『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

CD付き楽譜『水月・浮雲』 発刊

2020-12-29 23:55:16 | 音楽・フルート
CD(演奏とギター伴奏カラオケ)付き楽譜『水月・浮雲』が発刊されました。  

https://www.alsoj.net/store/view/ALFLSU.html#.X-gomfh7lPZ

アルソの専属デザイナーの方が、沢山のアイディアを出してくださり、考えてくださった美しいデザインです。

その上、表紙の題字は・・・

甲野善紀先生が書いてくださいました。

先生は、この4文字のために、お忙しい中、一日を費やし、100枚以上も書いてくださり、その中から数枚渡してくださったのですが、そのどれもが夫々に表情が異なり、選ぶのがとても大変でした。
先生の題字を眺めているだけで清浄な世界へと運ばれる心地がします。

昨年10月に新大久保のスタジオで録音したものです。
ご自身のソロパートに納得がいかないと、何度もテイクを重ねてくださったギターの宇高靖人さん、そしてそれにしっかりと付き合ってくださった制作担当の皆様。

サクっと午前中で終わる予定だったものが、終了時には日が落ちていましたが、皆、嬉しい充実感を感じていました。

帰り路、「あのトレモロだと、まだロットの柔らかな音に釣り合わないです・・・。もっとなんとかしたかったんですが、すみません・・」と悔しそうに仰られたので、本当に驚きました。

そんなことは全くなく、私にはファーストテイクの時から、なんと美しい・・と感嘆していたので・・

奥様がフルートで一緒に演奏活動されていることから、フルーとトのアンサンブルに慣れていること、「いちむじん」で活躍されてクラッシックファンだけでなく、多くの方に喜んでいただける楽曲作りのセンスがあることということで、お願いしたのですが、常によりよいものを追求し続ける真摯なその職人気質に触れ、さらにファンになりました。

何より、ギターの響きが美しく、ロットとの相性が最高に良い。

昨年6月の宇高さんとのコンサートを聴いてくださったアルソ出版社の方が、私達のアンサンブルと、この作品をとても気に入ってくださり、お仕事の依頼となったのでした。

練習の折作ってくださったギターソロパートには、初回はダメ出ししてしまいましたが、2回目には、私の理想を上回った、曲の個性をより引き立ててくださる素晴らしい仕上がりに。

「水月」は胸が痛む程に切なく、「浮雲」は雄大な宇宙が広がり、「星の林」の煌めきの中にいる心地です。

早速、宇高さんのギターによるカラオケで演奏してみましたが、贅沢な気分。

「水月」はギターから始まるので、問題ないのですが、「浮雲」はフルートソロから。

最初にカウントがあって、ほぼ四分音符60秒のテンポなので、何度か聴き込んでいただいて、テンポ感に慣れれば大丈夫なのですが、それまでは、ちょっと大変かもしれません。・・すみません・・

こちらのアルソ出版社のサイトの他、近日中にはアマゾンからも2530円(税込み価格)で購入可能です。







著作権フリーですし、勝手に楽器編成を変えるのも可。

フルート以外の楽器でも演奏可能ですし、元々、ピアノで作った曲なので、ギターパートをピアノに置き換えるのも可能です。

(水月は3カポになっているので、♭3つつけて、ヘ音記号読みとなりますが)


昨年12月のコンサートではピアノ伴奏で、チェロとメロディーをシェアしたり、はもったり、とアレンジしたものをアンコールで披露し、これも好評でした。

「浮雲」はピアノソロでも良い雰囲気になります。ギターソロが受け持っている中間部は、いわばカデンツアなので、各自で好きなことをやってもいいし、無しでも。

楽譜の頚城から解放され好きな様に演奏していただきたいと思い、敢えて様々な記号は書きませんでした。


水に揺らめく月影や、空に漂う雲の様に、その都度のご自身の心の変化を大切にして演奏していただければと思います。


また楽器をたしなまない方にも、CDの演奏をお楽しみいただければと思います。

「和」の曲ではありますが、その基礎はクラッシック。

古の巨匠たちの遺産を沢山借用させていただいています。

水月の主題の伴奏のアルペジオの音型はバッハの平均律のプレリュード(C Dur)、バスはビーバーのパッサカリア(ロザリオのソナタの終曲)のラメントバス(嘆きのバス)、メロディーにはバッハのシャコンヌの3音の順列が装飾的に変化するパターンもあります。

また浮雲の伴奏もギターの開放弦の音のみの1コードで、主題の伴奏はいわばオスティナートバス。さらには曲全体を通して常に低いEが支配していて、これは揺るぎのない神、自然の摂理を表すオルゲルプンクト。壮大な宇宙にも通じます。

かつて、バッハのシャコンヌを写経するように日々の糧として吹き、フルート編曲譜を出したこと、また同様にビーバーのパッサカリアに親しんでいたことが、いつのまにか自分の血肉、土壌になっていて、小さな2輪の花が咲いた、という感じです。


ステイホームが長くなりそうなこの冬休み、お手元に置いていただけると嬉しいです。

そして、気軽に様々な楽しみ方をしていただきたいと願っています。

・・さらには・・

「音楽は不急かもしれないけれど不要ではない」

と感じていただければ、望外の幸せです。

どうぞよろしくお願いいたします!

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この一年は一度もステージに立つことなく終わり、このブログ名も「笛物語」から「猫物語」に変えた方がいいんじゃないかしら?と真剣に考えていたくらいだったのですが、年の瀬となってではありますが、「水月・浮雲」が発刊出来、とても嬉しいです。
これも、出会った全ての皆様のお陰です。
本当にありがとうございました!

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結婚してすぐに大丸の骨董市展で購入し数回使ったまま、しまい込んでいた漆器のお正月セットを本当に久しぶりに出しました。

息子の育児や母の介護などで過ぎていったお正月には出せないままで。
さらには年々コンサートが多くなってきたことで、やはりこんなことをするゆとりはなくなっていました。

左の松と千両を活けた花瓶の葉っぱは7月末にいただいた大きな花束に入っていたもの。5ヶ月たっても瑞々しい。
右はガラスの器にテーブルフラワーとしてアレンジしてみました。
 



今年はこれで、のんびりとお正月です。

一年間、本当にありがとうございました。
どうぞ良いお年をお迎えください。