一杯のコーヒーを味わいに山道を走る。
カーナビに頼りながら、風を切って、緑を縫って。
別世界的名店は、不便な場所にあることも少なくない。
それにより道行きは非日常的な体験となる。
わざわざ足を運ぶ価値が伴えば、人里離れていても商いは成立すると思うのである。
美麻珈琲もそんな一軒。
美麻(みあさ)とは麻作りに由来する地名で、その文字面や響きも心地いい。
道路標識の方向に記された「長野 美麻」は、アイドルの名前のようだと感じながら、
いざ到着してみるとコーヒーマイスターは全員女性という偶然の一致があった。
渋いマスター像は裏切られた格好だ。
店は山間の31号線から折れて、未舗装の坂道を進んだ先にある。
登り切って少しだけ下った左手にストローベイル(藁のブロックを積み上げる工法)の一軒家、
反対側の斜面には蕎麦畑の明るいグリーン、
その隣には大きな池と、絵になる風景が連なっている。
池は長雨の影響でこの時期には珍しく姿を現しているのだとか。
店内の席が空くのを待ったのだが、結局は森林の香りも届くテラス席で、
珍しい南インド産の爽やかな一杯を味わった。
http://www.miasacoffee.com/