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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

子どもの権利条約 日の丸・君が代問題

2010年06月01日 | 人権
 《子どもの権利条約カウンターレポート(DCI)》から VIII-11
 ◎ 日の丸・君が代問題

 1 はじめに

 1999年に国旗国歌法が制定され、「日の丸」を国旗とし、「君が代」を国歌とする事が定められた。日の丸と君が代は、第2次世界大戦中「皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた」という歴史的事情があり、これらを国旗・国歌とすることについては、国民の間でも様々な意見の相違がある。そのため、同法制定時の政府答弁においても、日の丸・君が代への敬意の表明を一律に国民に「強制はしない」ことが言明された。
 しかし、同法制定以降、国は、学習指導要領を通じて、学校現場における国旗の掲揚および国歌の斉唱を指示するようになる。これを受けた地方教育委員会は、東京都で先行しているように、その徹底を校長に対し通知・通達し、校長は職務命令の形で教職員に対して国旗に正対しながらの国歌斉唱を強制する。結果、様々な理由によってこれに従えない教職員が、毎年懲戒処分を受ける事態になっている(表)。
 そして、教職員への職務命令には、子どもが国歌斉唱するよう「指導」(強制)する事が含まれており、結果、子どもの思想・良心の自由、意見表明権、子どもと大人の教育的関係による子どもの成長発達権が侵害される事態となっている。
 以下に、東京都を事例に国旗掲揚・国歌斉唱が教師と子どもに強制されるに至るまでの経緯、及び、その事による子どもの権利侵害の実態について報告する。
 2 東京都における日の丸・君が代の強制
 (1)教職員に対する強制

 国旗国歌法が制定された1999年以降、東京都教育委員会(以下、都教委)は、都立学校の卒業式・入学式において国旗掲揚と国歌斉唱を実施せよとの指導を行うようになった。ただし、当初は教職員に対する命令や処分は行われていなかった。しかし、都教委が、2003年10月に「入学式、卒業式等における国旗・国歌の適正な実施について(通達)」(「10・23通達」)を発して以降、状況は激変する。この通達は、各学校長に対して以下のように入学式・卒業式を行うよう通達するものである。
 ①式典会場の舞台壇上正面に国旗を掲揚すること
 ②教職員は国旗に向かって起立して国歌斉唱を行うこと
 ③同通達に基づく校長の職務命令に従わない教職員は処分を受けること
 この通達以降、都教委は、3月の卒業式までの毎月、校長会や個別の電話・FAXなどで「10.23通達」の実施に関して全教職員に個別に職務命令を発するよう、校長に強い指導を行うようになる。さらに都教委は、2004年3月と4月、全ての学校に都教委職員を配置し、入学式・卒業式の実施状況を監視した。結果、卒業式で君が代斉唱時に起立しなかった事などを理由に、206名の教職員が処分される事になる。その後も毎年職務命令は出され続け、これに従わない事を理由にした戒告・減給・停職など被処分者の合計は、2009年4月までの間に延べ423名にのぼっている。
 (2)子どもに対する強制
 上記のように教職員に対する国旗掲揚・国歌斉唱の強制が継続的に行われているが、次第に都教委は、教職員への命令を通じて子どもに対する国歌斉唱の強制を徹底するようになる。その端緒は、2004年3月11日「生徒に不起立を促すなどの不適切な指導を行わないこと」(通知)にある。この通知によって2004年5月25日、都教委は、「教師の指導不足」が原因で国歌斉唱時に起立しなかった生徒がいたと認定し、67人の教職員を「指導」する。
 さらに都教委は、子どもへの強制をより徹底させるため、2006年3月13日「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通達)」を発し、生徒の不起立を「教職員の不適切な指導」に直結させて教職員を処分する方針を示した。結果、教師が生徒を起立させ、国歌斉唱させる事が徹底されるようになる。例えば、ある学校では、「起立しない生徒がいる場合は、再度繰り返し口頭で起立を促し指導する。着席する生徒がいる場合、管理職が当該生徒を指導する」と大勢の人が見ている前で、生徒に圧力をかける「指導方針」が表明されている。
 他方、自らが起立しない事によって教師が処分されてしまうのは堪え難いという理由から、自分の思想・良心に反して起立したという生徒もいる。教師・子どもに対する国歌斉唱の強制について取材したテレビ局のインタビューに対し、ある高校生は「先生が処分されるなら私は立ちます」と語っている。また、ある都立高校の卒業式では卒業生の一人がマイクをとり、「先生をこれ以上いじめないでください」と都教委に向かって発言している。
 これらの子どもの言葉は、子どもと教師の信頼関係を逆手にとって、子どもと教師双方に国旗掲揚・国歌斉唱が強制される構図を如実に表している。このように都教委(通達)→校長(職務命令)→教師(指導)→子どもという形式による教職員と子どもに対する国旗掲揚・国歌斉唱の強制が、子どもの思想・良心の自由、子どもと教師の信頼関係を破壊している事態を生み出している。

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