(01)
(ⅰ)
1 (1) ∀x{親x→ ∃y(子yx&愛xy)} A
1 (2) 親a→ ∃y(子ya&愛ay) 1UE
3(3) 親a&~∃y(子ya&愛ay) A
3(4) 親a 3&E
13(5) ∃y(子ya&愛ay) 24MPP
3(6) ~∃y(子ya&愛ay) 3&E
13(7) ∃y(子ya&愛ay)&
~∃y(子ya&愛ay) 56&I
1 (8) ~{親a&~∃y(子ya&愛ay)} 37CP
1 (9)∀x~{親x&~∃y(子yx&愛xy)} 8UI
1 (ア)~∃x{親x&~∃y(子yx&愛xy)} 9量化子の関係
(ⅱ)
1 (1)~∃x{親x&~∃y(子yx&愛xy)} A
1 (2)∀x~{親x&~∃y(子yx&愛xy)} 1量化子の関係
1 (3) ~{親a&~∃y(子ya&愛ay)} 2UE
1 (4) ~親a∨ ∃y(子ya&愛ay) 3ド・モルガンの法則
1 (5) 親a→ ∃y(子ya&愛ay) 4含意の定義
1 (6) ∀x{親x→ ∃y(子yx&愛xy)} 5UI
従って、
(01)により、
(02)
① ∀x{親x→ ∃y(子yx&愛xy)}
② ~∃x{親x&~∃y(子yx&愛xy)}
に於いて、
①=② である。
従って、
(02)により、
(03)
① すべてのxについて{xが親であるならば、あるy(はxの子であって、xはyを愛す)。}
② ある{xが親であって、あるy(がxの子であって、xがyをするといふことが)ない}といふことはない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(04)
(ⅰ)
親皆有其所愛之子=
親皆有〔其所(愛)之子〕⇒
親皆〔其(愛)所之子〕有=
親皆〔其の(愛する)所の子〕有り。
(ⅱ)
無親無其所愛之子=
無[親無〔其所(愛)之子〕]⇒
[親〔其(愛)所之子〕無]無=
[親として〔其の(愛する)所の子〕無きは]無し。
従って、
(04)により、
(05)
① 親皆有其所愛之子。
② 無親無其所愛之子。
に於いて、
①=② である。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 親皆有其所愛之子。
② 無親無其所愛之子。
といふ「漢文」は、
① ∀x{親x→ ∃y(子yx&愛xy)}
② ~∃x{親x&~∃y(子yx&愛xy)}
といふ「述語論理式」の、「直訳」である。
従って、
(06)により、
(07)
② ~∃x{親x&~∃y(子yx&愛xy)}
といふ「述語論理式」に対する、
② 無親無其所愛之子。
といふ「作例」がさうであるやうに、
② 無A無B(Aとして、B無きは、無し)。
といふ『句形』が有るに、違ひない。
然るに、
(08)
② 子美無一字無来処=
② 子美無〔一字無(来処)〕⇒
② 子美〔一字(来処)無〕無=
② 子美は〔一字として(来処)無きは〕無し=
② 杜甫の詩は一字たりとも典拠の無い字は無い(どんな字にも皆典拠がある)。〈李沂・秋星閣詩話〉
従って、
(08)により、
(09)
② 無一字無来処=
② 無〔一字無(来処)〕⇒
② 〔一字(来処)無〕無=
② 〔一字として(来処)無きは〕無し=
② 一字たりとも典拠の無い字は無い(どんな字にも皆典拠がある)。
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
果たして、
② 無一字無来処。
② 無親無其所愛之子。
といふ「例文」がさうであるやうに、「漢文」には、
② 無A無B(Aとして、B無きは、無し)。
といふ『句形』は、有る。
(01)
(ⅰ)
1 (1) ∀x{人x→ ∃y(兄弟yx)} A
2 (2) ∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} A
1 (3) 人a→ ∃y(兄弟ya) 1UE
4(4) 人a&~∃y(兄弟ya) A
4(5) 人a 1&E
1 4(6) ∃y(兄弟ya) 35MPP
4(7) ~∃y(兄弟ya) 4&E
1 4(8)∃y(兄弟ya)&~∃y(兄弟ya) 67&I
12 (9)∃y(兄弟ya)&~∃y(兄弟ya) 248EE
1 (ア) ~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} 29RAA
(ⅱ)
1 (1)~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} A
2 (2) 人a A
3(3) ~∃y(兄弟ya) A
23(4) 人a&~∃y(兄弟ya) 24&I
23(5) ∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} 4EI
123(6)~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)}&
∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} 15&I
12 (7) ~~∃y(兄弟ya) 36RAA
12 (8) ∃y(兄弟ya) 7DN
1 (9) 人a→ ∃y(兄弟ya) 28CP
1 (ア) ∀x{人x→ ∃y(兄弟yx)} 1UI
(02)
(ⅱ)
1 (1)~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} A
1 (2)∀x~{人x&~∃y(兄弟yx)} 1量化子の関係
1 (3) ~{人a&~∃y(兄弟ya)} 1UE
1 (4) ~人a∨ ∃y(兄弟ya) 3ド・モルガンの法則
1 (5) ∃y(兄弟ya)∨~人a 4交換法則
1 (6) ~∃y(兄弟ya)→~人a 5含意の定義
1 (7)∀x{~∃y(兄弟yx)→~人x} 6UI
(ⅲ)
1 (1)∀x{~∃y(兄弟yx)→~人x} A
1 (2) ~∃y(兄弟ya)→~人a 1UE
1 (3) ∃y(兄弟ya)∨~人a 2含意の定義
1 (4) ~人a∨ ∃y(兄弟ya) 3交換法則
1 (5) ~{人a&~∃y(兄弟ya)} 4ド・モルガンの法則
1 (6)∀x~{人x&~∃y(兄弟yx)} 5UI
1 (7)~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)} 6量化子の関係
従って、
(01)(02)により、
(03)
① ∀x{人x→ ∃y(兄弟yx)}
② ~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)}
③ ∀x{~∃y(兄弟yx)→~人x}
に於いて、
①=② であって、
②=③ である。
従って、
(03)により、
(04)
① すべてのxについて{xが人であるならば、あるyは(xの兄弟である)}。
② {人であって、あるyが(xの兄弟ではない)といふ、そのやうな}xは存在しない。
③ すべてのxについて{あるyが(xの兄弟ではない)ならば、xは人ではない}。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(05)
(ⅰ)
① 人皆有兄弟=
① 人皆有(兄弟)⇒
① 人皆(兄弟)有り=
① 人には皆、兄弟が有る(論語、顔淵)。
(ⅱ)
② 無人不有兄弟=
② 無[人不〔有(兄弟)〕]⇒
② [人にして〔(兄弟の)有ら〕不るは]無し=
② 人であって、兄弟がゐないものは、無い(作例)。
(ⅲ)
③ 無兄弟也=
③ 無(兄弟)非(人)也⇒
③ (兄弟)無くんば(人に)非ざるなり=
③ 兄弟がゐなければ、人ではないのである(作例)。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
① ∀x{人x→ ∃y(兄弟yx)}= 人皆有兄弟(人には皆、兄弟が有る)。
② ~∃x{人x&~∃y(兄弟yx)}=無人不有兄弟(人であって、兄弟がゐないものは、無い)。
③ ∀x{~∃y(兄弟yx)→~人x}=無兄弟也(兄弟がゐなければ、人ではないのである)。
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(07)
司馬牛憂曰、
人皆有兄弟。
我独亡。
司馬牛憂へて曰はく、
人は皆兄弟有り。
我独り亡し。
司馬牛は思い悩みながら言った。
人は皆、兄弟がいます。
私だけ、兄弟がいません。
(論語、顔淵)
従って、
(06)(07)により、
(08)
③ 兄弟がゐなければ、人ではないが、
③ 司馬牛には、兄弟がゐない。
従って、
(08)により、
(09)
③ 司馬牛には、兄弟がゐないので、
③ 司馬牛は、人ではない。
然るに、
(10)
③ 司馬牛は、人である。
cf.
?-BC481以降。氏は司馬、名は耕、字は子牛。百度百科によると姓は向。『孔子家語』によると宋の出身で、兄は孔子の命を狙った宋国司馬(元帥)の桓魋(カンタイ)だという。
(『論語』全文・現代語訳)
従って、
(09)(10)により、
(11)
③ 司馬牛は、人ではないが、
③ 司馬牛は、人である。
従って、
(06)~(11)により、
(12)
① ∀x{人x→∃y(兄弟yx)}=人皆有兄弟(人には皆、兄弟が有る)。
③ 司馬牛独亡(司馬牛といふ人だけは、兄弟がゐない)。
に於いて、
①と③ は、「矛盾」する。
然るに、
(13)
【人】ジン、ニン
③ 他人。〔論語、雍也〕己欲レ達而達レ人。
(大修館、大漢和辞典)
従って、
(13)により、
(14)
③「人」といふ漢字には、
③ 自分(己)以外の他人。
といふ「意味」がある。
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
① ∀x{人x→∃y(兄弟yx)}
に於ける「人」は、「人」の「意味」であって、
① 人皆有兄弟=人には皆、兄弟が有る。
に於ける「人」は、「他人(自分以外の人)」といふ「意味」である。
従って、
(12)~(15)により、
(16)
① ∀x{人x→∃y(兄弟yx)}=人皆有兄弟(人には皆、兄弟が有る)。
といふ「等式」ではなく、
① ∀x{人x→∃y(兄弟yx)}≠人皆有兄弟(人には皆、兄弟が有る)。
といふ「非等式」が、正しい。
然るに、
(17)
一階述語論理は、数学のほぼ全領域を形式化するのに十分な表現力を持っている。実際、現代の標準的な集合論の公理系 ZFC は一階述語論理を用いて形式化されており、数学の大部分はそのように形式化された ZFC の中で行うことができる(ウィキペディア)。
然るに、
(18)
例へば、
司馬牛憂曰、
人皆有兄弟。
我独亡。
子夏曰、
商聞之矣。
死生有命、富貴在天。
君子敬而無失、与人恭而有礼、四海之内、皆為兄弟也。
君子何患乎無兄弟也。
(論語、顔淵)
といふ「漢文」全体を、「述語論理」で記述することは、言ふ迄もなく、「可能」ではない。
従って、
(17)(18)により、
(19)
階述語論理は、数学のほぼ全領域を形式化するのに十分な表現力を持っているが、
漢文の一部ではなく、漢文の全域を、述語論理で記述することは、「可能」ではない。
(01)
① 無象非動物=
① 無三象非二動物一=
① 無〔象非(動物)〕⇒
① 〔象(動物)非〕無=
① 〔象にして(動物に)非ざる〕無し=
① いかなる象であっても、動物でない象は、存在しない。
然るに、
(02)
① 動物でない象は、存在しない。
といふことは、
② 存在し得る象は、すべて動物である。
といふことであって、
② 存在し得る象は、すべて動物である。
といふことは、
② すべての象は、動物である。
といふ、ことである。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1(1)~∃x(象x&~動物x) A
1(2)∀x~(象x&~動物x) 1量化子の関係
1(3) ~(象a&~動物a) 2UE
1(4) ~象a∨ 動物a 3ド・モルガンの法則
1(5) 象a→ 動物a 含意の定義
1(6) ∀x(象x→ 動物x) 5UI
(ⅱ)
1(1) ∀x(象x→ 動物x) A
1(2) 象a→ 動物a 1UE
1(3) ~象a∨ 動物a 2含意の定義
1(4) ~(象a&~動物a) 3ド・モルガンの法則
1(5)∀x~(象a&~動物a) 4UI
1(6)~∃x(象x&~動物x) 5量化子の関係
従って、
(03)により、
(04)
① ~∃x(象x&~動物x)
② ∀x(象x→ 動物x)
に於いて、すなはち、
①(xが象であって、xが動物ではないといふ)そのやうなxは存在しない。
② すべてのxについて、xが象であるならば、xは動物である。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
①(xが象であって、xが動物ではないといふ)そのやうなxは存在しない。
② すべてのxについて、xが象であるならば、xは動物である。
といふことは、
① 動物でない象は、存在しない。
② すべての象は、動物である。
といふ、ことである。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 無象非動物。
といふ「漢文」は、
① ~∃x(象x&~動物x)
といふ「述語論理式」に、「等しい」。
(07)
{すべてのx}が、
{a、b、c}であるとして、
① ~∃x(象x&~動物x)
② ∀x(象x→ 動物x)
といふ「述語論理式」は、
①~{(象a&~動物a)∨(象b&~動物b)∨(象c&~動物c)}
② (象a→ 動物a)&(象b→ 動物b)&(象c→ 動物c)}
といふ「論理式」に、「相当」する。
然るに、
(08)
(ⅰ)
1(1)~{(象a&~動物a)∨ (象b&~動物b)∨ (象c&~動物c)} A
1(2) ~(象a&~動物a)&~(象b&~動物b)&~(象c&~動物c) 1ド・モルガンの法則
(ⅲ)
1(1) ~(象a&~動物a)&~(象b&~動物b)&~(象c&~動物c) A
1(2)~{(象a&~動物a)∨ (象b&~動物b)∨ (象c&~動物c)} 1ド・モルガンの法則
従って、
(08)により、
(09)
① ~{(象a&~動物a)∨ (象b&~動物b)∨ (象c&~動物c)}
③ ~(象a&~動物a)&~(象b&~動物b)&~(象c&~動物c)
に於いて、
①=③ である。
従って、
(09)により、
(10)
③ ~(象a&~動物a)&~(象b&~動物b)&~(象c&~動物c)
といふことは、
③(aが象であって、そのaが動物でない)といふことはないし、
③(bが象であって、そのbが動物でない)といふことはないし、
③(cが象であって、そのcが動物でない)といふことはない。
といふことであって、そのため、
{すべてのx}が、
{a、b、c}であるとして、
③{(象が動物でない)といふことはない。}といふことに、例外は無い。
といふ「意味」になる。
然るに、
(11)
③{(象が動物でない)といふことはない。}といふことに、例外は無い。
といふことは、
③ ∀x~(象x&~動物x)
といふことに、他ならない。
従って、
(07)~(11)により、
(12)
① ~∃x(象x&~動物x)
② ∀x(象x→ 動物x)
③ ∀x~(象x&~動物x)
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(13)
① ~∃x(象x&~動物x)
③ ∀x~(象x&~動物x)
に於いて、
①=③ は、「量化子の関係」である。
従って、
(01)~(13)により、
(14)
① 無象非動物=
① 無三象非二動物一=
① 無〔象非(動物)〕⇒
① 〔象(動物)非〕無=
① 〔象にして(動物に)非ざる〕無し=
① いかなる象であっても、動物でない象は、存在しない。
といふ「漢文訓読」は、
① ~∃x(象x&~動物x)
② ∀x(象x→ 動物x)
③ ∀x~(象x&~動物x)
といふ「述語論理式」に、「等しい」。
(01)
(ⅰ)
1 (1)~∀x{ 弟子x→ ∃y(師匠yx&x<y)} A
1 (2)∃x~{ 弟子x→ ∃y(師匠yx&x<y)} 1量化子の関係
3(3) ~{ 弟子a→ ∃y(師匠ya&a<y)} A
3(4) ~{~弟子a∨ ∃y(師匠ya&a<y)} 3含意の定義
3(5) 弟子a&~∃y(師匠ya&a<y) 4ド・モルガンの法則
3(6) 弟子a 5&E
3(7) ~∃y(師匠ya&a<y) 5&E
3(8) ∀y~(師匠ya&a<y) 7量化子の関係
3(9) ~(師匠ba&a<b) 8UE
3(ア) ~師匠ba∨a≧b 9ド・モルガンの法則
3(イ) 師匠ba→a≧b ア含意の定義
3(ウ) ∀y(師匠ya→a≧y) イUI
3(エ) 弟子a&∀y(師匠ya→a≧y) 6ウ&I
3(オ) ∃x{弟子a&∀y(師匠yx→x≧y)} エEI
1 (カ) ∃x{弟子x&∀y(師匠yx→x≧y)} 13オEE
(ⅱ)
1 (1) ∃x{弟子x&∀y(師匠yx→x≧y)} A
2(2) 弟子a&∀y(師匠ya→a≧y) A
2(3) 弟子a 2&E
2(4) ∀y(師匠ya→a≧y) 2&E
2(5) 師匠ba→a≧b 4UE
2(6) ~師匠ba∨a≧b 5含意の定義
2(7) ~(師匠ba&a<b) 6ド・モルガンの法則
2(8) ∀y~(師匠ya&a<y) 7UI
2(9) ~∃y(師匠ya&a<y) 8量化子の関係
2(ア) 弟子a&~∃y(師匠ya&a<y) 39&I
2(イ) ~{~弟子a∨ ∃y(師匠ya&a<y)} ア、ド・モルガンの法則
2(ウ) ~{ 弟子a→ ∃y(師匠ya&a<y)} イ含意の定義
2(エ)∃x~{ 弟子a→ ∃y(師匠ya&a<y)} 2EI
1 (オ)∃x~{ 弟子a→ ∃y(師匠ya&a<y)} 12エEE
1 (カ)~∀x{ 弟子x→ ∃y(師匠yx&x<y)} オ量化子の関係
従って、
(01)により、
(02)
① ~∀x{弟子x→∃y(師匠yx&x<y)}
② ∃x{弟子x&∀y(師匠yx→x≧y)}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1 (1)~{∀x[ 弟子(x)→ ∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕]} A
1 (2) ∃x~{ 弟子(x)→ ∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕} 1量化子の関係
3(3) ~{ 弟子(a)→ ∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕} A
3(4) ~{~弟子(a)∨ ∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕} 3含意の定義
3(5) 弟子(a)&~∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕 4ド・モルガンの法則
3(6) 弟子(a) 5&E
3(7) ~∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕 5&E
3(8) ∀y~〔師匠(ya)&~(a≧y)〕 7量化子の関係
3(9) ~〔師匠(ba)&~(a≧b)〕 8UE
3(ア) ~師匠(ba)∨ (a≧b) 9ド・モルガンの法則
3(イ) 師匠(ba)→ (a≧b) ア含意の定義
3(ウ) ∀y〔師匠(ya)→ (a≧y)〕 イUI
3(エ) 弟子(a)& ∀y〔師匠(ya)→ (a≧y)〕 6ウ&I
3(オ) ∃x{弟子(a)& ∀y〔師匠(yx)→ (x≧y)〕} エEI
1 (カ) ∃x{弟子(x)& ∀y〔師匠(yx)→ (x≧y)〕} 13オEE
(ⅱ)
1 (1) ∃x{弟子(x)& ∀y〔師匠(yx)→ (x≧y)〕} A
2(2) 弟子(a)& ∀y〔師匠(ya)→ (a≧y)〕 A
2(3) 弟子(a) 2&E
2(4) ∀y〔師匠(ya)→ (a≧y)〕 2&E
2(5) 師匠(ba)→ (a≧b) 4UE
2(6) ~師匠(ba)∨ (a≧b) 5含意の定義
2(7) ~(師匠(ba)&~(a≧b)〕 6ド・モルガンの法則
2(8) ∀y~〔師匠(ya)&~(a≧y)〕 7UI
2(9) ~∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕 8量化子の関係
2(ア) 弟子(a)&~∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕 39&I
2(イ) ~{~弟子(a)∨ ∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕} ア、ド・モルガンの法則
2(ウ) ~{ 弟子(a)→ ∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕} イ含意の定義
2(エ) ∃x~{ 弟子(a)→ ∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕} 2EI
1 (オ) ∃x~{ 弟子(a)→ ∃y〔師匠(ya)&~(a≧y)〕} 12エEE
1 (カ)~{∀x[ 弟子(x)→ ∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕]} オ量化子の関係
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ~∀x{弟子x→∃y(師匠yx&x<y)}
② ∃x{弟子x&∀y(師匠yx→x≧y)}
③ ~{∀x[弟子(x)→∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕]}
④ ∃x{弟子(x)&∀y〔師匠(yx)→ (x≧y)〕}
に於いて、
①=③ であって、
②=④ である。
然るに、
(05)
① ~{∀x[弟子(x)→∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕]}
に於いて、
① ~{ }⇒{ }~
① 弟子( )⇒( )弟子
① 師匠( )⇒( )師匠
① ~{ }⇒{ }~
といふ「移動」を行ふと、
① {∀x[(x)弟子→∃y〔(yx)師匠&(x≧y)~〕]}~
といふ「語順」になる。
然るに、
(06)
① {∀x[(x)弟子→∃y〔(yx)師匠&(x≧y)~〕]}~
といふ「述語論理式」は、「左から右へ」、
① {すべてのxについて[(xが)弟子でならば、ある〔(yはxの)師匠であって(xはyに及ば)ない〕]}といふことはない。
といふ風に、「読む」ことになる。
然るに、
(07)
① 弟子不必不如師=
① 弟子不ニ必不一レ如レ師=
① 弟子不[必不〔如(師)〕]⇒
① 弟子[必〔(師)如〕不]不=
① 弟子[は必ずしも〔(師)に如か〕不んば]あら不=
① 弟子は必ずしも、師匠に及ばない、というわけではない。
といふ「読み方」が、「漢文・訓読」であるならば、
② ~∀x{弟子x→∃y(師匠yx&x<y)}=
② ~{∀x[弟子(x)→∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕]}⇒
② {∀x[(x)弟子→∃y〔(yx)師匠&(x≧y)~〕]}~=
②{すべてのxについて[(xが)弟子でならば、ある〔(yはxの)師匠であって(xはyに及ば)ない〕]}といふことはない。
といふ「読み方」は、いはば、「述語論理・訓読」である。
然るに、
(08)
記号論理学は、英語などヨーロッパ語を母国語とする文化圏でもっぱら開発された学門であるにもかかわらず、論理学者の母語よりも日本語のような外国語の文法に合致している部分が少なくない(もちろん逆もある)。このことは、論理学が、ローカルな日常言語ではなく言語的な普遍論理をかなり再現しおおせている証しと言えるだろう(三浦俊彦、ラッセルのパラドックス、2005年、105頁)。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② ~∀x{弟子x→∃y(師匠yx&x<y)}=
② ~{∀x[弟子(x)→∃y〔師匠(yx)&~(x≧y)〕]}⇒
② {∀x[(x)弟子→∃y〔(yx)師匠&(x≧y)~〕]}~=
②{すべてのxについて[(xが)弟子でならば、ある〔(yはxの)師匠であって(xはyに及ば)ない〕]}といふことはない。
といふ「述語論理・訓読」を行っても、「誰にも、文句を言はれない。」
然るに、
(10)
(青木)二百年前、正徳の昔に於て荻生徂徠は夙に道破した。漢学の授業法はまず支那語から取りかからねばならぬ。教うるに俗語を以てし、誦するに支那音を以てし、訳するに日本の俗語を以てし、決して和訓廻環の読み方をしてはならぬ。先ず零細な二字三字の短句から始めて、後には纏った書物を読ませる、斯くて支那語が熟達して支那人と同様になつてから、而る後段々と経子史集四部の書を読ませると云う風にすれば破竹の如しだ、是が最良の策だ(勉誠出版、「訓読」論、2008年、56頁)。
(倉石)徂徠は、単に唐音を操るといふ様なことに満足せず、漢文を学ぶには先ず支那語からとりかり、支那の俗語をば支那語で暗誦させ、これを日本語の俗語に訳し、決して和訓の顚倒読みをしてはならない、始めは零細な二字三字の句から始めて、遂に纏った書物を読ます、支那語が支那人ほど熟達してから、古い書物を読ませば、破竹の勢いで進歩すると説いたこれは、今日の様に外国語に対する理念が発達した時代から見れば、何の不思議もないことであるが、その当時、つとに、かかる意見を吐いたのは、たしかに一世に抜きんでた見識に相違ない(勉誠出版、「訓読」論、2008年、56頁)。
(11)
日本語や英語、中国語(現代でなく、過去の中国語も含む)は、自然言語である。しかし漢文は、自然言語を土台にした人工言語だ(加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、8頁)。中国の口語文(白話文)も、漢文とおなじように漢字を使っていますが、もともと二つのちがった体系で、単語も文法もたいへんちがうのですから、いっしょにあつかうことはできません。漢文と中国語は別のものです(魚返善雄、漢文入門、1966年、17頁)。しからば、口語はAxByであるものを、文章語はABとつづめても、これはこれで完全な文となり得る。かくして記載語のABは、はじめから口語のAxByとは別のものとして発生し、存在したと思われる(吉川幸次郎、漢文の話、1962年、59頁)。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
荻生徂徠、青木正兒、倉石武四郎は、「漢文は、中国語である。」といふに、思ってゐた、ことになり、
魚返善雄、吉川幸次郎、加藤徹 は、「漢文は、人工言語」であると、思ってゐる(た)ことに、なるものの、「人工言語」であるならば、
① 弟子不[必不〔如(師)〕]⇒ 弟子[は必ずしも〔(師)に如か〕不んば]あら不。
② ~∀x{弟子x→∃y(師匠yx&x<y)}⇒ すべてのxについて[(xが)弟子でならば、ある〔(yはxの)師匠であって(xはyに及ば)ない〕]}といふことはない。
といふ風に読んだとしても、「問題」は、無いはずある。
然るに、
(13)
「ユーチューブ」で探してみたところ(李姉妹ch)、
A:中国人ならば、漢文をスラスラ読めるのか。日頃から、トップレベルに多い質問なんですけど、ズバリ結論からいうと、中国語が出来るからと言って、漢文が読めるわけではありません。その人の知識次第です。
A:今日は、この動画をとるに当たって、日本の漢文で、どういう感じだったかなぁ、と思って、2019年度のセンター試験の、国語の問題の中から、持って来ました。 B:これは、杜甫の文章です。Dùfǔ。えっ、ちょっと読んでみます。Wūhū'āizāi yǒu xiōng zǐ yuē fǔ zhìfú yú sī jì dé yú sī kè shí yú sī huò yuē qǐ xiào tóng zhī yóuzi yǔ xī xiàoyì zhī qín ruò cǐ.
A:全く、分からん。
B:全く、分からん。― 中略 ―、「そもそも、語順が違うから、並び替えも必要。― 後略 ―、因みに、中国の学生に、「文言文(漢文)」という言葉は、「禁句の言葉」に入るくらい、聞いただけで、鳥肌が立つって言うさ、
A:いやな思い出しかないって、言うみたいな。
B:マジで嫌。みんな、嫌いやもん、文言文(漢文)は、
A:因みに、お母さんに、この動画撮る前に、文言文(漢文)について、動画撮るって、言ったら、
B:ウン、
A:ハァッツ(と、母はため息をついたとのことで、二人とも、声をだして、笑う)。お母さん、メッチャ、きらいやった。っていうとった。嫌いな人が多い、ムズカシイんやろなぁ。
従って、
(12)(13)により、
(14)
「漢文(文言文)」が、「人工言語」であらうと、なからうと、いづれにせよ、
「漢文(文言文)」を理解する上で、「中国語の知識」は、「何らのアドバンテージ」にも、なりそうにない。
従って、
(08)~(14)により、
(15)
「英語」が出来なければ、「論理学」が分かるようにならないわけではないため、それと「同じ様」に、
「漢学の授業法はまず支那語から取りかからねばならぬ」という風に、私自身は、思はない。
(01)
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、吾矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がいた。その人が自分の盾を誉めて言った。 私のこの堅い盾を突き通すことが出来るものは何も無い。 また、自分の矛を誉めて言った。 私のこの鋭い矛は、どんな物でも突き通さないものは無い。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 盾と矛を売る、その人は、答えることが、出来なかった(韓非子・矛盾)。
(02)
(ⅰ)
1 (1)∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)} A
2 (2) 吾矛a&∀y(~吾盾y&盾y→陥ay) A
2 (3) 吾矛a 2&E
2 (4) ∀y(~吾盾y&盾y→陥ay) 2&E
2 (5) ~吾盾b&盾b→陥ab 4UE
6 (6) ~陥ab A
26 (7) ~(~吾盾b&盾b) 56MTT
26 (8) 吾盾b∨~盾b 7ド・モルガンの法則
26 (9) ~盾b∨吾盾b 8交換法則
26 (ア) 盾b→吾盾b 9含意の定義
2 (イ) ~陥ab→(盾b→ 吾盾b) 6アCP
ウ(ウ) ~陥ab& 盾b A
ウ(エ) ~陥ab ウ&E
2 ウ(オ) (盾b→ 吾盾b) イエMPP
ウ(カ) 盾b ウ&E
2 ウ(キ) 吾盾b オカMPP
2 (ク) ~陥ab&盾b→吾盾b ウキCP
2 (ケ) ∀y(~陥ay&盾y→吾盾y) クUI
2 (コ) 吾矛a&∀y(~陥ay&盾y→吾盾y) 3ケ&I
2 (サ)∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)} コEI
1 (シ)∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)} 12サEE
(ⅱ)
1 (1)∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)} A
2 (2) 吾矛a&∀y(~陥ay&盾y→吾盾y) A
2 (3) 吾矛a 2&E
2 (4) ∀y(~陥ay&盾y→吾盾y) 2&E
2 (5) ~陥ab&盾b→吾盾b 4UE
6 (6) ~吾盾b A
26 (7) ~(~陥ab&盾b) 56MTT
26 (8) 陥ab∨~盾b 7ド・モルガンの法則
26 (9) ~盾b∨陥ab 8交換法則
26 (ア) 盾b→陥ab 9含意の定義
2 (イ) ~吾盾b→(盾b→陥ab) 6アCP
ウ(ウ) ~吾盾b& 盾b A
ウ(エ) ~吾盾b ウ&E
2 ウ(オ) (盾b→陥ab) イエMPP
ウ(カ) 盾b ウ&I
2 ウ(キ) 陥ab オカMPP
2 (ク) ~吾盾b&盾b→陥ab ウキCP
2 (ケ) ∀y(~吾盾y&盾y→陥ay) クUI
2 (コ) 吾矛a&∀y(~吾盾y&盾y→陥ay) 2ケ&I
2 (シ)∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)} コEI
1 (ス)∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)} 12シEE
従って、
(02)により、
(03)
① ∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)}
② ∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)}
に於いて、すなはち、
① あるxは吾の矛であって、すべてのyについて、yが吾の盾以外の盾であるならば、xはyを陥す。
② あるxは吾の矛であって、すべてのyについて、xがyを陥すことがなく、yが盾であるならば、yは吾の盾である。
に於いて、
①=② である。
従って、
(03)により、
(04)
① 私の矛は、私の盾以外の、すべての盾を陥す。
② 私の矛が陥さない盾は、私の盾だけである。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
① 私の矛は、私の盾を含む、すべての盾を陥す。
② 私の盾は、私の矛を含む、すべて矛を陥さない。
といふことは、「矛盾」であるが、
(06)
① 私の矛は、私の盾以外の、すべての盾を陥す。
② 私の矛が陥さない盾は、私の盾だけである。
といふことは、「矛盾」ではない。
従って、
(06)により、
(07)
吾矛之利、於非吾盾之盾無不陥也=
吾矛之利、於〔非(吾盾)之盾〕無〔不(陥)〕也⇒
吾矛之利、〔(吾盾)非之盾〕於〔(陥)不〕無也=
吾が矛の利なること、〔(吾が盾に)非さるの盾〕於いて〔(陥さ)不る〕無きなり=
私のこの鋭い矛は、〔(私の盾)以外の盾に〕於いて〔(陥さ)ないことが〕無いのである。
であれば、「矛盾」しない。
(08)
因みに、
① 私のこの鋭い矛は、私の盾以外の盾において、貫さないことが無いのである(原文)。
② 我那尖銳的戟不會穿透我的盾牌以外的盾牌(グーグル翻訳)。
であるが、「私には、②が、全く、理解できない。」
(09)
① 吾矛之利、於非吾盾之盾無不陥也。
② 我那尖銳的戟不會穿透我的盾牌以外的盾牌。
といふ場合が、さうであるやうに、「漢文と、中国語は、完全に別物である」に違ひない。
(01)
― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、吾矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、吾盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、吾矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人[〔盾(矛)与〕鬻者]有。(之)誉曰、吾盾之堅、(能陥)莫也。又(其矛)誉曰、吾矛之利、(物)於〔(陥)不〕無也。或曰、(子之矛)以、(子之盾)陥、何如。其人〔(応)能〕也弗=
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子之矛を)以て、(子之盾を)陥さば、何如。其の人〔(応ふる)能は〕弗るなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がいた。その人が自分の盾を誉めて言った。 私のこの堅い盾を突き通すことが出来るものは何も無い。 また、自分の矛を誉めて言った。 私のこの鋭い矛は、どんな物でも突き通さないものは無い。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の盾と矛を売る人は、答えることが、出来なかった。
然るに、
(02)
(ⅰ)
1 (1) ∃x{盾x& ∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) ∃y{矛y&~∃x(盾x&~陥yx)} A
3 (3) 矛b&~∃x(盾x&~陥bx) A
3 (4) 矛b 3&E
3 (5) ~∃x(盾x&~陥bx) 3&E
3 (6) ∀x~(盾x&~陥bx) 5含意の定義
3 (7) ~(盾a&~陥ba) 6UE
3 (8) ~盾a∨ 陥ba 7ド・モルガンの法則
3 (9) 盾a→ 陥ba 8含意の定義
3 (ア) ∀x(盾x→ 陥bx) 9UI
3 (イ) 矛b& ∀x(盾x→ 陥bx) 4ア&I
3 (ウ) ∃y(矛y& ∀x(盾x→ 陥yx)} イEI
2 (エ) ∃y(矛y& ∀x(盾x→ 陥yx)} 23ウEE
オ (オ) 盾a& ∀y(矛y→~陥ya) A
オ (カ) 盾a オ&E
オ (キ) ∀y(矛y→~陥ya) オ&E
オ (ク) 矛b→~陥ba キUE
ケ(ケ) 矛b& ∀x(盾x→ 陥bx) A
ケ(コ) 矛b ケ&E
ケ(サ) ∀x(盾x→ 陥bx) ケ&E
ケ(シ) 盾a→ 陥ba サUE
オケ(ス) ~陥ba クコMPP
オケ(セ) 陥ba カシMPP
オケ(ソ) ~陥ba&陥ba スセ&I
2 オ (タ) ~陥ba&陥ba エケソEE
12 (チ) ~陥ba&陥ba 1オタEE
1 (ツ)~∃y(矛y& ∀x(盾x→ 陥yx)} 2チRAA(背理法)
(ⅲ)
1 (1)~∃y(矛y& ∀x(盾x→ 陥yx)} A
1 (2)∀y~(矛y& ∀x(盾x→ 陥yx)} 1含意の定義
1 (3) ~(矛b& ∀x(盾x→ 陥bx)} 1UE
1 (4) ~矛b∨~∀x(盾x→ 陥bx) 3ド・モルガンの法則
5 (5) ~矛b A
5 (6) ~矛b∨ ∃x(盾x&~陥bx) 5∨I
7 (7) ~∀x(盾x→ 陥bx) A
7 (8) ∃x~(盾x→ 陥bx) 7量化子の関係
9 (9) ~(盾a→ 陥ba) A
9 (ア) ~(~盾a∨陥ba) 9含意の定義
9 (イ) 盾a&~陥ba ア、ド・モルガンの法則
9 (ウ) ∃x(盾x&~陥bx) イEI
7 (エ) ∃x(盾x&~陥bx) 79ウEE
7 (オ) ~矛b∨ ∃x(盾x&~陥bx) エ∨I
1 (カ) ~矛b∨ ∃x(盾x&~陥bx) 4567オ∨E
1 (キ) ~{矛b&~∃x(盾x&~陥bx)} カ、ド・モルガンの法則
1 (ク)∀y~{矛y&~∃x(盾x&~陥yx)} キUI
1 (ケ)~∃y{矛y&~∃x(盾x&~陥yx)} ク量化子の関係
従って、
(02)により、
(03)
① ∃x{盾x& ∀y(矛y→~陥yx)}
② ∃y{矛y&~∃x(盾x&~陥yx)}
③ ~∃y(矛y& ∀x(盾x→ 陥yx)}
に於いて、すなはち、
① あるxは盾であって、すべてのyについて、yが矛ならば、yはxを陥さない。
② あるyは矛であって、xは盾であって、yはxを陥さないといふ、そのやうなxは存在しない(二重否定)。
③ yは矛であって、すべてのxについて、xが盾であるならば、yはxを陥す、といふ、そのやうなyは存在しない。
に於いて、
①と② は「矛盾」し、
② の「否定」は、
③ である。
従って、
(03)により、
(04)
① いかなる矛をも、陥さない盾が存在する。
② いかなる盾をも、陥す矛が存在する。
③ いかなる盾をも、陥す矛は存在しない。
に於いて、
①と② は「矛盾」し、
② の「否定」は、
③ である。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① 吾盾之堅、莫(能陥)也。
② 吾矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。
③ 不{有[無〔不(陷)〕之矛]}也。
に於いて、
①と② は、「矛盾」し、
②と③ も、「矛盾」する。
といふことは、「述語論理」としても、「正しい」。
cf.
③ 不有無不陷之矛也=
③ 不{有[無〔不(陷)〕之矛]}也⇒
③ {[〔(陷)不〕無之矛]有}不也=
③ {[〔(陷さ)不る〕無きの矛は]有ら}不る也。
(01)
(02)
① ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)}
② ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)& ∀z(~虎z→~長zx)}
③ ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∀z(~虎z→~長zx)}
に於いて、
②と③ は、
② ∀z(~虎z→~長zx)}
③ ~∀z(~虎z→~長zx)}
の「部分」が、「矛盾」する。
然るに、
(03)
(ⅲ)
1 (1)~∀z(~虎z→~長zx) A
1 (2)∃z~(~虎z→~長zx) 1量化子の関係
3(3) ~(~虎c→~長cx) A
3(4) ~(虎c∨~長cx) 3含意の定義
3(5) ~虎c& 長cx 4ド・モルガンの法則
3(6) ∃z(~虎z& 長zx) 5EI
1 (7) ∃z(~虎z& 長zx) 136EE
(ⅳ)
1 (1) ∃z(~虎z& 長zx) A
2(2) ~虎c& 長cx A
2(3) ~(虎c∨~長cx) 2ド・モルガンの法則
2(4) ~(~虎c→~長cx) 3含意の定義
2(5)∃z~(~虎z→~長zx) 4EI
1 (6)∃z~(~虎z→~長zx) 125EE
1 (7)~∀z(~虎z→~長zx) 6量化子の関係
従って、
(03)により、
(04)
③ ~∀z(~虎z→~長zx)≡すべてのzについて(zが虎でないならば、zはxの長ではない。)といふわけではない。
④ ∃z(~虎z& 長zx)≡あるzは(虎ではないが、xの長である)。
に於いて、
③=④ である。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)}
② ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)& ∀z(~虎z→~長zx)}
③ ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∀z(~虎z→~長zx)}
に於いて、すなはち、
① ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)}
② ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∃z(~虎z&長zx)}
③ ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)& ∃z(~虎z&長zx)}
に於いて、
②と③ は、「矛盾」する。
従って、
(05)により、
(06)
① すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)。}
② すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzが、xの長である)といふことはない。}
③ すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzも、xの長である)。}
に於いて、
②と③ は、「矛盾」する。
然るに、
(07)
② 誰が百獣の長であるか。
であって、
① 誰は百獣の長であるか。
③ 誰も百獣の長であるか。
ではない。
従って、
(07)により、
(08)
② 誰が百獣の長であるか。
② 虎が百獣の長である。
といふ、ことになる。
然るに、
(09)
② 誰が百獣の長であるか。
② 虎が百獣の長である。
といふのであれば、
② すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzが、xの長である)といふことはない。}
といふ、ことになる。
然るに、
(10)
③ すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzも、xの長である)。}
といふのであれば、
③ 虎も百獣の長である。
といふ、ことになる。
従って、
(06)~(10)により、
(11)
① すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)。}
の場合は、
② 虎が百獣の長である。
ではないし、
③ 虎も百獣の長である。
でもないため、
① 虎は百獣の長である。
といふ、ことになる。
従って、
(05)~(11)により、
(12)
① 百獣は、虎は長である=∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)}。
② 百獣は、虎が長である=∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∃z(~虎z&長zx)}。
③ 百獣は、虎も長である=∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)& ∃z(~虎z&長zx)}。
といふ、ことになる。
然るに、
(13)
1 (1)∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∃z(~虎z&長zx)} A
1 (〃)百獣は、虎が長である。 A
2 (2)~∃z(狐z&虎z) A
2 (〃)あるzが狐であって、尚且つ、虎である。といふことはない。 A
2 (〃)狐は虎ではない。 A
3 (3) ∃z(狐z) A
3 (〃)あるzは狐である。 A
3 (〃)狐はゐる。 A
1 (4) 百獣a→∃y(虎y&長ya)&~∃z(~虎z&長za) 1UE
5 (5) 百獣a A
1 5 (6) ∃y(虎y&長ya)&~∃z(~虎z&長za) 45MPP
2 (7)∀z~(狐z&虎z) 2量化子の関係
2 (8) ~(狐c&虎c) 7UE
2 (9) ~狐c∨~虎c 8ド・モルガンの法則
2 (ア) 狐c→~虎c 9含意の定義
イ(イ) 狐c A
2 イ(ウ) ~虎c アイMPP
1 5 (エ) ~∃z(~虎z&長za) 6&E
1 5 (オ) ∀z~(~虎z&長za) エ量化子の関係
1 5 (カ) ~(~虎c&長ca) オUE
1 5 (キ) ~~虎c∨~長ca カ、ド・モルガンの法則
1 5 (ク) ~虎c→~長ca キ含意の定義
12 5イ(ケ) ~長ca ウクMPP
12 5イ(コ) 狐c&~長ca イケ&E
12 5イ(サ) ∃z(狐z&~長za) コEI
1235 (シ) ∃z(狐z&~長za) 3イサEE
1 5 (ス) ∃y(虎y&長ya) 6&E
1235 (セ) ∃y(虎y&長ya)& ∃z(狐z&~長za) シス&I
123 (ソ) 百獣a→∃y(虎y&長ya)& ∃z(狐z&~長za) 5セCP
123 (タ)∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)& ∃z(狐z&~長zx)} ソUI
従って、
(13)により、
(14)
(ⅰ)∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∃z(~虎z&長zx)}。然るに、
(ⅱ)~∃z(狐z&虎z)。然るに、
(ⅲ) ∃z(狐z)。 従って、
(ⅳ)∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)& ∃z(狐z&~長zx)}。 といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzが、xの長である)といふことはない。}然るに、
(ⅱ)あるz(が、狐であって、虎である。といふことは。)然るに、
(ⅲ)あるz(は、狐である。)従って、
(ⅳ)すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長であり)、あるzは(狐であって、zはxの長ではない)。}
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(14)により、
(15)
(ⅰ)百獣は、虎が長である。然るに、
(ⅱ)狐は、 虎ではない。 然るに、
(ⅲ)狐は、ゐる。 従って、
(ⅳ)百獣は、虎が長であって、狐は長ではない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(01)(12)~(15)により、
(16)
② 百獣は、虎が長である。⇔
② ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∃z(~虎z&長zx)}⇔
② すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzが、xの長である)といふことはない。}
といふ「命題」が「真」であるならば、
② 狐は(虎に向かって)言った、「あなたはけっしてわたしを食べたりしてはいけない。(そもそも)天の神様は、このわたしを百獣のかしらとしたのです。いまもしもあなたがわたしをたべれば、それは天の神様の命令にそむくことになります(旺文社、漢文の基礎、1973年、39頁)。」
といふ狐の「発言」は、「嘘」になる。
然るに、
(17)
1 (1)∀x{百獣x→∀z(虎z∨狐z→長zx)} A
1 (〃)百獣は、虎か、狐が、長である。 A
2 (2) ∃z(狐z) A
2 (〃)あるzは狐である。 A
2 (〃)狐はゐる。 A
1 (3) 百獣a→∀z(虎z∨狐z→長za) 1UE
4 (4) 百獣a A
1 4 (5) ∀z(虎z∨狐z→長za) 34MPP
1 4 (6) 虎c∨虎x→長ca 5UE
7(7) 狐c A
7(8) 虎c∨狐c 7∨I
1 47(9) 長ca 68MPP
1 47(ア) 狐c&長ca 79&I
1 47(イ) ∃z(狐z&長za) アEI
124 (ウ) ∃z(狐z&長za) 27イEE
12 (エ) 百獣a→∃z(狐z&長za) 4ウCP
12 (オ)∀x{百獣x→∃z(狐z&長zx)} エUI
従って、
(17)により、
(18)
(ⅰ)∀x{百獣x→∀z(虎z∨狐z→長zx)}。然るに、
(ⅱ)∃z(狐z)。従って、
(ⅲ)∀x{百獣x→∃z(狐z&長zx)}。
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが百獣であるならば、すべてのzについて(zが虎か、または、zが狐であるならば、zはxの長である)。}然るに、
(ⅱ)あるz(は狐である。)従って、
(ⅲ)すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるz(は、狐であって、xの長である)。}
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(18)により、
(19)
④ 百獣は、虎か、または、狐が、長である。然るに、
④ 狐はゐる。従って、
④ 百獣は、狐は長である。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(18)(19)により、
(20)
④ 百獣は、虎か、または、狐が、長である。⇔
④ ∀x{百獣x→∀z(虎z∨狐z→長zx)}⇔
④ すべてのxについて{xが百獣であるならば、すべてのzについて(zが虎か、または、zが狐であるならば、zはxの長である)。}
といふ「命題」が「真」であるならば、
② 百獣は、虎が長である。⇔
② ∀x{百獣x→∃y(虎y&長yx)&~∃z(~虎z&長zx)}⇔
② すべてのxについて{xが百獣であるならば、あるyは(虎であって、yはxの長である)が、ある(、虎以外のzが、xの長である)といふことはない。}
といふ「命題」が「真」であるならば、
② 狐は(虎に向かって)言った、「あなたはけっしてわたしを食べたりしてはいけない。(そもそも)天の神様は、このわたしを百獣のかしらとしたのです。いまもしもあなたがわたしをたべれば、それは天の神様の命令にそむくことになります(旺文社、漢文の基礎、1973年、39頁)。」
といふ狐の「発言」は、「嘘」ではない。
(01)
① 弟子必不レ如レ師=
① 弟子必不〔如(師)〕⇒
① 弟子必〔(師)如〕不=
① 弟子は必ず〔(師に)如か〕不=
① 弟子は必ず、師に及ばない。
(02)
② 弟子不二必不一レ如レ師=
② 弟子不[必不〔如(師)〕]⇒
② 弟子[必〔(師)如〕不]不=
② 弟子は[必ずしも〔(師に)如か〕不んば]あら不=
② 弟子は必ずしも、師に及ばない。といふわけではない。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 弟子必不レ如レ師。
② 弟子不二必不一レ如レ師。
に於いて、
②は、「①の否定」である。
然るに、
(04)
① 弟子は必ず、師に及ばない。
であれば、
① ∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy)≡
① すべてのxとすべてのyについて(xがyの弟子であって、yがxの師匠であるならば、xはyに及ばない)。
といふ「述語論理式」に、相当する。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
② 弟子は必ずしも、師に及ばない。といふわけではない。
であれば、
② ~∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy)
といふ「述語論理式」に、相当する。
然るに、
(06)
(ⅱ)
1 (1)~∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy) A
1 (2)∃x~∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy) 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~(弟子xy&師匠yx→~及xy) 2量化子の関係
4 (4) ∃y~(弟子ay&師匠ya→~及ay) A
5(5) ~(弟子ab&師匠ba→~及ab) A
5(6) ~{~(弟子ab&師匠ba)∨~及ab) 5含意の定義
5(7) (弟子ab&師匠ba)& 及ab 6ド・モルガンの法則
5(8) (弟子ab&師匠ba&及ab) 7結合法則
5(9) ∃y(弟子ay&師匠ya&及ay) 8EI
4 (ア) ∃y(弟子ay&師匠ya&及ay) 459EE
4 (イ) ∃x∃y(弟子xy&師匠yx&及xy) アEI
1 (ウ) ∃x∃y(弟子xy&師匠yx&及xy) 14イEE
(ⅲ)
1 (1) ∃x∃y(弟子xy&師匠yx&及xy) A
2 (2) ∃y(弟子ay&師匠ya&及ay) A
3(3) (弟子ab&師匠ba&及ab) A
3(4) (弟子ab&師匠ba)& 及ab 3結合法則
3(5) ~{~(弟子ab&師匠ba)∨~及ab) 4ド・モルガンの法則
3(6) ~(弟子ab&師匠ba→~及ab) 5含意の定義
3(7) ∃y~(弟子ay&師匠ya→~及ay) 6EI
2 (8) ∃y~(弟子ay&師匠ya→~及ay) 237EE
2 (9)∃x∃y~(弟子xy&師匠yx→~及xy) 8EI
1 (ア)∃x∃y~(弟子xy&師匠yx→~及xy) 129EE
1 (イ)∃x~∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy) ア量化子の関係
1 (ウ)~∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy) イ量化子の関係
従って、
(06)により、
(07)
② ~∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy)
③ ∃x∃y(弟子xy&師匠yx& 及xy)
に於いて、すなはち、
② すべてのxとすべてのyについて(xがyの弟子であって、yがxの師匠であるならば、xはyに及ばない)といふわけではない。
③ あるxとあるyについて(xはyの弟子であって、yはxの師匠であっ、 xはyに及んでゐる)。
に於いて、
②=③ である。
然るに、
(08)
③ ∃x∃y(弟子xy&師匠yx&及xy)≡
③ あるxとあるyについて(xはyの弟子であって、yはxの師匠であって、xはyに及んでゐる)。
といふことは、
③ ある弟子は、師匠よりも優れてゐる。⇔
③ ある師匠は、弟子に及ばない。
といふ「意味」である。
cf.
孔子は郯子・萇弘・師襄・老耼・を師としたが、郯子の仲間は、その徳のすぐれていること、孔子には及ばなかった。
(明治書院、新釈漢文大系 70、1926年、88頁)
従って、
(01)~(08)により、
(09)
① 弟子不二必不一レ如レ師。
② 弟子は必ずしも、師に及ばない。といふわけではない。
③ A disciple is not always inferior to his master.
④ ~∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy)
に於いて、
①=②=③=④ である。
然るに、
(10)
「論理」は、「すべての人類」にとって、「共通」である。
従って、
(09)(10)により、
(11)
「初めに(エン アルケー)」、
④ ~∀x∀y(弟子xy&師匠yx→~及xy)
といふ「論理(ロゴス)」が有って、その「翻訳」として、
① 弟子不二必不一レ如レ師。
② 弟子は必ずしも、師に及ばない。といふわけではない。
③ A disciple is not always inferior to his master.
といふ「諸言語」が有るのかも知れない。
と、思ったりするのであるが、果たして、「本当に、さうなのだらうか?」。
(01)
① ∀x(Fx→ Gx)≡すべてxについて、xがFならば、xはGである。≡すべてのFはGである(全部肯定)。
② ∀x(Fx→~Gx)≡すべてxについて、xがFならば、xはGでない。≡すべてのFはGでない(全部否定)。
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡(すべてのFがGである。)といふわけではない(部分否定)。
④ ~∀x(Fx→~Gx)≡(すべてのFがGでない。)といふわけではない(部分肯定)。
然るに、
(02)
(a)
1(1) ∀x(Fx→ Gx) A
1(2) Fa→~Ga 1UE
1(3) ~Fa∨ Ga 2含意の定義
1(4) ~(Fa&~Ga) 3ド・モルガンの法則
1(5)∀x~(Fx&~Gx) 4UI
1(6)~∃x(Fx&~Gx) 5量化子の関係
(b)
1(1)~∃x(Fx&~Gx) A
1(2)∀x~(Fx&~Gx) 1量化子の関係
1(3) ~(Fa&~Ga) 1UE
1(4) ~Fa∨ Ga 3ド・モルガンの法則
1(5) Fa→ Ga 4ド・モルガンの法則
1(6) ∀x(Fx→~Gx) 5UI
従って、
(02)により、
① ∀x(Fx→ Gx)≡~∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)は存在しない≡GでないFは、存在しない(全部肯定)。
② ∀x(Fx→~Gx)≡~∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)は存在しない≡GであるFは、存在しない(全部否定)。
然るに、
(03)
(c)
1 (1)~∀x(Fx→Gx) A
1 (2)∃x~(Fx→Gx) 1量化子の関係
3(3) ~(Fa→Ga) A
3(4) ~(~Fa∨Ga) 3含意の定義
3(5) Fa&~Ga 4ド・モルガンの法則
3(6)∃x(Fx&~Gx) 5EI
1 (7)∃x(Fx&~Gx) 136EE
(d)
1 (1)∃x(Fx&~Gx) A
2(2) Fa&~Ga A
2(3) ~(~Fa∨Ga) 2ド・モルガンの法則
2(4) ~(Fa→Ga) 3含意の定義
2(5)∃x~(Fx→Gx) 4EI
1 (6)∃x~(Fx→Gx) 125EE
1 (7)~∀x(Fx→Gx) 6量化子の関係
従って、
(03)により、
(04)
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)が存在する≡GでないFが、存在する(部分否定)。
④ ~∀x(Fx→~Gx)≡∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)が存在する≡GであるFが、存在する(部分肯定)。
従って、
(02)(04)により、
(05)
① ∀x(Fx→ Gx)≡~∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)は存在しない≡GでないFは、存在しない(全部肯定)。
② ∀x(Fx→~Gx)≡~∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)は存在しない≡GであるFは、存在しない(全部否定)。
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡ ∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)が存在する ≡GでないFが、存在する (部分否定)。
④ ~∀x(Fx→~Gx)≡ ∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)が存在する ≡GであるFが、存在する (部分肯定)。
然るに、
(06)
「漢文の教科書」等で、取り上げられるのは、専ら、
② ∀x(Fx→~Gx)≡~∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)は存在しない≡GであるFは、存在しない(全部否定)。
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡ ∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)が存在する ≡GでないFが、存在する (部分否定)。
である。
然るに、
(07)
② 勇者必不レ仁。⇔
② 勇者は必ず仁ならず。
といふことは、
② ∀x(勇者x→~仁x)⇔
② すべてのxについて(xが勇者であるならば、xは仁ではない)。
といふことに、他ならない。
(08)
③ 勇者不二必仁一。⇔
③ 勇者は必ずしも仁ならず。
といふことは、
③ ~∀x(勇者x→仁x)⇔
③ すべてのxについて(xが勇者であるならば、xは仁ではある)。といふわけではない。
といふことに、他ならない。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 勇者必不レ仁。 ≡ ∀x(勇者x→~仁x)≡~∃x(勇者x& 仁x)
③ 勇者不二必仁一。≡~∀x(勇者x→ 仁x)≡ ∃x(勇者x&~仁x)
といふ「等式」が、成立する。
(01)
(ⅱ)
1(1)~{~∃x(伯楽x)& ∃y(千里馬y)} A
1(2) ~~∃x(伯楽x)∨~∃y(千里馬y) 1ド・モルガンの法則
1(3) ~∃x(伯楽x)→~∃y(千里馬y) 2含意の定義
(ⅲ)
1(1) ~∃x(伯楽x)→~∃y(千里馬y) A
1(2) ~~∃x(伯楽x)∨~∃y(千里馬y) 1含意の定義
1(3)~{~∃x(伯楽x)& ∃y(千里馬y)} 2ド・モルガンの法則
(ⅲ)
1 (1) ~∃x(伯楽x)→~∃y(千里馬y) A
2 (2) ∃y(千里馬y) A
3(3) ~∃x(伯楽x) A
1 3(4) ~∃y(千里馬y) 13MPP
123(5) ∃y(千里馬y)&~∃y(千里馬y) 24&I
12 (6)~~∃x(伯楽x) 35RAA
12 (7) ∃x(伯楽x) 6DN
1 (8) ∃y(千里馬y)→∃x(伯楽x) 27CP
(ⅳ)
1 (1) ∃y(千里馬y)→∃x(伯楽x) A
2 (2) ~∃x(伯楽x) A
3(3) ∃y(千里馬y) A
1 3(4) ∃x(伯楽x) 13MPP
123(5) ~∃x(伯楽x)&∃x(伯楽x) 24&I
12 (6) ~∃y(千里馬y) 35RAA
1 (7) ~∃x(伯楽x)→~∃y(千里馬y) 26CP
従って、
(01)により、
(02)
② ~{~∃x(伯楽x) & ∃y(千里馬y)}
③ ~∃x(伯楽x) →~∃y(千里馬y)
④ ∃y(千里馬y)→ ∃x(伯楽x)
に於いて、すなはち、
②{伯楽が存在せずして、千里の馬が存在する。}といふことはない。
③ 伯楽が存在しないならば、千里の馬も存在しない。
④ 千里の馬が存在するならば、伯楽も存在する。
に於いて、
②=③=④ である。
然るに、
(03)
③ 伯楽が存在しないならば、千里の馬も存在しない。
④ 千里の馬が存在するならば、伯楽も存在する。
といふことは、
③ 伯楽の存在が、千里馬の存在の、「必要条件」である。
④ 伯楽の存在が、千里馬の存在の、「必要条件」である。
といふことに、他ならない。
従って、
(02)(03)により、
(04)
② ~{~∃x(伯楽x)&∃y(千里馬y)}⇔
②{伯楽が存在せずして、千里の馬が存在する。}といふことはない。
といふ「命題」が「真」である。
といふことは、
③ 伯楽の存在が、千里馬の存在の、「必要条件」である。
といふことを、示してゐる。
然るに、
(05)
① 有二伯楽一、然後有二千里馬一⇔
① 伯楽有りて、然る後に千里の馬有り。
といふことは、
③ 伯楽の存在が、千里馬の存在の、「必要条件」である。
といふことに、他ならない。
従って、
(04)(05)により、
(06)
① 有二伯楽一、然後有二千里馬一。
② ~{~∃x(伯楽x)&∃y(千里馬y)}。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(07)
② ~{~∃x(伯楽x)&∃y(千里馬y)}。
の場合は、「正確」には、
② ~{~〔∃x(伯楽x)〕&∃y(千里馬y)}。
といふ風に、書くことになる。
然るに、
(08)
「~」は、「否定」であって、
「∃」は、「有る」である。
「&」は、「而」 である。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② ~{~〔∃x(伯楽x)〕&∃y(千里馬y)}。
といふ「述語論理式」は、
② 無{不〔有x(伯楽x)〕而有y(千里馬y)}。
といふ風に、書くことが、出来る。
然るに、
(10)
「漢文」には、「変数(x、y)」が無い。
従って、
(09)(10)により、
(11)
② ~{~〔∃x(伯楽x)〕&∃y(千里馬y)}。
といふ「述語論理式」は、
② 無{不〔有(伯楽)〕而有(千里馬)}。
といふ「漢文」に、「相当」する。
然るに、
(12)
② 無不有伯楽而有千里馬=
② 無下不レ有二伯楽一而有中千里馬上=
② 無[不〔有(伯楽)〕而有(千里馬)]⇒
② [〔(伯楽)有〕不而(千里馬)有]無=
② [〔(伯楽)有ら〕ずして(千里馬)有る]無し=
② 伯楽がゐないのに、千里の馬がゐるといふことは無い。
従って、
(06)~(12)により、
(13)
① 有二伯楽一、然後有二千里馬一。
② 無[不〔有(伯楽)〕而有(千里馬)]。
に於いて、
①=② である。
従って、
(13)により、
(14)
① 世有二伯楽一、然後有二千里馬一。
② 無[世不〔有(伯楽)〕而有(千里馬)]。
に於いて、
①=② である。
従って、
(14)により、
(15)
「訓読」をすると、
① 世に(伯楽)有りて、然る後に(千里の馬)有り。
②[世に〔(伯楽)有ら〕不して(千里馬)有るは]無し。
に於いて、
①=② である。
(01)
(ⅰ)
1 (1)~∀x{千里馬x→ ∃y(伯楽y&食yx)} A
1 (2)∃x~{千里馬x→ ∃y(伯楽y&食yx)} 1量化子の関係
3(3) ~{千里馬a→ ∃y(伯楽y&食ya)} A
3(4) ~{~千里馬a∨ ∃y(伯楽y&食ya)} 3含意の定義
3(5) 千里馬a&~∃y(伯楽y&食ya) 4ド・モルガンの法則
3(6) 千里馬a 5&E
3(7) ~∃y(伯楽y&食ya) 5&E
3(8) ∀y~(伯楽y&食ya) 7量化子の関係
3(9) ~(伯楽b&食ba) 8UE
3(ア) ~伯楽b∨~食ba 9ド・モルガンの法則
3(イ) 伯楽b→~食ba ア含意の定義
3(ウ) ∀y(伯楽y→~食ya) イUI
3(エ) 千里馬a&∀y(伯楽y→~食ya) 6ウ&I
3(オ) ∃x{千里馬x&∀y(伯楽y→~食yx)} エEI
1 (カ) ∃x{千里馬x&∀y(伯楽y→~食yx)} 23オEE
(ⅱ)
1 (1) ∃x{千里馬x&∀y(伯楽y→~食yx)} A
2(2) 千里馬a&∀y(伯楽y→~食ya) A
2(3) 千里馬a 2&E
2(4) ∀y(伯楽y→~食ya) 2&E
2(5) 伯楽b→~食ba 4UE
2(6) ~伯楽b∨~食ba 5含意の定義
2(7) ~(伯楽b&食ba) 6ド・モルガンの法則
2(8) ∀y~(伯楽y&食ya) 7UI
2(9) ~∃y(伯楽y&食ya) 8量化子の関係
2(ア) 千里馬a&~∃y(伯楽y&食ya) 39&I
2(イ) ~{~千里馬a∨ ∃y(伯楽y&食ya)} ア、ド・モルガンの法則
2(ウ) ~{千里馬a→ ∃y(伯楽y&食ya)} イ含意の定義
2(エ)∃x~{千里馬a→ ∃y(伯楽y&食ya)} ウEI
1 (オ)∃x~{千里馬a→ ∃y(伯楽y&食ya)} 12エEE
1 (カ)~∀x{千里馬x→ ∃y(伯楽y&食yx)} オ量化子の関係
従って、
(01)により、
(02)
① ~∀x{千里馬x→∃y(伯楽y& 食yx)}
② ∃x{千里馬x&∀y(伯楽y→~食yx)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて{xが千里の馬であるならば、あるyは伯楽であって、yはxを養ふ}といふわけではない。
② あるxについて{xは千里の馬であって、すべてのyについて(yが伯楽であるならば、yはxを養はない)}。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
① すべてのxについて{xが千里の馬であるならば、あるyは伯楽であって、yはxを養ふ}といふわけではない。
② あるxについて{xは千里の馬であって、すべてのyについて(yが伯楽であるならば、yはxを養はない)}。
といふことは、
③(千里の馬がゐるならば、その、すべての千里の馬に対して、伯楽がゐる)といふわけではない。
といふ、ことである。
然るに、
(04)
① ∃x(千里馬)⇔「千里の馬は存在する。」
② ~∃x(千里馬)⇔「千里の馬は存在しない。」
③ ~~∃x(千里馬)⇔「千里の馬は存在しない、といふことはない。」
に於いて、
①=③ は、「二重否定律(DN)」である。
然るに、
(05)
③「千里の馬は存在しない、といふことはない。」
④「千里の馬は、常にゐる。」
に於いて、
③=④ である。
従って、
(04)(05)により、
(06)
① ∃x(千里馬)⇔「千里の馬は常にゐる。」
従って、
(02)(03)(06)により、
(07)
① ∃x(千里馬)&~∀x{千里馬x→∃y(伯楽y&食yx)}
といふ「述語論理式」は、
① 千里の馬は常にゐるが、(千里の馬がゐるならば、その、すべての千里の馬に対して、伯楽がゐる)といふわけではない。
といふ、「意味」である。
然るに、
(08)
① 千里馬常有、而伯楽不ニ常有一。
① 千里の馬は常に有れども、伯楽は常にはあらず。
① 一日に千里走る名馬はいつでもいるのであるが(これを見わける)伯楽はいつもいるとはかぎらないのである。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、154頁)
従って、
(07)(08)により、
(09)
① 千里馬常有、而伯楽不ニ常有一。
といふ「漢文(部分否定形)」は、
① ∃x(千里馬)&~∀x{千里馬x→∃y(伯楽y&食yx)}
といふ「述語論理式」に、「相当」する。
(01)
1 (1)∃x∃y{項羽x&英雄x&劉邦y&英雄y&~(x=y)&∀z(英雄z→z=x∨英雄z→z=y)} A
2 (2) ∃y{項羽a&英雄a&劉邦y&英雄y&~(a=y)&∀z(英雄z→z=a∨英雄z→z=y)} A
3 (3) {項羽a&英雄a&劉邦b&英雄b&~(a=b)&∀z(英雄z→z=a∨英雄z→z=b)} A
3 (4) 項羽a 3&E
3 (5) 劉邦b 3&E
3 (6) ∀z(英雄z→z=a∨英雄z→z=b) 3&E
3 (7) 英雄c→c=a∨英雄c→c=b 7UE
8 (8) ∃z(韓信z&~項羽z&~劉邦z) A
9 (9) 韓信c&~項羽c&~劉邦c A
9 (ア) 韓信c 9&E
9 (イ) ~項羽c 9&E
9 (ウ) ~劉邦c 9&E
エ (エ) c=a A
3 エ (オ) 項羽c 4エ=E
3 9エ (カ) ~項羽c&項羽c イオ&I
3 9 (キ) ~(c=a) エカRAA
ク (ク) 英雄c→c=a A
3 9 ク (ケ)~英雄c キクMTT
コ (コ) c=b A
3 コ (サ) 劉邦c 5コ=E
3 9 コ (シ) ~劉邦c&劉邦c ウサ&I
3 9 (ス) ~(c=b) コシRAA
セ(セ) 英雄c→c=b A
3 9 セ(ソ)~英雄c スセMTT
3 9 (タ)~英雄c 7クケセソ∨E
3 9 (チ) 韓信c&~英雄c アタ&I
3 9 (ツ) ∃z(韓信z&~英雄z) チEI
38 (テ) ∃z(韓信z&~英雄z) 89ツEE
2 8 (ト) ∃z(韓信z&~英雄z) 23テEE
1 (ナ) ∃z(韓信z&~英雄z) 12トEE
従って、
(01)により、
(02)
(ⅰ)∃x∃y{項羽x&英雄x&劉邦y&英雄y&~(x=y)&∀z(英雄z→z=x∨英雄z→z=y)}。然るに、
(ⅱ) ∃z(韓信z&~項羽z&~劉邦z)。従って、
(ⅲ) ∃z(韓信z&~英雄z)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)あるxとあるyについて{xは項羽であって、英雄であり、yは劉邦であって、英雄であり、xとyは「同一」ではなく、すべてのzについて、zが英雄であるならば、zとxは「同一」であるか、または、zはyと「同一」である}。然るに、
(ⅱ)あるzは(韓信であって、項羽ではなく、劉邦でもない)。従って、
(ⅲ)あるzは(韓信であって、英雄ではい)。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(03)
(ⅰ)あるxとあるyについて{xは項羽であって、英雄であり、yは劉邦であって、英雄であり、xとyは「同一」ではなく、すべてのzについて、zが英雄であるならば、zとxは「同一」であるか、または、zはyと「同一」である}。然るに、
(ⅱ)あるzは(韓信であって、項羽ではなく、劉邦でもない)。従って、
(ⅲ)あるzは(韓信であって、英雄ではい)。
といふことは、
(ⅰ)「項羽と劉邦は英雄であって、この二人以外に、英雄はゐない。」然るに、
(ⅱ)「韓信は、項羽ではないし、劉邦でもない。」従って、
(ⅲ)「韓信は、英雄ではない。」
といふことである。
従って、
(01)~(03)により、
(04)
(ⅰ)「天下英雄唯項羽與劉邦耳(天下の英雄は、ただ、項羽と劉邦のみ)。」然るに、
(ⅱ)「韓信非項羽。韓信非劉邦(韓信は項羽に非ず。韓信は劉邦に非ず)。」故に、
(ⅲ)「韓信非英雄(韓信は英雄に非ず)。」
といふ「推論」は、「述語論理」としても、「正しい」。
従って、
(03)(04)により、
(05)
(ⅰ)∃x∃y{項羽x&英雄x&劉邦y&英雄y&~(x=y)&∀z(英雄z→z=x∨英雄z→z=y)}。然るに、
(ⅱ) ∃z(韓信z&~項羽z&~劉邦z)。従って、
(ⅲ) ∃z(韓信z&~英雄z)。
といふ「推論」は、「日本語」としても、「漢文」としても、「正しい」。
(01)
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。⇔
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}⇔
① あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛ならば、yはxを陥さない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。⇔
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}⇔
② あるyは矛であり、すべてのxについて、xが盾ならば、yはxを陥す。
然るに、
(02)
1 (1) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
2 (3) 盾a 2&E
2 (4) ∀y(矛y→~陥ya) 2&E
2 (5) 矛b→~陥ba 4UE
6 (6) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
7(7) 矛b&∀x(盾x→ 陥bx) A
7(8) 矛b 7&E
7(9) ∀x(盾x→ 陥bx) 7&E
7(ア) 盾a→ 陥ba 9UE
2 7(イ) 陥ba 3アMPP
2 7(ウ) ~陥ba 58MPP
2 7(エ) 陥ba&~陥ba イウ&I
26 (オ) 陥ba&~陥ba 67エEE
1 6 (カ) 陥ba&~陥ba 12オEE
1 (キ)~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} 6カRAA
6 (ク)~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} 1キRAA
従って、
(02)により、
(03)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}├ ~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}├ ~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、いかなる盾をも陥す矛は存在しない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。 故に、いかなる矛でも陥せない盾は存在しない。
といふ「連式(Sequents)」は「妥当(Valid)」である。
然るに、
(04)
1 (1) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
2 (3) 盾a 2&E
2 (4) ∀y(矛y→~陥ya) 2&E
2 (5) 矛b→~陥ba 4UE
6 (6) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
7 (7) 矛b&∀x(盾x→ 陥bx) A
7 (8) 矛b 7&E
7 (9) ∀x(盾x→ 陥bx) 7&E
7 (ア) 盾a→ 陥ba 9UE
2 7 (イ) 陥ba 3アMPP
2 7 (ウ) ~陥ba 58MPP
2 7 (エ) 陥ba&~陥ba イウ&I
26 (オ) 陥ba&~陥ba 67エEE
1 6 (カ) 陥ba&~陥ba 12オEE
1 (キ)~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} 6カRAA
1 (ク)∀y~{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} キ量化子の関係
1 (ケ) ~{矛b&∀x(盾x→ 陥bx)} クUE
1 (コ) ~矛b∨~∀x(盾x→ 陥bx) ケ、ド・モルガンの法則
1 (サ) 矛b→~∀x(盾x→ 陥bx) コ含意の定義
シ (シ) 矛b A
1 シ (ス) ~∀x(盾x→ 陥bx) サシMPP
1 シ (セ) ∃x~(盾x→ 陥bx) ス量化子の関係
ソ(ソ) ~(盾a→ 陥ba) A
ソ(タ) ~(~盾a∨陥ba) ソ含意の定義
ソ(チ) 盾a&~陥ba タ、ド・モルガンの法則
ソ(ツ) ∃x(盾x&~陥bx) チEI
1 シ (テ) ∃x(盾x&~陥bx) セソツEE
1 (ト) 矛b→ ∃x(盾x&~陥bx) シテCP
1 (ナ)∀y{矛y→ ∃x(盾x&~陥yx)} トUI
1 (ニ)すべてのyについて、yが矛ならば、あるxは盾であって、yはxを陥さない。トUI
従って、
(04)により、
(05)
③ ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}├ ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
③ いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、すべての矛は、ある盾を陥せない。
といふ「連式」も、「妥当(Valid)」である。
従って、
(04)(05)により、
(06)
④ ∃y{矛y&∀x(盾x→陥yx)}├ ∀x{盾x→∃y(矛y&陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
④ いかなる盾でも陥す矛が存在する。故に、すべての盾を、ある矛は陥す。
といふ「連式」も、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(04)(06)により、
(07)
③ いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、すべての矛は、ある盾を陥せない。
④ いかなる盾でも陥す矛が存在する。 故に、すべての盾を、ある矛は陥す。
に於いて、
③ と ④ は、「矛盾」する。
(01)
― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、吾盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
従って、
(01)により、
(02)
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。⇔
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}⇔
① あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛ならば、yはxを陥さない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。⇔
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}⇔
② あるyは矛であり、すべてのxについて、xが盾ならば、yはxを陥す。
然るに、
(03)
1 (1) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
2 (3) 盾a 2&E
2 (4) ∀y(矛y→~陥ya) 2&E
2 (5) 矛b→~陥ba 4UE
6 (6) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
7(7) 矛b&∀x(盾x→ 陥bx) A
7(8) 矛b 7&E
7(9) ∀x(盾x→ 陥bx) 7&E
7(ア) 盾a→ 陥ba 9UE
2 7(イ) 陥ba 3アMPP
2 7(ウ) ~陥ba 58MPP
2 7(エ) 陥ba&~陥ba イウ&I
26 (オ) 陥ba&~陥ba 67エEE
1 6 (カ) 陥ba&~陥ba 12オEE
1 (キ)~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} 6カRAA
6 (ク)~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} 1キRAA
従って、
(03)により、
(04)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}├ ~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}├ ~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、いかなる盾をも陥す矛は存在しない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。 故に、いかなる矛でも陥せない盾は存在しない。
といふ「連式(Sequents)」は「妥当(Valid)」である。
然るに、
(05)
夫不可陷之盾与無不陷之矛、不可同世而立。今堯舜之不可両譽、矛盾之説也=
夫不〔可(陷)〕之盾與[無〔不(陷)〕之矛]、不[可〔同(世)而立〕]。今堯舜之不〔可(両譽)〕、矛盾之説也⇒
夫れ〔(陷す)可がら〕不るの盾と[〔(陷さ)不る〕無きの矛]とは、[〔(世を)同じくして立つ〕可から]不。今堯舜の〔(両つながら譽む)可から〕不るは、矛盾の説なり=
いかなる矛であっても、突き通すことが出来ない「盾」と、いかなる盾であってあっても、突き通さないことが無い「矛」とは、同時に存在することはできない。堯と舜とを同時に誉めたたへることが出来ないのは、この「盾と矛の例へ」と同じである。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
「韓非の言ってゐること」は、「漢文」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「正しい」。
cf.
儒教思想を批判した韓非は、儒者が堯・舜を、万人を感化した聖人であるとして賞賛するのを反対して、堯が万人を感化したなら、もはや舜はその後をうけて人民を感化する必要はないし、舜が堯にかわって万人を感化する必要があったとするならば、堯は聖人として不十分であったという証拠になる。という。したがって堯・舜ふたりとも聖人であるというのは矛盾であるとして、この話を引用したのである。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、34頁)
(01)
1 (1) ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y) A
1 (2) ∃x(吾盾x) 1&E
3 (3) 吾盾a A
1 (4) ∃y(吾矛y) 1&E
5 (5) 吾矛b A
6 (6) ~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)} A
6 (7) ∀x~{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)} 6量化子の関係
6 (8) ~{吾盾a&∃y(吾矛y& 陥ya) 7UE
6 (9) ~吾盾a∨~∃y(吾矛y& 陥ya) 8ド・モルガンの法則
6 (ア) 吾盾a→~∃y(吾矛y& 陥ya) 9ド・モルガンの法則
3 6 (イ) ~∃y(吾矛y& 陥ya) 3アMPP
3 6 (ウ) ∀y~(吾矛y& 陥ya) イ量化子の関係
3 6 (エ) ~(吾矛b& 陥ba) ウUE
3 6 (カ) ~吾矛b∨~陥ba エ、ド・モルガンの法則
3 6 (キ) 吾矛b→~陥ba カ含意の定義
356 (ク) ~陥ba 5キMPP
ケ(ケ) ~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)} A
ケ(コ) ∀y~{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)} ケ量化子の関係
ケ(サ) ~{吾矛b&∃x(吾盾x&~陥bx)} コUE
ケ(シ) ~吾矛b∨~∃x(吾盾x&~陥bx) サ含意の定義
ケ(ス) 吾矛b→~∃x(吾盾x&~陥bx) シ含意の定義
5 ケ(セ) ~∃x(吾盾x&~陥bx) 5スMPP
5 ケ(ソ) ∀x~(吾盾x&~陥bx) セ量化子の関係
5 ケ(タ) ~(吾盾a&~陥ba) ソUE
5 ケ(チ) ~吾盾a∨ 陥ba タ含意の定義
5 ケ(ツ) 吾盾a→ 陥ba チ含意の定義
35 ケ(テ) 陥ba 3ツMPP
356ケ(ト) ~陥ba&陥ba クテ&I
1 56ケ(ナ) ~陥ba&陥ba 13トEE
1 6ケ(ニ) ~陥ba&陥ba 15ナEE
1 6 (ヌ)~~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)} ケニRAA
1 ケ(ネ) ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)} ヌDN
1 ケ(ノ)~~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)} 6ニRAA
1 ケ(ハ) ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)} ノDN
1 6ケ(ヒ) ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&
∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)} ネハ&I
6ケ(フ) ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)→
∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&
∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)} 1ヒCP
従って、
(01)により、
(02)
~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y&陥yx)},~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}├
∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)→∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&∃x{吾盾x&∃y(吾矛y&陥yx)}.
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(02)により、
(03)
「日本語」で言ふと、
「あるxは私の盾であって、あるyが私の矛であって、yはxを陥すこと」が無く、「あるyは私の矛であって、あるxは私の盾であって、yはxを陥さないこと」が無い。が故に、
「あるxが私の盾であって、あるyが私の矛である」ならば「あるyは私の矛であって、あるxは私の盾であるが、yはxを陥さず、あるxは私の盾であって、あるyは私の矛であって、yはxを陥す」。
といふことになる。
従って、
(03)により、
(04)
「私の矛(y)は、私の盾(x)突き通すが、突き通さない。」
といふことになって、それ故、「矛盾する」。
然るに、
(05)
― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、吾盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 吾盾之堅、莫能陥也(吾が盾の堅きこと、能く陥す莫きなり)。
② 矛之利、於物無不陥也(吾が矛の利なること、物に於いて陥さ不る無きなり)。
といふ「命題」は、
① ~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}
② ~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}
といふ「命題」を、「含意」し、それ故、
③(陥yx&~陥yx)≡(yはxを突き通すが、突き通さない。)
といふ「矛盾」を生むことになる。