TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

庭の水景にはバードバス

2016-07-31 01:56:25 | ガーデニング
水が庭の表情を変える。
バードバスほどの面積であっても、空を映し、光を反射させ、風に波立つ。
想像をしていなかった効果である。
大掛かりな庭園の池や噴水は当たり前の存在だが、
最初は変幻自在の水の魅力に気付いた人が始めたのかもしれない。

木の切り株を模したバードバスには小鳥が一羽。
ママゴンとミンモが帰国したら二羽足すことにしよう。

清流が空を知った場所

2016-05-29 01:44:49 | 旅行
通り過ぎた春にまた会える。
連休明け、札幌での仕事を前に富良野を訪ねることにした。
ようやく芽吹き始めた北の大地。
道東自動車道に乗って、まず目指したのは占冠(しむかっぷ)。
森の神様が作った冠を、知恵を働かせたリスが手に入れましたとさ…
あるいは見とれるほど立派な角をもった牡鹿の物語。
地名からそんなファンタジーが膨らむ。

占冠を降りてからは山間の一般道を走った。
橋を渡る度に清流は道の左右に移動しながら、川幅を徐々に広げて行った。
この川の名前は「空知(そらち)川」。
雪融け水は川の中流で初めてお空に出合いました、といったところか。
アイヌ語の「滝が幾重にもかかる川」を意味するという「ソー・ラプチ・ペツ」にこの当て字。
イマジネーションを呼び起こすアイヌの響きのすばらしさ。



北欧の照明 ~ アルヴァ・アールトの「ビーハイブ」

2016-03-26 01:56:18 | インテリア
最初に魅かれたのは金色のスリット。
アルヴァ・アールト(ALVAR AALTO)というAの強い呪文めいた名前ともあいまって、
アラブのスークに並んでいるのを連想してしまった。
姉妹品と呼んでよいものか、「ゴールデンベル」というシリーズはさらにエキゾチシズムが色濃い。

この金色は、昼間の方が若干派手である。
鏡のように室内を映し出したり、戸外の明るさを反射させる。
一方の夜は、内側から照らされるがため抑制が効いて、層になったスリットから漏れる光は上品で静謐。
そっと佇んでいる印象なのである。
巨大な蜂の巣をモチーフにしているためヴォリュームもあるのだが、それも気にならない。
大き過ぎたら、目立ち過ぎたら、という心配は完全な杞憂に終わった。

低い光源は親密な雰囲気を作るという。
ペンダントタイプの照明を食卓に用いるのはインテリアのセオリー。
しかしながら頭をぶつける場所でさえなければ、ダイニング以外にも吊り下げてみたい。
アールトの「ゴールデンベル」にルイス・ポールセンの「PH 2/1 ステム・フィティング」。
椅子と同様、照明は北欧デザインの独壇場である。

プーランクの「ノヴェレッテ第1番」を弾いてみて

2016-03-07 01:26:59 | 音楽
リヒテルやアラウ、和音をがっしりと掴んでピアノの躯体を芯から響かせるようなピアニストが好きだ。
しかしながら最近、ピアニシモで滑らかに奏でられるパッセージもまたピアノの魅力であることに気付かされている。
きっかけは久々に人前で演奏したこと。
昨年目標に立てた3曲のうち、プーランクの「ノヴェレッテ第1番」とチャイコフスキーの「舟歌」をモノにした。
本番の録音を聴くと、せっかくさらってきたのだからと言わんばかりの凹凸に反省。
食事に例えるならばお茶漬け、小品はさらっと弾くのが相応しいのである。

2年前のパスカル・ロジェのコンサート。
前から2列目に座ったこともあり、意外に音量があると驚いたのも事実なのだが、
それでも伸ばした音符のなかに柔らかく旋律を収めるやり方など
洗練された味わいに嘆息した。
その演奏はフランスの水や空気を摂取しているからこそ、
あるいはフランス語という言語に育まれて初めて可能となるように思われた。
一緒に出掛けた友人が「寿司食ってちゃダメなんだなあ」と冗談交じりに漏らしたのは図星。
ドビュッシーやプーランクが作曲したときの湿度すら、共通の感覚としてロジェの内側に流れているのだろう。

小山実稚恵も優美なフレージングに魅力が宿っているタイプ。
そもそもピアノとは、指の太さに逆らって、一番細い小指で最も強調したい音を鳴らす楽器である。
親指の打鍵は力を半分以下にしたり、独立した動きを取りにくい薬指をコントロールしたりして凹凸を排除する。
その滑らかさをお手本にしたい。

ところで、ライブの醍醐味は安全運転のストッパーが外れる瞬間。
コントロールとパッションが徐々に拮抗し、やがて後者が前者を凌駕するときが訪れる。
ロジェは最初の「ベルガマスク組曲」のあと、小山は後半のショパンの「バラード第1番」から解き放たれた。
2014年に足を運んだ2つのピアノのコンサートは、久々に向き合ったピアノの練習の糧となっている。
残る一曲、ドビュッシーの「夢」はあと一息。

2014.5.27
パスカル・ロジェ ピアノ・リサイタル《ソワレ》@大田区民ホール・アプリコ 大ホール
2014.11.29
小山実稚恵「小山実稚恵の世界 第18回 ~粋な短編小説のように~」@Bunkamuraオーチャードホール

穏やかな移ろい

2016-02-28 01:30:05 | 音楽
水栽培のヒヤシンスの白い根っこ。
ジョギングコースの木々のシルエットの膨らみ。
ゆっくりながらも季節が動いているのを教えてくれる。
睦月から如月にかけての穏やかな移ろいは年間を通しても貴重である。

間もなく花粉の飛散で鼻が利かなくなる。
そうなるとアルコールの魅力が半減する。
喉ごし、味覚もさることながら、ビールのホップもワインのアロマもグラスに注いだとき鼻に届く香りが捨て難い。

ひと頃よりも陽射しが明るくなると、ブラジル音楽を聴きたくなる。
デルタの機内でたまたま耳にしたイリアーヌ・イリアスの『Made In Brazil』をCDで購入した。
通しで聴いてもこの時期にぴったりなアルバムで、
なかでも6曲目の♪「インセンディアンド(静かな炎)」が完璧にシンクロしている。

真冬のポートランド紀行 Vol. 3 ~ Ladd's Rose Gardens Circle and Squares

2016-01-25 00:24:49 | 旅行
ガイドブックで川の東側を眺めていたところ、面白い形状の区画が眼に留った。
周囲が碁盤の目になっているなかで、この一角はダイアゴナル(対角線)に道路が走り、
中央にサークル、それを取り囲む八角形の街路、そして4箇所にダイヤ形の緑地帯らしきものが設けられている。
住宅地なのか公園なのか、この幾何学的な場所を確かめることも目的に
DAY5は自転車を借りてミンモと橋を渡った。

結論から言うと、そこはやや古びた住宅街だった。
一戸一戸の区画は広く、街路樹やたくさんの庭木に囲まれているものの、地形が平坦なところが惜しい。
例えば放射状の中心が一番低い田園調布のような起伏があれば、この独創的な街区をもっと体感することができただろう。
中央のサークルは緑地帯、そしてダイヤ形はバラ園で、
「Ladd's Rose Gardens Circle and Squares」という名前を現している。
今は剪定が施され冬薔薇がちらほら咲いているだけだが、
半袖の頃には “Rose City” ポートランドの名に相応しい芳香に包まれることが想像できた。
あとで調べたところ、William Sargent Ladd(1826-1893)という人の発案だそうな。
ゴールドラッシュの波に乗って東部から西海岸へやって来て、
実業家として成功を収めたあとはポートランド市長も務めた人物とのこと。
サークルを望む「Palio Dessert & Espresso House」でお昼を食べた。





街区の外れには「Bee Thinking」という養蜂の専門店。
ハチミツはもちろんのこと蜜蝋キャンドルやTシャツといったグッズのほか、
巣箱から防護服まで本格的な養蜂具が販売されている。
レクチャーをおこなう教室も併設されていて
こんなお店が住宅街のなかにあるところもポートランドらしい。


このあとはビーガン料理の店「Harlow」を目指してさらに東へと漕いだ。
新鮮な小麦の若葉を圧縮したジュース “WHEAT GRASS” を飲むために。
自転車、橋、健康志向の食事もこの街のキーワード。

真冬のポートランド紀行 Vol. 2 ~ アメリカン・アートとの新しい出合い

2016-01-17 00:28:29 | 旅行
アメリカの美術と言えばホッパーとオキーフを知って以降、長らく更新が止まっていた。
しかしながらポートランド・アート・ミュージアムで、新しい出合いがあった。
共鳴したのはミルトン・エイブリーとデヴィッド・ローゼナック。
今回の旅行の思いもかけぬ収穫である。

Milton Avery(1885-1965)
Bathers, Coney Island, 1934
まず女性の水着の色に吸い寄せられた。
このグリーンが無ければ素通りしていたかもしれない。
背景の砂浜と海の対比といい、左端の赤茶といい、配色のセンスが際立っている。
タイトルも額も好みだ。
別のスペースにもう1枚あった。
Dancing Trees, 1960
やはり目が行って作者を確かめるとエイブリー。
驚いたのと同時に、この画家最大の魅力が色の配置であることへの確信が深まった。
また一見小学生が描くような線には、ホッパーに漂う孤独とは反対の親密性を感じる。




David Rosenak(1957-)
Untitled, 1995-2008
カラフルな季節も、強い陽射しを遮る街路樹のトンネルに入った途端モノトーンに変わることがある。
そんな光と影が独特のタッチで丹念に描かれていている。
木漏れ日が綾なす閑静な住宅街。
それはR. I. がいつか世に出したいと願っている作品の舞台でもある。
4点で一連の作品として展示されており、位置の指定も作者自身によるものなのか気になった。
どの絵にも人物が佇んでいるリアリティ。






オレゴンで活躍したアーティストの作品が特集されているフロアがあった。
Clara Jane Stephens(1877-1952)
ポートレートの写真は間違いなく美人である。
イングランド生まれで、ポートランドへは1894年にやって来たという。
Untitled(West Hills Nocturne, Rainy Night with Car Headlights), c. 1930 は、
雨の路面を走り去る車の音が聞こえてきそうな1枚。
この地に寄り添ってどんな生涯を送ったのか思いを馳せつつ眺めていた。


美術館はフラッシュなしの撮影が許可されている。
ミンモにカメラを渡すと、被写体として面白いのだろう、モダンアートがたくさん写されていた。

http://portlandartmuseum.org

真冬のポートランド紀行 Vol. 1 ~ ダウンタウンの表情

2016-01-11 22:31:31 | 旅行
8年ぶりのポートランド。
前回はリバーサイドに宿泊したが、今回はダウンタウンのど真ん中。
カウントダウン会場のパイオニア・コートハウス・スクエアまでも徒歩5分だし、
この方が街の活気や歴史を感じられて楽しい。

2015年の暮れ、R. I. は成田からデルタの直行便で、ママゴンとミンモはアムトラックの列車に乗って合流した。
朝晩の気温は氷点下、日中でも2、3度。
外を歩くと消耗したが、それでも後半晴天続きとなったのはラッキーだった。

ダウンタウンはクラシカルな印象。
近代的なビルよりも古い建物の方が目立っている。




今、全米住みたい街No.1の座にあるポートランド。
・全米で最も環境に優しい都市
・全米で最も自転車通勤に適した都市
・全米で最も外食目的で出かける価値のある都市
・全米で最も菜食主義者に優しい街
・きちんとした食生活で健康に暮らせる街
・知的労働者に最も人気のある都市
・全米で最も出産に適した街
として選ばれており、アメリカ人がここまで健康志向になっているのも驚きなのだが、
要は居心地がいいということなのだろう。

この街ではチェーン店よりも地元のショップが贔屓にされるという。
むろん旅先でスターバックスに入る気は起こらない。
滞在したホテルの近くにあったコーヒーショップ “Courier Coffee Roasters”。
店内はフィルターの入った段ボールやパレットの木材が無造作に置かれ、
流れているのはアナログのレコード。
壁に掛かった絵は地元のアーティストのもので、値札が付けられていた。
ちょっとしたアトリエのような空間である。
ポートランドのキーワード、まずはコーヒー、アナログレコード、そしてアート。


甘味礼讃 Vol. 5 ~ ピエール・エルメのマカロン「ジャルダン ゼン(禅の園)」

2015-11-30 00:04:05 | グルメ
2015年の春から秋にかけ月替わりで発表されてきたピエール・エルメのマカロン “ジャルダン シリーズ”、
その掉尾を飾るのが「ジャルダン ゼン」こと「禅の園」である(写真手前)。
使用されているのはなんと白味噌風味ガナッシュショコラ。
フレンチの巨匠がこぞって味噌を絶賛するのは知っていたが、白味噌というのが心憎い。
マカロン「オリーブ」に出合ったときの衝撃を予感したところ的中した。
中心部に埋め込まれた白味噌はオリーブ片と同じ役割。
ショコラの甘味とせめぎ合いながら調和へと移ろい、やがてはカカオの余韻を引き立てるのである。

ちなみにシリーズの全容は以下。
4月 ノルデステの園(ブラジルコーヒー風味、ショウガのコンフィ)
5月 ペルーの園(ルクマ風味)
7月 太陽の園(オリーブオイルとレモン風味)
8月 コルシカの園(ネピタ風味)
9月 松の園(松の蕾風味)
10月 干し草の園(メリロートとハルガヤ風味)
11月 禅の園(白味噌風味、サブレ)

エキゾティックな果実に繊細な芳香…
これだけ次々とアイディアが涌き出せば、マカロン「オリーブ」に遭遇する機会も減ろうというもの。
エルメのまるで科学者か植物学者のような探究心はますますその領域を広げているようだ。
写真の奥は「松の園」と「干し草の園」。
過去の “ジャルダン” を諦めていたところ、直近の3種が箱入りのセットでのみ販売されていた。
全神経を味蕾に集中させ、キスをするように一口目。
圧倒的な個性を放ったのはやはり「禅の園」なのであった。

https://www.pierreherme.co.jp/collections/jardins.html

2015年秋の寄せ植え

2015-11-23 03:03:21 | ガーデニング
ボルドー、あるいはピノノワール…茶色がかった紫のトーンを作りたいと思った。
ビオラの「るびーももか」と「しんしん」からイメージを膨らませ、
鍵となる葉ものをじっくり見て回る。
まるでジェラートのようなネーミングが並んだヒューケラの棚。
そこから「ピーチクリスプ」と「チェリーコーラ」を選んだ。
カラーリーフはもう2種類。
葉先が鮮やかなピンクの「ルビノイデス」と名前が不明の渋いトーンのもの。
丈のある「チョコレートコスモス」を中心に据え、
「ガーデンシクラメン」の濃さから「しんしん」の淡さまで
周囲360度のグラデーションを追求する。