☆ 「文明」の名による暴力を許すな!
万博反対実・藤岡
☆ 迷走する関西万博
2025年4月13日から大阪湾を埋め立てた夢洲(人工島)で大阪・関西万博が開催される。わずか6か月で解体・撤去するサーカス興行のような一過性イベントだ。
万博の主催は日本政府、運営は2025年国際博協会(国、大阪府・市と経済界等で構成)、名誉総裁は秋篠宮、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。
もうすぐ開催だが全く盛り上がりに欠ける。
前売入場券の販売目標1400万枚に対し、売上は737万枚(11月27日)で約半分。ほとんど賛同企業の購入で、個人の購入は低迷し、このままでは赤字だ。
日本世論調査会の10月調査で、万博に行きたいと思う人は全国で23%という低調さだ。
会場建設費は当初の2倍に膨れ上がり、警備費や防災対策費増も目立つ。
60か国を予定した海外独自パビリオンは47か国に減った。
10月でも未着工があり、内装未完の国も続出しそう。
3月に地中から発生したメタンガスが工事現場で爆発し、集団見学予定の学校は危険で行けないと抗議する。
☆ 「カジノ建設」が前提の維新政治による万博開催
誰のため、何のための国家事業か。「いのち輝く未来社会の実験場をつくる」というが、成長低迷と少子高齢の日本が何を目指すのか。
維新の橋下大阪府知事がカジノ建設を言い出したのは2009年で、14年に夢洲案が登場。松井知事が登場し万博誘致を表明したのは14年で、16年に夢洲案が登場。18年に国会でカジノ解禁法の統合型リゾート設立推進法(IR法)が成立し、23年に岸田首相が大阪設置を認定した。
18年末に博覧会国際事務局総会で関西万博が決定され、19年に日本国際博協会が設立された。
橋下や松井は「維新政治の成果」「大阪成長の起爆剤」と宣伝し、「大阪万博を成長の起爆剤とするなら、大阪・関西の持続的な経済成長のエンジンとなるのが統合型リゾート(カジノ)だ」と述べたように、最初からカジノありきの万博だった。
民営力ジノのためのインフラ(電気、ガス、水道、鉄道、道路など)整備は認められないが、国策事業の万博開催なら多額の税金も投入できる。万博で赤字が出ても税金で補填するのだ。
☆ 「『文明』の名による暴力を許すな!大阪・関西万博反対集会」開催
10月12日、「万博反対実行委員会」の主催で国労大阪会館において、同上集会と天満から梅田の繁華街まで抗議デモを実施した。
最初に司会者があいさつし
「関西万博が半年先に迫ってきた。しかし参加国は戦争や災害や経済悪化などで減り続けている。万国博覧会はもともと帝国主義国が国威の発揚を目指すもので、遺産としてエッフェル塔や博物館等が残った。ところが関西万博は、ごみの島に造る6か月限りの仮設施設群だ。『いのち輝く未来社会』は乏しい夢の寄せ集めで、夢洲にIRカジノを造ることが本命だ。インチキイベントをやめさせよう」
と訴えた。
次に集会実行委が「基調報告」をした。
万博の歴史は資本主義礼賛と略奪植民地の誇示そのものだ。1851年のロンドン第1回国際博覧会は「文明の進歩」を礼賛し、植民地支配を正当化した。「植民地展示」で住民の「生身の展示」をし「人間動物園」と呼ばれる民族差別をした。1903年の大阪天王寺での第5回内国勧業博覧会は「人類館」を設置し、アイヌ民族、琉球人、朝鮮人、台湾原住民などを「展示」した。中国人の抗議で事前に中止し、朝鮮人と琉球人も抗議を受けてとりやめた。植民地支配の誇示と、民族差別そのものだった。その後の国内博覧会でも「植民地展示」と「人種展示」がまかり通った。
来年の関西万博で政府は「万博を契機としたアイヌ民族の対外発信を推進するとともに民族共生象徴空間への誘客促進を図るため、伝統的なアイヌ舞踏を披露するイベントの開催や関連する工芸品のなどの展示をする」という。しかしアイヌ文化を動員する万博は、植民地主義そのものだ。2019年に「アイヌ施策推進法」を制定したが、先住権・自決権を認めず文化振興のみ推進するものだ。
また関西万博は「未来のための脱炭素技術の推進」を掲げるが、素材の多くは先住民族・被抑圧民族の土地から略奪してくるものだ。帝国主義と植民地主義の原点、IRカジノと一体の関西万博に反対しよう。
続いて原口剛さん(神戸大学教員)が講演した。
万博反対の問題は3つある。
第1は「人間に対する暴力」で、会場設置にかかわる都市の低所得者地域の追い出しや再開発(ジェントリフィケーション)による暴力の行使だ。
第2は「自然に対する暴力」で、森林破壊、山の切り崩し、地下掘削、海の埋立などの暴力の行使だ。
第3は「差別・排除」で、帝国主議と植民地主義による後進国差別、人種差別、民族排外主義などだ。
万博は帝国主義と植民地支配が展示の主要要素だった。回を重ねるごとに植民地展示は拡大し、現地住民を展示する「人間の展示」が出現した。
1877年に東京上野で第-回内国勧業博覧会が開催され3カ月間で45万人が来場した。1903年に大阪天王寺で第5回内国勧業博覧会が開催され5カ月間で435万人が来場し、飛躍的に拡大した。そして天王寺博で植民地パビリオンである「台湾館」と「人類館」が登場した。帝国主義において植民地主義と民族差別は不可欠の内容だった。
この天王寺博におけるジェントリフィケーションの暴力は「木賃宿街・長町」の立ち退きだった。万博会場へのメイン街道沿いに「木賃宿街・長町」があった。この貧民街の解体は以前から都市改造事業の一つだったが、博覧会開催により排除攻撃が頂点に達した。博覧会以降も解体・排除攻撃は続き「木賃宿街・長町」は「日本橋地域」に改変され、放逐された貧民は市域外にあった釜ヶ崎に新たなドヤ街を形成した。
加藤政洋は「木賃宿街・長町の大規模撤去はなかったが、道路沿いに大きな広告を設置して貧民街を隠し、その後に警察による『貧民街の掃討』『無頼漢狩』によって住民を追い払った」と書く。
私たちは何度でも博覧会の原点を語りなおさなければならない。
☆ 関西万博に反対し、「カジノ建設」を阻止しよう
関西万博は「SDGsの達成と、その未来を描きだす」というが、とんでもない。
①「SDGs」は「持続可能な開発目標」で、そもそも「開発」を前提とする矛盾したものだ
②会場の「夢洲」は大阪湾を産業廃棄物などで埋め立てた人工島で、大阪湾の自然生態系を破壊し回復不可能にするものだ
③万博のシンポル施設として木造リング状大屋根回廊を輸入木材を大量に使って造るが、6カ月で廃棄する。全ての建築資材も同様に廃棄する。
さらに様々な問題がある。
政府はパレスチナの地でジェノサイド(民族大虐殺)を続けるイスラエルを関西万博に招待した。イスラエルの大虐殺に抗議する「関西ガザ緊急アクション」は、これに反対して「イスラエル館を設置させるな」と抗議を続けている。
教育労働者や児童・生徒の親たちは大阪府・市が学校行事として児童・生徒を何度も万博見学に動員しようとしていることに反対し、教育委員会との交渉に立ち上がっている。
関西万博の名誉総裁は秋篠宮であり、開会式や会場に皇族が登場する。皇嗣が出席し、「日の丸」掲揚と「君が代」斉唱で国威発揚をめざす関西万博に反対し、夢洲で続く「賭博カジノ建設」を阻止しよう。
『労働者通信 NO.391』(2025年1月20日)
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