作成日:2020.08.02|更新日:2020.08.14
地域循環共生圏概論⑬:事業継続計画(BCP)編
♘ 地域に小さなエネルギーー拠点を増やすこ
とで地域に貢献 自然電力株式会社
発電所の開発から、運営、電力の販売まで、再エネ
事業全般を手がける自然電力株式会社。昨年末から
開始。「ミニマムグリッド事業」では、地域に小さ
な発電拠点を増やし、自然エネルギーを取り入るた、
災害にも強い暮らしを提案。自然エネルギーの活用
で分散型社会の実現を目指す。
「発電所+α」の価値を地域に
2011年6月の創業以来、『青い地球を未来につなぐ』
を企業の存在意義とし、国内外での再エネ導入推進
を行なってきた自然電力。脱炭素社会、分散型社会
の実現を目指し、再エネの事業開発、EPC、 資産管
理、運用保守、小売事業と、電気をつくるところか
ら使うところまでグループとして一貫してカバーし
た事業を展開。国内ではすでに1GW程度の事業開発
を手がけており、完工発電所が500MW、オペレーシ
ョン管理が300MW。電源構成は、太陽光が主だが、
近年は風力、小水力、木質バイオマスにも注力。海
外はアジアを中心に6カ国で事業を開始。自然電力
は、再エネ発電事業は、ある意味、究極のローカル
事業。一度発電所を設置したら、数十年場所を変え
ることなく、限界費用ゼロのエネルギーを生み続け
る。地域にとって、非常に貫重な施設となる。同社
では、地域のコミュニティに根ざした発電所づくり
を行なうことはもちろん『1% for Community』と
して、発電所の収益の一部を地域に還元。例えば、
熊本県合志市の『合志農業活カプロジェクト』は、
発電所の売電収入の一部を地域の農業振興や地元の
特産品を使った新商品企画に活用することで、発電
所事業を通じ、発電所+αの価値をいかに地域に生
み出せるか、地域の価値を高めていくかというのが、
自然電力の考え方の軸の1つだと話す。
地域全体のレジリエンスを高める
太陽光発電の最大の特長は、小規模であっても安価
なエネルギーを、電気を使う場所の近くでつくれる
ことにある。同社が、ミニマムグリッド事業を立ち
上げたきっかけは、千葉県を中心に大きな被害をも
たらした、昨年の台風15号で、千葉県内では最大約
64万軒もの建物が停電し、一部は長期化。大きなグ
リッドに頼る、効率だけを重視したしくみの危うさ
が露呈する。
生活全般の短期的な効率重視へのアンチテーゼを感
じています。社会に大きな変化が起こりつつあるこ
とを感じ、ミニマムグリッド事業を開始。ミニマム
グリッド事業では、太陽光パネル・蓄電池・最適制
御システムを組み合わせ、自然エネルギーを取り入
れた暮らしを提案する。火力や原子力を中心に設計
された中央集約型のグリッドシステムに依存せず、
自分たちで創った自然エネルギーを最大限に活用し
ながら、天候や電力需要に合わせ送電線から電気を
購入。エネルギーコストを削減しながら、無理なく
自然エネルギーを暮らしに取り入れることができる。
ミニマムグリッドを導入した建物のメリットのひと
つが、災害に対するレジリエンス強化だ。このシス
テムを導入することで、災害時に停電した場合でも、
最低限必要な設備を2日間程度維持することができ
る。晴れの日が続けば、グリッドから自立した状態
で、電力供給を継続することも可能となる。「建物
単体の防災レジリエンスもありますし、地域の防災
レジリエンス全体を高めることにも繋がる。
最初の案件として、宮崎県都城市で特別養護老人ホ
ーム・デイサービス・地域密着型介護事業等を行な
う社会福祉法人莞爾会ヘシステムを導入。環境負荷
の低いエネルギーの使用と電力のピークカットを目
的にシステムを導入した同施設は、行政から防災拠
点にも指定されている。
災害時には、この社会福祉施設が地域の防災拠点と
なる。地域コミュニティのメリットにもなるし、社
会福祉法人の設備自体が地域により馴染んでいくと
いう、両者にとってメリットのある、理想的なモデ
ルだと考えている。
地域のパートナーとの連携強化を目指す
我々がこの事業を行える理由は、電気をつくるとこ
ろから売るところまで、一貫して幅広いノウハウを
持っているからです。
①ミニマムグリッドでは、施設ごとに電力の需給バ
ランスを見た最適な設計が必要となる。
②需要がないのに、供給側だけ大きく設計してもコ
ストメリットはない。蓄電池に関しても、世界各地
からどのような設備を用意するのがより現実的か、
よく考える必要がある。一時的なものではく、持続
可能な事業となるよう、設計していくことが必要。
③初期コストを抑えた第三者所有形式のサービスや、
同社の販売する電力をセットにすることで利用電力
が自然エネルギー100%になるプランなど、さまざ
まな組み合わせで、幅広いサービスの提供を可能に
する。
今年からミニマムグリッド事業の拡大に力を入れて
いる同社だが、システム導入に関しては、公共施設
からの引き合いが増えているという。「福祉施設や
自治体の設備施設に加え、建物単位だけでなく、自
治体の庁舎エリアを中心に複数の建物をつないだミ
ニマムグリッドなど、地域のレジリエンスを高める
ニーズに応えていきます。
現在、福祉施設や行政施設を含め、公共関係で30
~40の案件が動いているが、来年以降は年間10
0件以上の導人を目指し、事業を拡大していく。そ
の実現には、施工業者をはじめ、メンテナンス会社、
福祉法人のコンサル会社など、地域のパートナーと
連携しながら進めていくことが重要となる。大きな
社会の変化が起きており、自立しながらもネットワ
ークで繋がることでレジリエンスを高める、分散的
な社会への変化は間違いなく起きる。その変化の流
れに乗るかたちで、ミニマムグリッドを発信すると
の方針である。
「ミニマムグリッド」
太陽光パネル・蓄電池・最適制御システム(EMS:
Energy Management System)を組み合わせた太陽光
発電システム。よく晴れた日には電気を自給自足し、
火力・原子力などの大規模な発電所や送電線に頼る
時間を減らし(ミニマムにし)、平常時では、電気
代が高い時間帯や電力使用量が多い時間帯に積極的
に蓄電池の電気を利用し(ピークカット)、より安
く電気を利用できるほか、停電時にはエネルギー拠
点として独立して電気を供給する。①施設単体の防
災対応力を高めるだけでなく、地域コミュニティに
おける防災用のエネルギー拠点としての活用が見込
まれる。②ミニマムグリッドでは太陽光パネル・蓄
電池・最適制御システムを組み合わせたメリットを
最大限活用しながらも、くもりが続く時期や電力を
多量に使う時は送電線から電気を購入するため、安
定して電気を利用する。③また、導入にあたっては、
【1】需要家が補助金等でて自己所有する方式
【2】第三者所有・電力販売(TPO-PPA)モデル)
により施設側の初期設備投資をゼロとする方式
で、施設側の設備導入によるハードルを軽減する。
☈第三者所有モデル(TPOモデル)/PPAモデル
住宅太陽光発電の施工事業者が、投資家を募って資
金を集めて住宅屋根に太陽光設備を設置し、その住
宅居住者と電力購入契約(Power Purchase Agreement:
PPA)を結んで発電電力を供給する仕組み。住宅居
住者にとっては、初期投資ゼロで太陽光を導入し
て、その発電電力を利用できる。また、太陽光発電
の施工事業者にとっては、手持ち資金なしで施工件
数が増やせ、資金提供者は、相対的に収益性の高い
住宅向け売電事業に投資できるメリットがある。
✔ 初期投資ゼロで太陽光電力事業は確実に定着す
るが、送電線事業(架線及び埋設方式の双方)は公
的側面を継続強化しつつ存続すると考える。
❐ 太陽光発電のPPAとは?、市場規模は400倍に成
長?太陽光発電ログ、リース・ローンで格安一括比
較見積
図 生物多様性の中に生かされている人間
❏階層的生物多様性とは何か
今夏はこのテーマに沿って「循環共生圏」について
少し深掘り掘りしてみる。
地球上にはさまざまれぞれの生系の中でエネルギー
流動と物質循環が行われている。さらに、生態系と
別の生態系の間でも物質やエネルギーのフローが存
在し、地球全体で巨大な生態系システムのネットワ
ークが形成され連動する、それぞれの地域の生態系
がもつ機能が続合されることにより、大気気や水界
の成分や温度など、生命が生息する上での必須環境
である生物圈が安定して維持されている。森林生態
系は、その豊富な植物相によって大気中の二酸化炭
素を吸収して酸素を供給するという大気の浄化化機
能を担い、さらに微生物、昆虫、鳥や動物など多く
の生物種を擁することで豊富な有機物・無機物を生
産し続けている。これらの栄養物が河川を通じ、海
へ注がれることで沿岸の生態系に栄養物が供給され、
海産生物相を豊かなものにする。このとき、河川や
海水の富栄養化を防いでいるのが湿地・干潟の生態
系となる。湿地・干潟には無数のプランクトンやカ
ニ、ゴカイ、二枚貝などの生物種が生息し、それら
が「生物フィルター」として機能し、汚れた河川水や
海水の水質浄化を果たしているが、種の多様性が高
い生態系(左)であれば、食う一食われるの関係が複
雑なネットワークで結ばれ、例えばカエルが滅んで
も、他のルートで栄養循環が維持され、生態系シス
テム自体は簡単には壊れない。しか、種の多様性が
低い生態系では食う一食われる関係が単純な直鎖構
造となり、カエルが滅びれば、餌を失って鳥も絶滅
し系は簡単に崩壊、することになる。
このように地球上にはさまざまな生態系が存在
し、機能しているが、それぞれの生態系を構成
し、その機能を維持しているのは多様な生物種
である。生態系における生物種の数の大小を「
種の多様性」という。生態系において生物種の
数が大きくなる、すなわち種多様性が高くなれ
ばなるほど、その食物網ネットワークは複雑に
なり、エネルギーや物質のフロー・ル-トが多
岐にわたるので、環境変動や人為各欄によって
生物種の一部が「欠員」した場合でも、系全体
の機能は大きく損なわれず維持され。やがて「
欠員」した生態的なポジションに新たな種が進
化して組み込まれ。元の状態に復帰するという
具体に系の受難性と抵抗力が高まるとされる。
種の耐用性が高い生態系であれば、空・食われ
るの関係が複雑なネットワークで結ばれ、例え
ばカエルが滅んでも、他のルートで栄養循環が
維持され、生態系システム事態は簡単に壊れれ
ない。しかし、種の多様性が低い生態系では食
う一食われる関係が単純な直鎖構造とり、カエ
ルが滅びれば、餌を失って鳥も絶滅し、系は簡
単に崩壊することになる。
五箇公一著『里山いきもの図鑑』
「生物多様性の階層と生態学的意義」
五箇はこのように述べ、さらに、それぞれの生物種
集団(同じ種に属する個体の集まり=個体群)にと
って集団内にさまざまな遺伝子型の個体が存在する
ほうが、環境変動に対して多様な反応を示すことが
できるので、集団の生存確率は高まる逆説的に言え
ば、時間的にも空間的にも変動を続ける環境中にあ
っては、一様な遺伝子組成をもつ集団は環境変動に
耐えきれず、絶滅してしまい、結果的に多様な遺伝
子組成を維持する集団が環境淘汰を生き残り、この
ように種やその集団内に遺伝的変異が存在する状態
を「遺伝子の多様性」という。この遺伝子の多様性
こそが、変化する環境の中で生物が進化するための
必須アイテムなのであると言い。同種のチョウ集団
でも、遺伝子の多様性が高い 集団であれば、羽の
色や模様にバリエーション が生じ、新たな天敵が
登場しても、天敵に見つ かりにくい形質をもった
個体が生き残り、天敵 に対して抗力をもつ集団へ
と進化できる。しかし、遺伝子の多様性が低い集団
では羽の形質に変異がないため、一旦、天敵に覚え
られると全個体が簡単に見つけられて食い尽くされ
る(=絶滅する)恐れが高くなる。そして、上述した
通り、大気中の二酸化炭素を吸収して酸素を供給す
る。森林生態系や水を浄化する湿地生態系など生態
系にもバリエーションが存在することによって、さ
まざまな生態系機能が融合され、地域全体の環境安
定性、さらには地球全体の環境安定性が維持され、
ている。これを「生態系の多様性」であり、同種の
チョウ集団でも、遺伝子の多様性が高い集団であれ
ば、羽の色や模様にバリエーションが生じ、新たな
天敵が登場しても、天敵に見つかりにくい形質をも
った個体が生き残り、天敵に対して抗力をもつ集団
へと進化できる。しかし、遺伝子の多様性が低い集
団では羽の形質に変異がないため、一旦、天敵に覚
えられると全個体が簡単に見つけられて食い尽くさ
れる(=絶滅する)恐れが高くなり、上述の通り、
大気中の二酸化炭素を吸収して酸素を供給する森林
生態系や水を浄化する湿地生態系など生態系にもバ
リエーションが存在することで、さまざまな生態系
機能が融合され、地域全体の環境安定性、さらには
地球全体の環境安定性が維持されいる。これを「生
態系の多様性」であり。さらに大きなスケールでの
多様性として「景観の多様性」があると持論展開す
る。
生物多様性の中に生かされている人間
このように遺伝子から種、生態系、さらには、景観に
いたるまでさまざまな階層で生物が織りなす多様な
世界を「生物多様性」という。それぞれの階層、性
が重要な意味をなし、複雑性が機能の多様性と持続
性(進化的発展性)を生見だしている。人間とうい
生物も。水や空気や食料が必要であり、そうした生
命維持のための必巣資源を供給してくれているのが、
生物多様性が支える生態系の多面的機能である。人
間の分明社会が作り出した食料や物資の供給システ
ムである農業・工業といえども、水や土壌や空気がな
ければ稼働しない。人間の生活基盤は全て生物多様
性に帰結する。さらに景観の多様性という、人間社
会における文化的多様性の萌芽を生み出す機能まで
もが生物多様性には備わっており、人間社会を支え
る上での必須かつ重要な環境要素が生物多様性なの
であると。このように説く。(五箇公一「生物多様
性とは何か。なぜ重要なのか?①」、環境ビジネス、
2020年夏季号)
この考え方に依拠し、新コロナウイルスパンデミッ
ク対策を外来生物と新型コロナの似た点を批判して
いる。
ウイルスが生きものかどうかとの議論はあるが、生
物界にいる寄生体として見れば一緒。人間の 自然
破壊などによって、本来の生息地から移動 させら
れたのが外来生物で、目に見えない外来種が病原菌
やウイルスなど。彼らにもすみかがあり、本来の生
態系の中ではおとなしいが、違うところでは天敵や
免疫がないので、どかんと増える。グローバル化に
伴い、外来生物もウイルスも急速に広がる。南米原
産で毒を持つ特定外来生物、ヒアリの国内での拡大
なども心配されている。最近『ウィズコロナ』『コ
ロナとの共生』と言うが、経済活動を復活させるた
め、やむを得ず言っているにすぎず。気にせず普段
通りやりましょう、というムードでは困るとし、イ
ンフルエンザなどに比べて圧倒的にコントロールで
きないでいる。排除という作戦を採らざるを得ない。
ワクチンと新薬の開発を急ぎ、科学の力でコントロ
ールできなければ、安心安全な社会は取り戻せない
と批判し、地球上からウイルスをなくすことはでき
ず。彼らのすみかは野生の世界に、人間の世界をゾ
ーニング(分断)し、自分たちで環境を維持してし
か生きられないことを知り、丁寧に世界をつくって
いかないと長くは保てない。その第一歩は地産地消。
地域ごとに自立した地方分散型社会をつくり、緩や
かにつながる(生物学的には『メタ個体群構造』と
いう)、たまにに交流し遺伝子をやり取りすること
で、全体として安定した進化を繰り返す。人間社会
も一緒ですよ彼らの世界をこれ以上、荒らさないよ
うにすることだ。(「ウイルスと共生?それじゃ困
る 生態学者が語る「排除」 [新型コロナウイルス]」
朝日新聞デジタル)
このように、昭和世代なら「エコロジスト思想」(
(保守反動思想)として切り捨てた戦後モダニズム
(吉本孝明)から見れば、反グロ-バリズム(新自
由主義であり、親エコロニズムということになろう
が、未来を見据える科学論争という側面からは、
『メタ個体群構造』は有効であるのではと、わたし
(たち)は考える。
❏参考論文:
コンシューマーリズムとグリーンコンシューマーリ
ズム、高岡伸行、長崎大学東南アジア研究年報. vol.
44, p.45-68; 2003
📌次回は、第3回「エネルギーの地産地消が理想」
この項つづく
【エピソード】
【脚注及びリンク】
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- ESG地域金融』で地域を元気にする 環境ビジ
ネス - 『環境ビジネス 2020年冬季号』
- 滋賀県に根づく『三方よし』の経営を実現,
環境ビジネス,2020年冬季号 - 環境への取り組み CSR(企業の社会的責任)
佐川急便株式会社 - 気候変動が生む、新たな「アパルトヘイト」,
GNV,2019.12.15 - 滋賀県出身の人物一覧 Wikipedia
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