黒住教(くろずみ)教の教祖・黒住宗忠(くろずみむねただ)は、自分のいのちが物質的肉体の朽ち果てるべきいのちであり、最早、ここ五日しか生きないいのちだと医師から診断されていたとき、
自分のいのちが肉体の化学作用で生きているのではない、
天照大御神の御(お)いのちが此処に生きているのであるという自覚を得ると共に、
有頂に昇る歓喜法悦にみたされ、一週間は、眠ることもせず、ただうれしさに笑いつづけていたが、
やがてその歓喜が静かなる法悦に変って、気がついてみたら、その瀕死の重症であった肺結核が治っていたというのである。
そして人間のいのちは、「吾が生くるに非ず、天照大御神のいのちによって生かされているのだ。」という自覚によって自分の重症が癒(い)えたのだという体験を人に話(はなし)すると、
その自覚が他(た)の人に喚(よ)び覚(さま)されて、またその人の病気が治るというような体験が次から次へあらわれて来て、ついに一大教団をなすということになったのが黒住教なのである。