
《月刊救援 ガサ・シリーズ 心がまえ 397》
☆ まさに「絶望の自衛隊」!人間破壊の現場 三宅勝久
『司法が凶器に変わるとき「東金女児殺害事件」の謎を追う』と題した同時代社本が印象的な三宅勝久。サラ金や建築会社へも果敢な取材を行っている。
彼は二十年も自衛隊ルポを続けてるんだ。しぶとい。
「悩める自衛官」、「自衛隊員が死んでいく」、「自衛隊員が泣いている」、これら花伝社。
「自衛隊という密室」は高文研。どれがどれだか、はっきり覚えてないけど執念だわ。
さて、このたび決定本なのかしら「絶望の自衛隊」が十二月に出た。
帯には、
「隠蔽と捏造の陰で横行する暴力、性犯罪、いじめ。そして自殺」
「理不尽に満ちた巨大組織・自衛隊から、苦しむ者たちの声が聞こえるか?」
「悪しき“伝統”と不条理がはびこる旧態依然の二五万人組織、自衛隊」
など呪詛の声。
帯の最後には、「ついに立ち上がった隊員たち、その渾身の告発を私たちはどう受け止めるべきか?」
冒頭に五ノ井里奈さんが取りあげられている。
自衛隊員として勤務中の二一年八月、男性隊員から集団的な性暴力を受けた。その他にも、日常的なセクハラ行為も絶えなかった。
被害届を出して強制わいせつの罪名での書類送検までは漕ぎつけたが、被疑者らは否認。証拠不十分として不起訴。傷心の彼女は離隊。ひどいじゃないの。
二二年六月、反撃だ。インターネットで実名を公表し、顔を出しての告発。たった一人での、果敢な闘いを始める。
局面は転換した。署名が始まり世論が動き、国会議員も支援に働いた。陸自と加害者は事実を認めて謝罪に追い込まれ、実行犯五人は懲戒免職。
訴えを受けたのに十分な調査をしなかったなどとして中隊長ら四人が停職などの懲戒処分。検察審査会が不起訴不当を議決。
ほかに十章に渡って様々なルポがある。
ダンスを愛した新隊員の死、
自殺寸前に追い詰められた現職海曹の告発、
陸自高等工科学校残酷物語、
虐待横行の防衛大学校、
証拠なしで自白迫る陸自警務隊の無法捜査、
就活失敗で入隊して知った人間破壊工場、
空自情報保全隊の幹部の自死、
靴磨きイジメと陸曹教育隊の闇、
代休を収らせない海白へ輸送艦「おおすみ」衝突事故の真相。
本書の出版後、里奈さんは横浜地裁に性暴力加害者の元隊員と国を被告として提訴。
絶望から希望をめざす彼女、彼らに拍手。
ガサ子ちゃん倶楽部
プログ「千恵子@詠む」
大山千恵子
『月刊 救援』(2023年3月10日)
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