昨日(8日)、北中城村の村議会議員である天久朝誠氏(中城村北中城村清掃事務組合の議員も兼務)が、自身のブログに組合の溶融炉に関する記事をアップしました。ありがたいことに、このブログの記事を参考にしていただけたようです。
天久朝誠議員のブログ
がむしゃらに、まっすぐに!日本一住みたい村づくり
記事によると組合は溶融炉の再稼動は回避したい意向のようです。しかし、再稼動を回避しても組合には焼却炉の長寿命化という課題が残っています。組合は国のインフラ長寿命化基本計画に基づいて平成28年度までにごみ処理施設の長寿命化計画を策定して、中長期的な予算の見通し等について議会や住民に明示しなければなりません。しかも、組合の焼却炉は既に長寿命化を行う時期を迎えています。
その意味では、組合の事務局としては「待ったなし」の状況になっています。また、平成28年度は組合を構成している中城村と北中城村の村長選挙があるので、焼却炉の長寿命化については、事務局においても「先延ばし」ができない課題になっていると言えます。
そこで、改めて組合が溶融炉の再稼動を回避する場合の選択肢を考えてみることにします。
(1)「焼却炉+焼却灰の民間委託処分」方式は国の補助金を利用できない。
国が市町村のごみ処理計画に対して財政的援助を行うためには、市町村が国の計画に即したごみ処理計画を策定していることが条件になります。この場合の国の計画とは廃棄物処理法の規定に基づく廃棄物処理施設整備計画になります。同計画は環境大臣が計画を作成して政府が閣議決定することになっているので、環境省だけでなく防衛省や他の府省庁も市町村のごみ処理計画が条件を満たしていない場合は財政的援助を行うことはできません。そして、「焼却炉+焼却灰の民間委託処分」方式はこの条件を満たしていない計画になります。
(2)ごみ処理の広域化は時間的に間に合わない。
沖縄県のごみ処理広域化計画は平成20年度に終了しています。このことは、一旦、広域化は整理されていることになります。したがって、組合がこれから更なる広域化を目指すことになれば相当の時間がかかることになります。なぜなら、広域化の対象となる市町村は現在のごみ処理計画を改正しなければならないからです。また、改正するためには原則として議会の承認や地域住民との合意形成が必要になります。したがって、一般的には事業に着手するまでに5年以上はかかることになります。また、機種選定や用地選定を行う場合はさらに時間がかかることになります。 しかし、組合の焼却炉は既に長寿命化を行う時期を迎えています。
補足説明⇒焼却炉の長寿命化を行わずに他の市町村との広域化を目指すという選択肢もありますが、その場合は少なくとも他の市町村の議会の承認を受けて法的拘束力のある正式な協定書等を締結しておく必要があると考えます。なぜなら、広域化を実現する前に首長や議員の多くが改選されて、計画が白紙に戻る可能性があるからです。仮にそうなった場合は自主財源により焼却炉の長寿命化又は更新を行うことになるので、組合としては最悪の事態になります。なお、焼却炉の長寿命化が遅れると老朽化が進んで事故やトラブル等の発生が多くなるため維持管理費が増大することになります。
(3)「裏技」はギャンブルになる。
「裏技」とは、組合が国の財政的援助に対して特例措置を受けるという意味になります。可能性としてはゼロではありませんが、(1)の廃棄物処理施設整備計画があるので、他の市町村との公平性等を考えると可能性は限りなくゼロに近いと考えます。仮に特例措置を受けることができたとしても無条件ということにはならないはずです。したがって、条件付きで国の補助金を利用することはギャンブルになると考えます。昔は地元の国会議員等が国と個別に交渉して「裏技」を駆使していましたが、今はそのような時代ではなくなっています。また、沖縄県においてそのような「裏技」が通用するとした場合は、逆に内地の人々からつまらない誤解を受けることになると考えます。
補足説明⇒例えば「将来の広域化」を条件に国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行った場合 、広域化がダメになったときは国に補助金を返還しなければならないことになります。
(4)選択肢は「正攻法」しか残っていない。
このブログの管理者は、組合が溶融炉の再稼動を回避して国の補助金を利用しながら焼却炉の長寿命化を行うための選択肢は「正攻法」以外にないと考えています。「正攻法」とは現在の法令に適合している方法で、しかも、国から新たな特例措置等は受けない方法を意味します。したがって、現時点では「溶融処理以外の方法で焼却灰の資源化を行う方法」以外に選択肢はないと考えます。
補足説明⇒国の計画は「循環型社会の形成」から「循環型社会と低炭素社会との統合」を目指す方向にシフトチェンジしています。市町村に対する国の補助金は国の施策に即して優先的に交付されます。したがって、これからは、焼却炉からのエネルギー回収と常温処理による焼却灰の資源化が各市町村における重要な施策になると考えます。ちなみに、ヨーロッパにおいては常温処理による焼却灰の資源化が主流になっています。
※組合の選択肢については、このブログの過去記事をご覧下さい。