オートバイで旅して観たモノの記録

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八鬼山越え② 七曲がり

2022年05月15日 | 熊野古道
【目次 : 八鬼山越え】①序章, ②七曲がり, ③桜茶屋一里塚~九木峠, ④荒神堂~八鬼山峠, ⑤さくらの森広場, ⑥江戸道,十五朗茶屋まで, ⑦終章, ⑧エンドロール



 八鬼山峠道を登り始めて,向井バス乗り場から2630メートルのポイントへやってきた.ここは,ちょうど八鬼山林道と交差する場所で,R311の八鬼山トンネル付近に当たる.峠まで,まだまだ先は長い.



 時刻は8時をまわり,峠道にもようやく太陽の光が少しずつ差し込んでくるようになる.そして,ここから先数百メートルは,八鬼山峠道の難所,七曲がりの区間になる.八鬼山峠越えは,ここからが本番だ.



 七曲がりとは坂道の名称で,石畳を敷き詰めた急坂のつづら折りが数百メートルほど連続する.この坂道にちなんで,昔からこの辺りの地名(小字)にもなっているそうだ.



 江戸時代の旅人の日記には,以下のように記されていたという.

 八鬼山峠とて西国第一の難所を登る.上り五拾丁,下り三十八丁,聞きしに勝る難場なり.石ばかりの上を歩行する・・・誠に難渋なる山坂なり.



 旅人の日記に記されている通り,石畳の急坂道はとても辛い.今日は尾鷲漁港付近から歩き始めて,すでに5キロメートル以上の距離を歩いていることになる.このあたりから,少し疲労感が出てくる.それでも,まわりの深い緑の世界が体だけでなく心まで癒してくれた.



 登り続けても,額に汗が溜まっていくばかりで,急坂の石畳の道に変化はない.朝は意外と冷え込みが強く寒かったので,着ていた上着をリュックサックにしまい込んで,Tシャツ一枚となり,首にタオルをかけて気合を入れ直していく.



 疲れたら,少し立ち止まり呼吸を整える.立ち止まって辺りをよく見ると,石畳の苔が一層深くなっていることに気付く.そして,聞こえてくるのは,鳥のさえずりと沢から流れる水の音だけだ.本当に静かで美しいところだ.



 5月はじめの連休中の時期だったので,さすがに人の出があると思っていたが,ここまで,そしてこの後先,結局誰とも出会うことはなかった.コロナ禍でなければ,外国の方とすれ違ったりしたのかもしれない.



 そうして,ようやく七曲がりを越えて,平坦な土道に出る.道の脇に置いてあるベンチに腰掛けて,一息入れる.ここから先は先人たちの道づくりのおかげで,平坦な道と坂道が交互に続くというが,八鬼山峠はまだ1キロメートルも先だ.

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