たんぽぽ舎です。【TMM:No3707】「メディア改革」連載第10回
◆ 参議院選挙で仕事を放棄したメディア
人民の立場に立って権力を監視すべきジャーナリズムが劣化している
◆ 人民の立場に立って権力を監視すべきジャーナリズムが劣化している
大日本帝国の崩壊から3年後に生まれた私は、日本国憲法(1947年施行)の下で、民主主義教育を受けて育った。共同通信記者でインドネシアに3年半滞在した時以外、ほとんどの選挙で投票してきた。7月21日投票の参議院選挙の投票率が戦後ワースト2の48.8%だった。
有権者の過半数が政治参加を怠ったのは、マスメディア、教育機関、労働組合がこの国で機能していないからだ。
特に、社会の問題を掘り起こし、議題を設定し、その解決策を提示すると共に、人民の立場に立って権力を監視すべきジャーナリズムが劣化していることが問題だ。
特にNHKを含めテレビ各局が、人民の生活が困窮化する状況を伝えず、モリ・カケ疑獄、消費増税、辺野古新基地建設強行、米国からの戦闘機・イージスアショアなどのバカ買いなど悪政について主体的に報道しないことの罪は深い。
テレビの情報番組は、芸能ネタ、事件・事故の報道に終始して、参議院選挙についての報道が極端に少なかった。
これまでの国政選挙でも、これほど選挙報道をサボったことはなかった。政治に無関心な大衆を生み出したのはテレビとテレビに出るコメンテーターだ。
2015年11月20日、自民党は萩生田光一・自民党筆頭副幹事長らは在京テレビキー局に「公平中立ならびに公正の確保」を求める文書を送り、その後、高市早苗総務相らが放送法にある電波停止の脅しをかけた。
安倍晋三首相は御用記者たちと会食を重ねる一方、政府批判をおこなうキャスターを降板させ、報道界から反骨精神は消えた。
4月以降の新元号、天皇交代に関する報道で皇室を政治利用し、トランプ米大統領訪日、大阪G20サミットなどを派手に扱い、「外交の安倍」の虚像を宣伝してきた。
安倍首相は7月23日夜、東京・赤坂のイタリアン・レストランで、田崎史郎・元時事通信論説委員、曽我豪朝日新聞論説委員ら常連の“鮨友”7人と約2時間28分にわたって会食している。
「贈収賄の疑いがある飲食」(高山佳代子京都大学教授)なのに、「マスコミ経営者の会食はダメだが、記者ならいい。私も呼ばれたら参加して取材する」(青木理氏)などと生ぬるいことを言う知識人が多いので、安倍官邸はやりたい放題だ。
◆ 消費増税問題の取材・報道を控えたキシャクラブメディア
キシャクラブメディアが消費税の8%から10%の引き上げに関して取材・報道を控えたのは、「食品と新聞に軽減税率」があるからだろう。
新聞各社は消費税問題を論じない。新聞協会が軽減税率適用を陳情してきたからだ。麻生太郎財務相は「新聞は食品と同じように生活必需品だ」と言ってきたが、全く説得力がない。
日本の民放局は新聞社が所有しており、テレビも今年10月から、新聞に軽減税率の対象になることを伝えなかった。私の取材では、雑誌、書籍も来年、軽減税率の対象になる密約があるので、週刊誌もほとんど取り上げない。
政府は参議院選挙告示の3日前の7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を強行。強制連行・徴用工をめぐる韓国への報復措置だが、テレビでは政府決定を批判するコメンテーターはいない。テレビに出る自称専門家、元韓国大使らは文在寅大統領への個人攻撃を繰り返している。
「1965年の日韓基本条約で解決済みだ」「個人請求権はない」というウソが連日ふりまかれ、安倍総裁は7月20日、東京・秋葉原の演説で「毅然とした外交で、日本の国益を守る」と繰り返した。世論調査では、70%前後の市民が政府の貿易戦争布告を支持している。
選挙中の終盤にさしかかった7月19日、河野太郎外相は南官杓・駐日韓国大使を外務省に呼び、「きわめて無礼だ」などの暴言を吐いた。河野氏は、日本が加害者であることを忘却している。
◆ 「れいわ新選組」の旋風を取り上げなかった大手マスコミ
今回の選挙では、山本太郎氏が4月に一人でつくった「れいわ新選組」が4億円近い寄付を集め、SNSと街頭行動だけで旋風を巻き起こした。
ところが、選挙期間中、一部テレビで数分紹介しただけで、NHK、TBSなどは全く取り上げなかった。新聞も朝日新聞、東京新聞が社会現象として記事にしただけだった。
報道界は選挙中に特定政党だけを取り上げにくいと言い訳しているが、古くは新自由クラブ、細川新党、最近では小池旋風を大きく報道したではないか。
山本太郎氏は街頭演説で、マスコミ批判を欠かさず、「新聞に軽減税率」の理不尽さも取り上げていた。
れいわ新選組が比例区で4%を超える得票で2議席を獲得し、政党要件をクリアした後も、政党として怪しいN国党と並べて報じるなどアンフェアな報道が目立っている。この2つの政党は全く違う。
私は7月20日に東京・新橋駅SL広場でのれいわ新選組の集会を取材した。候補者10人が勢揃いした。中でも、沖縄の創価学会壮年部の野原ヨシマサ候補(東京選挙区)の公明党批判はすさまじかった。
「安保法制、共謀罪に賛成した公明党をつぶそう。創価学会の聖典である『御書』に日蓮大聖人の「如かず彼の万祈を修せんよりは此の一凶を禁ぜんには」という言葉がある。根本悪を取り除けという教えだが、根本悪は今の公明党とそれを支援する創価学会執行部だ。池田大作名誉会長を追放して学会をハイジャックした原田会長らを総退陣させなければ、この社会の混乱は止まない」
山口那津男公明党代表に挑戦した野原氏のこの発言はニュースだと思ったが、どこも報じていない。
放送法第4条は政治的公平と共に、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を求めている。
公明党委員長と同じ選挙区で、辺野古基地反対を訴えて立候補した野原氏の闘いを伝えなかったキシャクラブメディアの社員記者の罪は重い。
◆ 参議院選挙で仕事を放棄したメディア
人民の立場に立って権力を監視すべきジャーナリズムが劣化している
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◆ 人民の立場に立って権力を監視すべきジャーナリズムが劣化している
大日本帝国の崩壊から3年後に生まれた私は、日本国憲法(1947年施行)の下で、民主主義教育を受けて育った。共同通信記者でインドネシアに3年半滞在した時以外、ほとんどの選挙で投票してきた。7月21日投票の参議院選挙の投票率が戦後ワースト2の48.8%だった。
有権者の過半数が政治参加を怠ったのは、マスメディア、教育機関、労働組合がこの国で機能していないからだ。
特に、社会の問題を掘り起こし、議題を設定し、その解決策を提示すると共に、人民の立場に立って権力を監視すべきジャーナリズムが劣化していることが問題だ。
特にNHKを含めテレビ各局が、人民の生活が困窮化する状況を伝えず、モリ・カケ疑獄、消費増税、辺野古新基地建設強行、米国からの戦闘機・イージスアショアなどのバカ買いなど悪政について主体的に報道しないことの罪は深い。
テレビの情報番組は、芸能ネタ、事件・事故の報道に終始して、参議院選挙についての報道が極端に少なかった。
これまでの国政選挙でも、これほど選挙報道をサボったことはなかった。政治に無関心な大衆を生み出したのはテレビとテレビに出るコメンテーターだ。
2015年11月20日、自民党は萩生田光一・自民党筆頭副幹事長らは在京テレビキー局に「公平中立ならびに公正の確保」を求める文書を送り、その後、高市早苗総務相らが放送法にある電波停止の脅しをかけた。
安倍晋三首相は御用記者たちと会食を重ねる一方、政府批判をおこなうキャスターを降板させ、報道界から反骨精神は消えた。
4月以降の新元号、天皇交代に関する報道で皇室を政治利用し、トランプ米大統領訪日、大阪G20サミットなどを派手に扱い、「外交の安倍」の虚像を宣伝してきた。
安倍首相は7月23日夜、東京・赤坂のイタリアン・レストランで、田崎史郎・元時事通信論説委員、曽我豪朝日新聞論説委員ら常連の“鮨友”7人と約2時間28分にわたって会食している。
「贈収賄の疑いがある飲食」(高山佳代子京都大学教授)なのに、「マスコミ経営者の会食はダメだが、記者ならいい。私も呼ばれたら参加して取材する」(青木理氏)などと生ぬるいことを言う知識人が多いので、安倍官邸はやりたい放題だ。
◆ 消費増税問題の取材・報道を控えたキシャクラブメディア
キシャクラブメディアが消費税の8%から10%の引き上げに関して取材・報道を控えたのは、「食品と新聞に軽減税率」があるからだろう。
新聞各社は消費税問題を論じない。新聞協会が軽減税率適用を陳情してきたからだ。麻生太郎財務相は「新聞は食品と同じように生活必需品だ」と言ってきたが、全く説得力がない。
日本の民放局は新聞社が所有しており、テレビも今年10月から、新聞に軽減税率の対象になることを伝えなかった。私の取材では、雑誌、書籍も来年、軽減税率の対象になる密約があるので、週刊誌もほとんど取り上げない。
政府は参議院選挙告示の3日前の7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を強行。強制連行・徴用工をめぐる韓国への報復措置だが、テレビでは政府決定を批判するコメンテーターはいない。テレビに出る自称専門家、元韓国大使らは文在寅大統領への個人攻撃を繰り返している。
「1965年の日韓基本条約で解決済みだ」「個人請求権はない」というウソが連日ふりまかれ、安倍総裁は7月20日、東京・秋葉原の演説で「毅然とした外交で、日本の国益を守る」と繰り返した。世論調査では、70%前後の市民が政府の貿易戦争布告を支持している。
選挙中の終盤にさしかかった7月19日、河野太郎外相は南官杓・駐日韓国大使を外務省に呼び、「きわめて無礼だ」などの暴言を吐いた。河野氏は、日本が加害者であることを忘却している。
◆ 「れいわ新選組」の旋風を取り上げなかった大手マスコミ
今回の選挙では、山本太郎氏が4月に一人でつくった「れいわ新選組」が4億円近い寄付を集め、SNSと街頭行動だけで旋風を巻き起こした。
ところが、選挙期間中、一部テレビで数分紹介しただけで、NHK、TBSなどは全く取り上げなかった。新聞も朝日新聞、東京新聞が社会現象として記事にしただけだった。
報道界は選挙中に特定政党だけを取り上げにくいと言い訳しているが、古くは新自由クラブ、細川新党、最近では小池旋風を大きく報道したではないか。
山本太郎氏は街頭演説で、マスコミ批判を欠かさず、「新聞に軽減税率」の理不尽さも取り上げていた。
れいわ新選組が比例区で4%を超える得票で2議席を獲得し、政党要件をクリアした後も、政党として怪しいN国党と並べて報じるなどアンフェアな報道が目立っている。この2つの政党は全く違う。
私は7月20日に東京・新橋駅SL広場でのれいわ新選組の集会を取材した。候補者10人が勢揃いした。中でも、沖縄の創価学会壮年部の野原ヨシマサ候補(東京選挙区)の公明党批判はすさまじかった。
「安保法制、共謀罪に賛成した公明党をつぶそう。創価学会の聖典である『御書』に日蓮大聖人の「如かず彼の万祈を修せんよりは此の一凶を禁ぜんには」という言葉がある。根本悪を取り除けという教えだが、根本悪は今の公明党とそれを支援する創価学会執行部だ。池田大作名誉会長を追放して学会をハイジャックした原田会長らを総退陣させなければ、この社会の混乱は止まない」
山口那津男公明党代表に挑戦した野原氏のこの発言はニュースだと思ったが、どこも報じていない。
放送法第4条は政治的公平と共に、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を求めている。
公明党委員長と同じ選挙区で、辺野古基地反対を訴えて立候補した野原氏の闘いを伝えなかったキシャクラブメディアの社員記者の罪は重い。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます