◆ 全社員を19時に帰すのは、無理な話ではない (日経DUAL)
「女性の役員や管理職が多く、活躍している会社にはどんな秘訣があるか」――先日、小室淑恵さん率いるワーク・ライフバランス社主催で、経営者限定の勉強会が行われました。
ゲストスピーカーは、大和証券グループ本社取締役会長・鈴木茂晴さん。今回の記事では「ワーク・ライフバランスは本気度が重要だ」というお話です。
■ 19時に帰らない支店には「支店長に『転勤候補になっているよ』と言いなさい」
大和証券・鈴木会長 仕事と育児の両立を支援する制度を整えていくなかで、今度は男女ともに働きやすい会社を目指そうと、2008年ごろからワーク・ライフバランスの推進に力を入れました。
私達が男女ともに働きやすい会社を目指す理由の一つ目は、持続可能な企業になりたいからです。
毎日夜遅くまで残業したり、土日にまで働いたりしていたら、短期的に利益を上げることはできるかもしれませんが、いつか息切れしてしまうでしょう。
会社を持続的に発展させるためには、社員の働き方も持続可能なものにしなければならないのです。
そして、社員達にはワーク・ライフバランスというよりも「ワークハード・ライフハード」を大事にしてほしいと思っています。
つまり仕事にもプライベートにも全力で取り組み、両方充実させてほしいと願っているのです。
ワーク・ライフバランスというとなんとなく「バランスを取る」というイメージがあります。でも、仕事とプライベートを充実させるためには、限られた時間内に成果を出すことが重要です。
それを実現するために2009年からは、営業店を中心に19時前に退社させるようにしています。毎日何があっても全員、19時には退社するというルールです。
最初は「それは無理ですよ。仕事が増えているのに、早く帰れなんて……」と言われました。でも、私は「必ず実現したい」と言い続け、「毎日何時に店を閉めたか報告しなさい」と伝えました。
「19時に帰れ」というと、皆遅くとも20時までには退社するようになります。
だいたい19時15分から20分くらいの間には帰るようになる。しかし、徐々に退社時間が遅くなる人が数人出てきます。
少し退社時間が遅くなる人が出てきたタイミングで人事担当者を呼び、「支店長に『転勤候補になっていますよ』と言いなさい」と伝えました。こういう話はものの5秒で全国の支店に伝わるものです(笑)。
当社には前身の企業も入れると110年以上の歴史があります。
100年以上続けてきた働き方を本気で変えようと思ったら、最初はある程度の強制力を持たせなければ定着させることができません。こうした試みの結果、少しずつ残業時間が延びてきた社員達も働き方を変えることができました。
■ 長時間労働をすると体力勝負に。すべての社員に活躍してもらうカギは“時間”
「残業を減らした目的は残業代カットではない。管理職も含めたワーク・ライフバランスの推進だ」と強く言い続けました。
支店で実際の働き方を見ると、支店長はコストのことを考えて残業代のかかる人を早めに帰している。つまり、残って働いているのは、残業代のかからない管理職だったのです。そこで「早く帰ることは管理職にとっても必要だ」と強く伝えるようになりました。
管理職の中には22~23時まで働く人もいました。全員がそういう働き方をしていたら最終的には体力勝負になります。すると、女性は男性にはかなわなくなり、その結果、女性が仕事を続けるのが難しくなってしまうわけです。仕事と育児、仕事とプライベートを両立していくためには、全社員が自分で時間をコントロールできるようになることが大切です。
男性でも年を重ねると、若いころのように長時間労働をすることは難しくなります。女性も男性も、ベテラン社員も若手社員も、すべての社員にとって働きがいを持って生き生きと働き続けられる環境をつくり上げていくためのカギは“時間”にあるのです。
■ 「そうは言っても、うちはいい会社だよな」と思える会社こそが素晴らしい
社員の働く姿を家族に見てもらう機会も作りました。
2008年から実施しているのが、毎年夏の家族の職場訪問です。日ごろから社員を支えてくれている家族の方を、感謝を込めて招待しています。
2014年の夏で7回目の開催となり、全国で5000人以上の参加がありました。
最初は「子どもが来てパソコンを触ったりしたら、大変なことになる」と反対する声もありましたが、「いいじゃないの。子どもが来て何かあったら、その親が責任取りますから」と押し切りました。実際は問題など全く起きず、毎年盛り上がるイベントとなっています。
家族から「良い会社で働いてるね」と言われると、社員のモチベーションは上がります。当社は「家族も会社の一員だ」と考えているので、社員にも家族にも好評なのはありがたいことです。
たとえ仕事中に頭に来たことがあって「こんな会社辞めてやる!」と家族に愚痴をこぼしても、「そうは言うけど、私はいい会社だと思うよ」なんて言われたら、「あぁ、そうだな」と思い直すものです。会社は社員の家族にも支えられているのです。
このほか、社員にモチベーション高く働き続けてもらうために、生活補助や健康サポート、財産形成や社内コミュニケーションの活発化などについても様々な施策を導入しています。
会社で働いていれば、大なり小なり、必ず不平不満はあるものです。
上司の悪口を言ったり「なんだあの会長は……」と思ったりすることもあるかもしれません。ただ、「そうは言っても、うちはいい会社だよな」と最終的に思える会社こそが、素晴らしい会社なのではないでしょうか。
会社に対するロイヤルティが向上することはプロ意識やサービスの向上につながります。そして、結果的には株主やステークホルダーの皆様に還元されるのです。
■ 何があっても会社を辞めたらいけない。仕事は自分を成長させる
今、私が女性社員に強く言っているのが「結婚しようがしまいが、子どもがいようがいまいが、絶対に会社を辞めたらあかん」ということです。
仕事というのは誰にとっても、人生そのものに大きなプラスとなって自分を成長させるものです。女性にとってはまだまだハンディがある世の中ですが、「そのハンディを乗り越えるために相応の努力をせないかんよ」と言っています。そして、何があってもへこたれないでほしいのです。「上昇志向を持って、自分の能力を磨いてほしい」と伝えています。
女性活躍支援に取り組む会社は多いですが、一番重要なのは「本気度」です。
当社がもし他社と何かで差別化できるとしたら、本気度の違いでしょう。
女性も男性もベテランも若手も、すべての社員がモチベーション高く、そしてロイヤルティ高く働ける環境を整えたい。当社は職場環境の整備、待遇の改善、雇用の延長など、社員のモチベーションを高めることは何でもやります。良いと思ったらまずやってみる。強い信念をもって取り組むことが大切なのです。
社員にとって、昨日より今日、今日より明日を充実したものとするために、会社が試行錯誤を繰り返し、努力をし続けることが重要です。
社員は会社の姿勢をよく見ていて、会社の本気度は必ず伝わります。会社の本気度は、今は分かりづらかったとしても、何十年も経てば必ず成果につながるのです。
* 次回は、セミナーに参加した経営者から寄せられた質問に対する鈴木会長の回答をお伝えします。
( ライター/西山美紀)
小室 淑恵:
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。2006年㈱ワーク・ライフバランスを設立。「ワーク・ライフバランス組織診断」や「育児休業者職場復帰支援プログラムarmo(アルモ)」「介護と仕事の両立ナビ」「朝メール.com」などを開発。また携帯電話用サイト「小室淑恵のWLB塾」をリリース。09年よりワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座などを主催、多種多様な価値観が受け入れられる社会を目指して邁進中。2児の母の顔を持つ。消費増税集中点検会合など複数の委員会・公務を兼任。著書多数。共著に『2人が「最高のチーム」になる―― ワーキングカップルの人生戦略』、近著に『夢をかなえる28日間ToDoリスト』『子育てがプラスを生む「逆転」仕事術 産休・復帰・両立、すべてが不安なあなたへ』などがある。最新刊は『残業ゼロで好業績のチームに変わる 仕事を任せる新しいルール』。また、13年4月からNHKのツイッター連動ニュース番組「NEWS WEB」の月曜日のナビゲーターとしてレギュラー出演中。今年9月、産業競争力会議の民間議員に就任。
『日経DUAL - Yahoo!ニュース』(2015年12月21日)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151221-01005545-nkdualz-life
「女性の役員や管理職が多く、活躍している会社にはどんな秘訣があるか」――先日、小室淑恵さん率いるワーク・ライフバランス社主催で、経営者限定の勉強会が行われました。
ゲストスピーカーは、大和証券グループ本社取締役会長・鈴木茂晴さん。今回の記事では「ワーク・ライフバランスは本気度が重要だ」というお話です。
■ 19時に帰らない支店には「支店長に『転勤候補になっているよ』と言いなさい」
大和証券・鈴木会長 仕事と育児の両立を支援する制度を整えていくなかで、今度は男女ともに働きやすい会社を目指そうと、2008年ごろからワーク・ライフバランスの推進に力を入れました。
私達が男女ともに働きやすい会社を目指す理由の一つ目は、持続可能な企業になりたいからです。
毎日夜遅くまで残業したり、土日にまで働いたりしていたら、短期的に利益を上げることはできるかもしれませんが、いつか息切れしてしまうでしょう。
会社を持続的に発展させるためには、社員の働き方も持続可能なものにしなければならないのです。
そして、社員達にはワーク・ライフバランスというよりも「ワークハード・ライフハード」を大事にしてほしいと思っています。
つまり仕事にもプライベートにも全力で取り組み、両方充実させてほしいと願っているのです。
ワーク・ライフバランスというとなんとなく「バランスを取る」というイメージがあります。でも、仕事とプライベートを充実させるためには、限られた時間内に成果を出すことが重要です。
それを実現するために2009年からは、営業店を中心に19時前に退社させるようにしています。毎日何があっても全員、19時には退社するというルールです。
最初は「それは無理ですよ。仕事が増えているのに、早く帰れなんて……」と言われました。でも、私は「必ず実現したい」と言い続け、「毎日何時に店を閉めたか報告しなさい」と伝えました。
「19時に帰れ」というと、皆遅くとも20時までには退社するようになります。
だいたい19時15分から20分くらいの間には帰るようになる。しかし、徐々に退社時間が遅くなる人が数人出てきます。
少し退社時間が遅くなる人が出てきたタイミングで人事担当者を呼び、「支店長に『転勤候補になっていますよ』と言いなさい」と伝えました。こういう話はものの5秒で全国の支店に伝わるものです(笑)。
当社には前身の企業も入れると110年以上の歴史があります。
100年以上続けてきた働き方を本気で変えようと思ったら、最初はある程度の強制力を持たせなければ定着させることができません。こうした試みの結果、少しずつ残業時間が延びてきた社員達も働き方を変えることができました。
■ 長時間労働をすると体力勝負に。すべての社員に活躍してもらうカギは“時間”
「残業を減らした目的は残業代カットではない。管理職も含めたワーク・ライフバランスの推進だ」と強く言い続けました。
支店で実際の働き方を見ると、支店長はコストのことを考えて残業代のかかる人を早めに帰している。つまり、残って働いているのは、残業代のかからない管理職だったのです。そこで「早く帰ることは管理職にとっても必要だ」と強く伝えるようになりました。
管理職の中には22~23時まで働く人もいました。全員がそういう働き方をしていたら最終的には体力勝負になります。すると、女性は男性にはかなわなくなり、その結果、女性が仕事を続けるのが難しくなってしまうわけです。仕事と育児、仕事とプライベートを両立していくためには、全社員が自分で時間をコントロールできるようになることが大切です。
男性でも年を重ねると、若いころのように長時間労働をすることは難しくなります。女性も男性も、ベテラン社員も若手社員も、すべての社員にとって働きがいを持って生き生きと働き続けられる環境をつくり上げていくためのカギは“時間”にあるのです。
■ 「そうは言っても、うちはいい会社だよな」と思える会社こそが素晴らしい
社員の働く姿を家族に見てもらう機会も作りました。
2008年から実施しているのが、毎年夏の家族の職場訪問です。日ごろから社員を支えてくれている家族の方を、感謝を込めて招待しています。
2014年の夏で7回目の開催となり、全国で5000人以上の参加がありました。
最初は「子どもが来てパソコンを触ったりしたら、大変なことになる」と反対する声もありましたが、「いいじゃないの。子どもが来て何かあったら、その親が責任取りますから」と押し切りました。実際は問題など全く起きず、毎年盛り上がるイベントとなっています。
家族から「良い会社で働いてるね」と言われると、社員のモチベーションは上がります。当社は「家族も会社の一員だ」と考えているので、社員にも家族にも好評なのはありがたいことです。
たとえ仕事中に頭に来たことがあって「こんな会社辞めてやる!」と家族に愚痴をこぼしても、「そうは言うけど、私はいい会社だと思うよ」なんて言われたら、「あぁ、そうだな」と思い直すものです。会社は社員の家族にも支えられているのです。
このほか、社員にモチベーション高く働き続けてもらうために、生活補助や健康サポート、財産形成や社内コミュニケーションの活発化などについても様々な施策を導入しています。
会社で働いていれば、大なり小なり、必ず不平不満はあるものです。
上司の悪口を言ったり「なんだあの会長は……」と思ったりすることもあるかもしれません。ただ、「そうは言っても、うちはいい会社だよな」と最終的に思える会社こそが、素晴らしい会社なのではないでしょうか。
会社に対するロイヤルティが向上することはプロ意識やサービスの向上につながります。そして、結果的には株主やステークホルダーの皆様に還元されるのです。
■ 何があっても会社を辞めたらいけない。仕事は自分を成長させる
今、私が女性社員に強く言っているのが「結婚しようがしまいが、子どもがいようがいまいが、絶対に会社を辞めたらあかん」ということです。
仕事というのは誰にとっても、人生そのものに大きなプラスとなって自分を成長させるものです。女性にとってはまだまだハンディがある世の中ですが、「そのハンディを乗り越えるために相応の努力をせないかんよ」と言っています。そして、何があってもへこたれないでほしいのです。「上昇志向を持って、自分の能力を磨いてほしい」と伝えています。
女性活躍支援に取り組む会社は多いですが、一番重要なのは「本気度」です。
当社がもし他社と何かで差別化できるとしたら、本気度の違いでしょう。
女性も男性もベテランも若手も、すべての社員がモチベーション高く、そしてロイヤルティ高く働ける環境を整えたい。当社は職場環境の整備、待遇の改善、雇用の延長など、社員のモチベーションを高めることは何でもやります。良いと思ったらまずやってみる。強い信念をもって取り組むことが大切なのです。
社員にとって、昨日より今日、今日より明日を充実したものとするために、会社が試行錯誤を繰り返し、努力をし続けることが重要です。
社員は会社の姿勢をよく見ていて、会社の本気度は必ず伝わります。会社の本気度は、今は分かりづらかったとしても、何十年も経てば必ず成果につながるのです。
* 次回は、セミナーに参加した経営者から寄せられた質問に対する鈴木会長の回答をお伝えします。
( ライター/西山美紀)
小室 淑恵:
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。2006年㈱ワーク・ライフバランスを設立。「ワーク・ライフバランス組織診断」や「育児休業者職場復帰支援プログラムarmo(アルモ)」「介護と仕事の両立ナビ」「朝メール.com」などを開発。また携帯電話用サイト「小室淑恵のWLB塾」をリリース。09年よりワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座などを主催、多種多様な価値観が受け入れられる社会を目指して邁進中。2児の母の顔を持つ。消費増税集中点検会合など複数の委員会・公務を兼任。著書多数。共著に『2人が「最高のチーム」になる―― ワーキングカップルの人生戦略』、近著に『夢をかなえる28日間ToDoリスト』『子育てがプラスを生む「逆転」仕事術 産休・復帰・両立、すべてが不安なあなたへ』などがある。最新刊は『残業ゼロで好業績のチームに変わる 仕事を任せる新しいルール』。また、13年4月からNHKのツイッター連動ニュース番組「NEWS WEB」の月曜日のナビゲーターとしてレギュラー出演中。今年9月、産業競争力会議の民間議員に就任。
『日経DUAL - Yahoo!ニュース』(2015年12月21日)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151221-01005545-nkdualz-life
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