昨日は、恒例のお寺料理があった。
お盆の施餓鬼供養という行事だ。
日本列島に被害をもたらした台風7号の置き土産により
(こちらは少し雨が降った程度でしたが、皆さんの地域は大丈夫でしたか?)
すっごい猛暑。
クーラーの無い寺の台所で働くには、かなりの覚悟が必要だ。
そこで服装は冷感スポーツシャツに半ズボン
エプロンは薄手のコットンで背中の開いている物を選択。
持参品は氷のう各種、塩飴に塩タブレット
ウィーダーインゼリー、それから空調ベストも持参。
どれもコメント欄で教えていただいた暑さ対策のグッズである。
皆さん、ありがとう。
体力勝負なので、朝ごはんもたっぷり食べた。
ヤクルト1000も飲んだ。
そして献立は、この日のために万全を期している。
とにかく室温を上げない…
この大前提のもと、準備は3日前から始めた。
寺の台所で極力煮炊きをしたくないので
献立は昨年と同じく巻き寿司と、鮎の甘露煮。
どちらも作りたいわけではない。
しかし、家で作って持って行ける特典は大きい。
巻き寿司…去年は卵、カニカマ、キュウリ、タクアン、ゴマの入った
名付けて「貧乏寿司」を作ったが、今年はこれに焼肉をプラス。
炒めた牛肉に焼肉のタレをたっぷりぶっかけ
汁気が無くなるまで煮た佃煮状のものだ。
先日、牛ロースを使って家で作ったら
手間は貧乏寿司とあまり変わらず、美味しかったので決めた。
牛肉を使うと高いので、ユリちゃんは機嫌が悪いが、構うもんか。
もう予算のことは考えない。
あいつらに作らせたら金がかかってかなわん!と思われるぐらいで丁度ええんじゃ。
そう言いながら、お寺用には安いコマ切れ肉を買っちゃう根性無しの私よ。
それから、これも昨年と同じく鯛ソウメン。
鯛は家で焼いて持って行くので、寺で火を使うのはソウメンを茹でる時だけだ。
できればソウメンなんか茹でたくないけど、高齢の檀家に人気なのではずせない。
マミちゃんは、生春巻きを作ると言う。
おお!よくぞ言ってくれた!
生野菜や茹でた海老などの材料を持ち込んで寺で巻くだけなので
煮炊きは必要無い!ラッキー!
それから、もらったカボチャで煮物
ジャガイモもたくさんもらったそうで
ポテトサラダを作って来てくれることになっている。
あと、彼女の妹がゴーヤとツナのマヨネーズ和えと
オカラを作って持たせてくれるという。
フフ…完璧…ほくそ笑む私だった。
が、甘かった。
圧力鍋を使う鮎の甘露煮は、前日までに仕上げればいいけど
傷みやすい巻き寿司はそうはいかん。
中の具は全て当日の朝、作らないといけないので午前3時半から作業開始だ。
20本の巻き寿司を巻き終えると、9時。
この時点で、すでに疲れ果てた。
去年より、明らかに体力が違う。
そして10時、マミちゃんが迎えに来てくれたので寺へゴー。
この日はモンちゃんが仕事で欠席だったので
公務員OGの梶田さんが手伝いに来てくれた。
料理に詳しくて、よく動く梶田さんが来てくれると楽なのでホッとした。
さっそく支度を始めると、マミちゃんの荷物から何やら怪しき物体が…。
「ジャガイモ、まだたくさんあって無くしたかったから
コロッケとジャーマンポテト揚げる〜」
大きなタッパーから出てきたのはパン粉をまぶしたコロッケと
丸めたジャーマンポテトの生の姿。
消費したいジャガイモをありったけ使ったらしく、大量だ。
ガ〜ン!
かくして延々と揚げ物が始まった。
室温は容赦なく上がり続ける。
マミちゃんは体力作りのためにジムへ通い始めたそうで
今回はものすごく元気だ。
品数を増やすと食べる人は喜ぶだろうが
室内温度だけでなく、調理器具や皿の片付け、食べ残しも増えて
我々の負担はどんどん増していく。
料理は共生…作り手と食べ手がお互いに笑顔でいられ
同時に次回の楽しみへと繋がるように
ほどほどの所でセーブするのも技術のうちなのだが
善人のマミちゃんにそれを理解しろというのは難しいのかもしれない。
やがて11時半、ソウメンを茹でる頃には、室温も私の疲労もマックスだ。
こうならないように、早くから巻き寿司を作ったというのに
何もかも水の泡よ。
私は密かにマミちゃんの善意を恨んだ。
今年は初盆の檀家が二組あったので、会食をするのは我々を含めて22人。
あの寺にしては大盛況、一昨年の記録21人を超えたニューレコードだ。
座る場所が足りないため、先にお客様に食べていただくことになり
食事を出したところで本格的に気分が悪くなった。
頭痛、目まい、吐き気に耐えかね
台所の奥にある三畳ほどの小座敷で横になってみるが
寝たって起きたって暑いのは同じ。
しかもこの寺は掃除が行き届いてないので
畳に何か怪しい虫が棲息していそうで落ち着かない。
で、力なく横たわる脱落者を発見したユリちゃんの第一声がこれ。
「台所にクーラーをつける経済力は、うちのお寺にはありません!」
普通は「大丈夫?」だろうが。
身体の方はともかく、お陰で心は冷えたわ。
日頃は優しい兄嫁さんも
「熱中症じゃないのぉ?暑さに弱いのね」
だとよ。
正真正銘の熱中症に決まっとろうが!
お前らみたいに、ノークーラーに慣れてないんだよっ!
しかし彼女らが、安易にいたわりの言葉を口にできないのはわかる。
病人を病人と認めてしまったら、猛暑の中で料理をさせた寺に責任が生じるじゃんか。
万が一、人命にかかわる事態になれば、うちの家族も黙ってはいまい。
業務上の過失を問われる恐れが出てくるため
あくまで倒れた本人の落ち度という方針を貫くしかなかろう。
すげない態度は、お寺にとって危機管理の一端なのだ。
こっちも、心配してもらおうとは露ほども思っていない。
継子道、嫁道の長い私は、同じ状況に慣れている。
私を気遣いながら洗い物を続けるマミちゃんと梶田さんに
申し訳ない気持ちだけだ。
塩飴を舐め舐め、しばらく休んだら回復したので
また前線に復帰。
歯を食いしばって片付けを終え、何とか地獄からの生還をはたした。
やれやれ、手抜き料理どころか、魂が抜けるところだったわい。
『焼肉巻き寿司20本』
巻き寿司の断面
『鯛ソウメンの鯛』
『鮎の甘露煮』
これらは家で撮影した。
お寺では撮影する時間が無かったので、料理の写真は無い。
檀家さんが次々に料理を運んでくれるため、仕上がりを撮影する暇が無いのだ。
先に檀家さんたちと食事をした兄嫁さんに撮影してもらい
後でユリちゃんを介して送信してくれる手はずになっていたが
未だに送られてこない。
前から知ってるけど、お寺にとって
うちらも、料理も、その程度なのよ。
今回、私がお寺料理のために立て替えた買い物は8千円弱。
米や卵は自分ちのを使った。
清算の時、いつもユリちゃんは言う。
「お返しできるお金があるかしら?」
これを聞いて最初の頃は申し訳ない気持ちになり
時には寄付ということにして、もらわなかったりしたものだが
手の内がわかった今は、何が何でももらう。
そしたらユリちゃん、1万円札を出したので
「おっ?太っ腹じゃん」と思ったら、「2千円、お釣りちょうだい」だって。
とまあ、後味の悪さが増していく一方のお寺料理。
とりあえず来年のお盆行事は断るかも。
理由はできたじゃないか。
「また倒れて迷惑をかけたらいけないから。
ほら、私って暑さに弱いじゃん」
ホ〜ホッホ!
お盆の施餓鬼供養という行事だ。
日本列島に被害をもたらした台風7号の置き土産により
(こちらは少し雨が降った程度でしたが、皆さんの地域は大丈夫でしたか?)
すっごい猛暑。
クーラーの無い寺の台所で働くには、かなりの覚悟が必要だ。
そこで服装は冷感スポーツシャツに半ズボン
エプロンは薄手のコットンで背中の開いている物を選択。
持参品は氷のう各種、塩飴に塩タブレット
ウィーダーインゼリー、それから空調ベストも持参。
どれもコメント欄で教えていただいた暑さ対策のグッズである。
皆さん、ありがとう。
体力勝負なので、朝ごはんもたっぷり食べた。
ヤクルト1000も飲んだ。
そして献立は、この日のために万全を期している。
とにかく室温を上げない…
この大前提のもと、準備は3日前から始めた。
寺の台所で極力煮炊きをしたくないので
献立は昨年と同じく巻き寿司と、鮎の甘露煮。
どちらも作りたいわけではない。
しかし、家で作って持って行ける特典は大きい。
巻き寿司…去年は卵、カニカマ、キュウリ、タクアン、ゴマの入った
名付けて「貧乏寿司」を作ったが、今年はこれに焼肉をプラス。
炒めた牛肉に焼肉のタレをたっぷりぶっかけ
汁気が無くなるまで煮た佃煮状のものだ。
先日、牛ロースを使って家で作ったら
手間は貧乏寿司とあまり変わらず、美味しかったので決めた。
牛肉を使うと高いので、ユリちゃんは機嫌が悪いが、構うもんか。
もう予算のことは考えない。
あいつらに作らせたら金がかかってかなわん!と思われるぐらいで丁度ええんじゃ。
そう言いながら、お寺用には安いコマ切れ肉を買っちゃう根性無しの私よ。
それから、これも昨年と同じく鯛ソウメン。
鯛は家で焼いて持って行くので、寺で火を使うのはソウメンを茹でる時だけだ。
できればソウメンなんか茹でたくないけど、高齢の檀家に人気なのではずせない。
マミちゃんは、生春巻きを作ると言う。
おお!よくぞ言ってくれた!
生野菜や茹でた海老などの材料を持ち込んで寺で巻くだけなので
煮炊きは必要無い!ラッキー!
それから、もらったカボチャで煮物
ジャガイモもたくさんもらったそうで
ポテトサラダを作って来てくれることになっている。
あと、彼女の妹がゴーヤとツナのマヨネーズ和えと
オカラを作って持たせてくれるという。
フフ…完璧…ほくそ笑む私だった。
が、甘かった。
圧力鍋を使う鮎の甘露煮は、前日までに仕上げればいいけど
傷みやすい巻き寿司はそうはいかん。
中の具は全て当日の朝、作らないといけないので午前3時半から作業開始だ。
20本の巻き寿司を巻き終えると、9時。
この時点で、すでに疲れ果てた。
去年より、明らかに体力が違う。
そして10時、マミちゃんが迎えに来てくれたので寺へゴー。
この日はモンちゃんが仕事で欠席だったので
公務員OGの梶田さんが手伝いに来てくれた。
料理に詳しくて、よく動く梶田さんが来てくれると楽なのでホッとした。
さっそく支度を始めると、マミちゃんの荷物から何やら怪しき物体が…。
「ジャガイモ、まだたくさんあって無くしたかったから
コロッケとジャーマンポテト揚げる〜」
大きなタッパーから出てきたのはパン粉をまぶしたコロッケと
丸めたジャーマンポテトの生の姿。
消費したいジャガイモをありったけ使ったらしく、大量だ。
ガ〜ン!
かくして延々と揚げ物が始まった。
室温は容赦なく上がり続ける。
マミちゃんは体力作りのためにジムへ通い始めたそうで
今回はものすごく元気だ。
品数を増やすと食べる人は喜ぶだろうが
室内温度だけでなく、調理器具や皿の片付け、食べ残しも増えて
我々の負担はどんどん増していく。
料理は共生…作り手と食べ手がお互いに笑顔でいられ
同時に次回の楽しみへと繋がるように
ほどほどの所でセーブするのも技術のうちなのだが
善人のマミちゃんにそれを理解しろというのは難しいのかもしれない。
やがて11時半、ソウメンを茹でる頃には、室温も私の疲労もマックスだ。
こうならないように、早くから巻き寿司を作ったというのに
何もかも水の泡よ。
私は密かにマミちゃんの善意を恨んだ。
今年は初盆の檀家が二組あったので、会食をするのは我々を含めて22人。
あの寺にしては大盛況、一昨年の記録21人を超えたニューレコードだ。
座る場所が足りないため、先にお客様に食べていただくことになり
食事を出したところで本格的に気分が悪くなった。
頭痛、目まい、吐き気に耐えかね
台所の奥にある三畳ほどの小座敷で横になってみるが
寝たって起きたって暑いのは同じ。
しかもこの寺は掃除が行き届いてないので
畳に何か怪しい虫が棲息していそうで落ち着かない。
で、力なく横たわる脱落者を発見したユリちゃんの第一声がこれ。
「台所にクーラーをつける経済力は、うちのお寺にはありません!」
普通は「大丈夫?」だろうが。
身体の方はともかく、お陰で心は冷えたわ。
日頃は優しい兄嫁さんも
「熱中症じゃないのぉ?暑さに弱いのね」
だとよ。
正真正銘の熱中症に決まっとろうが!
お前らみたいに、ノークーラーに慣れてないんだよっ!
しかし彼女らが、安易にいたわりの言葉を口にできないのはわかる。
病人を病人と認めてしまったら、猛暑の中で料理をさせた寺に責任が生じるじゃんか。
万が一、人命にかかわる事態になれば、うちの家族も黙ってはいまい。
業務上の過失を問われる恐れが出てくるため
あくまで倒れた本人の落ち度という方針を貫くしかなかろう。
すげない態度は、お寺にとって危機管理の一端なのだ。
こっちも、心配してもらおうとは露ほども思っていない。
継子道、嫁道の長い私は、同じ状況に慣れている。
私を気遣いながら洗い物を続けるマミちゃんと梶田さんに
申し訳ない気持ちだけだ。
塩飴を舐め舐め、しばらく休んだら回復したので
また前線に復帰。
歯を食いしばって片付けを終え、何とか地獄からの生還をはたした。
やれやれ、手抜き料理どころか、魂が抜けるところだったわい。
『焼肉巻き寿司20本』
巻き寿司の断面
『鯛ソウメンの鯛』
『鮎の甘露煮』
これらは家で撮影した。
お寺では撮影する時間が無かったので、料理の写真は無い。
檀家さんが次々に料理を運んでくれるため、仕上がりを撮影する暇が無いのだ。
先に檀家さんたちと食事をした兄嫁さんに撮影してもらい
後でユリちゃんを介して送信してくれる手はずになっていたが
未だに送られてこない。
前から知ってるけど、お寺にとって
うちらも、料理も、その程度なのよ。
今回、私がお寺料理のために立て替えた買い物は8千円弱。
米や卵は自分ちのを使った。
清算の時、いつもユリちゃんは言う。
「お返しできるお金があるかしら?」
これを聞いて最初の頃は申し訳ない気持ちになり
時には寄付ということにして、もらわなかったりしたものだが
手の内がわかった今は、何が何でももらう。
そしたらユリちゃん、1万円札を出したので
「おっ?太っ腹じゃん」と思ったら、「2千円、お釣りちょうだい」だって。
とまあ、後味の悪さが増していく一方のお寺料理。
とりあえず来年のお盆行事は断るかも。
理由はできたじゃないか。
「また倒れて迷惑をかけたらいけないから。
ほら、私って暑さに弱いじゃん」
ホ〜ホッホ!