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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

◆ 川崎市教科書選定審議会に情報開示を求めた裁判勝訴

2024年01月18日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 音声データ開示拒否処分に完全勝訴判決

弁護士/川崎北合同法律事務所 畑谷嘉宏(はたやよしひろ)

1.2023年10月4日横浜地方裁判所第1民事部は、非公開会議の川崎市教科用図書選定審議会(以下選定審議会という)の委員の意見表明のない部分の会議音声データと、公開会議の川崎市教育委員会会議の会議音声データの川崎市教育委員会の各拒否処分を取り消すとの判決を言い渡しました。

 これは、2014年8月の教育委員会会議で学校推薦の実教出版日本史A302が採択されなかった原因を作った選定審議会の議事を明らかにするための会議の音声データの開示請求および、2019年8月の道徳教科書採択の教育委員会会議の音声データの開示請求

《実教出版日本史Aが採択されなかった教育委員会会議の音声データの開示請求が拒否されたことに対し不服申立がなされ、川崎市情報公開・個人情報保護審査会(以下審査会という)が開示すべきものであると答申したのをきっかけに教育委員会会議の音声データが開示されていたにもかかわらず、実教出版日本史Aを採択しなかった教育委員会会議の音声データを教育委員会の担当課長が消去したことに対する損害賠償請求の裁判の判決が出されたことを契機に教育委員会会議の音声データの開示請求が拒否されることになった》

 に対してなされた各開示請求拒否処分が、川崎市情報公開条例の不開示事由に該当しない違法な拒否処分だとしてその取り消しを求めたものに対する判決でした。

2.判決は、不開示情報に該当することについては、原則として当該処分をした実施機関の所属する行政主体である被告において立証すべきものと解されるとした上で、川崎市情報公開条例8条3号、4号に規定する不開示事由の1つ1つについて被告の主張を検討し、審査会答申例・裁判例の現在の到達点をふまえた標準的な基準に基づいて、不開示事由の「おそれ」は単に実施機関においておそれがあると判断するだけでなく、客観的にそのおそれがあると認められることが必要であるとして、被告の主張するおそれは抽象的なものにとどまるといわざるを得ない等と被告の主張をすべて排斥したのです。

3.被告の主張は

「音声データは議事録作成のための一時的・補助的な記録にすぎない。発言の語気・語調が機械的な忠実さでそのまま録音されるもので、語句・表現の事後的な訂正(校正)が物理的に不可能。紙媒体の議事録と音声データは受け手に与える印象が全く異なる特殊性がある。特殊性を踏まえて本件条例の不開示情報該当性を検討すべき」として、
委員の意思決定に影響を与えるおそれ
市民の間に混乱を生じさせるおそれ」があるとするものです。

 「一時的・補助的」というのは、録音が磁気テープによって行われており使いまわしが当然の時代の使用形態にもとづき主張されていたもので、そのため条例で公文書の対象から除外するものもあったように過去の一時期の遺物で、すでに条例改正・審査会答申例・裁判例によって克服されているものです。しかも、音声データは、現在は議事録よりもより忠実、正確に表現されるものであるとして公文書管理の原則的媒体とされているくらいなのです。

4.判決の結論は、原告らの審査請求に対してなされた審査会の答申と全く同じでした。
 川崎市教育委員会は、審査会の答申を尊重しなかっただけではなく、横浜地裁判決によってもその誤りが断罪をされたのです。

 川崎市の条例では処分庁は審査会の答申を尊重しなければならないとされていて、川崎市においては過去10年間で約70件の不服申立があり、そのほとんどは審査会の答申を尊重して処分がなされているのに、審査会の答申を尊重せず答申に反する処分をしたのは川崎市教育委員会の本件の2件だけという異常な対応をしているのです。
 にもかかわらず、控訴して、情報公開に背を向ける姿勢に固執しているのは、余りにも反動的という他ありません。

 2014年の高校教科書の採択で、市民に説明できない意図的な採択を強行した挙句、その内容を知られたくないため音声データを消去してしまったことを反省するのではなく、その隠蔽体質をさらに強固にした川崎市教育委員会の今回の措置を許さず、改めるまで徹底的に追及するものです。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース』153号(2023.12)

 


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