TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

木製のフェンス

2017-02-18 17:32:55 | ガーデニング
木工は楽しい気分にさせれくれる。
オレゴンの住宅街では実に様々な木製のフェンスを見かけた。
経年変化による交換を避けたいのと、地震国ならではの頑強さを求めるがゆえなのだろう、
日本の住宅街では金属製や石垣が主流である。
輸入住宅が日本の街並みでは浮いてしまう理由、その1つはエクステリアの違いにあると思う。

暴かれた秘密の入り江 〜 ジュリア・ファイファー・バーンズ州立公園

2017-01-23 00:36:52 | 旅行
断崖絶壁が続く海岸線の途中に完璧な入り江があった。
砂浜に流れ落ちる一条の滝が入り江を特別なものにしている。
この地の女性開拓者で、州立公園の名前にも冠されているジュリア・ファイファー・バーンズお気に入りの場所だったという。
本当ならば誰にも教えたくない秘密の入り江であったに違いない。
パーキングに車が溢れて、遊歩道は世界中からの観光客でごった返している状況を見たら何と思うだろうか。
ビーチは立ち入り禁止で、見下ろすようになっているのが救いである。

1号線を挟んだ山側にはトレイルがあって、眼下の絶景を眺めながら上へと続くらしい。
人の気配を感じること無くこのエリアを満喫したかったのだが一日足りなかった。
年末のホリデイシーズンとは言え、観光客の多さに閉口した。
近くにある崖上のレストラン・ネペンセはランチに1時間待ち。
特製のアンブロージア・ハンバーガーは期待を裏切らなかったが、
18ドルという値段からも分かるとおりすっかり観光地化されているのである。

それでも砂浜に寄せては消える波の跡を見ながら想像だけは膨らんだ。
夏の午後、満月の晩、ジュリアはこの入り江でどんなにロマンティックな時間を過ごしたことだろう。
かつては先住民の土地であったとは言え、
フロンティアの大自然に共感を寄せた白人の話しは悪くない。

http://www.visitcalifornia.com/jp/attraction/ジュリア・ファイファー・バーンズ州立公園

カリフォルニアの海岸線をドライブする 〜 ビッグ・サーに心を掴まれて

2017-01-15 18:14:10 | 旅行
オレゴンの内陸は凍てついているというから、年末年始はカリフォルニアのコーストで会うことにした。
ロサンゼルスからサンフランシスコまで北上するというのが当初の案。
しかしながらインとアウトを同じにした方が航空チケットが安いという理由で、
結局はサンフランを起点にL. A. 手前のサンタバーバラまで南下、再び同じ道を戻った。
道中でとりわけ心を掴まれたのがビッグ・サー。
断崖絶壁のはるか上を走る1号線からは水平線までの大海原を望み、
ワインディングロードはときに海に吸い込まれそうになったり、空に向かったりと、バードアイのパノラマが続く。
日没のすばらしさは言うに及ばず、眼下の岩場に砕け散る波や、雲間の太陽が沖合の一点を照らす様もスケールがでかい。
この地に魅せられてレストランや宿を始めた人々が少なからずいることも大いに頷けるのである。
なかには驚くような値段のスパも点在する。
ビッグ・サーと呼ばれるエリアは思ったよりも縦に長い。
初日からビッグ・サーの宿も考えたのだが、手前のモントレーにしたのは正解だった。
暗くなってからドライブは無謀というもの。



往路はモントレーとソルバングで連泊、復路はカーメルとサンフランに一泊ずつした。
この旅からのお薦めは、モントレー半島の17マイルドライブ、
ビッグ・サーのジュリア・ファイファー・バーンズ州立公園、
そしてカーメル付近のポイント・ロボス・ステート保護区。

http://www.visitcalifornia.com/jp

楽譜探しの小さな旅

2016-12-12 01:16:03 | 音楽
ワンクリックの買い物では味わえない図書館での楽譜探し。
実物を手に取って中身を確認しながらというのは久々の感覚である。
お目当てはショスタコーヴィチの『24のプレリュードとフーガ 作品87』。
第1番のプレリュードを、ヨハン・セバスティアン・バッハの『平均律クラヴィーア曲集』第1巻第1番のそれと
並べて演奏することを思いついた。
大曲に挑む余裕のないなか、18世紀と20世紀の聖典の冒頭を並べるという選曲の工夫で乗り切りたい。
どちらもハ長調で、すべての調性を網羅する大規模な連作の入り口に相応しい親しみやすさと、
非常にモダンな響きを湛えている。
バッハはあまりに有名な分散和音、一方のショスタコは和音中心という違いも互いを引き立てるに違いない。

検索で最初に引っ掛かった日本語タイトルのものは、あいにく別の場所に所蔵されているという。
次に “Russian Piano Pieces” という作品集を当たったところ、残念ながら第1番は収録されておらず、
あとはロシア文字の羅列から類推するしかなかった。
作品番号が決め手となって、2つヒットしたものは出版社がロシアとドイツのもの。
ここはキリル文字が神秘的な前者がいい。
それにロシア版は冒頭にプレリュード第1番の自筆譜の写真が載っている。
これがマティスを彷彿とさせる実に魅力的な線なのである。

母校は美術館の完成によって印象が大きく変わってしまった。
一方でレンガの門柱に乗った外灯は通っていた頃のまま。
すぐに辿り着けなかった分、探し物を見つけた充実感は高まって、上野公園を歩く足取りは軽かった。

ラ・ボエームとジランドールの休日

2016-12-11 00:38:47 | 音楽
新国立劇場の『ラ・ボエーム』を13年ぶりに観た。
パリの屋根が連なったスクリーンが上がると、カメラのズームのようにとある屋根裏部屋が現れるという
粟國淳氏の演出を覚えていた。
♪「冷たい手を」は、この世で最も美しいものに出合った気分にさせてくれる。
詩人のロドルフォが「貧乏な暮らしでも心豊かに愛の歌や讃歌を創作している」と自己紹介するあたりから一気に胸が熱くなる。
第1幕で登場するこのアリアに心底酔いしれるには、開演前にアルコールを口にしておくべきだった。
第2幕の舞台を埋め尽くすほどのキャストも記憶に残っていた一方で、
忘れかけていたのが第3幕の魅力。
「春に別れることにしたから願っていたい。永遠に
冬が続くことを」というミミのセリフに
招待した両親もやられたようだ。
雪の降らせ方の強弱にまで切なさが行き届いている。
ムゼッタのカップルの痴話喧嘩と四重唱にしてしまうところもいかにもオペラらしい。

劇場を出ると、残酷なほどに舞台の世界は遠ざかる。
例えばウィーンのホールでモーツァルトを聴くと、外に出ても彼が生きた時代の街並が残っているという。
そのような連続性は東京では望めないものの、せめて電車には乗りたくなかった。
パークハイアットに昇って、燭台を意味する “ジランドール” で観劇の余韻を味わうことにした。

ボエームは冬のオペラ。
クリスマスの装飾が街に現れ始めたこの時期によく似合う。
今回のメインキャストは
ミミ:アウレリア・フローリアン
ロドルフォ:ジャンルーカ・テッラノーヴァ
マルチェッロ:ファビオ・マリア・カピタヌッチ
ムゼッタ:石橋栄実
指揮者のパオロ・アリヴァベーニ、オーケストラ、美術、照明といった脇役も質の高いことが窺われた。
オペラはボエームだけでいい、というのは言い過ぎだろうか。
王道の演出と舞台セットで鑑賞できれば尚更である。

2016 11.26 sat
新国立劇場

♪「GREY」〜 ユーミンのセルフカバーを聴く

2016-11-11 02:02:18 | 音楽
ヨーロッパの石造りの街並みが浮かんでくる歌詞。
教会音楽に影響を受けたという原点を思い起こさせるアレンジ。
昔の声とは変わってしまったこともこの曲では重厚感を生み出す効果に転じている。
ユーミンの新作『宇宙図書館』の抜粋をチェックしながら、ラストの曲♪「GREY」を思わずダウンロードした。
アルバムの切り売りはユーミンの本望でないことを知ってはいたものの、
まずはこの一曲にだけどっぷり浸りたいと思った。

ユーミンが他のアーティストへ提供した楽曲を、自身のアルバムでセルフカバーすることは珍しくない。
なかには制作が間に合わず、カバーに甘んじたのではないかと意地悪な見方に傾くこともあったのだが、
♪「GREY」は見事なまでに新作のテーマと符合している。
大学に入った夏、レンタル屋さんで偶然手にした小林麻美のアルバム『GREY』。
ユーミンの全面プロデュースにより、そのエッセンスが香水のように華やかに噴霧された作品だった。
様々なレビューにはタイトル曲のセルフカバーを待望するコメントが早くから残されており、
1987年の発表から実に29年を経て、パズルの断片の如くぴったりなアルバムに収まったことになる。

それにしてもあらゆる情報を検索できる時代というのに、小林麻美が歌った音源にヒットしない。
ネット通販の中古CDは5,000円超。
この週末は昔ダビングしたはずのカセットを探すとしようか。
久々に雑誌の表紙にカムバックしているし、発売元が再発に動く可能性にも期待したい。

ユーミンのアルバムは綿密に練られた曲順も聴きどころであり、
最後に置かれた作品はそのアルバムのテーマやメッセージそのものを語って余韻となる。
一曲目をアルバムのタイトルチューンが飾り、終曲で再びテーマを繰り返すというテッパンの手法が
『宇宙図書館』における♪「GREY」でも披露された。
『REINCARNATION』における♪「経る時」と等しい構図だ。
膨大な作品群のなかに埋もれることなく、いぶし銀の味わいを堪能できたのは、ユーミンが今も現役で走り続けていてくれるからこそ。

6月の修了式

2016-10-22 23:19:11 | 旅行
コメスメント(修了式)は6月に屋外でおこなわれると聞いた。
家族も参加してよいというから、ジューンブライドのガーデンパーティーのような絵が浮かんだ。
何と言っても日本の梅雨とは対極のベストシーズン。
しかもその日は2週間前から晴れマークをキープしていたのである。

果たして当日は予報どおりの完璧なお天気。
美しい木漏れ日を縫ってキャンパスに着くと、広い敷地の数箇所に式場が設営されていた。
人文系、社会系など近しい学部がいくつか集まって執り行われるのだそうだ。
スピーカーからはサム・スミスが流れ、木陰のテントには軽食とドリンク。
桜の季節の卒業式とは風情があまりに異なっている。
サングラスのまま祝辞を述べる教授陣にも驚かされた。

修了生は一人ずつ名前を呼ばれると、客席に向かって一列に並んだ。
アカデミックガウンに身を包んだ学生はもちろんのこと、
一族がこの日のために駆けつけた民族衣装の留学生がいたり、一目でエリートと分かる黒人がいたりと、
かみさんがこんな環境で学んできたのかという発見があった。
翌日の学部生の卒業式はかなり混み合うそうだが、
修了式はゆったりと時が流れて、西海岸のからっとした空のもと、樹々や芝生の輝きがただただ眩しい。
ハードな学業の終点を祝福するかのような陽射しに、席は木陰から埋まった。
大学のシンボルカラーのコード(先端がタッセル状になっている長い紐)を首に掛けているのは優秀な成績を収めた証。
かみさんはよく頑張った。

サンフランシスコ国際空港のワインバー

2016-10-09 11:59:46 | 旅行
サンフランの乗り継ぎで楽しみなのは83番ゲート付近にあるワインバー。
ナパやソノマを控える土地だけに、旅人がワイングラスを傾けているのはとても絵になる。
おススメは3種の飲み比べセット。
ぶどうの種類や産地、あるいは泡など10のカテゴリーのなかから、
往きは “Pinot Trilogy” 、帰りは “Sweet Fare” という甘口のセットを注文した。
乗り継ぎの待ち時間は嫌いではない。
慌ただしい日常の合間に生じる空白がいい。

http://sfuncorkd.com

リオの心はアントニオ・カルロス・ジョビン

2016-09-04 01:31:14 | 音楽
夏季五輪開催都市のなかで、リオデジャネイロのような昂揚感を与えてくれた都市があっただろうか。
トライアスロンがコパカバーナのビーチからスタートしたときは南米初の開催を実感したし、
雨模様の男子マラソンでコルコバードのキリスト像が雲間から姿を現していたのもドラマティックだった。
また開会式や閉会式のみならず、シンクロなどではサンバの曲で盛り上がるシーンをいくつも見た。
ありふれた都市とは異なる強い個性を纏っていて、熱量がある。

そんなリオ大会の余韻を味わいたくて、イヴァン・リンスのブルーノート東京公演へ出掛けた。
ビッグバンドと共演する一夜限りの公演は会社の仲間と、
同じリオ出身のジョイス・モレーノとのジョイントは、台風が接近するなか、残業帰りにふらっと。
本来ならばイヴァンの単独を望みたいところだが、
昨年古稀を迎え高齢になってきている影響かもしれない。
“A Tribute to Rio by 2 Cariocas” という副題が添えられた後者は、
前半がイヴァン、後半にジョイスで、クロスタイムは二人でジョビンを慈しむかのように歌った。
五輪中はサンバの印象があまりに強く、存在が遠ざかっていたジョビン。
音楽の輝きが玉のように溢れだすデュエットを眼の前にして、
リオの心はジョビンにあるのではないかということに思いが至った。
何せ空港の名前は「アントニオ・カルロス・ジョビン国際空港」である。

ジョビンと言えば、マイケル・フランクスもトリビューターの一人。
ブラジルがテーマだったり、ボサノバ・テイストの楽曲にも事欠かない。
♪「ジャルダン・ボタニコ」は、冬のケネディ空港を飛び立って、クリスマス休暇をリオで過ごすという設定。
「バナナの樹の下で雨やどり、人生はこんなにも優しい」と歌われる。
トライアスロンの自転車が駆け抜けた坂道には南国らしい植物が茂っていて、歌詞の世界が膨らんだ。

ブラジリアン・ミュージックの複雑な転調は、
飛行機の旋回する窓からリオのパノラマが次々と斜めに現れるかのような感覚を呼び起こす。
シュガーローフにコルコバードにイパネマのビーチ…
ヴァリグ・ブラジル航空は消滅してしまったそうだが、気分が上がるそんなフライトを一度は体験してみたいものだ。
閉会式のトーキョーショーがあまりに見事で、クールダウンに時間が掛かった。
ジョビンの穏やかな調べのようにようやく熱狂の夏が終わろうとしている。

BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO
with special guest IVAN LINS
2016 8.26sat.

JOYCE MORENO & IVAN LINS -A Tribute to Rio by 2 Cariocas-
2016 8.29mon

http://www.bluenote.co.jp/

偶然性の庭

2016-08-28 23:59:55 | ガーデニング
庭というものは計画的にデザインし、植物の成長も想定内のはず。
ところが植えた覚えのないプラタナスが成長し、今年は背丈が垣根を超してしまった。
発芽は2年間に遡ると思われる。
譜面を離れた音楽、すなわち偶然性や不確定性の音楽に似ているかもしれない。