=総特集:最賃運動再入門 (労働情報)=
◆ いまこそ学ぼう!Q&A最賃再入門(続)

<3.2007年以降の変化>
Q18:2007年改正の内容は?
最低賃金法は2007年に改正されます。地域別最賃に関する主な改正点は、
①決定要素への「生活保護との整合性に配慮」の追加、
②それまで適用除外だった障害者等への減額率の設定、
③最賃違反に対する罰金の引き上げ(2万円→50万円)、
④派遣労働者に対する派遣先地域最賃の適用、などですが、
もっとも重要なのは①の改正です。
存続が議論されていた産業別最賃については「特定最賃」として残されることになりました。
Q19:生活保護との整合性とは?
これは、もともと最賃の決定要素の一つであった生計費を考慮するに当たって「労働者が健康で文化的な生活を営むことができるよう、生活保護との整合性に配慮する」ことが新たに明記されたもので、具体的には生活保護を下回らない水準にするという意味です。
この条文により、最賃が憲法第25条の生存権を保障するものであることが初めて明記されたことになります。
Q20:07年の最低賃金改定は?
最賃法改正後の目安審議に際して、厚生労働省は、これまで準拠してきた賃金上昇率のデータ(第4表)に替わって、一般労働者の所定内賃金の38・2%に引き上げる方法、高卒初任給の8割水準に近づける方法、小規模企業一般労働者の中央値の半分にする方法、生産性向上の政府計画に沿って引き上げる方法、などを案として提示しました。
つまり、生活保護との整合性が入っただけでなく、これまでの「第4表」を軸とした議論が大きく変わったわけです。
こうして、この年の中賃目安は、Aランク19円、Bランク14円、Cランク9~10円、Dランク6~7円と、これまでにない大幅な引き上げとなり、この流れはその後も継続されていきます([上のグラフ]を参照)。
Q21:法改正に至る経過は?
最低賃金のあり方については、経営側の意向を受けた規制改革会議における産別最賃廃止論をきっかけとして03年頃から議論されており、その中で、研究者の間からは生活保護との整合性の問題指摘もありました。
そうした流れのなかで、07年3月に内閣府に公労使による成長力底上げ円卓会議が設置され、そこで最賃審議会とは別に最賃のあり方について議論し、「従来の延長線を超える」方向を打ち出し、最賃決定要素に「生活保護との整合性」を入れることにしたのです。
また、労働側は、一般労働者賃金の1/2水準、高卒初任給などを主張し、最賃の「あるべき水準」が議論の焦点として浮上したのです。
こうした議論は、その後の雇用戦略対話(2010年)にも引き継がれ、民主党政権やその後の自民党政権においても「全国平均1000円」という目標が掲げられるようになり、最賃審議の審議会への諮問に際しても政府の意向が示されるようになりました。マスコミなどからも「政府主導」と指摘されるゆえんです。
<4.最低賃金法の活用>
Q22:対象となる賃金は?
まずは自分たちの賃金のチェックです。
時間外手当や、諸手当、通勤費や一時金(賞与)を除いた基本給、あるいは基本給に職務手当を加えた額が対象となります。
月給の場合は月の平均労働時間数で、日給の場合は所定労働時間で割り、時間賃金に換算する必要があります。
また、固定給+歩合給の場合は、(固定給÷月の所定労働時間)+(歩合給÷月の総労働時間)が対象となります。使用者の説明を鵜呑みにせず、きちんとチェックすることが重要です。
Q23:最賃違反を見つけたら?
とにかく当該経営者に指摘し、さらに労基暑に申告することです。
秋に地域ごとの最賃が改定されると行政も周知に努めますが、募集広告などで堂々と最賃未満の時給を掲げているケースが目立ちます。
こうしたケースについて経営者に指摘し労基暑に通報するのも運動の一つです。
<5.今後の課題>
Q24:今後の最賃のあり方は?
目標としての金額をスローガンとして掲げるだけでなく、罰則つき規制としての水準のあり方についても議論を深める必要があります。
その際、日本に独特な単身者モデルを超えるために、生活賃金、一人前最賃、年齢別最賃なども論点になるでしょう(連合や全労連が示しているリビングウエイジも参考になります)。
そのなかで、特定最賃の新たな役割や地域格差の解消も議論していく必要があります。
Q25:今後の運動のあり方は?
07年以降の状況は、当事者たちの声と運動が出発点となり、労働組合が足下の問題解決に取り組むだけでなくヨコにつながり、さらに市民運動などとの連携により、各地域で社会運動として広がっていきました。
大きな転機にある最賃が社会問題として浮上している今、かつての審議会依存や昨今の政府主導を超えていくには、そうした運動の再構築が不可欠です。
職場での最賃協定締結はもちろんですが、地域の審議会への働きかけや各自治体の公契約条例の取り組みなど、個々の労組のカベを超えることを可能にしてくれるのも、最賃闘争の大きな役割といえます。
◆ いまこそ学ぼう!Q&A最賃再入門(続)

<3.2007年以降の変化>
Q18:2007年改正の内容は?
最低賃金法は2007年に改正されます。地域別最賃に関する主な改正点は、
①決定要素への「生活保護との整合性に配慮」の追加、
②それまで適用除外だった障害者等への減額率の設定、
③最賃違反に対する罰金の引き上げ(2万円→50万円)、
④派遣労働者に対する派遣先地域最賃の適用、などですが、
もっとも重要なのは①の改正です。
存続が議論されていた産業別最賃については「特定最賃」として残されることになりました。
Q19:生活保護との整合性とは?
これは、もともと最賃の決定要素の一つであった生計費を考慮するに当たって「労働者が健康で文化的な生活を営むことができるよう、生活保護との整合性に配慮する」ことが新たに明記されたもので、具体的には生活保護を下回らない水準にするという意味です。
この条文により、最賃が憲法第25条の生存権を保障するものであることが初めて明記されたことになります。
Q20:07年の最低賃金改定は?
最賃法改正後の目安審議に際して、厚生労働省は、これまで準拠してきた賃金上昇率のデータ(第4表)に替わって、一般労働者の所定内賃金の38・2%に引き上げる方法、高卒初任給の8割水準に近づける方法、小規模企業一般労働者の中央値の半分にする方法、生産性向上の政府計画に沿って引き上げる方法、などを案として提示しました。
つまり、生活保護との整合性が入っただけでなく、これまでの「第4表」を軸とした議論が大きく変わったわけです。
こうして、この年の中賃目安は、Aランク19円、Bランク14円、Cランク9~10円、Dランク6~7円と、これまでにない大幅な引き上げとなり、この流れはその後も継続されていきます([上のグラフ]を参照)。
Q21:法改正に至る経過は?
最低賃金のあり方については、経営側の意向を受けた規制改革会議における産別最賃廃止論をきっかけとして03年頃から議論されており、その中で、研究者の間からは生活保護との整合性の問題指摘もありました。
そうした流れのなかで、07年3月に内閣府に公労使による成長力底上げ円卓会議が設置され、そこで最賃審議会とは別に最賃のあり方について議論し、「従来の延長線を超える」方向を打ち出し、最賃決定要素に「生活保護との整合性」を入れることにしたのです。
また、労働側は、一般労働者賃金の1/2水準、高卒初任給などを主張し、最賃の「あるべき水準」が議論の焦点として浮上したのです。
こうした議論は、その後の雇用戦略対話(2010年)にも引き継がれ、民主党政権やその後の自民党政権においても「全国平均1000円」という目標が掲げられるようになり、最賃審議の審議会への諮問に際しても政府の意向が示されるようになりました。マスコミなどからも「政府主導」と指摘されるゆえんです。
<4.最低賃金法の活用>
Q22:対象となる賃金は?
まずは自分たちの賃金のチェックです。
時間外手当や、諸手当、通勤費や一時金(賞与)を除いた基本給、あるいは基本給に職務手当を加えた額が対象となります。
月給の場合は月の平均労働時間数で、日給の場合は所定労働時間で割り、時間賃金に換算する必要があります。
また、固定給+歩合給の場合は、(固定給÷月の所定労働時間)+(歩合給÷月の総労働時間)が対象となります。使用者の説明を鵜呑みにせず、きちんとチェックすることが重要です。
Q23:最賃違反を見つけたら?
とにかく当該経営者に指摘し、さらに労基暑に申告することです。
秋に地域ごとの最賃が改定されると行政も周知に努めますが、募集広告などで堂々と最賃未満の時給を掲げているケースが目立ちます。
こうしたケースについて経営者に指摘し労基暑に通報するのも運動の一つです。
<5.今後の課題>
Q24:今後の最賃のあり方は?
目標としての金額をスローガンとして掲げるだけでなく、罰則つき規制としての水準のあり方についても議論を深める必要があります。
その際、日本に独特な単身者モデルを超えるために、生活賃金、一人前最賃、年齢別最賃なども論点になるでしょう(連合や全労連が示しているリビングウエイジも参考になります)。
そのなかで、特定最賃の新たな役割や地域格差の解消も議論していく必要があります。
Q25:今後の運動のあり方は?
07年以降の状況は、当事者たちの声と運動が出発点となり、労働組合が足下の問題解決に取り組むだけでなくヨコにつながり、さらに市民運動などとの連携により、各地域で社会運動として広がっていきました。
大きな転機にある最賃が社会問題として浮上している今、かつての審議会依存や昨今の政府主導を超えていくには、そうした運動の再構築が不可欠です。
職場での最賃協定締結はもちろんですが、地域の審議会への働きかけや各自治体の公契約条例の取り組みなど、個々の労組のカベを超えることを可能にしてくれるのも、最賃闘争の大きな役割といえます。
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