パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 根津公子の都教委傍聴記(2024年2月1日)

2024年02月03日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

 ★ これまでの都教委事務方の提案・施策が結果を出さないのはなぜ?
   ~その総括なくして次の施策を出しても意味はない (レイバーネット日本)

 今日の議題は直接教育に関係しない設置規則の改正等の議題が沢山ありました。それらについては割愛し、教育に関する議題について以下報告します。

①来年度から5年間にわたる「東京都教育ビジョン(第5次)(案)」について、
②「来年度教育庁所管事業予算・職員定数等について」

 ①は国が定めた「教育振興計画」を斟酌し、今後5年間の施策展開の方向性を示した、全ての教育関係者の「羅針盤」とのこと。
 「誰一人取り残さず、すべての子供(ママ 子ども)が将来への希望を持って自ら伸び、育つ教育」をめざし、「自ら未来を切り拓く力の育成」「誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実」「子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化」の3つの柱を立て、特に「教育のインクルージョンの推進、困難を抱える子供へのサポートの充実等の内容の強化」を設定すると言います。

 柱の1つめ、「自ら未来を切り拓く力の育成」では、これまで都教委が施策の目玉としてきた「Society5.0時代を切り拓くイノベーション(革新、変革 筆者加筆)人材を育成する教育」や「グローバルに活躍する人材を育成する教育」をあげ、前者では企業や大学との連携等を、後者では海外留学の推進や中学生からも問題視されているスピーキングテストの実施とその結果を高校入学者選抜に使うことを挙げています。
 当事者である中学生の声をも無視した施策は、独裁教育委員会そのもの、言葉もありません。

 柱の2つめ、「誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実」は、都教委が最も力を入れると言いますが、「健常児」と「障害児」を分ける姿勢に変化はありません。
 2022年9月、国連の権利委員会が日本の障害者に対する取組に対する総括所見と改善勧告を出しました。この中で教育に関しては「分離された特別な教育をやめること」「すべての障害児が普通学校に行けるよう保障すること」を勧告しましたが、永岡文相は「特別支援教育を中止することは考えていない」と発言し、勧告に従わない意向を示したことは記憶に新しいと思います。

 都教委も同じ姿勢で、②の「来年度教育庁所管事業予算・職員定数等について」で、「特別支援学校への就学が適切と判定された児童・生徒がより身近な区市町村立小中学校に就学した場合及び発達障害等のある児童・生徒が通常の学校で学ぶ場合に、支援員の配置を補助するとともに、特別支援教育コーディネーターを補助する人材等の配置について区市町村を支援する(一部新規)」を挙げ、予算を計上しています。

 「特別支援学校への就学が適切と判定された児童・生徒」と都教委が言うとはなんてことかと怒りを覚えます。
 学校を選ぶ権利は、教育の主体である子どもたち自身の権利です。なのに、都教委がこの姿勢を変えなければ、「特別支援学校への就学が適切」なのに普通の学校に就学した子どもは「健常児」と言われる子どもや保護者の多くには“わがまま”と映ります。となれば、いじめが起きて当然です。さらに、教員の大半も同じように考え、教員による“いじめ”も起きています。
 私も現職のときに見聞きしました。文科省も都教委もその点について全く考えていません。

 「不登校児童・生徒への支援の充実」では、チャレンジクラス(東京型不登校特例校:校内分教室)の設置、支援員の配置」や「スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等を活用した相談体制の強化」を挙げます。
 もう何年にも及び、不登校やいじめ防止の施策を都教委は掲げてきましたが、改善の方向に向かっていません(年間30日以上欠席の中学生は6.7%)。
 改善されないのに、なぜ改善されないのかについて検討がされたとは聞きません。学校に「居場所」がないから学校に行けなくなるのですから、居場所がなくなるのはなぜか、居場所をつくるにはどうすればいいかを考えていけば、子どもたちと向き合うべき教員の多忙化や教員の向き合い方の質が問われます。
 チャレンジクラスやスクールカウンセラー等の増員では問題の解決に向かいません。

 柱の3つめ、「子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化」では、「教員の負担軽減と教育の質の向上を図るため、小学校教科担任制や(授業)時数軽減、外部人材の活用等の推進」等をあげます。
 東京の全教職員数58,136人中、昨年度の病気休職者は997人(1,7%)、休職者のうちメンタルヘルス不調は824人(1,4%)という現実。
 これは、子どもたちに居場所がないと同じように、教員にも働く意欲を失わせることが多いということです。
 支配管理され、授業をつくる喜びや子どもたちとじっくり向き合うことを奪われ、ストレスで病気になったり、採用1年で退職してしまうのです。
 かつてのように職員皆で話し合い、学校をつくっていけば、教員たちは互いに学び合うことができ、仕事の質を高めることができます。病気や退職とはならないはずです。

 都教委指導部の管理職の多くは、指導主事をはじめ元教員だと思うのですが、机上の空論で施策を策定しているとしか私には思えません。また、不登校対策などの施策を出しても全く改善されないのはなぜか、施策が間違っているのではないかと検討がされていないのではないかと思います。

 なお、2月1日から30日間、パブリックコメントを募り、3月末に教育委員会で決定・公表とのことです。案は都教委のHPに掲載されています。

②「来年度教育庁所管事業予算・職員定数等について」

 教育費の総予算は「東京都教育ビジョン(第5次)(案)」に基づき、今年度に比べ12,6%増が計上されました。

③「東京都学校教育情報化推進計画(案)」について

 これも国の計画を踏まえ、また、「東京都教育ビジョン(第5次)(案)」に則ったもの。「すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び、育つ~デジタルの力を活かして、一人ひとりの力を伸ばしていく~」ことを目指し、「『知識習得型』から『価値創造・問題解決型』の学びへの転換」やデジタル教材の活用、そのための教員研修等をあげます。

 これに対して「デジタル以外での学びを忘れないでほしい」「研修でさらに教員が忙しくならないよう削るべきは削る」といった発言が教育委員からありました。もちろん、この計画案に賛成の立場での発言でしたが。

④都立新国際高校(仮称)開校に向けた専門家会議」議論のとりまとめについて

 「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」(2019年)で新国際高校の設置を決定し、「グローバル人材育成に向けた新たな高校」を目標に今年度4回の専門家会議を開き、その議論のとりまとめをしたということです。
 「育成を目指す生徒像」は「豊かな教養と論理的思考、総合的な語学力を基礎として、グローバル化する社会の中で、主体的に学び続けながら行動し、自分の将来を切り拓く生徒」「社会の持続的は発展に向け、多様な価値観を受容しながら協働して社会の課題解決に取り組み、新たな価値を創出することができる生徒」「自立した人間として前に踏み出す強い意志、高いコミュニケーション能力、柔軟性や創造力を有し、世界をけん引していく生徒」と言い、その生徒像を実現するための教育活動や取組みを挙げています。

 都教委は20年前から「君が代」起立(伴奏)を拒否する教員を職務命令違反で処分し、生徒たちに「日の丸・君が代」の尊重を刷り込んでいながら、専門家会議の言う「多様な価値観の受容」をいかに解釈するのでしょう。
 国際社会から見れば、国連の勧告(ILO・ユネスコ(セアート)勧告及び自由権規約委員会の総括所見)が示すように、起立しないことは「混乱を生まない市民的自由の範囲」であり、「自由を制約するいかなる措置も控えるべき」です。新国際高校の入学式で「日の丸・君が代」の強制・刷り込みをするか否かを注視しようと思います。

 それにしても、都教委はグローバル人材育成には多額の金をかける一方、「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って自ら伸び、育つ教育」と言いながら、夜間定時制高校を廃校にする。夜間定時制高校を希望する生徒は、「誰一人」に入らないということなのかと思ってしまいます。都教委の「人権意識の低さ」ゆえの施策なのですね。

⑤教員確保策の充実について

 教員志望者が少ないことやそのために今年度、大学3年生で前倒し選考をしたことは、ご存じかと思います。来年度の取組として、ア、応募人員の増加、イ、休職や採用1年未満での離職をくい止めるための教員支援、ウ、教員の負担軽減の取組が出されました。

 ア、では、大学3年生の選考に加え、「キャリア採用」枠を作り、即戦力となる中堅教員を確保する、教職の魅力とリアルを知ることができるイベント、「TOKYO教育Festa!」の開催、教育実習生の受入環境の充実等をあげます。

 イ、では、アウトリーチ型相談事業の実施(小学校の全新採教員・病休復職者等を対象に臨床心理士等が面談)、SNS相談窓口の開設、「若手教員等とのコミュニケーションの手引き」の作成を、

 ウ、では、小学校における教科担任制の推進、エデュケーション・アシスタントの配置(小学校1~3学年における副担任相当の業務を担う)などをあげます。

 しかし、この取組で教員確保ができるとは私には思えません。教員の仕事にやりがいがある、楽しいと思えるようになるのは、①で述べたように、都教委が支配管理を止め、教員・学校に学校づくりを任せることです。

 

***** *****

 補足ですが、昨1月31日に「いじめ問題対策委員会」が開催され、傍聴できることがわかり、傍聴しました。その報告をします。

 都教委が学識経験者や心理士、警察などの肩書を持つ10人の委員に委嘱していじめ問題対策委員会。はじめに、①いじめ問題に関する現状や課題について ②子ども自身がいじめについて考え行動する取組について 都教委指導部から報告がありました。

 ①昨年度のいじめ件数は67000余、一昨年度より10%増加。いじめが増加したのではなく、小さないじめも学校側が認知したということ。いじめの解消率は77%。いじめ発見は「アンケート調査で」が63,7%、「本人の訴えで」が14,9%、「学級担任が発見」が10%(小学校)。「重大ないじめ」は48件。

 今年度(来年度? 画面での資料で、再確認できず)はカウンセラーの配置、年3回以上のアンケート実施、相談ほっとINEのほかに、いじめ人材サポーターを配置する。サポーターには退職校長を充て、若い教員に指導助言をするとのこと。

 ②高校生6校7名で構成する高校生いじめ防止協議会がwebアンケートを実施し結果の共有、分析をした。高校生の分析がよかった(委員の皆さんは高校生の話し合いをユーチューブで見たとのこと。傍聴した私は見ていないのでまったくわからず)。

 報告を受けて、各委員の発言となりました。いじめ問題対策委員会を2014年度から始めて今なお、いじめやいじめによる不登校が少なくならない現実を委員たちはどう分析するのかと聞いていたところ、一人の委員が「学校に居場所がないから不登校になる。そこを考えたい」と発言。しかし、この発言をめぐってやりとりはされず、一人一言の発言で終了となってしまいました。

 はじめての傍聴なので全体像は見えませんが、この委員会の発言が提言にどのようにまとめられ、都教委の施策に反映するのか、心許なく感じてしまいました。


『レイバーネット日本』(2024-02-02)
http://www.labornetjp.org/news/2024/0201nezu


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