殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ものは言いよう

2009年08月21日 20時17分15秒 | みりこんぐらし
「仕事、仕事で出会いが無くて、彼女を作るヒマもないのよ…。

 息子がこっちへ帰省した時に、二人を会わせて食事でもどうかしら…

 お願いしてみてくださらない?」 

少し前の話になるが、知人の息子さんに女の子を紹介することになった。


乗り気でやったのではない。

たまたまその前に、年ごろのかわいいお嬢さん…リサちゃんの話をしていたら

ぜひ紹介してくれと言われたのだ。


昔から、私が紹介なんてすると必ずうまくいかない。

確か自分の縁結びにも失敗したが、他人となるとなおさらダメらしい。

ま、人のことだからいいか。


リサちゃんに聞いてみたら、喜んで会うと言う。

息子本人のことはよく知らないが

万一お互い気が合ってしまっても、金持ちだからいいか…と思った。


ほどなく父親が初めて選挙に出ることになり

息子が手伝いに数日帰省するという。

その時に二人を会わせることに決まった。

紹介なんてたいそうなものではない。

日時と待ち合わせの店を伝えただけである。


    「どうだった?」

翌日、リサちゃんに聞いてみる。

リサちゃん、言いにくそうに

「あの…私にはちょっと…」


待ち合わせた喫茶店で紅茶を飲みながら

少しおしゃべりして、帰ったという。

     「あれ?食事は?」

「いえ…食事はしなかったです」


私は悪い予感がした。

     「…リサちゃん、喫茶店のお茶代はどうしたの?」

「割り勘です」

     「な…なんですとっ?」

「あの…お父さんが選挙に出られるので

 おごることはできないと…」

     「そ…それで、リサちゃん、自分の分を払ったのっ?」

「はい…あの…紅茶のお金を払ったからというのではないんですよ。

 会話がはずまないというか…

 自分は議員の息子になるんだとかいうお話ばかりで…」

     
お~の~れ~!こわっぱ~!

彼女が出来ないのは、仕事じゃなくて性格が悪いんじゃ~!


私はすぐさま母親に電話をかける。

これこれこういうことだったので、一応ご報告しますわ…

とイヤミたっぷりに伝える。


「まあ~!あの子がそんなことを?」

母親がびっくりしたので、ちょっとスカッとする。

     「そうなんです。私もびっくりしましたよ」


ところがおっかさん…

「それほどまでに父親の選挙を大事に思ってくれていたなんて…」

と涙声になる。

あれ…?

    「いえ、そうじゃなくて…誘っておいて割り勘なんてですね…」

「本当に…割り勘だなんて、とっさによく気がついたこと…」

    「いや、あの…そういう行動はあまりにも…」

「ええ、ええ、男の子って

 普段は父親の前でそんな素振りも見せませんものねぇ…」

    「いえ、紹介した私も恥ずかしいと思いましてね…」

「そんな…うまくいかなくても恥じることはありませんわ。

 こういうことは、相性ですもの」

ああ…家族愛のために犠牲になる他人。


先日、娘にいい人がいないか聞かれた。

もちろん、いないと即答する。

この娘は、私も見たことがある。


母親は遠い目をして言う。

「サチコは“月”のような娘なの。

 相性の合う人…太陽さんの前だと、パッと輝くのよ」


    「つ…月…」

暗くて愛想が悪い…女の子の風上(かざかみ)にも置けない娘は

月と言えばいいらしいぞ。

太陽さんが現われるかどうかは知らないが、ものは言いようである。
     
コメント (13)
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