殿は今夜もご乱心

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デンジャラ・ストリート・隠し芸の巻

2016年04月05日 13時54分16秒 | みりこんぐらし
おとといの日曜日は、自治会のお花見だった。

後期高齢者だらけのシルバー・ストリート

名付けてデンジャラ・ストリートでは

毎年恒例の春の行事だ。

お花見といっても花は見ず

集会所に集まって飲んだり食べたりする。


私は義母ヨシコの要望で、初めて参加した。

組長の任期は3月で終わったが

引き継ぎがまだなので、最後のご奉公として

ヨシコの代わりに手伝いをするためだ。


当日、ストリートの面々30人ほどは

腕を組んで支え合ったり、途中で休みながら

200メートル先の集会所を目指す。

足元はおぼつかないのに皆の荷物が大きいのは

バッグにそれぞれお座敷用の携帯椅子を

しのばせているからだ。


ようやく会場に入ると

座敷の一角に紅白の幕が張ってある。

何だか、めでたげな雰囲気。


お花見では毎年、有志が隠し芸を披露すると

聞いている。

しかしその感想をヨシコから聞いたことがない。

話し好きのヨシコが触れない芸‥

それが一体どんなものなのか、興味しんしんであった。


さあ、宴会が始まった。

司会の自治会長が紹介する。

「トップバッターは、山川さんのフラダンスです!」


拍手の中、紅白の幕の影から出てきた

山川夫人、78才。

花をたくさん付けた帽子と花のレイ

腰には鮮やかなピンクの布を巻いて

一人、フラダンスをフラフラと踊る。

時折よろけつつ、能面のように無表情な

ちょっと怖いフラフラダンスはすぐに終わり

山川夫人はやはり無表情のまま、幕の後ろに消えた。


お次は小池のおばあちゃんの民謡だ。

「小池さんは日本の北から南まで

たくさん民謡をおぼえておられるそうです!」

自治会長が言うと、85才の小池ばあちゃん

ニッコリとかわいい笑顔でうなづいて

「北から行きましょうか、南からがいいですか」


1曲か2曲のつもりだった自治会長は

一瞬戸惑いを見せたが

「き、北からお願いします」と答えた。

と、小池ばあちゃん

やにわにヤーレン、ソーラン‥と唄いだす。

日本民謡巡りは、北海道のソーラン節から

スタートしたようである。

ようである‥というのは、ばあちゃんの唄に

音階が存在しないため

歌詞が判断材料だからである。


退屈なお経のごとく、ばあちゃんの唄は続く。

合いの手に「ゴホ、ゴホ」と咳を挟みつつ

青森、岩手、山形と、1曲ずつ南下。

自治会長がやんわり止めるのを振り切り

ばあちゃんは唄い続ける。


何曲めかで「貝がら節」になった。

どうやら和歌山まで来たようだ。

「あと数曲で終わるはず‥南は民謡が少ない‥」

そう思ったのは、私だけではないはずである。


すると「会津磐梯山は~」

北上しとるでねえか。

ガックリとうなだれる一同。


やがて四国と九州を一曲ずつ唄ったところで

「まだ鹿児島と、沖縄と‥」

唄い足りないばあちゃんの背中を押して

自治会長が幕の後ろへ連れ去った。


「次は杉本さんの獅子舞です!」

気をとり直して自治会長が紹介する。

杉本じいちゃん88才、正月やお祭りに出てくる

本物の獅子頭をかぶって登場。


さっき日本民謡巡りをした小池ばあちゃん

今度は太鼓で参加。

獅子の後ろで小太鼓を叩いて踊っている。

赤いズキンに赤いちゃんちゃんこが

猿の置物みたいだ。

自治会の副会長はおたふくの面をかぶり

会計は鈴を振って盛り上げる。


「あの獅子は、杉本さんの私物だよ」

周りの老人達が教えてくれる。

「えっ!マイ獅子?」

「鈴も、太鼓も、お面もよ」

「マイ鈴?マイ太鼓?マイ面?」


神社の巫女さんが持つような本格的な鈴も

小池ばあちゃんが叩く、本格的な太鼓も

お神楽で使う、本格的なお面も

全部杉本じいちゃんの持ち物らしい。

「紅白の幕も杉本さんのじゃ」

「マイ幕まで?」

恐るべし、杉本翁。

私はその情熱に驚くばかりであった。


じいちゃん、獅子舞を始めたものの

何とな~く違和感が‥

よく考えたら、直立した獅子舞を初めて見るのだった。

じいちゃんは足腰が弱って

獅子舞特有の中腰が無理なのだ。

ズボンのチャックが全開なのも、よく見えるぞ。


獅子舞を早々に終了した杉本じいちゃんは

持ち込んだマイ音響設備で

CDでなくカセットテープを流す。

曲は花笠音頭。

これもマイ花笠が、会場にいくつも配られ

それを持って有志が踊る。

公民館活動で日舞を習っている

浜野のおばちゃんが指導。


次の曲は炭坑節。

私は一番の若手ということで、指名された。

内心は嫌だけど、拒否するとカドが立つので

浜野さんの指導をあおぎつつ、何とか踊る。

炭坑節は長くて疲れた。

一応、トリを務めたことになるのだろうか。


お花見は盛況のうちにお開きとなり

行きと同じく、ゾロゾロと連なって帰途につく。

炭坑節がトドメだったのか

私は毒気に当たったかのように疲れ果てていた。

毎年、ヨシコがお花見の内容を語らない理由が

わかったような気がした。

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4 コメント

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ハ、ハ、ハ、ハ・・・・。 (すみこはん)
2016-04-05 15:48:30
疲れてしんどい筈なのに、元気に笑い転げてしまった。

私も人の迷惑考えない、みりこんさんを疲れさせる『恐るべしばぁちゃん』になりたい。
その方が自分だけは疲れないで済むような気がする・・・・ような・・・・。

桜満開の今日この頃、久しぶりのデンジャラス・ストリートにホットさせて貰いました。
またみりこんさんに元気をいただいたナァ・・・・・。
返信する
Unknown (oldオードリー)
2016-04-05 18:00:22
デンジャラス・ストリート
かっこいい~~~(笑)

自治会の宴会で
「誰かやめさせて」と心で思ったこと
会社の宴会で
「誰かやめさせて」とマダムが叫んだことを思い出しました。

私も町内の老人会の出し物で、宴会芸をご披露・・・。
シンクロナイズドスイミング
学園天国の音楽でやったことがあります
ちゃんと波まで、ゴミ袋で作って、寝転がって、足挙げたり、交差させたり
受けもよかったので、心の中でガッツポーズをしてました。
でも、次の老人会、全く、お呼びがかかりませんでしたわ。
プチ水着姿が、刺激的だったのかな
返信する
恐るべしばぁちゃん(笑) (みりこん~すみこはんへ)
2016-04-05 20:38:31
私もなりたいです!
ほんとよ、自分だけは疲れないもん。

会場を見回しながら、思いました。
5年後、この中の何人が
残ってるんだろうって。
そしたら楽しまにゃ損だなって。
無敵のばあちゃんになりたいなって。

元気が出たと言ってもらえて
笑っていただけるとありがたいです。
こちらこそ、ありがとうございます!
返信する
ギャハハ! (みりこん~oldオードリーさんへ)
2016-04-05 20:47:39
お座敷シンクロ!
そりゃすごい!
波まで作るとは、もはや欽ちゃんの仮装大会。
見たかった!

小池ばあちゃんや杉本じいちゃん達は
時々集まって練習しているらしい。
練習して、それかよ!という気もしますが
私も何か芸を身につけたいなと
思いました。
返信する

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