※参加された渡辺さんがレポートを書いてくださいました。
長かった冬も終わり麓の桜も満開を迎えています。春の乙女高原の活動は恒例のカエルの産卵調査から始まります。集合場所の道の駅に集まったのは6名で、遅れて1名が合流するので参加者は合計7名です。車に分乗し杣口経由で乙女高原に向けて出発しました。
ヒナスミレの咲く斜面周辺では早春の花を探すことにしました。間もなくヒナスミレの開花を見つけました。枯れた沢まで下りるとハナネコノメ、ツルネコノメソウ、ハシリドコロが開花していました。しかしミツバツチグリ、ヤマエンゴサク、ニリンソウ、キランソウは葉のみで、昨年の同時期よりも全体的に花の開花が遅れているようでした。
通称カエル池で産卵調査を行いました。昨年の同時期には池の水は枯れてしまっていたのですが今回は水が戻っていました。凍った池の表面の下を覗くとうれしいことに卵塊がありました。カエルの存続が危ぶまれていましたが無事だったようです。南斜面ではキブシとヒナスミレが咲いていました。葉の落ちた木々の間からは富士山が見えました。
落石防止工事予定地の落葉樹林帯に立ち寄りました。12月の訪問時は深い落ち葉で靴が沈み歩きにくかったのですが、雪の重みで落ち葉が圧縮されたたのでしょうか、沈むことなく歩きやすくなっていました。落ち葉の上には数えきれないほどのトチの実が落ちていました。見上げると立派なトチノキが存在感を示していました。植原さんが地面から露出したハシリドコロの地下茎が削られているように見える様子を見つけました。付近にシカの糞があったのでシカがかじったのかとも思いましたが、毒をもつハシリドコロをシカが好んで食べるとは考えにくいので謎です。
散策を終えて出発しようとするとコガラ、ヒガラ、ヤマガラ、シジュウカラなど多くの野鳥が集まってきました。ここは野鳥の通り道かもしれません。
焼山峠から乙女高原へ向かう途中にある木道の湿地帯で産卵調査を行うことにしました。山の北斜面には雪が残っていましたが湿地帯にはありませんでした。濡れて滑りやすくなった木道を調査地点へ進み周辺を探すと、5腹の卵塊がありました。
植原さんが昨日の下見でカエルの声を聞いたという西隣の湿地帯のポイントまで足を延ばすことにしました。声の聞こえた付近まで行くと弾力がありそうなフレッシュな卵塊が1腹ありました。昨日はなかったということなので産卵して間もないのでしょう。
最後の産卵調査地点は谷地坊主エリアです。道路から谷地坊主の近くまで下りて足元に注意しながら卵塊を探しましたが見つけることはできませんでした。木橋の近くではクリンソウの葉が出ていました。
さらに奥の谷地坊主エリアへ向かいました。残雪の斜面のを下って沢の上流に向かって探しますが見つかりません。あきらめて戻ろうかと思い始めたころ、見つかったとの声があがりました。そこにあったのは1腹だけでしたがうれしかったです。
ロッジ前で昼食後、草原内を散策することにしました。展望台方面へ向かって各々のペースで斜面を登ります。
早春の花が咲いていないかと足元を探しますが見つかりません。台風の影響でしょうか、幹から折れたバッコヤナギが横たわっていました。枯れているのかと思いきや枝からは白い毛に覆われた可愛い新芽が出ていました。植物の生命力には驚かされることばかりです。展望台からは富士山の山頂部のみを見ることができました。展望台から草原のコースを下ります。草のない開放的な斜面から大菩薩方面を見ると、稜線が雪で真っ白になっていました。草原の中でフデリンドウの葉を見つけました。まだ小さくて花が咲くのはもう少し先のようです。ツツジのコースへ進むと日陰には10cmほどの残雪がありました。
おそらく一昨日降った雪でしょう。この時期にはおなじみのヒメツチハンミョウを2匹見つけました。一方はオスで元気に動いていましたが、もう一方のメスはなぜか動きが鈍かったです。
草原を一周したところで草原のあちこちにあったソーセージのように長く伸びた土塊についてみんなで考察しました。ソーセージの先端には地中に向かってに穴があったこと、土に混じっている糞はネズミのものであることまではわかったのですが、出来上がるまでのプロセスなどは依然として謎のままです。謎は簡単にわかってしまうと面白くありません。いろいろな可能性を考えることが楽しいのです。
最後に焼山峠に立ち寄りました。ここの湿地では産卵間もない18腹の卵塊を見つけることができました。
振り返ると草木の開花については昨年の同時期と比べて遅れていると感じました。来週以降は暖かな日が続く予報なので季節は一気に進むことでしょう。乙女高原での活動はこれからが本番です。忙しくなりそうです。