琉球大学大学院で博士・修士号を取得した4人がこのほど、観光と教育を融合したベンチャー事業に取り組む一般社団法人「キュリオス沖縄」(那覇市)を設立した。
自然科学の研究経験を持つ人材が山や海のフィールドを歩きながら、沖縄の生態系の奥深い世界を案内するネーチャーツアーを展開する。
開発から自然を守るにはどうすればいいかと考え、思い至ったのが“起業”。「自然を活用して経済的価値を高めることが保全につながる」と意気込む。
農学修士の北島聖子さん(29)が代表理事、仲栄真礁さん(28)、宮崎悠さん(30)、佐藤寛之さん(39)の3人の理学博士が理事を務める。「やんばる山トレッキング」(3時間、1人6千円)、「サンゴ礁の海で生物学」(2・5時間、同4500円)など各種ツアーを企画し、ウェブサイトやフェイスブックページで募集。今月から観光客の受け入れを始めた。
6月にはモニターツアーとして恩納村の屋嘉田潟原でのリーフトレッキングを開催し、県内在住者にも身近な自然を再認識してもらう機会を設ける。
仲栄真さんは「保全と開発でてんびんに掛けてきたが、このまま資源を壊していっては、観光自体もうまくいかなくなる。自然の経済的な価値を上げ、雇用を生む。
開発と保全のどちらが沖縄のためになるかを、数字でも示せるようにしたい」と語る。
「キュリオス(curious)」は英語で「好奇心の強い」との意味がある。「自然の中での遊び方を覚えると身近な風景の見え方も変わる。視点を提供したい」(宮崎さん)、「沖縄の夏は暑過ぎて冬のうちに花を咲かせる植物が多い。冬場の観光オフシーズンこそ、俳句好きに響くツアーなどは最適」(仲栄真さん)など談議は尽きない。
理科教諭を辞めて起業に加わった北島さんは「今の学校で生徒をフィールドに連れ出すのは時間的に厳しく、地元の自然を学ぶ機会が少ない。教員向け研修会の協力など、学校現場の経験を教育事業に生かしたい」と目標を語った。
メンバーは事業化に向け、琉球銀行主催のビジネスプランコンテスト「りゅうぎんアントレプレナー(起業家)支援セミナー」に応募した。琉銀コンサルティング営業部の小川真司さんは「すぐに大きなビジネスにならなくとも、地方創生を模索する自治体の中には歴史や自然を生かした観光ツアーがほしいといったニーズがある。自治体やホテル、旅行社とつなげる形で起業家支援したい」とエールを送った。