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雨のR425を十津川村側から下北山村側へとひた走る.雨の中走る酷道は,いつも以上によからぬ想像を掻き立てた.心細い気持ちで峠を目指し走り続けると,ようやく峠の白谷トンネルへと辿り着くことができた.ところが,ここで雨脚が強くなってきた.
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1キロメートル弱の白谷トンネルが,真っ暗な口を開けていた.当然,トンネル内に照明はない.トンネル内は暗闇に包まれていた.ヘッドライトが照らしているところだけ,白い靄が漂っているのが見えるだけだった.写真を撮りたいところであったが,トンネル内で立ち止まる勇気はなかった.
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白谷トンネルを抜けて一息ついていると,あっという間に辺りは,雨雲の中へと入ってしまった.そして,雨が叩き付けるように降ってくる始末だった.
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カメラは防水仕様でないので,慌ててタンクバッグへと仕舞いこむ.そして,タンクバッグにレインカバーを取り付けて,逃げるように下山を開始した.道路脇にある小さな砂防堰堤では,豊富な水量によって,透明な滝のカーテンが形成されていた.
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あまりにも美しい滝のカーテンに心惹かれて,雨に打たれながらも夢中になって写真を撮ってしまった.この悪天候と豊富な水量とから,危機的状態であることに違いはなかった.慌ててカメラを仕舞いこんで,早々とその場を立ち去ることにした.
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雨脚が弱くなるところまで下山して,先程までいた山頂の方を見上げてみると,真っ白な雲に包まれていた.危機的状況は回避できたが,下北山村から上北山村,そして川上村へと北上するまでの間,本降りの雨に打たれてしまった.梅雨のど真ん中に遠出を決行し,結果として裏目に出た.それでも今となれば,貴重な体験のツーリングであったと微笑ましく思い出されるのだった.
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