オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

須賀利

2020年08月14日 | 紀伊半島


 三重県の尾鷲市に須賀利町という漁師町がある.須賀利町に向かう途中,トンネルを通り抜けると,ヤシの木と青い海が出迎えてくれた.長かった悪夢のような梅雨が,まるで嘘の様に思われた.



 このビーチは,紀北町の船越海水浴場であり,須賀利町との境に位置している.この日は,遊泳が禁止されていたようで,ビーチには誰もいなかった.これもきっと,コロナウイルスの影響かもしれない.



 須賀利町は尾鷲湾の北東にあり,リアス式海岸の先端に位置している.須賀利町は尾鷲市に属しているが,紀北町と海に囲まれており,いわゆる飛び地になっている.紀北町から須賀利町に向かうには,山中海岸を南下して行く必要がある.



 山中海岸を越えると,海岸線にずらりと並んだ須賀利町の町並みが現われる.ほとんど波のない,穏やかな海が印象的だった.リアス式海岸とは,まるで山に囲まれた海とも言えるのかもしれない.



 須賀利町は,古くは江戸時代に,江戸・大阪間の廻船の風待ち港として栄えていたそうだ.昭和57年に今の紀北町と須賀利町を結ぶ県道ができる前までは,陸の孤島であったという.



 海岸線に並んだ町並みから,陸路のない港町として栄えてきた面影を見るような気がした.そして,今まで訪れた港町にはない,ある種独特の雰囲気があった.



 それでも今は,過疎化が進んでしまっており,町には子供がいないそうである.小学校も中学校も休校中のままになっている.観光客と言えば,熱心な釣り人くらいで,町全体が静まりかえっていた.



 関西に来て,紀伊半島へよく行くようになってから,初めて漁港や港町に立ち寄るようになった.その訳は,自分でもよく分からない.山中海岸のワインディングロードが多いこともあるけれど,静かな場所で山と海の景色を見ると,心穏やかになれるのが,一番の理由かもしれない.わたしにとって須賀利町は,そのような代表的な所である.

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