沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

溶融スラグの環境汚染リスクを考える(その3)

2015-10-31 21:26:19 | 溶融炉

環境省の公式サイトから溶融スラグの環境汚染リスクに関する資料を探してみました。平成21年度における調査報告書ですが、今のところこれ以降の報告書はないようです。

一般廃棄物処理施設における溶融固化の現状に関する調査報告書

平成21年度(環境省)

以下は、報告書の概要です。

(1)溶融固化施設の稼働開始時期は、平成13年から平成15年までのものが多く全体の46%を占めていた。

(2)溶出量、含有量データより、鉛については、複数の施設で溶出量、含有量いずれも基準値を超過していることが判明した。

(3)灰溶融炉については、基準値を超過している9施設中、7施設が日量40トン以下の施設であった。

(4)灰溶融施設については、件数が大きく増加した平成13年以降、断続的に基準値を超過している施設が見られる。

(5)スラグの冷却方法について、9施設中、8施設は水冷式であった。

(6)基準を超過していた9施設におけるスラグの有償利用率は0%であった。

(7)平成12年以前に竣工した灰溶融施設(17施設)における有効利用率については、8%から100%まで幅広く分布し、有償利用率については、100%の施設が4施設ある一方で、7施設からは0%との回答であった。

(8)平成13年~17年に竣工した灰溶融施設(42施設)の有償利用率については5施設のみが80%以上であった。一方で、有効利用率20%以下の施設が12施設あり、施設によって、有効利用状況が大きく分かれる結果となっている。

(9)平成18年以降に竣工した灰溶融施設(15施設)の有効利用率と有償利用率はともに90%以上の施設が多いが、有償利用率だけに限ってみると10%にも満たない施設も多い。

(10)JIS認証を取得している自治体に認証を取得した経緯について確認したところ、実際に溶融固化物を使用する自治体の土木部や実利用者から品質保証を求められたことによるものであった。

(11)溶融固化物の有効・有償利用状況は、施設稼働開始時期が、JIS規格制定時期の前なのか後なのかによって大きく左右される可能性があるので、十分注意する必要がある。

(12)今後の溶融固化物の有効利用促進を図るためには、溶融固化物利用促進に向けての指針等の策定が重要である。

以上が報告書の概要です。(1)から(5)までを整理すると、溶融スラグの環境汚染リスクが高いのは、①人口が少ない市町村において、②平成13年以降に整備された、③水冷式の冷却方法を採用している溶融炉ということになりますが、沖縄県にある溶融炉は全て平成13年以降に整備されており、水冷式を採用しています。また、(6)から(10)までを整理すると平成13年~17年に竣工した溶融炉の溶融スラグは利用率が低いという結果になっています。

なお、溶融スラグに対するJIS規格は平成18年に制定されていますが、沖縄県においてJIS規格の認証を取得している市町村はありません。また、内地においても「焼却炉+溶融炉」方式を選定している市町村でJIS規格の認証を取得しているところはありません。

※平成26年9月の会計検査院の意見表示によって溶融炉を整備しても溶融スラグの利用が行われていない場合は国から補助金の返還を求められる時代になりました。しかし、沖縄県においてJIS規格の認証を取得している市町村はないので、どこかで1つでも溶融スラグによる環境汚染が発生すると、場合によっては県内における溶融スラグの利用が困難になる恐れがあります。したがって、沖縄県において約100万人の県民が今後とも安心して溶融スラグの利用を続けて行くためには、溶融炉の整備を推進している県が溶融スラグの利用に関する指針等を策定してJIS規格の認証を取得するための施策を講じるべきだと考えます。そして、それができないのであれば、溶融炉を整備している市町村が国の補助金を利用して長寿命化を行う前に県の技術的援助によって廃止に向けた施策を講じるべきだと考えます。



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