バイカル湖

2010年12月16日 | 世界の湖沼百選






【世界一深く透き通った湖】

バイカル湖は 「nature lake 」(自然の湖
)を意味する、ロシア南東部のシベリア
連邦管区のブリヤート共和国とイルクー
ツク州・チタ州に挟まれた三日月型の湖。
「シベリアの真珠」とも。ガラパゴス諸
島と並ぶ「生物進化の博物館」とも称さ
れる。

北緯53.5度 東経108.2度 / 53.5; 108.2

所在地

ロシア

面積

31,772  km2

最大水深

1,642  m

水面の標高

455.5 m


南北680km×東西幅約40~50km(最大幅
80km)に及ぶ湖水面の面積は、琵琶湖の
47倍、31,494 km2。カスピ海(塩湖)や
現在急速に面積を縮小しているアラル海
を除くとアジア最大の淡水湖で、面積は
世界最大のスペリオル湖には及ばないが
最大水深が1,634 ~ 1,643mと世界で最も
深く、湖面は標高456mにある。

なお、1956年初頭にアンガラ川に建設さ
れたイルクーツク・ダムの影響で水位は
1.4m上昇。貯水量は、琵琶湖の約8,5200
倍、23×104 km3 も世界最大。世界中の
水の17~20%がここにあるとされる貴重
な湖。水質も日本の摩周湖に代わり世界
最高の透明度を誇る湖で、1996年に世界
遺産に登録された。

セレンガ川、バルグジン川、上アンガラ川な
ど336本の河川が流入するが、流出する河
川は南西端に近いアンガラ川のみである。
そのため、水量が常に豊富である。湖には
最大のオリホン島(面積30km2、沖縄本島に
匹敵)を始め22の島々がある。湖内部には
アカデミシャンリッジ(湖嶺)があり、これとセ
レンガデルタにより大きく3つの地質構造に
区分される。それぞれ「北湖盆」「中央湖」「
南湖盆」であり、このうち中央湖が最も深い
が、北・南湖盆も1km 前後の水深を持つと
いわれる。

バイカル湖

豊富な固有種


バイカル湖は寒冷で栄養素に乏しいにも
かかわらず、世界屈指の生物多様性を持
つ場所である。チョウザメ、オームリ
(バイカル・オームリ)や、サケ科など
の魚類、アザラシ科では唯一の淡水種で
あるバイカルアザラシなど約355属1334
種が生息する。うち1017種は固有種であ
り、全体の70%、生物量では80~90%が相
当する。鳥類も、2種の固有種が存在す
る。本格的な調査は1980年代後期に始ま
ったばかりであり、未確認の固有種も少
なくないと予想される。

淡水ヨコエビ類の端脚類が適応放散で多
数の種になっていることが知られ、全
1000種相当のうち259種が棲み、その中
の98%が固有種に当たる。カジカなど魚
類は29種がおり、このうち27種が固有種
である。ほとんどの種は海から孤立した
際に取り残された海生生物が淡水に適応
したものであると見られ、安定した気象
条件や深部まで溶在酸素がある事、湖底
の複雑な構造などが生存に寄与し、また
それぞれの深度に適応したヨコエビ類と
これを捕食するカジカが多様な種の分岐
を果たしたものと考えられる。



このような中、一部のカジカは遊泳性を
強めた生態を持つようになり、かえって
バイカル湖生態系の頂点に当たるバイカ
ルアザラシに捕食されやすくなったもの
もいる[13]。バイカルアザラシも海生か
ら淡水に順応したもので、その起源には
2つの説がある。ひとつは1000~1200万
年前に南西ヨーロッパから続くパラテチ
ス海盆を辿って棲み付いたものがその後
に陸封されて適応したもの。もうひとつ
は250~300万年前に地球が温暖化した影
響から北極海が北緯61度程度まで海進し
たと考えられ、その時にアザラシの亜種
が分布したという説である。微生物(原
生生物)の中にも固有種がおり、ペリデ
ィウム、ギムノディニウム、アステリオ
ネラ、タベラリアなどは水質を浄化させ
る。バクテリア・プランクトンはバイカ
ル湖の透明性に寄与している可能性が指
摘されるが、そのメカニズム解明には至
っていない
といわれる。


水辺の環境変化


 

バイカル湖はユーラシア大陸中央部に位
置するため、周辺は大陸気候を特徴とす
る。1月~5月には湖面が凍結し、氷厚70
~115cmに達する。冬季には、自動車で
走行しオリホン島に渡るために氷の上に
交通標識が立てられるという。気候は冬
に最低-19℃まで下がり、夏には14℃ま
で上昇。また、バイカル湖周辺は日本や
中国など東アジアに影響を与える持続性
が高いブロッキング高気圧が発生する3
箇所のひとつである
。年間降水量は400mm
であり、これは盛夏から秋にかけて降る
雨が大部分を占める。積雪は必ずしも多
くないという。



近年では周辺にある製紙工場からの工業
排水流入や、森林への殺虫剤散布の影響
による水質汚染が顕著化しており、バイ
カル湖固有種の中には絶滅に瀕している
ものもある。特に有機系塩素殺虫剤であ
るPCBやDDTなどを処分する際、バイカル
湖に大量投棄されたという事もあった。

1987年から翌年にかけ、バイカルアザラ
シの大量死が発生したが、これは水質低
下による免疫力低下を起こしているとこ
ろに犬由来のジステンパーに近い病気に
感染し引き起こされたものと推察された。
湖の汚染はやはり深刻な北海やバルト海
に相当する。バイカル湖には流出河川が
アンガラ川一本しか無く、その排水量は
湖水の0.26%に過ぎない。そのため水の
交換率が低い上に、近隣諸国から流入す
る川の汚染や低緯度地域から流れ込む大
気がもたらす物質なども汚染の原因に挙
げられ、一度水質が低下すると回復が難
しい
。さらに最近では腫瘍など形態異常
を来たしたアザラシの報告などもある。


 

【エピソード】 

   

1997年にバイカル湖底の堆積土からメタ
ンハイドレートが発見された。これは淡
水湖としては唯一である。その後の調査
で、土中深さ数m程度の浅い部分に分布
する「表層型」が多く見つかり、南海ト
ラフのような海底から250m以上深い場所
にある「深層型」よりも採取が容易と期
待される

バイカル湖の湖底掘削では、一方で過去
数万年分のユーラシア大陸で起こった気
候の変動を知る土壌サンプルを入手する
ことができる。これらはドリルで採取し
たコアをその層ごとに年代測定し、各層
における高分子炭化水素類やバクテリア
由来の炭素内に含有する同位体比などを
分析して考察される。

透明度が高く不純物が少ない水を利用し、
バイカル湖ではニュートリノの観測も行
われていて、1993年に設置された水深
500m以上の湖底に沈めた検出器を使い、
主に湖表が凍結する冬季に観測が行われ
高エネルギーニュートリノを観測可能な、
沿岸から3.6km離れた深さ1.1kmの地点に
192個の光学モジュールを設置する「NT
200」計画が予定されている。

2008年、ロシア政府は地質学および生物
学的調査のために深海探査船ミール2機
をバイカル湖の湖底まで潜水させた。水
面下1,592mにまで到達した調査は成功し
たが、元々目指していなかった事もあり
淡水湖潜水の世界記録(アナトリー・サ
ガレビッチが1990年にバイカル湖で達成
した1,637m)更新とはならなかったとい
う。
 

脚注及びリンク

 


(1)世界の大湖沼
(2)「
世界湖沼会議」、財団法人 国際湖沼環境委員会
(3)「
世界の湖と琵琶湖

(4) http://www.baikalclub.com/

 

 


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