国のインフラ長寿命化計画に基づいて国内の市町村は平成28年度までにごみ処理施設の長寿命化計画(行動計画)を策定することになっています。期限まであと1年余りになりました。そして、沖縄県民の約70%(約100万人)は溶融炉に依存しています。
そこで、今日は、人口やごみ処理施設の供用開始時期が同じくらの沖縄県と内地(山形県)の一部事務組合におけるごみ処理費の違いを考えてみることにします。
まずは下の画像をご覧下さい。
原寸大の資料(画像をクリック)
上の画像は沖縄県の中城村北中城村清掃事務組合(以下「中北組合」という)と山形県の尾花沢市大石田町環境衛生事務組合(以下「山形組合」という)の直近のごみ処理費を比較したものですが、中北組合は山形組合よりも人口が4割ほど多くなっています。そして、ほぼ同時期(1年違い)に中北組合は「焼却炉+溶融炉」、山形組合は「ガス化溶融炉」を整備しています。
この時代は国の政策によって補助金を利用する場合は溶融炉を整備することが義務付けられていましたが、中北組合は当時としては国内で一番建設費と維持管理費が高い施設を整備しています。一方、山形組合は標準的な施設を整備しています。
その結果、中北組合は山形組合に比べて3割ほど高いごみ処理費になっています。また、ごみ処理施設の建設費については2倍近く高くなっています。
一般的には、人口の少ない自治体の方がごみ処理施設の建設費やごみ処理費が高くなりますが、中北組合と山形組合の場合は逆になっています。
市町村のごみ処理は「自治事務」なので、ごみ処理に対する各市町村の考え方や取り組み方の違いが明確になります。したがって、この画像を山形組合の関係者が見たら「沖縄県の一部事務組合はお金持ちなんだ」と思うに違いありません。
このブログの管理者は、中北組合のごみ処理費は実際はもっと高いと考えています。なぜなら、内地において溶融炉を休止している自治体は、そのほとんどが溶融炉を休止する前に溶融炉の稼働率を下げてごみ処理費の削減を図っているからです。それでもまだ高いという理由で休止するのが共通したパターンになっています。したがって、平成26年度から溶融炉を休止している中北組合も同じ状況であったと推察します。
仮にそうなると(ほぼ間違いないと思っていますが)、中北組合のごみ処理費はもっと高くなります。なお、山形組合の場合は焼却炉と溶融炉が一体となったガス化溶融炉を整備しているため、ごみ処理費が高くなっても稼働率を下げることはできません。
いかがでしょうか?
このブログの管理者は沖縄県民ですが、山形県民よりも沖縄県民の方が経済的に豊かであるとは思っていません。
では、どうしてこんなに違いが出るのか?
このブログの読者は、多分、その理由をご存知だと思います。したがって、理由は書かないことにします。
コンピュータ社会になったことで、国には市町村の自治事務に関する大量のデータが蓄積されています。上の画像にあるデータも環境省の公式サイトに掲載されているデータに基づいて作成しています。
平成28年度からは地方版総合戦略がスタートしますが、市町村が身の丈に合わない「贅沢」をしている場合は、国の補助制度における評価が下がることになるので、沖縄県内の市町村はごみ処施設の長寿命化に当って、もう一度、施設の整備計画を見直す必要があると考えます。
※中城村北中城村清掃事務組合の場合は、溶融炉を廃止するために他の市町村と広域処理を行うことになっても、相手先の自治体が組合よりも人口が多い場合、そして相手先の自治体にごみ処理施設を整備する場合は、昨日の記事にある中部北清掃施設組合の恩納村と同じ状況になるため、今のごみ処理費よりも高くなる可能性があります。したがって、広域処理については結論を急がずに議会と十分な審議を行い住民の理解と協力を得る必要があると考えます。