◆ 前夜の祝杯 (東京新聞【本音のコラム】)
サッカーW杯決勝戦の高揚もあって、もう忘れられているかもしれない。が、わたしはまだ七人一挙死刑断行にこだわっている。
七人にとどまって十三人全員でなかったのは、それではジェノサイド、国際世論に反する、との意見もあったからとか。七人でも大量処刑に変わりはない。
死刑執行命令書に署名した上川陽子法相が、処刑前夜の五日、東京赤坂議員宿舎のパーティーで安倍首相のそばで、にこやかに笑いながら親指を立てていた。明朝七人が絞首台からぶら下がると知らない訳はない。
死刑執行命令書へのサインを拒んで、任期を全うする法相は過去何人かいた。拒否しなかったにせよ、サインした法相は自分の指をみつめ、死者の冥福を祈っている、と想像したりしていたがそれは感傷にすぎない。
百七年前の一月、大逆事件で二十四名の死刑判決(十二人は減刑)を出したあと、
今は首相の取り巻き議員が、自慢げにツイッターに投稿する。
なにがあっても世の中変わらない、もやもやして苛立(いらだ)たしい。未来もよく見えない。その閉塞(へいそく)感と悪いやつはきっぱり抹殺する快哉(かいさい)が、つながっているなら、怖い世の中だ。(ルポライター)
『東京新聞』(2018年7月17日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
サッカーW杯決勝戦の高揚もあって、もう忘れられているかもしれない。が、わたしはまだ七人一挙死刑断行にこだわっている。
七人にとどまって十三人全員でなかったのは、それではジェノサイド、国際世論に反する、との意見もあったからとか。七人でも大量処刑に変わりはない。
死刑執行命令書に署名した上川陽子法相が、処刑前夜の五日、東京赤坂議員宿舎のパーティーで安倍首相のそばで、にこやかに笑いながら親指を立てていた。明朝七人が絞首台からぶら下がると知らない訳はない。
死刑執行命令書へのサインを拒んで、任期を全うする法相は過去何人かいた。拒否しなかったにせよ、サインした法相は自分の指をみつめ、死者の冥福を祈っている、と想像したりしていたがそれは感傷にすぎない。
百七年前の一月、大逆事件で二十四名の死刑判決(十二人は減刑)を出したあと、
「法官等は横田大審院長の室に集まり三鞭(シャンパン)の盃を挙げ書記給仕に至る迄茶菓の饗応(きょうおう)を受けたり」とは、「東京朝日新聞」松崎天民記者のスクープである。
今は首相の取り巻き議員が、自慢げにツイッターに投稿する。
なにがあっても世の中変わらない、もやもやして苛立(いらだ)たしい。未来もよく見えない。その閉塞(へいそく)感と悪いやつはきっぱり抹殺する快哉(かいさい)が、つながっているなら、怖い世の中だ。(ルポライター)
『東京新聞』(2018年7月17日【本音のコラム】)
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