8月中旬の朝,腰越峠の中腹でオートバイから降りて,和束町の定点撮影を行う.和束町はモノクロームな感じで,墨絵の世界のような光景だった.空には雲が広がっていたが,太陽が雲を透けて明るく輝いていた.この雲の厚さはかなり薄いものだとわかった.
時刻は7時前だが,それにしては少し暗い.多分,空に広がっている薄い雲がちょうど障子のような遮光の役割をして,太陽の光量を減じると同時に淡い色の光だけを透過させているものと思われた.
町は薄いもやのようなものに包まれ,町の全貌が見えなかった.この薄いもやは,山の中腹当たりでピークを迎えていた.確か以前にも一度だけ朝に同じようなもやが現れていたことがあった.その時は雲はなく快晴だったが,今回ほどのインパクトはなかった.
京都に越してきてから休日の度に和束町へ通い始めて4年が経つが,このような幻想的で美しい墨絵の世界は初めてだ.淡い墨色のような山並みが美しい.そして,空と山並みが絶妙なコントラストを成している.
ただこの幻想的な光景は長くは続かなかった.薄い雲は次第に晴れていき,青空が広がっていく.同時に,墨絵の世界は徐々に色彩と明るさを取り戻していく.墨絵の世界は儚く,あっという間の出来事だった.オートバイに跨りながら,もう二度と出会えない光景かもしれないと思った.
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