近年、我が家が購読する新聞は某地方紙。
長年愛読してきたのは某全国紙だったが
それは夫がそこの記者や販売所のご主人と懇意だったからで
どちらも加齢でリタイヤした現在、一紙だけになっている。
毎朝、目を通すのは『首相の動静』。
タイトルこそ違えど、これはたいていの新聞に載っているもの。
昨日、我が国の首相が何をしたかを分刻みで書いてある。
首相が誰であろうと、この記事は昔から楽しみだった。
何が楽しみって、東京に居る時の夕食。
官邸や公邸、富ヶ谷の自宅の時も多いが、時々外食があって
誰と、どこの何という店で食事をしたかがちゃんと書いてある。
今の安倍さんだとホテルのレストランやフレンチの名店
高級鉄板焼きや高級居酒屋が多く、料亭は少なめ。
私の数少ない上京経験を思い返し、行ったことのある店だと
雰囲気や味を思い出してひどく嬉しい。
たまに昭恵夫人が経営する自然食の居酒屋
『UZU』の時もある。
やっぱり夫婦だなあと思う。
そしてUZUよりは頻繁に、俳優の中井貴一と外食する。
仲良しなんだなあと思う。
もちろん、政界の人たちと食事をする時もある。
仲良し会なのか、仕事上、仕方なくなのかを推測する。
楽しい。
が、一昨年。
私はこの小さな記事で、あることに気づいてしまった。
一昨年といえば、北朝鮮からミサイルが飛んできていた頃。
今、飛んだというニュースが報じられた日の前夜は
必ずと言っていいほど首相は官邸泊まり。
偶然と呼ぶには多すぎる。
ミサイルが翌日発射されることを把握し
不測の事態に備えて官邸に待機しているとしたら
首相周辺の情報とはすごいものだ。
…と、わずか5~6センチ四方の小さな記事に
食から国防まで、さまざまな事柄がひしめいているわけよ。
そしてもう一つ、この欄はれっきとした記録であり
書き手の主観が入らない。
スケジュールという事実だけが淡々と伝えられているため
安心して読める部分なのだ。
というのも、うちが購読している某地方紙だけど
この数年、妙な方向へ向かう気配が強まる一方。
新聞って、どちらかといえば左寄りで
本線に反発する意識が強い物体ではあるが、特に近年は目に余る。
一例を上げれば数年前、臨床社会学者のおばあちゃんによる
週一のコラムが開始された。
彼女は当時70代後半で、少し前にご主人を亡くしたそうだ。
コラムの内容は、婿養子だったご主人のこと…
平たく言えば、仲が良くなかったご主人の悪口をベースに
年を取ることの喜怒哀楽を語ったもの。
学者を名乗るからには学識があり
それなりに活躍してきた人であろうに
毒舌っぽい内輪話は下世話で面白かった。
この真面目くさった某地方紙にしては珍しい人選だと思い
10何回目だかで終了するまで、毎週熱心に読んだ。
しかし最終回…
「主人とは最後まで、打ち解けることができなかった。
婿養子のため、彼の姓を変えざるを得なかったので
こちらの姓に馴染めないままだったのが
根本的な原因だったように思う。
夫婦別性の制度があれば
もっと違った夫婦関係が築けたかもしれない」
うろ覚えだが、ラストはこんな文章で締めくくられていた。
「やりやがったな!ババア!」
私の正直な感想である。
軽妙な語り口で「私も大変だったのよ」とアピールすることで
女性や老人の共感を得、弱者の味方を装ってから
夫婦別性をさりげなく奨励するという最後っ屁。
「私はどっちでもいいけど、困っている人がいるなら
そっちでいいです…」
日本人に多く見られる、この気質につけ込んで
夫婦別性への賛同を促しているのだ。
あざといではないか。
てめえんちの夫婦仲なんか、知るか。
まんまと術中にはまり、楽しみにしていた自分がなさけない。
長くなるので夫婦別性についての細かい説明は省くが
これは単に隣国の真似であり、日本の家族制度を破壊するものだと
私は思っている。
しかし賛成や反対以前に、どこの誰から何の目的で出現した構想か
夫婦別性にした場合、どんな弊害があるか
精査して公表することは報道の義務である。
それには口をつぐんでおきながら
コラムと言えども県民の多くが目にする新聞で
いかにももっともらしい実例を挙げ
さりげなく誘導するのは卑怯だ。
マスメディアに、このような手口が散見されるようになって久しいが
地方紙にまで魔の手が伸びていることを実感した一件であった。
その視線で新聞を眺めると、ゴロゴロ出てくる。
記事もそうだけど、読者が意見を投稿するコーナーなんて
現政権の批判や外国人参政権賛成、女系天皇賛成を書けば
優先的に載せてもらえそうな勢い。
しかも内容と合っているのかどうか微妙なタイトルを付けて
上の目立つ部分に配置してもらえる。
逆の意見は見当たらない。
選考の段階でボツにされるんだと思う。
新聞に載ったという思い出だけが欲しいなら
これらに賛成だと書けばいい。
きっと掲載してもらえる。
ちょっと前から、また臨床社会学者のおばさんのコラムが再開された。
今のところ、前回の続きのような感じで
高齢者の身の振り方について
当たり障りのない話を載せているが
今度は何を言うか、毎週見張っている。
目に余るようだったら、電話してやる。
某地方紙にはけっこう世話になっているが
こっちも少しは世話したつもりだ。
20年ほど前になろうか
本社に招かれて講演の真似事をさせてもらったことがある。
私の流したネタで、記者と新聞社が賞をもらったこともある。
あの頃の生き生きした新聞マンたちは、もういない。
正義の名のもと、ペンで闇に切り込んで行く男たちはもういない。
どいつもこいつも
スポンサーの意向にひれ伏す提灯持ちばかりだとしたら
悲しいことである。