先日のこと、病院での長い待ち時間を潰すために一冊の本を準備していきました。案の定たっぷりと3時間、飛ばし読みもしながら読み終えた。結構根気の要る内容。
生物と無生物の違いはどこにあるのだろう、これは永らく定義できなかったことらしい。
目次をみると、
第一章 ヨークアベニュー
第二章 アンサング・ヒーロー
第三章 フォー・レター・ワード
第四章 シャッガルのパズル
第五章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライス ・・・・・・
と言った具合でしょっぱなから目を背けたくなる。でも読み進むうち難解な分子生物学を巧みに読み物風に話を進めて、だんだんと興味を惹いてゆく。文章が相当上手い。下手な小説よりも面白くなる。
えーっホント?まさかと思ったのは、日本ではお札の肖像にまでなり偉人伝中の偉人と尊敬されている野口英世、今その論文や業績を再評価すれば、いずれも疑問のあるものばかりだという。彼が発見した狂犬病や黄熱病の病原体は当時まだ知られていなかった(顕微鏡では見えるはずもない)ウイルスだったのです。捏造ではないが誤りだったことだとか、二十世紀最大、DNAの二重ラセン構造の発見にまつわる数々の疑惑やエピソードについてもなかなか面白かった。先端のES細胞研究についても書かれています。
そして核心「生命とは動的平衡にある流れである」という難解な定義へと導いていく。
これはどういうことか、私達の体で考えてみると、呼吸や食物として取り入れられたものは一般には単純に燃焼されエネルギーとして生命を維持しているものと考えてきた。
しかし、実は生命体に取り入れられた物質は分子レベルでみると、瞬く間に極めてダイナミックに全身に散らばり、一時そこにとどまり、次の瞬間には身体から抜け出していく。すなわち人間の体をなす分子は刻々と入れ替わっているのだと言うこと。去年の体と今年の体を構成する分子はほぼ全て入れ替わっているというのだ。つまり生命体の分子は自然界と絶えず行き来し、自然界の流れの中に成り立っているのである。
まるで「千の風になって」の世界なのだなあと妙に納得させられた。