◇ 電磁波規制、産業推進官庁から分離を
原子力発電を推進する経済産業省から、原子力発電を規制する部門を分離するため、国は経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会などを再編し、環境省の外局として原子力規制庁を設置させる方針です。しかし、関連法案の国会審議入りのめどが立たず、政府が目指す4月1日の発足は極めて困難だと報道されています。
この原子力安全・保安院は、原子力だけでなく、電力設備についての電磁波規制も所管しています。経産省は電力業界の保護育成を担ってきたわけですが、その同じ経産省が電力業界が規制することの矛盾は、原発問題と同質です。
このため、原子力の規制を経産省から分離させるのを機に、電磁波の規制も産業推進を所管する官庁から分離するよう要求しようと「中継塔問題を考える九州ネットワーク」の宮嵜周さんが提起され、これに賛同する団体(当会を含む)の連名で要求書を総理大臣などにあてて提出しました。 要求書の内容は以下の通りです。
2012年3月5日
内閣総理大臣 様 経済産業大臣 様 総務大臣 様 環境大臣 様
私たちは、電磁波被曝から健康を守るための活動を行っている市民団体です。
わが国において、商用周波数(50ヘルツ、60ヘルツ)を含む低周波電磁波の規制は経済産業省、携帯電話を含む高周波電磁波の規制は総務省と分かれています。
まず低周波電磁波の規制に係る問題ですが、現行では、経済産業省内の資源エネルギー庁原子力安全・保安院電力安全課の所管となっています。
原子力安全・保安院は、原子力関係のみでなく、電力、都市ガス、高圧ガス、液化石油ガス、火薬等々の施設や産業活動の規制や保安を行っていますし、資源工ネルギー庁は、エネルギー全体の安定供給政策や省エネルギー・新エネルギー(太陽光発電等)政策の推進を行う部門です。
つまり、商用周波数を含む低周波電磁波に関わる産業の推進部門と産業の安全と規制を司る部門が、同一省庁内に混在しているわけです。
これでは、国民生活の安全と国民の健康を守る立場を貫いて、産業活動への規制ができるはずがありません。
その端的な表れが、2011年3月31日の「磁界規制値の100μT(1000ミリガウス)から200μT(2000ミリガウス)への規制緩和(改悪)」です。
2007年6月にWHO(世界保健機関)が極低周波電磁波の「環境保健基準」(EHC)を発表しました。そこでは「慢性健康リスクとして、0,3μT(3ミリガウス)~0.4、μT(4ミリガウス)で小児白血病発症リスクが約2倍になる」として、予防的方策やリスクコミュニケーションの推進が提言されました。
これは電磁波による健康被害が懸念されているからに他なりません。
それなのに経済産業省は、磁界規制値を厳しくするのでなく反対に緩くする、という愚挙を行いました。
これは経済産業省が国民の健康を守るより産業活動の活性化により重点を置いていることを示しています。
すでに、原子力に関しては福島第一原発事故を契機に「規制部門の推進部門からの分離・独立」が実行されました。
電磁波に関しても、健康影響が広がらないうちに「規制部門の推進部門からの分離・独立」が急務と考え、当面、原子力同様に規制部門を経済産業省から環境省に変更することを要求します。
一方、高周波電磁波の規制に係る問題ですが、現行では、総務省内の総合通信基盤局電波部の所管で、携帯電話及び基地局に関しては電波環境部と同移動通信課が所管しています。
元々総合通信基盤局は旧郵政省の分野で、電気通信事業の「競争促進」を主たる目的としています。これでは高周波電磁波から国民の健康を守れるわけがありません。
いかに円滑に携帯電話等の普及が図られるかに最大の関心があるのですから、2011年5月31日に、IARC(国際がん研究機関)が高周波電磁波を「2B」(発がん可能性あり)と評価しました。
もはや高周波電磁波が「100%安全」といえる時代ではありません。
高周波電磁波の規制に関しては、総務省から環境省に所管を移すことが急務です。
なお、本要求書送達の日から30日以内に文書で回答するよう求めます。
1 商用周波数を含む低周波電磁波の規制部門(部局)を経済産業省から環境省に変更する
2 携帯電話を含む高周波電磁波の規制部門(部局)を総務省から環境省に変更する
3 規制値等の設定。変更にあたっては、国民の健康を第一とすること
4 規制値等の設定・変更にあたっては、リスクコミュニケーションの立場から、住民、環境市民団体、消費者団体、自治体等の利害関係者を協議に参加させること
中継塔問題を考える九州ネットワーク/いのちと環境を守る福岡ネットワーク(福岡県)/NPO法人環境と健康を考える会(福岡市)/携帯電話基地局建設反対住民の会(久留米市)/ドコモ基地局建設移転要望の会(久留米市三潴町)/携帯基地局撤去(移転)運動協議会(大村市)/秋津一町内九州セルラー鉄塔建設反対期成会(熊本市沼山津)/託麻の環境を守る会(熊本市御領)/携帯電話楡木中継鉄塔建設に反対する会(熊本市)/江津周辺携帯電話基地建設反対期成会(熊本市)/託麻西小に近接するソフトバンク基地局の撤去を求める会(熊本市)/別府の住環境と子どもの未来を守る会(別府市春木)/持続可能社会ヲ模索研究会(大分市)/電磁波・環境関西の会電磁波問題市民研究会/スカパー巨大アンテナに反対する住民の会/電磁波と健康影響を考えるタンポポプロジェクト(木曽町)/VOC-電磁波対策研究会/携帯電話基地局問題を知らせる会/くらしと電磁波を考える会/化学物質問題市民研究会/新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会/伊那谷の環境と健康を守る会/NPO法人市民科学研究室(順不同)
『電磁波研会報』(2012/3/18 75号)
原子力発電を推進する経済産業省から、原子力発電を規制する部門を分離するため、国は経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会などを再編し、環境省の外局として原子力規制庁を設置させる方針です。しかし、関連法案の国会審議入りのめどが立たず、政府が目指す4月1日の発足は極めて困難だと報道されています。
この原子力安全・保安院は、原子力だけでなく、電力設備についての電磁波規制も所管しています。経産省は電力業界の保護育成を担ってきたわけですが、その同じ経産省が電力業界が規制することの矛盾は、原発問題と同質です。
このため、原子力の規制を経産省から分離させるのを機に、電磁波の規制も産業推進を所管する官庁から分離するよう要求しようと「中継塔問題を考える九州ネットワーク」の宮嵜周さんが提起され、これに賛同する団体(当会を含む)の連名で要求書を総理大臣などにあてて提出しました。 要求書の内容は以下の通りです。
2012年3月5日
内閣総理大臣 様 経済産業大臣 様 総務大臣 様 環境大臣 様
電磁波の規制部門を推進部門から独立させるよう要求します
私たちは、電磁波被曝から健康を守るための活動を行っている市民団体です。
わが国において、商用周波数(50ヘルツ、60ヘルツ)を含む低周波電磁波の規制は経済産業省、携帯電話を含む高周波電磁波の規制は総務省と分かれています。
まず低周波電磁波の規制に係る問題ですが、現行では、経済産業省内の資源エネルギー庁原子力安全・保安院電力安全課の所管となっています。
原子力安全・保安院は、原子力関係のみでなく、電力、都市ガス、高圧ガス、液化石油ガス、火薬等々の施設や産業活動の規制や保安を行っていますし、資源工ネルギー庁は、エネルギー全体の安定供給政策や省エネルギー・新エネルギー(太陽光発電等)政策の推進を行う部門です。
つまり、商用周波数を含む低周波電磁波に関わる産業の推進部門と産業の安全と規制を司る部門が、同一省庁内に混在しているわけです。
これでは、国民生活の安全と国民の健康を守る立場を貫いて、産業活動への規制ができるはずがありません。
その端的な表れが、2011年3月31日の「磁界規制値の100μT(1000ミリガウス)から200μT(2000ミリガウス)への規制緩和(改悪)」です。
2007年6月にWHO(世界保健機関)が極低周波電磁波の「環境保健基準」(EHC)を発表しました。そこでは「慢性健康リスクとして、0,3μT(3ミリガウス)~0.4、μT(4ミリガウス)で小児白血病発症リスクが約2倍になる」として、予防的方策やリスクコミュニケーションの推進が提言されました。
これは電磁波による健康被害が懸念されているからに他なりません。
それなのに経済産業省は、磁界規制値を厳しくするのでなく反対に緩くする、という愚挙を行いました。
これは経済産業省が国民の健康を守るより産業活動の活性化により重点を置いていることを示しています。
すでに、原子力に関しては福島第一原発事故を契機に「規制部門の推進部門からの分離・独立」が実行されました。
電磁波に関しても、健康影響が広がらないうちに「規制部門の推進部門からの分離・独立」が急務と考え、当面、原子力同様に規制部門を経済産業省から環境省に変更することを要求します。
一方、高周波電磁波の規制に係る問題ですが、現行では、総務省内の総合通信基盤局電波部の所管で、携帯電話及び基地局に関しては電波環境部と同移動通信課が所管しています。
元々総合通信基盤局は旧郵政省の分野で、電気通信事業の「競争促進」を主たる目的としています。これでは高周波電磁波から国民の健康を守れるわけがありません。
いかに円滑に携帯電話等の普及が図られるかに最大の関心があるのですから、2011年5月31日に、IARC(国際がん研究機関)が高周波電磁波を「2B」(発がん可能性あり)と評価しました。
もはや高周波電磁波が「100%安全」といえる時代ではありません。
高周波電磁波の規制に関しては、総務省から環境省に所管を移すことが急務です。
なお、本要求書送達の日から30日以内に文書で回答するよう求めます。
1 商用周波数を含む低周波電磁波の規制部門(部局)を経済産業省から環境省に変更する
2 携帯電話を含む高周波電磁波の規制部門(部局)を総務省から環境省に変更する
3 規制値等の設定。変更にあたっては、国民の健康を第一とすること
4 規制値等の設定・変更にあたっては、リスクコミュニケーションの立場から、住民、環境市民団体、消費者団体、自治体等の利害関係者を協議に参加させること
中継塔問題を考える九州ネットワーク/いのちと環境を守る福岡ネットワーク(福岡県)/NPO法人環境と健康を考える会(福岡市)/携帯電話基地局建設反対住民の会(久留米市)/ドコモ基地局建設移転要望の会(久留米市三潴町)/携帯基地局撤去(移転)運動協議会(大村市)/秋津一町内九州セルラー鉄塔建設反対期成会(熊本市沼山津)/託麻の環境を守る会(熊本市御領)/携帯電話楡木中継鉄塔建設に反対する会(熊本市)/江津周辺携帯電話基地建設反対期成会(熊本市)/託麻西小に近接するソフトバンク基地局の撤去を求める会(熊本市)/別府の住環境と子どもの未来を守る会(別府市春木)/持続可能社会ヲ模索研究会(大分市)/電磁波・環境関西の会電磁波問題市民研究会/スカパー巨大アンテナに反対する住民の会/電磁波と健康影響を考えるタンポポプロジェクト(木曽町)/VOC-電磁波対策研究会/携帯電話基地局問題を知らせる会/くらしと電磁波を考える会/化学物質問題市民研究会/新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会/伊那谷の環境と健康を守る会/NPO法人市民科学研究室(順不同)
『電磁波研会報』(2012/3/18 75号)
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