尾鷲市は日本列島の東側に位置しているので,日の出は拝めても日の入りは見ることができない.とは言え,尾鷲の夕景もなかなか捨てたものじゃないと思う.夕刻になると,空がほのかにピンク色になり,海が空の色をそのままに映し出す.
尾鷲漁港から尾鷲湾の南側に位置する大曽根浦漁港へとオートバイを走らせる.昼間たくさんいたはずの釣り人たちはもういない.そして,太陽は尾鷲湾の背後にそびえる紀伊山地の下に沈もうとしている.オートバイの影が刻一刻と長く伸びていく.
紀伊山地に沈みゆく太陽は,強烈なオレンジ色の日差しを降りそそぐ.尾鷲湾の海が黄金色に輝いて見えるのがとてもきれいだった.水平線の下に沈みゆく太陽もすばらしいけれど,紀伊山地の下に吸い込まれるようにして沈んでいく太陽もなかなかにいい感じだ.
暑くも寒くもないので,太陽が沈みゆくのをただただ茫然と眺めているのが,なんだかとても心地よかった.相棒のオートバイも尾鷲湾の夕景にあって,いつにも増して勇ましく見えるのは気のせいだろうか.東紀州を隈なく走ったのは,このライムグリーンが最初で最後かもしれない.
そうこうしているうちに太陽は強烈な光芒を残しながら紀伊山地に吸い込まれ,今日という一日が終わる瞬間を見届けた.明日も晴れてくれるだろうか,そんなことを考えながら今宵の宿へオートバイを走らせるのだった.
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