沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

溶融炉の稼働率と経過年数を考える

2015-12-07 12:32:25 | 溶融炉

市町村が国の補助金を利用して整備したごみ処理施設のうち、設備(焼却炉や溶融炉)については、環境省の補助金を利用している場合は供用開始から7年、防衛省の補助金を利用している場合は供用開始から10年を経過すれば、補助金を返還せずに廃止することができます。

ただし、その設備が市町村にとって必要な設備である場合は、国の補助金を利用して長寿命化を行うというのが国のルールになっています。したがって、設備が不要になっている場合は長寿命化を行わずに廃止できます。

なお、設備が不要になっている場合とは、国が財政的援助を行わなくても市町村の責任で国の基本方針に即したごみ処理を行うことできる場合を意味しています。したがって、例えば溶融炉を廃止して焼却灰の民間委託処分を行う場合は国の基本方針に適合しないごみ処理になるので、廃止せずに国の補助金を利用して長寿命化を行うことになります。

では、仮に防衛省の補助金を利用して溶融炉を整備した市町村が経過年数が10年を超えたときに廃止した場合はどうなるか?

防衛省の場合は溶融炉の経過年数が10年を超えていれば補助金を返還する必要はありません。しかし、焼却炉の長寿命化を行うときに国の補助金を利用することはできなくなります。なぜなら、「焼却炉+焼却灰の民間委託処分」の組み合わせは国の基本方針に適合していないごみ処理になるからです。したがって、溶融炉を廃止した後で国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行う場合は、国の基本方針に即して「焼却炉+最終処分場」か「焼却炉+焼却灰の資源化」の組み合わせを考えなければなりません。これを「代替措置」と言います。

ちなみに、このブログによく登場する中城村北中城村清掃事務組合は、防衛省の補助金を利用してごみ処理施設を整備していますが、この「代替措置」を講じずに平成26年度から溶融炉を休止しています。同組合は平成15年度から溶融炉の供用を開始しているので休止したときは10年を超えています。ただし、焼却灰の民間委託処分を行っているので同組合は焼却炉の長寿命化を行う場合は自主財源で行うことになります。

ところで、仮に同組合の溶融炉の稼働率が100%でなかった場合はどうなるか?

経過年数とは、あくまでも溶融炉の稼働率が100%であることを前提にしています。溶融炉の稼働率とは焼却炉から排出される焼却灰の何%を処理していたかで決まります。したがって、全ての焼却灰を処理していなければ稼働率は100%になりません。

という前提で下の画像をご覧下さい。

 

原寸大の資料(画像をクリック)

このように、毎年100%の稼働率で焼却灰を処理していた場合は10年で経過年数が10年を超えることになりますが、もしも、10年間の平均稼働率が70%であった場合は、供用開始から10年を経過しても、実際は7年しか経過していないことになります。したがって、この場合は、あと3年間稼働率100%で焼却灰の処理を行わなければ10年を経過したことにはならないことになります。

昔は、国も稼働率までは厳しくチェックしなかった(そもそも市町村に記録がなかった)ので、単純に10年を経過すればOKというルーズな事務処理を行っていましたが、今は厳密に稼働率をチェックするようになっています。

しかし、市町村の方はまだ昔の習慣が残っているために、この辺りの事務処理は厳密とは言えない状況になっています。

中城村北中城村清掃事務組合がどの程度厳密にこの稼働率を計算しているかは分かりませんが、もしも100%でないとしたら、もう一度チェックをして、本当に10年を経過しているかどうか再確認する必要があると考えます。

国や県は、市町村から10年を経過しているという報告を受ければ、稼働率をチェックしていると考えます。そして、その前提で市町村に助言等を与えます。このため、市町村の方が稼働率を厳密にチェックしていなかった場合は、溶融炉の廃止の手続きを行うときに国から補助金の返還又は再稼動を求められることになります。

ちなみに、中城村北中城村清掃事務組合は溶融炉の供用開始から休止まで約10年10ヶ月(130ヶ月)経過しているので、この間の平均稼働率が93%以上であれば、経過年数は10年を超えていることになります。

なお、補助金の問題については、各省庁によって承認基準等が微妙に異なるので、同組合が仮に10年を経過していなかったとしても、直ちに防衛省から補助金の返還や溶融炉の再稼動を求められるとは限らないことを、最後に付け加えさせていただきます。


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