の表面密度、空気中放射性物質濃度の測定
を行った結果、特段の汚染は認められず、適切にプロセス
を管理できることがわかった。なお、原料飛灰は一定の水
分を含んでいるため、溶解作業中に粉塵として舞うことは
ほとんどない。
 作業に従事した作業員が作業により受けた被ばくについ
て、表 8.7 に示す。作業従事者の被ばくは 0~2μSv/日
程度で、試験期間に最も放射線量を受けた作業員(E)で
も約 1 年間で 0.25 mSv 程度であり、法律で定められて
いる年間 50 mSv、5 年で 100 mSv と比較 して非常に低
い値で管理できる。規模が大きくなると処理する飛灰量が
増加するために放射線量の増加が考えられるが、実設備で
は飛灰溶解作業の自動化による作業時間の短縮、吸着塔の
遮蔽とデータの自動測定等により、作業員が受ける放射線
量を低減することが可能である。

8.4.8 ベンチ試験のまとめ 
以下に、飛灰洗浄ベンチ試験で得られた結果をまとめた。

飛灰洗浄による放射性セシウム除去率は概ね 90%以。 
・洗浄後の飛灰には放射性セシウムが 10%程度残存したが、
 8,000 Bq/kgを大きく 下回り放射性セシウムの溶出濃度・
 溶出性も著しく減少した。
• 洗浄排水中の放射性セシウムは、吸着塔で除去・回収さ
 れ、処理水中の放射性セシウム濃度は ND レベル(<10
 Bq/L)。
• 一連のプロセスを通して、適切に放射線管理が可能。
クリーンセンター等では排水できないケースが多いため
 処理水の蒸発固化が必要であり使用水量の削減が重要
 となる。
現時点では二次廃棄物(廃吸着剤)の搬出先がないため
 放射性セシウムを濃縮した二次廃棄物を放射能濃度に応
 じて遮へい容器等に収納し、場内に一時保管する必要
 ある。
• 放射能濃度の高い二次廃棄物は、一度保管したら移し替
 え等は困難であるため、中間貯蔵および最終処分におけ
 る廃棄体と保管形態・容器等の条件を整理しておく必要
 がある。

以上7項を挙げている(測定値の「分散リスク解析」は無)。

8.5 飛灰洗浄技術の開発状況
8.5.1 飛灰の洗浄方法
飛灰中の放射性セシウムを溶解、洗浄して分離させる技術
としては、本稿で示した方法を 含め、以下のような技術開
発が進められている。 

⮚水洗浄
飛灰に対して数倍程度の水を加えて溶解させた後、フィル
タープレス等で脱水することにより、放射性セシウムが除
去された洗浄飛灰と放射性セシウムを含む排水とを分離す
る方法。(国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼環境ソ
リューション)
・本稿 8.4 
放射性物質に汚染された飛灰の洗浄による埋立前処理に関
する研究(2013) 第 34回全国都市清掃研究・事例発表会
講演論文集、313-315.
・飛灰中のセシウムの洗浄分離に関する研究(2012)
第23回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集、573-574. 
・水洗浄+磁気分離
飛灰の水洗浄の際、もしくはその後に磁性吸着剤を混合す
ることで水溶性の放射性セシウムを除去し、放射性セシ
ウムを吸着した磁性吸着剤は超伝導磁気分離装 置で分離・
回収する方法。吸着剤は繰り返し使用可能。これにより、
水洗浄と洗浄排水の処理を同時に行うことができ、システ
ムをコンパクトにできることが期待される。なお、磁性吸
着剤を工夫することで、高pH耐性と磁力の向上を図り、磁
気分離に永久磁石を用いることも試みられている。
(三菱製紙(株)・(株)MS エンジニアリング、他)
・磁気分離法による飛灰浄化方法の検討(2012)第1回環
境放射能除染研究発表会
・磁性吸着剤を用いた放射能除染システム(2012)月刊
 JETI2012 年 12 月号 (大成建設(株)) 
・平成 25 年度除染技術実証事業

⮚ 飛灰を造粒して水切りフレコンで固液分離飛灰をセメ
ントにより造粒固化してから水洗浄することで、その後の
固液分離に水切りフレコンを用いることができ、コスト削
減が期待される方法。 ((株)大林組) 
・飛灰の放射能濃度低減を目的とした造粒固化洗浄 (2013)
大林組技術研究 所報 No.77 
・平成 24 年度除染実証事業報告

⮚散水による極小水量での洗浄技術 機械撹拌等を用いるこ
となく、間欠散水・通気を利用して使用水量および洗浄排
水の量を極端に少なくする洗浄方法です。実証試験では、
液固比 0.5程度で洗浄を行い、環告13号法による溶出(液
固比 10)と同程度の洗浄効果が得られてい ます。
(株)フジタ 
・平成 25 年度除染実証事業報告書

8.5.2 洗浄排水からの放射性セシウムの除去方法
高濃度の塩類を含む排水から放射性セシウムを効率的に除
去するため、以下のような技 術開発が進められている。
⮚プルシアンブルー
造粒プルシアンブルーを吸着塔に充填し、飛灰洗浄排水を
通水する方法。(国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼
環境ソリューション) 
・本稿 8.4 
・洗浄・水処理プロジェクト(2013.7) http://www.nies.go-
.jp/shinsai/hokoku_senjou.pdf

・一般廃棄物焼却設備の飛灰除染一貫処理システムを開発
(2013.8)
http://www.kobelco-eco.co.jp/topics/news/2013/20130806.htm
フェロシアン化鉄(プルシアンブルー)を飛灰溶解液中で
合成し、セシウムを吸着するとともに、凝集沈殿する。さ
らに、凝集沈殿物をアルカリ溶液で分解し電気透析で放射
性セシウム濃縮液を作り、ゼオライトに吸着させる。(ア
タカ大機(株))焼却飛灰等の水洗浄除染とその水処理(
2014)第 35 回全国都市清掃研究
・事例発表会講演論文集、318-320. 
溶融飛灰からの放射性セシウムの分離除去技術について
(2012)環境技術、 41(9)、41-46. 
飛灰からの放射性セシウムの分離除去に係る新技術の開発
について(2013.8
http://www.atk-dk.co.jp/xml/docs/ATK_214.pdf

ナノ粒子化したプルシアンブルーで高効率にセシウムを吸着す
る方法す。 (産業技術総合研究所、他) 
・Adsorption removal of cesium from drinking waters: A mini
review on use of biosorbents and other adsorbents (2014) Biores-
ource Technology、印刷 中
(DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.biortech.2014.01.012) 
・ナノ粒子化したプルシアンブルーでセシウム吸着能が向上(
2012.2) http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/
pr20120208/pr20120208. html 
植物系放射性セシウム汚染物を除染・減容するための実証試
験プラント (2012.11)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20121112/
pr20121112.h tml
⮚ゼオライト
天然ゼオライト(モルデナイト)を吸着塔に充填し、飛灰洗浄液
を通水すること により放射性セシウムを除去する方法。吸着剤
の放射能濃度を制御すること で、保管・管理方法を選択できる。
また、飛灰洗浄時に一定量添加 することにより、不溶化処理を
行うこともできる。 (国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼環境
ソリューション
・本稿 8.4 
⮚クラウンエーテル洗浄排水中の放射性セシウムをクラウ
ンエーテルにより吸着した後、溶離工程により濃縮・回収
する方法。
((株)タクマ)
・繰返し使用可能な吸着剤を用いた焼却飛灰からの放射性
セシウムの分離除去 システム(第 2 報)(2014)第 35
回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文 集、324-326.
・繰返し使用可能な吸着剤を用いた焼却飛灰からの放射性
セシウムの分離除去 システム(2013)都市清掃、66(313)、
306-309.
・焼却飛灰中の放射性セシウム除去システムを開発(2013.1)
http://www.takuma.co.jp/news/2012/20130123.html

9. 埋立処分過程における挙動と制御
9.1 モデル解析からみる挙動と埋立工法
現時点で放射性物質に汚染された廃棄物(焼却灰等含む)
の埋め立ては、濃度によって分類されており、その値は、
作業者の被曝線量率から求められた 8,000 Bq/kg(廃棄物
中に含まれる放射性物質濃度:以下、固体濃度とする)が
採用されている
。重金属やその他の有害物質に関して、廃
棄物最終処分場への埋め立ては、固体濃度ではなく、廃棄
物処分 場から発生する浸出水に対する影響という観点から、
溶出試験によって分類されてき た。したがって、現時点
では、浸出水への影響よりも作業者の被爆が優先されてい
ることになる。当然、埋立後の地域住民に対する被曝線量
を十分に低くしなければならないことから、固体濃度によ
る規制も必要だが、放射性物質を含む浸出水が発生した場
合に、既存の水処理施設では十分な対応が取れないことか
ら、被曝量と同時に、浸出水への影響も考える必要があす。
放射性物質に汚染された廃棄物には、放射性物質を溶出し
やすい廃棄物と、しにくい廃棄物がある。溶出しやすい廃
棄物としては、家庭や事業所から出される一般廃棄物の焼
却飛灰が挙げられる一方で、一般廃棄物の主灰からは溶出
しにくく、下水汚泥の焼却灰(飛灰)や上水汚泥からも溶
出しにくいことが確認されている。ここでは、放射性物質
に汚染された廃棄物の埋め立て時において考えなければな
らない共通事項や留意事項 を示すとともに、溶出量の大小
における浸出水への影響について述べる。
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【エピソード】

  
にわか読書棚



ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機(天
然ガス・石油の供給不足による電力不足)や気候変動によ
る農産物不足(ウクライナ進行による小麦供給不足/米国
やトウモロコシ供給不足)の食糧・食品・電気料金の高騰
と、全国の原発の一斉再稼働への加速が起きており、国民
生活・健康破壊が懸念されます。

  

脚注及びリンク】
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