自民党の安倍晋三元首相と、自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表・青山繁晴参院議員)がそれぞれ、岸田文雄政権に〝注文〟を付けた。ジョー・バイデン米政権が、政界屈指の「親中派」である林芳正外相の起用・言動などから、「岸田政権に不信感を持っている」という指摘があるなか、対中姿勢や台湾問題、憲法改正などで、積極的に発信したのだ。
「はっきり考えを言うことが、衝突を防ぐことにつながる。これからも言うべきことは言う」
安倍氏は3日夜、インターネット番組に出演し、「『台湾有事』は『日本有事』だ。すなわち『日米同盟の有事』でもある。この認識を、習近平国家主席は断じて見誤るべきではない」という自身の発言に、中国政府が反発したことについて、こう語った。
番組では、6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)首脳声明でも、中国の台湾への軍事的威圧を受けて、「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたと指摘。「国際的に共有された考え方だ」と強調した。
さらに、岸田首相の外交姿勢について、「ソフトに見えるが、非常に芯は強い。期待して見てほしい」といい、憲法改正についても「岸田首相にしっかりと頑張ってほしい」と語った。
一方、自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」は同日の総会で、中国当局によるウイグルなどでの人権侵害を踏まえ、来年2月開幕する北京冬季五輪への「外交的ボイコット」を表明するよう岸田首相に求めることを決めた。
青山氏は総会後、「対中配慮が過ぎれば外交の体をなさない。現在の首相の姿勢は間違いだ」と記者団に語った。
こうしたなか、岸田首相は3日夜、自民党岸田派(宏池会)に所属していた左藤章、大西宏幸両元衆院議員と都内のホテルで会食した。
この席で、林外相の起用を念頭に、岸田首相は「媚中派と言われるのは不本意だ。林氏は中国に行くとは一言も言っていない」と語ったという。
本紙は「媚中派」と書いたことは一度もない。ただ、そうした世間の疑念を払拭したいのなら、自由主義国のリーダーとしての「芯の強さ」を見せるしかない。