「良い子のみんなは真似してはいけませんよ」
というお約束のセリフを言いつつフルートで素振りの真似事をするのが私のレクチャーの最初の一つになっている。
もちろん、「真似してはいけません」はオフィシャル向けで、実際にやっていただくことにしている。
頭部管の歌口を避けてつなぎ目の樽の部分を持てば、それほど害はない。
以前、他からお耳に入るよりは、と師匠・植村泰一先生に自己申告したことがある。
「すみません。先生。こんなことや、こんなことをしています・・」
素振りだけでなく、杖に見立てての下段抜き、カヤックのオールに見立てた構え方等などもやっていて、そのどれもが、私の奏法の原理になっているのだ。
先生は、元々日頃から「どんな姿勢だっていいんだよ。結果がよければ、逆立ちして吹いたってかまわない!」
と仰っていらっしゃるので、まあ、大丈夫だろうとは思ったけれど、要は
「奏法は目的でなく、あくまでも手段にすぎない」
ということで徹底していらっしゃるのだろう。
「楽器に障りのないように気を使ってはいますが、きっとロットはびっくりしてますよねえ・・」
「ハハ、案外喜んでたりして!」
この言葉に勢いを得て、さらに私独特の幾分妙なロットの愛し方は加速したのだった。
小さな子供がお父さんにブーンと振り回されて「ワ~イ!」と喜ぶように、ロットも喜んでくれているといいなと思う。
ついでに甲野先生には太刀祓いなどもしていただいている。
はじめましての日本刀にロット達も、さぞかし驚いたことだろう。
前書きが長くなってしまいました。
以下本題。
前回の音楽家講座で、甲野先生がチェロ奏者にお教えしたクロールのような腕の動き、そして龍笛奏者のご指導の折に思いつかれた虎拉ぎの応用によって、私のフルートも大きく変化することになったことは以前書いた。
それまで甘かった脇が以前よりも使えるようになったのだ。
その後、この二つを組み合わせて使うようになった。
クロールの後で虎拉ぎ。
そして、2日前の水曜日。
いつものようにこの動きをやってからフルートを構えた時に、左腕を動かすのが突然嫌になった。
それまでは、背中から腕のテンションを作るためにも若干張って持ち上げていたのだけれど、もうそのままでいいじゃないか、せっかく虎拉ぎによる落とした肩があるのだから、と。
もちろん、そのままでは首筋に負荷がかかるのだが、そこを抜刀のように左半身を後ろに下げて身体を左右に開くことで、解決。
つまり、それまでは、腕を使ってフルートを構えようとしていたのを腕はそのままで、体幹やお尻の動きによって笛が吹けるところに移動する、ということとなった。
結果、今までも相当斜めだったのが、さらに「縦笛?」というくらいの感覚に。
つまりは、冒頭の「素振り」の恰好に限りなく近い状態となったのでした。
でも、そこからもたらされる響きはかつて味わったことがない種類のものだった。
「吹き過ぎに注意しましょう」ではなく、そもそも「吹いたら鳴らない」のだ。
他の誰かが勝手に何かしてくれている、という感じで、さらに実感は遠ざかる。
特筆すべき変化は、左手が身体の中心部にあるということ。
それまでは、まだまだ「横笛」と思っていたらしく左手は中心線を越えて右胸付近まで行っていた。
最早、どうやって吹いて、どうして音が鳴っているのかよくわからない状態に。
でも、これは私だけが可能というのではなく、生徒さん全員がすぐにその場で出来た。
「・・先生!凄いですけれど、どうしてこれで音が出るんでしょうか?」
「考えちゃだめ!(笑)とりあえず、笛と身体にまかせてみてください」
可動域の問題に関しては、かなり初期の頃から気にしていたつもりだった。
でも、左手に関しては、やはり通常のイメージがしみ込んでいて、今だって、フっとエアフルートの恰好をすると右側に行ってしまう。
でも、試しにそこで指をヒラヒラと動かしてみると良い。
一番よく動くのは真ん中だ。
面白いことに、クロール&虎拉ぎとその維持の動きをやった後の場所が丁度そこになる。
指だけでなく呼吸も首筋もさらにラクになる。
とたんに、スっと体幹がしっかりと整うと感じるのは気のせいではない。
お互い軽く押し合ってみるとその変化はアリアリと判る。
面白いのは、この格好のまま45度自分から下を見て時計回りに移動し、それを正面から見てもらうとちゃんと横に構えているように見えること。
3次元の情報を2次元で認識しまう時の勘違いというのはこれに限らず多々あるのだろうけれど、ちょっと愕然。
というお約束のセリフを言いつつフルートで素振りの真似事をするのが私のレクチャーの最初の一つになっている。
もちろん、「真似してはいけません」はオフィシャル向けで、実際にやっていただくことにしている。
頭部管の歌口を避けてつなぎ目の樽の部分を持てば、それほど害はない。
以前、他からお耳に入るよりは、と師匠・植村泰一先生に自己申告したことがある。
「すみません。先生。こんなことや、こんなことをしています・・」
素振りだけでなく、杖に見立てての下段抜き、カヤックのオールに見立てた構え方等などもやっていて、そのどれもが、私の奏法の原理になっているのだ。
先生は、元々日頃から「どんな姿勢だっていいんだよ。結果がよければ、逆立ちして吹いたってかまわない!」
と仰っていらっしゃるので、まあ、大丈夫だろうとは思ったけれど、要は
「奏法は目的でなく、あくまでも手段にすぎない」
ということで徹底していらっしゃるのだろう。
「楽器に障りのないように気を使ってはいますが、きっとロットはびっくりしてますよねえ・・」
「ハハ、案外喜んでたりして!」
この言葉に勢いを得て、さらに私独特の幾分妙なロットの愛し方は加速したのだった。
小さな子供がお父さんにブーンと振り回されて「ワ~イ!」と喜ぶように、ロットも喜んでくれているといいなと思う。
ついでに甲野先生には太刀祓いなどもしていただいている。
はじめましての日本刀にロット達も、さぞかし驚いたことだろう。
前書きが長くなってしまいました。
以下本題。
前回の音楽家講座で、甲野先生がチェロ奏者にお教えしたクロールのような腕の動き、そして龍笛奏者のご指導の折に思いつかれた虎拉ぎの応用によって、私のフルートも大きく変化することになったことは以前書いた。
それまで甘かった脇が以前よりも使えるようになったのだ。
その後、この二つを組み合わせて使うようになった。
クロールの後で虎拉ぎ。
そして、2日前の水曜日。
いつものようにこの動きをやってからフルートを構えた時に、左腕を動かすのが突然嫌になった。
それまでは、背中から腕のテンションを作るためにも若干張って持ち上げていたのだけれど、もうそのままでいいじゃないか、せっかく虎拉ぎによる落とした肩があるのだから、と。
もちろん、そのままでは首筋に負荷がかかるのだが、そこを抜刀のように左半身を後ろに下げて身体を左右に開くことで、解決。
つまり、それまでは、腕を使ってフルートを構えようとしていたのを腕はそのままで、体幹やお尻の動きによって笛が吹けるところに移動する、ということとなった。
結果、今までも相当斜めだったのが、さらに「縦笛?」というくらいの感覚に。
つまりは、冒頭の「素振り」の恰好に限りなく近い状態となったのでした。
でも、そこからもたらされる響きはかつて味わったことがない種類のものだった。
「吹き過ぎに注意しましょう」ではなく、そもそも「吹いたら鳴らない」のだ。
他の誰かが勝手に何かしてくれている、という感じで、さらに実感は遠ざかる。
特筆すべき変化は、左手が身体の中心部にあるということ。
それまでは、まだまだ「横笛」と思っていたらしく左手は中心線を越えて右胸付近まで行っていた。
最早、どうやって吹いて、どうして音が鳴っているのかよくわからない状態に。
でも、これは私だけが可能というのではなく、生徒さん全員がすぐにその場で出来た。
「・・先生!凄いですけれど、どうしてこれで音が出るんでしょうか?」
「考えちゃだめ!(笑)とりあえず、笛と身体にまかせてみてください」
可動域の問題に関しては、かなり初期の頃から気にしていたつもりだった。
でも、左手に関しては、やはり通常のイメージがしみ込んでいて、今だって、フっとエアフルートの恰好をすると右側に行ってしまう。
でも、試しにそこで指をヒラヒラと動かしてみると良い。
一番よく動くのは真ん中だ。
面白いことに、クロール&虎拉ぎとその維持の動きをやった後の場所が丁度そこになる。
指だけでなく呼吸も首筋もさらにラクになる。
とたんに、スっと体幹がしっかりと整うと感じるのは気のせいではない。
お互い軽く押し合ってみるとその変化はアリアリと判る。
面白いのは、この格好のまま45度自分から下を見て時計回りに移動し、それを正面から見てもらうとちゃんと横に構えているように見えること。
3次元の情報を2次元で認識しまう時の勘違いというのはこれに限らず多々あるのだろうけれど、ちょっと愕然。